東海自然歩道-酔いどれ天使の気まま旅

東海自然歩道-酔いどれ天使の気まま旅

山の背景

  序
人間はあそびを知る生物である。あそびを創りあそびを実践する。あそびのよろこびは、実益をかなたへ追いやってしまう。そもそも初めから、実益などというまやかしはなかった。旅もまたあそびである。そこには、やはり創造がある。旅をする者は、旅の最中はもとより旅から離れた日常生活の襞の間にあっても、旅のあそびに埋没しているのだ。
 2006年 4月9日に発ち、十年の歳月に亘って東海自然歩道という西は箕面政の茶屋から東は東京八王子高尾山まで12都道府県をつらぬく全長1697kmの屈指の長大な自然路を、季節の風の吹くまま陽に焼かれ雨に打たれ、ある時は深山の樹影に草枕を求め、またの時は異土の陋屋に雨露をしのぎ、異郷の人々と交わり花鳥風月に身を洗い、かくして小器非才の酔いどれが、あそびの真を見つめんと歩いた全記録を、謹んでここにお披露目いたします。恐惶




歳月と道程(目次)
以下の箇条書きをクリックすると、旅の詳しい内容が開きます



東海自然歩道その後

拝殿 hira hinode

2016年9月30日 金胎寺再訪(東海自然歩道)


絵の風景
matinami
matinami
matinami 花摘み




Art gallery(絵画や工芸のコーナーです。ここをクリック)


源氏物語 評論 宇治十帖「薫と匂」小考


近畿里山歩き

2016年10月19日:河内―竹内街道

2016年10月21日:河内の竜田古道

2016年10月29日:滝谷不動〜赤坂城址

2016年11月2日:恩智神社〜信貴山

2016年11月12日:甘樫の丘〜飛鳥寺

2016年11月17日:高松塚古墳〜石舞台

2016年11月28日:近つ飛鳥

2016年12月7日:矢田寺・松尾寺

2016年12月18日:ウワナベ古墳〜秋篠寺

2016年12月25日:葛城・金剛登山

2017年1月10日:愛宕山登山

2017年3月26日:西の京寺社巡り

2017年4月2日:近つ飛鳥風土記の丘から弘川寺

2017年4月16日:千光寺〜鳴川

2017年4月22日:大和三山巡り

2017年5月3日:壺阪・高取城址

2017年6月10日:大国見山登山

2017年8月30日:白毫寺〜円照寺

2017年9月8日:河内平野横断コース

2017年:二上山登山から當麻の里歩き

2019年:三峰山登山



選りすぐり商品ご案内コーナー  


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Pocket Sommelier


パナソニック・銘柄米


朝な夕な―日々の思いつき日記
ご意見、ご感想の連絡先は iwanami_01@yahoo.co.jp メールまで。

声の大きな独り言
2025.1.7(火)
 年あらたまる。
 今日は特に寒気のつのる日和である。去年は夏の暑さが殊にきびしく秋も深まる11月中旬にいたるまで盛夏に見劣りしない暑気が残り、このままでは暖冬の気配も濃厚との予想もあったが、やはり季節のうごめきは順当な気象をもたらしたかと、納得する。山ではここ最近にはめずらしく本格の雪が積み、スキー場では数年以来の活況にわいているという。
 去年暮れに扇町プールや近場のスイミングプールで少々泳ぎ込み、正月は三日に二年ぶりの愛宕山登山を断行し、且つ又五日に1300mほどの初泳ぎを行った。昨日はシルバー人材センターの業務である箕面市環境クリーンセンターでの清掃業務の初仕事をこなしたが、さすがに身体は疲労をきたしているような実感がある。朝、仕事の場に着くと相方のT氏の後ろに見知らぬ老人がむさい形をして従っている。最近加わったY氏であるとT氏から紹介を受けたが、なんでもT氏の清掃分担の業務を研修されんがために来たという。来し方の放埓な生き様を漂わしてはばからないその押柄な態度に一抹の不快を覚えたが、初対面ではあり尚且つ新年でもあり、努めて心静謐に持し友好的に対しようと自分を律する。近頃同年輩の老翁が気疎くなっている。大方は、年をかさねた生きざまを誇示しているかのように押柄なのである。或いは我が姿の鏡面に映るの不快を見ているのだろうとの誹りを、免れないとは想うが。例えば歩道を歩いていると、後ろから来たらしい同年輩らしい老人は己の元気さを誇示せんが為なのか、追いつき追い抜こうとする。拘わりあうのも面倒なので、脚を留めてしばし見送ることにしている。
 連れ合いの病気(動脈硬化・糖尿病等々)治療のため、朝も早い8時半車で豊中の市立病院へ送り届ける。去年秋には、吹田市の国立循環器病センターへ、カテーテル挿入手術のために送り迎えをしたのである。40年以上連れ添ってきた仲として、これも避けられない義務なのである。
 昨年放映された科学番組の録画を午前中に観る。「量子もつれ」という最先端物理学の話題をとりまとめたものであるが、幼少のみぎりより科学には格別の興味を抱き続けてきた我が気性は、おおいに熱中した。「わけの分からない」ことを如何に理解するか、これがわたしの生きざまの根幹であったように思う。自分の置かれた不利な環境とおのれの偏屈のせいで中学生の時に、この「知」の進路から外れてしまった。いまさら後悔しても何の意味成す事あらんや。今や、高等学問(数学)抜きで、感覚に頼っていくのも存外楽しめるのだと嘯くのである。余生、限りあり。
 
  2024.11.16(土)日記
 凡俗な自分は、ちょっとした影響力のある人物に感化されやすい。イギリスのフリーマントルという作家の描くスパイ小説の登場人物「チャーリー・マフィン」の飲酒癖が身体にのり移り、毎夕ウイスキーを飲むようになった。夏の暑さもようやく去ろうとする今、胃腸に変調をきたし、昨夜も今朝もおかゆの食事で済まさざるを得なくなった。二・三日断酒すべきと観念する。
 過ぎる夏ころから、夜、南西の地平線の彼方に妙な光点を見るようになった。毎夜同じ方角に見える。輝度はかなり高い。見ていると、少しづつ上方へ向かって動いていくのが分かる。そのうち、思い切ったように急速に弧を描いて上天へ舞い上がり消えてしまう。すると下に待機していた別の光点が明るさを増して顕われ、同じような挙動をして上天を飛来していく。何度も繰り返される。よく目を凝らすと、そのあたりの地平線上には、雲霞のごとく無数の明かりの光点がむらがっているのだった。
 今は、その挙動が見えない。が、雲霞のような微かな光点の群がりは、やはり見えている。

 総選挙という民主主義政治制度に、一点の疑義を覚える。某大国では、破落戸が大統領に選ばれた。世界は緊張して、今後の世界(地球)のなりゆきを見まもり、あるいは対策を講じようとする。某大国だけではない、世界のそこいらに、また日本にも同様の現象を見ることができる。それはすなわち、政治文化の後退なのか?民主主義の幻影なのか?
 昔読んだ本を今また再読したが、同様の現象がそこにあって、忘れていた感動を呼び覚ました。
 故高坂正尭(元京大教授)が昭和56年に著した「文明が衰亡するとき」という本がそれである。ローマ帝国から始まって、ヴェネチィア、現代アメリカ、日本へとその衰亡の原因を論じているが、特にヴェネチィア編から要所を抜粋する。
 「極めて平凡な言い方だが、よい政治体制とは国内の活力と多様性とを保ちながら、秩序と安定性とを与えるものと言ってよいであろう。」
 「そして、国会議員の身分を限定したのも、大衆の政治参加によって政治が乱れるのを防ぐと共に、国会議員の一体性をたかめ、自負と責任感を持たせる効果があったと言えよう。」
 「ここで賞賛に値するのは、ヴェネチィアが市民大集会による選出という直接選挙制をやめることに解答をを求めたことであろう。直接民主制というともっとも民主主義的であると誤解されやすいが、それは大きな功績をあげたりして有名になったものが選ばれ易く、{大衆の支持}を得ているということで、強大な権力を持つ恐れがあるものである。実際、共和国国会による元首の選出をいう方式になってからも、市民大集会によって元首が選出されるという可能性は残ったのであり、それと先に述べた社会の分化によって不満を持つ層が現れたこととが結びつく危険があった。塩野氏(ローマ人の物語著者)の言葉を借りれば{個人の野心}と{大衆の専横}とが結びつく危険があった。」以上抜粋。
 ※「大衆の専横」(ボピュリズム)は世界の流行になった観もあるが、実は有史以来人類社会の地下水脈として底深く流れ続けてきたものだ。

2024.10.15(火)日記
過去の新聞記事覚え書き
10月1日(火)毎日新聞 コラム火論 大治 朋子 「ブーメラン効果」とは から抜粋
 テロ対策の専門家の間でよく語られる「ブーメラン効果」という言葉がある。相手を攻撃すれば報復が戻ってくる。だから攻撃は慎重に、という意味がある。テロ対策の慎重派が使うことが多い。
 一方、強硬派は、「ブーメラン効果は存在しない。イスラエルの攻撃を抑止したい敵が考えついた心理操作の言葉だ」と反論する。・・・・
 テロ対策の研究で知られるイスラエル・ライヒマン大学の学長、ポアズ・ガノール氏が2017年、講義で興味深い話を語った。
 「彼ら(テロ対策強硬派)は、テロ組織の攻撃モチベーションは常に強いのだから、実行能力を随時そぐことが重要だと訴える。だがヒズボラや(バレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織)ハマスのように、高い実行能力を持つ組織には長期的な戦略がある。必ずしもいつも、イスラエルに対する強い攻撃意欲を持っているわけではない」・・・・
 ※関連した記事
10月11日(金)付毎日新聞 コラム金言 小倉 孝保 「罪深い臆病な指導者」から抜粋
 古代ギリシャのソポクレスから19世紀のオスカー・ワイルドまで、数多くの戯曲家・作家が悲劇を残している。
 イスラエルの作家、アモス・オズ(1939〜2018年)は結末の違いから、悲劇にはシェークスピア型とチェーホフ型があると考えていた。シェークスピアの悲劇には「正義が勝つという伝統がある」一方、チェーホフの方は「結末では誰もが失望し幻滅し、悲嘆にくれる」
 イスラエル・バレスチナ紛争を終わらせるにはチェーホフ型しかない。オズの描いた結論だ。互いに自身の正義を疑わないため、「感傷的なハッピーエンド」になり得ない。両者が歯を食いしばって妥協する以外にない。
 オズによると、イスラエルのユダヤ人とパレスチナのアラブ人は共に欧州の犠牲者だった。ユダヤ人は長年抑圧され、ナチス・ドイツによるホローコースト(大虐殺)も経験した。一方、アラブ人は19世紀以降、列強による植民地主義に苦しめられた。
 「犠牲者2人は必ずしも兄弟になりません。同じ残酷な親を持ちながらも、子どもたちが抱き合うわけではないのです」・・・・
 イスラエル軍とハマスによる戦闘が始まって1年が過ぎ、ガザ市民の犠牲者は膨れ上がっている。イスラエル軍はヒズボラ掃討を目指して戦線を拡大し、レバノンでも多数の住民が命を落とした。
 イスラエルのネタニヤフ首相が目指すのは完全なる勝利である。ただ、戦いを終わらせるには、両者が苦しみながら妥協するしかない。どちらかが100%の満足を得ようとする限り、もう一方の抵抗は続くのだから。
 かってオズは妥協できない指導者を「善意や想像力、政治的勇気が欠如している」と批判した。臆病者のせいで、罪のない人々の命が奪われている。
 ※戦争という言葉で括るなら、次の記事も番外に連なってくると思う。
10月10日(木)付毎日新聞4面 オピニオン記者の目 鈴木 英生(専門記者)「あの戦争の記憶の継承」から抜粋。
 侵略忘れぬため「大東亜戦争」重要から抜粋
 哲学者の上山春平(1921〜2012年)は、人間魚雷「回天」の搭乗員だった。戦後は京都大教授となり、「大東亜戦争」という言葉をあえて使い続けた。極東国際軍事裁判(東京裁判)は「勝者の裁き」、日本国憲法は連合国の「押しつけ「だとした。
 上山によれば、戦後日本は米国側呼称の「太平洋戦争」を使うことで、あの侵略戦をひとごとと思うようになった。自分たちは軍部などに「だまされ」ただけだと。
 確かに、一般国民に開戦などの直接の責任はない。が、いくら「だまされ」たとしても、国民は主体的に戦争を支持し、戦ったと上山は感じていた。だから、「大東亜戦争」という表現は自らの侵略を忘れないためにも重要だ。
 上山は、東京裁判や憲法の「押しつけ」の経緯こそ批判したが、内容は人類の平和への意志の結晶と評価した。特に強調するのは、連合国が日本に国家主権の基本要素である軍事力を放棄させた点だ。
 ならば、連合国の後身・国連は、日本が軍隊抜きで存続できる状況を維持する義務がある。日本は憲法を「武器」に世界へ平和を「押しつけ」るべきなのだ。「大東亜戦争」は、日本にそんな未来への権利を与えた。だから、自らの戦友らは「犬死」ではない。上山はそう思おうとした。

 ※・・・・異質の民族・他人に対する寛容と相互理解が、今こそ必要な時ではないかと思う。
今の政権・政府には、また大東亜戦争の時のような状況を作り出すのでないかという一抹の不安をやはり拭えない。国民の一部否多数が、積極的に戦争を支持するような状況が、醸しだされる不安が。
であるから、「押しつけ」であろうがなんであろうが、この与えられた憲法を千歳一隅の僥倖として大切に護っていくべきではないか。              (みなわ)

2024.9.27(金)日記
季節は節季の習いとばかり秋色に入ろうとするが、夏の固執はなかなか放さない、といったもっかの日和である。肌が寒しくなったと思えば、なにやら荒けた夏の顔色が押柄に押し込んでくる。攪乱されているようでもある。
 ようやく9月25日に原稿を送付。ほっと安堵する。生きた証になるかもしれないと期待する。
 世の中、政経国際社会といろいろ蠢いている、落としどころが不明だ。世界の終わりがすなはち落としどころということか。

 9月2日の毎日新聞6面 「外国特派員が見た」から「東京の再開発」として、先の都知事選を踏まえての仏ルモンド記者フィリップ・メスエール氏の記事抜粋
 私が都知事選で論じられるべきだったと思った課題の一つは、首都の住環境についてだ。・・・・
 東京都民は、緑地や地元商店があるヒューマンスケールの街並みを望むのか、それともオフィスやショップ、レストランが入ったコンクリートとガラス張りの高層ビルが建ち並び、その脇に緑と称して数本の樹木を植えただけのような街を好むのか。・・・・
 市場のの法則は、首都の遺産を守るために行政が介入しなかったことで、街並みを変貌させた。日本の建築基準は耐震性と日当たりの点を除けば、それほど厳しいとはいいがたい。建築物は数十年で時代遅れになるという考えが定着しており、開発業者に、不必要ともいえる開発を進める自由を与えてしまった。
 ※・・・・小池百合子都知事、目を大きく見ひらいてほしい。(みなわ)
毎日新聞9月6日5面社説「持続可能性に疑問が残る」から抜粋
 防衛費が来年度予算の概算要求で、過去最大の8兆5389億円を計上した。政府は2027年度までの5年間に総額43兆円を防衛費に充てる予定で、来年度はその3年目にあたる。体制の強化よりも防衛費の増額が優先されているとすれば、本末転倒だ。・・・・
 同じく当日の社説 朝鮮人虐殺の歴史「向きあわぬ政府の不誠実」から抜粋
 民間団体が営む慰霊式典に、東京都の小池百合子知事は今年も追悼文を送らなかった。・・・・
 事実を直視しなければ、歴史をゆがめる恐れがある。近年、虐殺を否定するような言説も出ているが、政治家の曖昧な態度は、それを助長しかねない。・・・・
 ※・・・・例えば、虐殺被害者の一人一人についての、正確な特定・被害状況事件の克明な発掘は、我々に課せられた義務であると、愚昧は考える。(みなわ)

 9月27日 袴田さん再審無罪
 当日の毎日新聞が異例の謝罪記事を載せた。
「人権侵害をおわびします」編集局長 坂口佳代
 袴田さんが逮捕された1966年当時の紙面を振り返ると、袴田さんを「犯人」とする捜査当局の見立てを疑わずに報道していたと言わざるを得ません。・・・・
 逮捕された容疑者の人権に配慮する意識が希薄でした。・・・・
 事件報道の問題に共通するのは、捜査当局の見方を確定した事実であるかのように報道してしまう恐れがあることです。
 ※・・・・再審無罪が決まった今日の時点、このような記事を公にすることに、少々拍子抜けというか迂遠な感を受ける。再審無罪の決まる以前において、なぜ立場を鮮明にしなかったのか。事に寄せて、旗幟を顕わし以て糊塗するのは、怯懦の人である。(みなわ)

2024.8.19(月)日記
 ひと月ばかり日記のブランクがありました。その間、社会一般時事において様々なできごとがありました。
 それはともかく、巷において私と同世代老人族の負の面の姿が「嫌味」として頓に目につくようになった。一つには、古希を過ぎるとなぜかしら自己顕示欲が旺盛になるらしい。また一つは関連して、「古老」として箔がついたような錯覚した故の、他者に対する配慮とか遠慮が乏しくなっている節がうかがえる。当人にはそれまでの仕事や生活上の経験実績の重みが、奢りの根拠であると嘯いているらしい。醜いのである。いわゆる団塊の世代である。なにかが欠落している世代である。私も含めて内省すべきだと以て銘すべき。
 このひと月にあった時事問題を、以下に挙げてみる。
 7月24日毎日新聞 水説コラム 赤間 清広 「エンゲル係数の警告」から抜粋
 エンゲル係数に異変が起きている。家計の消費支出に占める食品の割合を示す有名な経済指標である。・・・・
 世界に広がったのは19世紀。ドイツの統計学者、エルンスト・エンゲルの論文がきっかけだ。・・・・
 係数が高くなるほど、食品以外に支出を回せない状況だと言えるのではないかー。
 以来、エンゲル係数は各国の生活水準を計るバロメーターと位置づけられてきた。・・・・
 戦後間もない1940年代、国内のエンゲル係数は60%あった。日本が貧しかった時代だ。
 経済成長とともに改善が進み、2005年には22.9%まで低下している。
 しかし、ここ数年、計数はにわかに上昇に転じている。23年は40年ぶりの高水準となり、最近も高止まりが続いている。
 経済が成熟したはずの日本で何が起きているのか。
 景気が悪化した?政府の月例経済報告によると「このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している」と堅調らしい。
 大手企業の業績も絶好調だ。24年春闘の平均賃上げ率は33年ぶりの高い水準を記録した。
 だが、家計の声に耳を傾けると「異変」の正体が見えてくる。
   日銀が定期的に実施している「生活意識に関するアンケート調査」。回答者の7割近くが現在の景気は「悪い」と指摘している。政府見解とは正反対だ。・・・・
 エンゲル係数をめぐっては、日本人の生活スタイルの変化や高齢化により、有効性を疑問視する声も少なくない。
 しかし、第一生命経済研究所の熊野英生・首席エコノミストには「日本人の生活が貧しくなっていることの象徴」に見える。
 国際競争力の低下など日本経済の存在感が薄れ、市場の円売りを助長させている側面もある。
 日本が抱える構造的な問題が上昇の背景にある。目を背けたくなるような現実をも直視せよ。そんな警告でもある。
 ※・・・・少なからずの富裕層(自称も含めて)らにとっては、景気は好況らしい。
 同日同紙の万能川柳をひとつ
 何故だろうインテリ層の非常識 白石 よねづ徹夜 

8月一日毎日新聞5面社説 日銀が追加利上げ「欠かせぬ暮らしへの配慮」抜粋
 今回の金融政策変更で、住宅ローンや借入金利も上昇する。植田氏は「(利上げ後も)金利は非常に低い水準だ」と強調したが、ゼロ金利時代が長かっただけに、家計や中小企業への影響は軽視できない。
 今年1〜3月期の国内総生産(GDP)統計によると、個人消費は4半期連続で減少している。賃上げが物価高に追いつかない中、小売業界では「再び節約志向が強まっている」との見方も広がっている。
 ※・・・・黒田東彦前日銀総裁時代の「異次元緩和」が、長く尾を引いて怨念のごとくくすぶり続けるのだろう。

8月5日付け毎日新聞8面 毎日俳壇から
 さるすべり白き光をあふれしむ 尼崎市 森下久美子
 藤寝椅子われを呼ぶ声遠くなる 大阪市 吉田 昌之

8月7日付毎日新聞 水説コラム 赤間 清広 「暴落は止められるか」抜粋
 人がかかわる限り株価の暴落は必ず起きる。これが多大な犠牲のすえに人類が学んだ無慈悲な現実だ。投資にはリスクがあるという思い教訓でもある。
 
 この間、パリオリンピックも開催された。一段と商業主義が嵩じて一大ショービジネスと化した観のあるオリンピックであった。個人的には、スポーツクライミング出場の日本女子プロクライマー森嬢が印象に残る。4位に終わった彼女であるが、競技後、「勝敗・メダルは二の次、与えられた課題を如何に登り切れるかが、私自身の最大の問題だ」、というようなことをコメントしていた。その姿は商業化したオリンピックを凌駕して、白眉である。

 最後に、岸田首相の総裁選不出馬のニュースである。
 8月15日毎日新聞5面社説 「政治不信を深めた末の退場」抜粋
 「負の遺産」清算に失敗
 「火の玉になって」改革に取り組むと訴えていたが、再発防止に向けた政治資金規正法の改正では、資金集めのパーティーや企業・団体献金の是非には踏み込まず、多くの「抜け道」が残った。・・・・
 改革姿勢を演出する思惑がうかがえたが、政権の統治不全を露呈したに過ぎない。
 安倍晋三元首相の銃撃事件で表面化した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題も、うやむやのままだ。
 教団との接点は、安倍氏の祖父・岸信介元首相までさかのぼり、高額献金がトラブルになった後も続いてきた。首相は「関係を清算する」と語っていたが、問題のルーツにさかのって究明することはなかった。・・・・
 3年前の総裁選では「聞く力」「丁寧で寛容な政治」をアピールして勝利した。強権的手法が目立った安倍・菅義偉両政権からの転換を意識したものだった。
 ところが、最大派閥を率いた安倍氏が死去して以降「安倍路線」に回帰した。専守防衛のあり方を変容させる「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有と防衛費の大幅増額など、重要政策の決定で国会の軽視が目についた。
 政権基盤が盤石でない首相が保守層の離反を招かぬよう、安倍氏が生前に掲げた方針を踏襲する姿勢を強めた形だ。・・・・
 就任時は、新自由主義的な政策を改め、分配強化で格差是正を目指す「新しい資本主義」を訴えていたが、立ち消えとなった。・・・・
 ※・・・・去り行く人に対しての功罪論議は、結局、非を論うことに社説は終始した。私個人にしても、一見したところ、「功」は見当たらない。哀しいかな、岸田氏は一国の政ごとを束ねるには、相応しからぬ人間的に弱い人であった。
 
   2024.7.25(木)日記
此処最近の新聞記事から記録に残したい分を、抜粋しておく。
 7月13日付毎日新聞から 2面コラム「土記」-「石丸現象の冒険」伊藤 智永
 東京都知事選で約165万票を獲得した石丸伸二氏とは何者か。・・・・
 公約はあいまいなのに、ネット交流サービス(SNS)や動画サイトで若年層や無党派層の支持を集めるポピュリスト(大衆迎合主義者)。言うなら「民主主義のハッカー」か。ハッカーとは、良いことであれ悪いことであれコンピューターを駆使して常識外れな目的を実現させる者のこと。・・・・
 ボランティアの支援も含め、石丸氏陣営が仕掛けたというより、テレビよりネットを見る人々の間で、同じ考えや好みを自発的に広げる現象が起きたらしい。
 では「ハーメルンの笛吹き男」。とんだ買いかぶりだ。石丸氏の演説はおよそ雄弁には程遠い。・・・・
 問うべきは石丸氏が何者かではなく、石丸氏を偶像に押し上げた165万有権者像の方だ。
 小池百合子氏当選を前提に、既存政党拒否の票を投じたのか。直接民主主義は怖い。
 この記事に関連して、同じく7月20日(土)の2面コラム「石丸現象の失敗」伊藤 智永から
 今や国家目標と化している出生率向上、その対策として、一夫多妻制導入や遺伝子操作を提案する自称「政治家」を初めてみた。・・・・
 既存の政党やメディアに幻滅し、変化を求めた人々の受け皿になったと識者は説く。変化。何を、何に、どうやって。政治に問いは欠かせない。問いは批判精神から生まれる。好きなものに群がるのは消費行動に過ぎない。
 SNSは双方伝達なのに、必要な問いと応答が成立しなかった。政治の意思疎通として、石丸氏には成功でも、正確な情報を得られなかった有権者にとっては失敗である。そして、投票日までに十分な問いを発しなかったメディアは、深刻な敗北を喫した。
 余計なお世話だ、石丸氏の一夫多妻制に賭ける、という有権者もいるだろう。小池百合子都知事の疑惑や公約不履行もメディアはかなり報じたが、現職は強かった。膨大な予算に黙ってぶら下がる既得権益層はそれほど厚い。・・・・
 民主主義は、有権者の自分本位むき出しの投票だけでは健全に機能しない。
 ※・・・・「民主主義の裏をかく」この手の立候補者は今後も絶えないだろうし、ますますはびこるだろうと危惧する。では、民主主義に変わりうる政治の在り方とは?(みなわ)

 7月15日付毎日新聞6面 外国特派員が見た「気候変動対策の本気度」プロトム・アロ紙(バングラデッシュ)の モンズルル・ハック 東京支局長 の記事から抜粋
 私たちの住む世界は何かが間違っている。専門家たちは、私たちが貪欲な生活を送ることで大気に害を及ぼすということを、かなり前から予測してきた。だが、その「結果」がこんなにも早く表れると誰も思っていなかっただろう。・・・・
 地球温暖化をくい止めるために何をすべきか、過去数十年にわたり議論が繰り広げられてきた。原因はすでに周知の通りで、問題は実効性のある対策をどう講じていくかだろう。議論を深めていくうえで、先進国が「グローバルサウス」の立場や主張をより注意深く受け止めていく必要がある。・・・・
 ※・・・・私見であるが、地球の表情変化のスパンは人の生活スパンに比して格段に永い。その永さ故に、人は自分を基準にした今現在の生活欲求に邁進する。人間という生物の生まれながらに具わった避けようのない罪業である。対策を講じるためには、おそらく千年単位の時間が必要だろう。政治家を含めて、千年先を見通して現在を策定できる人はいないだろう。もはや延命処置的な施策に頼って幾百年か先の滅亡を待つしかないか、それとも人類こぞって(他生命も含めて)外宇宙への移住を模索してみるべきか。2024年、今はそんな時である。(みなわ)

 口直しの万能川柳 7月22日付毎日新聞
 難解な語彙が自慢の評論家 別府 タッポンZ
 目が覚めた人も加わり大拍手 箕面 もみじ橋
 議会終えさっと席立つ寝てた議員(ヒト) 牛久 黒岩芙美子

2024.7.04(木)日記
 昨日7月3日(水)毎日新聞1面コラム「余禄」から抜粋。
 「官尊民卑」は福沢が広めた用語という。渋沢も「官にある者ならばいかに不都合な事をを働いても大抵は見過ごされてしまう」と嘆いている。そんな時代は過ぎ去ったとは言い切れない昨今。主役交代を機に「民」の力で円の価値が十分発揮される時代が来ないものか。
 ※・・・・ひと頃(55年前)では、窓口の郵便局員ですら、預貯金郵便利用者に対し押柄な口利きをしたものであった。国鉄の券売窓口職員においてをや。時代が変遷した昨今にも、やはりその根の名残がどうしても耳にはこもった濁音として聞こえてくる。

 7月5日付毎日新聞1面コラム「余禄」から抜粋
 「優生保護法は不良な子孫の出生を防止するという公益を目的としたもので、意思に反し手術を実施しても憲法に違反しない」。好ましくない遺伝因子の排除を求める優生学の観点に立つ法律制定(1948年)の翌年、当時の法務府が示した見解だ。・・・・
 優生学は20世紀前半の世界で広く受け入れられた。ナチスの専売特許ではない。「私たちが偏見や差別意識を持ち、集団の利益のために他者を生産性と効率で序列化するなら、いつでも復活しうる」。多様性を対抗軸と考える東北大の千葉聡教授(進化生物学)の「警句」である。
 ※・・・・人間は集団に入れば、催眠に引き入れられたように、たやすく悪魔になってしまう。

2024.7.02(火)日記 ここ最近6月末頃よりの目に留まった記事・言葉を拾ってみる。
先ず6月25日(火)付毎日新聞2面コラム「火論」-沖縄と基地と生活―大治 朋子より
抜粋
沖縄の光景を見ていると、パレスチナのそれと重なることが少なくない。イスラエルによる占領と、日米両政府による基地の推しつけ。そこには圧倒的な力の格差と構造的差別がある。・・・・
同じく6月18日(火)付毎日新聞5面社説ウクライナ平和サミット「公正な停戦」への努力 より抜粋
 国際法に違反し、一方的に侵攻したのはロシアである。力による現状変更が放置されたままでは、「公正な停戦」は実現できない。強者が弱者を支配する時代に逆戻りしてしまう。・・・・
同じく7月1日(月)毎日新聞5面社説 国安法施行4年の香港「締め付け強化を憂慮する」から抜粋
 香港で社会の統制が強まり、司法の独立さえも脅かされている。・・・・
 治安維持を強化する法整備が進む中、司法も政府の方針に沿った判断を示すようになった。
 ※・・・・「弱肉強食の世界情勢と為政者による民への理不尽な権力行使」今の世界はまるで17,18世紀の混沌の状況へと逆戻りしているように見えてしまう。(みなわ)

口直しに同日付毎日新聞11面毎日俳壇より幾つか拾う
駆けつけの一盞干して穴子鮨(安中市 中島 糸)
閂の朽ちし裏門蛍飛ぶ(大阪市 佐藤 順子)
噴水や重力の枷くだけちる(小平市 中澤 清)
晶子忌や姿見の端猫よぎる(京田辺市 加藤 草児)

2024.6.14(金)日記
中国という国が分からない。世界のあらゆる方面に絡みをつけて、覇を唱えようとしてい姿が見える。とりわけ南シナ海、台湾、尖閣諸島などの地域に武の威力を誇示している様相には、時代錯誤的な疑心と滑稽さがある。その狙いは何か、もちろん国益の伸長と覇権力を図ることもあるだろうが(そのこと自体がすでに今では時代錯誤である)、なにより政権の主張と国威を自身の中国人民に示そうとする意図が、見え隠れする。それは、習近平の思惑と等しい。いわば、政権立場の不動の安定のためには、欠かせない政治姿勢或いは国内向けのプロバガンダかなと想像する。(中国歴史を看れば、民が暴発した時支配者たる政権は倒されるのが常道であった)
そのへんのもやもやした疑念と不安を解き明かす説明になるかとも見える記事が、6月13日付毎日新聞に掲載されていた。11面 オピニオン「激動の世界を読む」国分 良成(アジア調査会会長)
大文字タイトル「もろさゆえの中国強権化」から要点を抜粋。
中国がますますわからなくなってきた。・・・・
中国研究者の間では「台湾有事」より「中国有事」、その本質は「習近平リスク」だとささやかれる。強権政治は政権の強さより内部の脆さの証明にしか見えない。中国はどこに向かっているのか。何のための強権政治なのか。 習近平時代以前は、ケ小平理論の根幹を成す「社会主義市場経済」が公式の理念・イデオロギーであった。現在もそれを否定しているわけではない。しかし言及頻度は激減した。
「ケ小平のもくろみ」
社会主義市場経済はソ連崩壊後を目の当たりにしたケ小平が、その二の舞とならないよう市場経済を大胆に導入し、国際競争力を備えた経済力を持つべきだと痛感したことに端を発する。
公有制と共産党指導という基本原則は堅持するが、市場経済の原理を活用し、海外資本を大々的導入することで技術力と資本力を蓄え、やがて輸出と投資の大国に発展する。これが当初のデザインだ。・・・・
江沢民時代には腐敗が野放しとなり、政治改革は単に言葉だけとなった。胡錦濤政権は党内の綱紀粛正に努めようとしたが、江沢民と既得権益層の反発であえなく挫折した。
「権力の掌握に10年」
習近平総書記が誕生した12年、中国共産党は「世界最大の腐敗政党」と言われるまでに劣化していた。周氏が党支配の存続のために「法による統治」を掲げ、まずは反腐敗闘争に着手したのはある意味で合理的な選択であった。・・・・
とはいえ、現在でも政治腐敗は根絶できず、途中コロナ禍もあって成長は着実に鈍化している。・・・・
なぜ社会主義市場経済を前面に掲げないのか。・・・・個人的な怨念の有無はともかくも、問題の核心はこの理論がすでに深刻な限界を露呈し、黄昏状態にあることにある。・・・・・
「理念と目的の迷走」
第一に、「社会主義」と「市場経済」の矛盾が拡大している。自由競争を原理とする市場経済と対外開放をさらに進めれば、その分だけ私的財産権を拡げ、共産党の政治介入を小さくしなければならない。
第二に、中国経済と国際システムの間に溝が広がりつつある。
第三に、習近平政権はもはや社会主義市場経済に理論的根拠を置かず、「マルクス主義」を繰り返し強調している。現政権は本気でマルクス主義を理路的・イデオロギー的支柱に置いているであろうか。
確かに現在の中国を見ていると、格差が極端に広がり実質的に「階級」が復活している。皮肉を言えば、今の中国に最も必要なのは真の共産党と真のマルクス主義かもしれない。だが、現政権はそこまで真剣に考えているわけでもなさそうだ。・・・・(この辺の下りは、要注意。国分氏だけの推測にすぎない)
「力ある者とて、思いどおりにに状況を支配し切れるわけではない。歴史に単一の支配者はいない。どんなに強そうに見える者も、状況をかたち作る一コマでしかない」。今年急逝された五百旗真氏の一文である(日米戦争と戦後日本)。

2024.6.01(土)日記

“しかし、改革の中身よりも、各党の面目と利益を優先した茶番劇だ。不十分な案で合意した公明と維新は、「同じ穴のムジナ」と見られても仕方あるまい。”
 本日毎日新聞5面社説 規正法の自公維合意
 「改革に背を向ける茶番劇」から一部分の文を抜粋した。この記事を起こした記者と、我々庶民の怒りは等しい。国会議員という人臣最高身分を得たからといって、国民に対するこのような愚弄は余りではないか。どういう「生きざま」の根幹をお持ちであったのか?
 
2024.5.29(水)日記
 本日毎日新聞記事からの覚書
9面 オピニオン 「デフレ脱却へ」から抜粋
この30年間のデフレは、日本経済において縮み志向がまん延したことが大きいと考える。・・・・
 デフレ経済下で、政府はインフレ(物価上昇)を先行させて経済成長を目指す政策をしてきたが、間違いだったのではないか。インフレは本来、成長の結果であり、成長を伴わない中でインフレを目指しても、消費者は買い控え、節約し、かえってデフレが進む危険性さえある。経済再生には、生産性の改善、製品の高付加価値化が必要だとも言われるが、インフレにより生産性が改善すると言う根拠はない。インフレで経済課題をすべて解決するという考え方は見直すべきだ。・・・・武田 洋子(三菱総合研究所執行役員兼研究理事)
  3面 万能川柳から
 かと言って庶民が清いとは限らない
5月25日付毎日新聞からの覚書
2面 土記 伊藤 智永 「出版を断られた名作」から抜粋
 石牟礼道子の「苦海浄土 わが水俣病」(1969年)は、初め岩波書店に断られた。理解する編集者がほぼ皆無だったらしい。・・・・
 「苦海浄土」は翌年、第1回大宅壮一ノンフィクション賞(運営文芸春愁)に選ばれるも、著者は「死んでいった人々、苦しんでいる患者が書かせたものだから」と受賞を辞退。ところが評価の高い本なのに、書店にない。実はあまり売れず返品が多かった。
 それを朝日新聞が、公害を巡る見えない圧力でもあるのかと憶測する記事にして騒ぎとなり、一転して売れ出したという。・・・・
 政治や行政や経済の世界に届く言葉を持たない死者や患者の体の奥底の痛みと絶望を、あたかも当事者になり代って言葉に紡ぎ出す書き手とは何者か。
 「あれは巫女の世迷い言。私らの現実とは関係ない。水俣病を神聖視する都会者はたくさんだ」
 時にそんな本音も聞くが、現地の当事者だけが持つ特別の発言権が、元に戻って中央と地方の権力関係に自分たちを押し込めてしまう悪循環は、多くの政治闘争と社会運動が経験するところだ。
 それを外へ、次世代へひらく英知が、現実に材を取った作り物である文学作品の働きだろう。・・・・

2024.5.1(水)日記
 本日付け毎日新聞11面「論点」に、面白い記事が掲載されていたので、記録する。
「地元に恩恵あれば受容可能」 にしゃんた(1969年、英領自治領セイロン―現スリランカ)生まれ。羽衣国際大教授 以下抜粋
 私が暮らす京都にはインバウンドの外国人観光客が集中し、市バスや、嵐山へ向かう路面電車が大混雑して住民の足が脅かされている。一方で、インバウンド価格で潤うホテルや民泊は、多くが外国資本、あるいは国内でも東京など地元以外の資本による経営だ。地元でインバウンド価格の恩恵を享受できるのはごく一部の人々に過ぎず、大部分は「インバウンドが増えてよかった」とは思っていない。
 私は、インバウンド価格自体に問題があるとは思っていない。豊かな観光資源を持つ日本への観光客は、価格が上がっても増え続けるだろう。むしろ、日本はその観光資源を、お金にうまく代えられていないと感じている。
 日本の観光施設で、インバウンド客向けの「二重価格」を設定しているところはほとんだない。・・・・・
 スリランカでは、支払い能力のある外国人からはお金を取り、一方で地元住民には安い価格でサービスが提供されている。・・・・・
 かって世界第二位の経済大国だった日本の人々には、日本が他の国よりも特別に豊かでなくなったことを、認めたくない気持ちがある。だが、日本人の給料が30年間上がらない間も、海外の人々の収入はどんどん増えている。自分たちに手が届かないインバウンド価格の存在は、日本人に対して「現実を直視せよ」と警鐘を鳴らす、メッセージでもある。・・・・・
 私は「共生」ではなく、「共笑」(ともえ)という言葉を造語し、誰もが共に笑える社会を目指している。現状はインバウンド客を受け入れる側の日本人は笑えていない。今後、さらに暮らしへの影響が強まれば、インバウンド客に対する反感が高まるのは必至だ。
 その排外感情が観光客に対してだけでなく、わたしのように日本に住んでいる、あるいは日本に働きに来ている外国出身者全体にまで向けられることも怖い。解決策は、地元にインバウンドの恩恵を広げていくことしかない。
 ※・・・・・怖いのは、中国人資本が京都の観光業に注入されている懸念だ。日本人の与り知らぬ部分で、日本の観光地が外国人投資家に蝕まれていく。観光地元は、二重に被害を被ることになる。「隴を得て蜀を望む」の国には、どう対応すれば良いのか。

2024.4.11(木曜日)日記
4月8日付毎日新聞 2面月議コラム 下桐 実雅子「花粉症と感染症」
新人下桐氏のおもしろいコラムが掲載されたので、記録しておく。以下抜粋

  この季節、多くの人が悩まされる花粉症。調査では国民の約4割がスギ花粉症で、私もその一人。
・・・・花粉症などのアレルギー疾患が増えている国には共通点がある。衛生環境が良くなり、感染症の患者は減っているのだ。
最初に花粉症と感染症の関係を報告したのは1989年、英国の疫科学者のストラッカさん。1万7000人を調べた結果、年上の兄弟がたくさんいる人ほど、23歳の時点で花粉症の発症率が低かった。「家庭内で兄弟から風邪をたくさんうつされたからではないか」と考えた。
その後、家畜がいる農場で育った子は、農場以外で育った子よりも花粉症やぜんそくが少ないというスイスの研究報告が出た。家畜がいる農家には、ふんなどに含まれる細菌のかけらが浮遊し、その量が増えるほど、花粉症やぜんそくになりにくいことも分かった。
乳幼児期に細菌にたくさん接触したり、風邪を何度もひいたりする刺戟が細菌やウィルスに対する免疫反応を強めて、アレルギーを抑える方向に動く。逆に、今の日本のような清潔な環境はアレルギーを起こしやすくすると考えられ、「衛生仮説」と呼ばれている。
となると、懸念が浮かぶ。新型コロナウィルス流行は、対策徹底により日本を含め各国のコロナ以外の感染症を激減させた。それ自体はいいことだが、衛生仮説に照らせば子どものぜんそくや花粉症が増えるから、と言われている。
それならアレルギーにならないために不衛生な環境にいればいいの?答えはノーだと言う。「他の病気にかかりやすくなるし、衛生状態がかなり悪くないとアレルギーの発症は減らないでしょう、お勧めできません」(松本さん)。 乳幼児の感染症による死亡率が高い途上国の状況を見れば、それは確かだ。最善の手は、アレルギーの予防薬開発を急ぐことかもしれない。

同じく毎日新聞4月10日付 水説コラム 赤間 清広 “元「米国の象徴」の威光”から、印象に残った言葉
ただ、日鉄が読み切れなかったとすれば、セピア色の時代を懐かしむ米国人のプライドだろう。
※・・・・やはり、米国人もmoneyよりemotionを採るらしい。

2024.3.11(月曜日)日記
 権力を手に握る人の為すことには、計り知れぬほどの怖さがある。まして、それが政治権力となると、筆舌に尽くしがたい恐怖となる。
本日毎日新聞2面 風知草コラム 特別編集委員 山田孝男 「原発リスク 忘却の構造」と題した記事が載っている。その怖さの一端が解き明かされていると思われるので、その抜粋を書き留める。以下
今年は震度7の能登半島地震で明け、北陸電力志賀原発は一時、電源を失ったものの、幸い停止中で過酷事故は免れた。
東日本大地震後、日本の原発は一時、すべて停止したが、2015年から再稼働が始まり、現在稼働中の原発は12基、他に10基が再稼働申請中である。
東京電力福島第1原発の事故からきょうで13年。地球規模で激甚災害が急増しているにもかかわらず事故の記憶は薄れ、原発リスクは軽視されている。・・・・
しかしー
原発が再稼働すれば使用済み核燃料(核のゴミ)が出る。政府は核のゴミを再利用するしくみ(核燃料サイクル)をつくると言っているが、この技術は、研究開発が始まった1970年代から半世紀以上を経てなお、未完成である。
1兆円を費やして廃炉に至った高速増殖原型炉「もんじゅ」。完工を26回延期中の再処理工場。依然、絵に描いた餅の、核のゴミ最終処分場。核のゴミの中間貯蔵施設も未稼働・・・・・。
すると自民党、官僚と電力会社が<裏会議>で脚本を練り、データを操作して有識者会議を核燃料サイクル支持へ誘導。その内幕を暴いたのが2日に放映されたNHK・ETV特集「膨張と忘却」である。・・・・・
核燃料サイクルは電力や機械、土建業会を潤す。立地自治体は交付金と雇用に沸く。企業献金も、戦況票も自民党へ流れる。つまり、核燃料サイクルは政治権力の問題である。
目先の利益を貪って原発リスクを軽視する政治が、次の過酷事故を招くことを恐れる。

※・・・・目先の利に走る偉ぶった人たちが、他のみんなを巻き添えにして滅亡へと墜ちこんでゆく未来図が、明瞭に見えてくる。どうしたら良いのだろうか、人々を救う道と自分が助かる道、今もなおこの選択は宿題として自分を悩ませる。
   本日付け毎日23面に載っていた題字「日常こそ宝物だった」・・・・過ぎれば、しみじみ身に沁みてくる痛切してくる。

2024.1.24(土曜日)日記
ウクライナ戦争に対する悲観的な見方が、新聞紙上に現れている。昨年来からのウクライナによる反攻が、どうやらここへ来て頓挫しているような情勢が伝わった結果である。本日24日付毎日新聞では、かなりの紙面を割いてそのあたりの消息を伝えている。
1面サブタイトル“「自由な世界」守るために”一部抜粋
・・・・繰り返し指摘されてきたが、もし、ロシアがこの戦争に勝利し、ウクライナを支配するようなことがあれば、その結果が与える影響は地域的なものにはとどまらない。力ずくで領土を奪うことが許されるのであれば、法の支配の順守を前提とする国際秩序は崩壊しかねない。力による現状変更を求める権威主義的な国家が席巻する新しい国際秩序が生まれるかもしれない。東アジアの安全保障環境に与える影響は特に深刻だ。
この戦争は、民主主義国家の課題に焦点を当てた。選挙で国民の代表を選ぶ議会制民主主義は、ともすれば短絡的で自己中心的な利益を優先する恐れを抱えている。・・・・編集編成局次長兼外信部長 古本陽荘
同じく同紙2面 コラム“土記”「ある保守思想史の終刊」伊藤智永 から一部抜粋
ロシアのウクライナ侵攻が3年目に入った。出口は見えない。2年前、即時停戦論を「不正義」とののしった人たちの「正義」は今、どこを漂うか。
イスラエルのガザ侵攻は、自衛を超えた無差別虐殺をやめない。それでも、イスラム組織ハマスの奇襲を「許しがたい不正義」と憤った人たちが、法外な「正義」の過剰には沈黙する。
正義感は、それまで安住していた社会と秩序を疑わない態度に根ざす。社会正義を求めるあまり、人や自然のあるべき姿から遠ざかる経験は珍しくない。
“私たちは国際政治学や国際法が、今の世界にほとんど役に立たないと知った。国際社会と国際組織の無力も理解した。”
自由、民主主義、人権、法の支配、市場経済。麻生太郎・安倍晋三両元首相の価値観外交が掲げた「普遍的価値」の普遍性そのものが今や心もとない。
それらは20世紀をリードしたアメリカ製の価値ではないのか。その衰退は否定しようもなく進んでいるのではないか。人々が疑うのは無理もなかろう。
いや、21世紀も盟主アメリカの座は揺るがない。だから、この価値観同盟で結束するのだ。そう力む人たちが「もしトラ(もしもトランプ氏が米大統領に再選したら)」を語る時、今や悪夢の再来ではなく「それも悪くないかも」との期待感がこめられているのにお気づきだろうか。普遍的価値の哀れ馬脚がのぞく。・・・・
また21日付毎日新聞11面オピニオン”論点”「二つの戦争」と世界 と題して元国際司法裁判所所長 小和田 恒(おわだ ひさし)氏によるインタビュー記事が載っている。
―ウクライナ戦争とパレスチナ自治区ガザ地区の人道危機が続く中、世界は立ちすくんでいるように見えます。国際社会のシステムがうまく機能しなくなった原因は何だと考えますか。
 「そもそも論」で言えば、問題の根本には「主権国家が国際社会を構成する単位である」との前提があります。この考え方は「ウェストファブリ体制」と呼ばれ、今日の国際法秩序の基本となっています。
 16世紀の欧州に近代化と宗教戦争をもたらした運動が契機となって宗教戦争が始まりました。17世紀初頭から30年にわたって全欧州を巻き込んだ「30年戦争」を終結させるために開かれたウェストファブリ会議で採択されたのが、この原則です。当時の欧州世界の秩序を規定する原則でしたが、その後300年以上にわたって国際社会の秩序の基本となっています。柱は「主権国家の独立と平等」「内政不干渉」の原則です。
 建前としては、「主権平等」という考え方はその通りですが、強い国と弱い国、大国と小国があるのが国際社会の現実です。大国は大国の意志を体して国際社会で振る舞う―戦争を行う―世界が続きました。ウェストファブリ体制は、その問題を解決したわけではありません。・・・・
―小和田さんは東西対立の冷戦期を「歴史の幕あい劇」と位置づけています。どういう意味ですか。
 冷戦構造の下、表舞台では米国とソ連のパワーバランスが前面に出ていましたが、背後ではグローバリーゼーションという「歴史の流れ」が着実に動いていたのです。冷戦消滅後も「ソ連の社会体制がグローバリゼーションによる世界の変化に対応できなかったため自滅した」ということに他なりません。その意味で、西側のイデオロギーが勝利したとは言えないのです。「歴史の終わり」という考えは誤りだと思います。
  
※・・・・肥大した人類文明の歩んで来た歴史の数々の汚辱、それがどうやら清算される時期に差し掛かったというわけか。おおかたの論評を読んでも、はっきりした出口を提示するまでには至っていないと見る。宗教の色合いが強いけれど、人間の原罪を断罪されているような、末期的様相である。科学文明は確かに発展したけれど、哀しいかな「人間の原罪」はそのまま温存され続けてきたのである。宗教でさえ、汚辱にまみれているとしか見られない現世界、果たして出口はあるのか?
シナジェティクスという考えからすれば、何らかの世界的規模の「ゆらぎ」が生じたとすれば、あるいは明るい収束へと状況が安定するかもしれない。「ゆらぎ」の何たるか、まったく今のところ不明。みなわ記
 
2024.1.22(木曜日)日記
ひと月以上この日記をお留守にした。忙しかったわけでもなく、ただぼおっとしていたのだった。ぼおっとするのは、とても良い。

昨夜(21日)NHKBS(10:40〜11:30)に放映された「世界ドキュメント 報道記者」は見ごたえがあった。
ドミトリー・ムラトフはロシアの反体制ジャーナリスト、ノーバァヤ・ガゼータ編集長。2021年ノーベル平和賞受賞。一貫してロシアのウクライナ侵攻を批判、プーチン当局から迫害(ノーバャ・ガゼータの発行停止処分、スパイに当たる「外国の代理人に指定」)を受けながらも、身の危険を顧みず今なおロシア国内にとどまって精力的な政府批判活動を続けている。
大した人物である。ロシア民族のふところの深さをあらためて示している。故元大統領ゴルバチェフ氏と意志を共有していたと言われる。

昨日21日の毎日新聞 コラム「水説」元村 有希子 「見た目より大切なこと」から。
容姿や外見で人を判断するルッキズム(外見至上主義)。人種差別も女性差別も、根底にはこの思想がある。
上川陽子外相に関する麻生太郎氏の発言を思い出そう。本来無関係な外交手腕と外見を結び付けて批評した。そもそも美醜は個人の価値観による。「ほめ言葉だった」とも看過できない。
ルッキズムにさらされがちな職業の一つがファッションモデルだ。衣服をより魅力的に見せるという役割への期待が嵩じて「やせている」ことが求められる。
モデルの62%が「成功したいならやせるよう」忠告された経験を持つとの調査がある。
「KIKO」の名で活動する平川葵子さん(26)は、17歳で拒食症を経験した。
モデルを夢見るようになったのは、スカウトされた12歳のころ、世界的な存在になりたいと、高校を休学してカナダに渡った。学業とモデル活動の両立に張り切っていた時、所属事務所から1週間で5キロやせるよう求められた。
当時の身長は180センチ。リンゴとサラダ以外口にせず、一日中泳いで体を絞った。
体重は44キロに減ったが満足できなくなっていた。体格指数のBMIは「低体重」である18.5未満を大きく下回る13.6。やがて低体温、心拍数減少など命を脅かす症状があらわれ、入院した。
「自分を愛せないようでは他人を幸せにすることもできないことに気づきました」と振り返る。・・・・
19歳で渡仏し、パリコレなどで活躍している。業界には今も、モデルたちを追い込むような悪弊や過酷な労働環境が残るという。
「モデルはマネキンではなく生身の人間です。健やかに働き続ける環境を整えるだけでなく、ファッション全体をもっとエシカル(ethical)に変えたい」
 地球環境や動物の福祉に配慮して作られたファッションを普及させる社会運動に関わっている。体形や人種、性別、国籍など、多様性を持った「エシカルモデル」60人が登録する事務所の経営者でもある。
きらびやかな世界ほど、生れる影は濃いのだろう。KIKOさんはそこに目をこらし、挑み続ける。お仕着せの価値観に手なづけられない「Z世代」。その強さがまぶしい。
※・・・・「ethical」形容詞 「倫理的」「道徳上」、「安くて良いモノ」や「自分にとってどれくらい得か」といった基準だけで選ぶことでなく、より広い視野で、「人や社会、地域、環境などに優しいモノ」を購入する消費行動やライフスタイルを指す。自分以外の他者や地域社会、自然環境などを思いやる、「思いやり消費」「応援消費。

  2024.1.19(金曜日)日記
米共和党アイオワ州での指名争いにおいて、トランプ氏が過半数を勝ち取って圧勝した。なぜそんなに人気があるのか、不思議である。日本人的倫理観からすれば、道理を無視して己の無思慮な我意をごり押ししようとするなどまるで市井の破落戸のようであり、決して好ましい人物だとはいえないからである。
1月17日付毎日新聞社説から、そのあたりの詳細を抜粋して覚書とする。

大統領在任中に2度の弾劾訴追を受け、退任後には敗北した前回の大統領選の結果を覆そうとしたなどとして刑事訴追されている。
「不正選挙」だったという根拠を欠く主張を繰り返し、退任直前に起きた連邦議会議事堂襲撃事件の責任も問われた。
にもかかわらず、党内で絶大な支持を誇るのはなぜか。
トランプ氏が唱えるのは、反グローバル主義と「米国第一」主義だ。グローバル化によって衰退した製造業を復活させるという主張に多くの党員が賛同している。
輸入品に高関税を課し、減税を進め、移民を厳しく規制するという公約は、製造業を支えてきた労働者の不満を吸い上げている。
白人の危機感も要因だ。主流の白人の人口比率が低下するにつれて、党内には多様性に反発する動きが広がっている。・・・・
とはいえ、減税や移民規制、白人重視は、従来の共和党の立場と大きく変わらない。異なるのは、トランプ氏の政治姿勢だ。
起訴した検察官をののしり、大統領に復帰すれば捜査機関を動員して政敵を放逐する姿勢を示す。報復に固執する独裁者のようだ。
憂慮されるのは、こうした姿勢が党内であまり問題視されていないことだ。米メディアによると、有罪になっても大統領として適任だと大半の支持者は考えている。
※・・・・グローバル化というのは、地球の自然環境の移りゆきと同じように、人類によっても止めようがない不可避な地球生命の移りゆきである。水に塩を投げ入れればやがて均一な塩水になる。今さらトランプ氏が反グローバルと叫んでも、その場限りでであって焼け石に水なのである。
 同じく18日付毎日新聞「余禄」
 4年に1度の米大統領選の指名争いが始まると、注目を浴びる英単語がアイオワ州で行われる「コ―カス(党員集会)」である。米国生まれの言葉であることは確かなようだが、由来は諸説あり、はっきりしない。
 「不思議の国のアリス」の第三章は「コ―カスレースとロングテール」。堂々巡りで決着のつかない競争の話だ。テールは同じ発音の尾と話の掛けことば。英文学者の河合祥一郎さんは「党大会と長い尾話」と訳している。
 英作家のルイス・キャロルが新大陸で生まれた政治現象を皮肉ったという説もあり、米メディアもその関係をよく取り上げる。アリスは誰もが勝者というレースで全員に賞品を贈る羽目になった。だが現実は勝者が明確だ。共和党のアイオワ州党員集会はトランプ前大統領が過半数の得票で完勝した。
 「もしトランプ氏が再び大統領になったら・・・・・・」。今年の世界の10代リスクの1位に米国の政治的分断を挙げた米調査会社の報告書は「南北戦争以来経験したことのないような憲法上の危機が発生する可能性がある」と指摘する。国際社会も備えが必要だ。ウクライナやパレスチナ、台湾などに対する米国の政策が一変するかもしれない。同盟国への対応もそうだ。逆にトランプ氏自身の変化に期待する声はほとんど聞こえてこない。
 「ただのトランプじゃないの!」
 「この者の首をはねよ」と命じた女王に言い返したところでアリスは夢から覚めた。しかし「もしトラ」は現実的なリスクである。

 ※・・・・だがしかし、そのリスクの面に現われる恐怖は、少なからず潜在している。仮にトランプ氏が消えたとしても、今後第二・第三のトランプが現れるリスクが際限なく続く。その方がより怖い。

2024.1.17(水曜日)日記
「日本経済、カオス化浄化か」
本日付け毎日新聞 11面オピニオン 論点 「2024年にのぞんで」と題して、同志社大名誉教授 浜 矩子氏のインタビュー記事が掲載されていた。今年の日本経済動向についての意見を歯に衣を着せずに述べている。以下、その部分部分の語録を拾う。

政策というのは本来、民間の経済がおかしくなって自己治癒できない時に、その治癒をするための「外付け装置」として存在します。今の日本はその逆で、政策が病の原因になっています。
―24年の日本経済をどう見ますか。
マイナス金利政策の解除など金融政策が正常化に向かい、物価が落ち着き、賃金が上昇するといった歯車がうまく回り始めるかどうかが当面の注目点です。ただ、果たして、うまく回るでしょうか。最悪のシナリオは、金融政策が正常化に向かわず、再び円安が進む環境になり、物価が上昇し、企業の生産コストが上がって、賃上げどころではなくなるーといった展開です。こうなる恐れは十分あります。
24年の日本経済を一言で言えば「カオスか浄化か」でしょう。どうしようもない混沌に陥って日本沈没に向かうか、自己浄化作用が働いて、ゆがみが解消され、すっきりした場所に着地できるか。その瀬戸際になるでしょう。
―マイナス金利政策が解除される可能性はどう見ますか。
日銀の植田和夫総裁は、今の異様な状態から本気でもがいて抜けだそうとしており、その状況作りを一生懸命やろうという雰囲気は見えます。解除に向けた一定の可能性はあるでしょう。
―自民党安倍派が政治資金問題で政権から一掃されました。金融政策への影響はあるでしょうか。
私が「アホノミクス」と呼ぶ経済政策の大将だった安倍元首相は、日銀を「政府の子会社のようなもの」と公言してはばかりませんでした。中央銀行の独立性を踏みにじり、金融と財政を一体運営してすべてを管理しようとした強権発動の政権が安倍政権です。その流れを貫いてきたのが安倍派であり、この集団が政権の中枢からいなくなれば、政策修正が進みやすくなるなど、力学が少し変わるかもしれません。
―岸田政権の経済政策はどう評価しますか。
岸田文雄首相は「できの悪い宮大工」みたいなものだと思います。・・・・
防衛費の大幅増額に伴い増税するという一方、税収増による「還元減税」を行うというのは、もはや支離滅裂です。全体でどんな造形にしたいのかまったく分かりません。
岸田首相の政策のカオスは「マイナンバー」にも見えます。トラブル続出なのに「マイナ保険証」への移行は断行するといっています。別人の情報がひも付いていたトラブルがありましたが、それは「いないいないばあ」をしたら、知らない人の顔がでてくるようなもので恐怖です。
―孤立と分断は世界に何をもたらしますか。
「経済安全保障」という名の下に、それぞれが自国に立てこもり、他者を追い出そうとするでしょう。食料の争奪戦が激しくなる可能性があります。
今、世界には危機を止める存在がいません。本来なら、日本がその立場になってもいいはずです。平和憲法を持ち、食料自給率は低く一国だけでは生きられない国だからです。日本国憲法の前文では「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とうたっています。その精神に従って行動すべきなのに、それができていないのは残念です。
―希望の光はありませんか。
日本ではまだあまり知られていませんが、「ウォーク・キャピタリズム」という言葉が世界に広がりつつあることに注目しています。ウォークとは英語の「woke]で目覚めるという英語「wake」の過去形です。
つまりWoke Capetalismとは、「覚醒資本主義」「社会正義に目覚めた資本主義」を意味します。ひたすら収益ばかりを追求するのではなく、社会的責任を意識した資本主義を目指そうという動きです。「そんなのはまやかしだ」という批判もあります。しかし地球環境問題で明らかなように、今のままの資本主義で突き進めば、いずれ存続不能になることは明らかです。そうした危機意識が世界の経営者たちの中で芽生えつつあり、その動向を注視したいと思います。

2024.1.12(金曜日)日記
歴史的にそして今も、沖縄県は悲しい目にあっている。今般は、辺野古基地変更工事の事である。「たとえ言葉にはあってもそれをしてしまえばおしまいだ」ということを、政府はやらかした。地方自治体の行政権を踏みにじる「代執行」である。子供じみて、話にならないほどの横暴だ。仮に例えば東京都や神奈川県あたりへ、同様の事例があったとして、これほどまで疎意を以て行使できるのだろうか?
本日付け朝日新聞10面 社説記事を抜粋して覚書にする。

・・・・これだけの期間と費用をつぎこむことへの根本的な疑問は膨らむばかりだ。
 何より普天間の危険性を一刻も早く除去するという目的は果たせない(2030年以降工事完成)。軍事的な面からも完成後の辺野古の滑走路は約1800mと普天間の約2700mと比べて短く、山に囲まれて視界が遮られるなど地理的な制約がある。
加えて、普天間移設が合意された四半世紀以上前から、米軍の東アジア戦略は大きく変わっている。中国のミサイル能力の向上を受け、今の米軍は「分散化」「小型化」が基本戦略だ。その中でなぜ様々な問題を抱えた巨大な基地を新設する計画だけが「唯一の解決策」であり続けるのか。合理的な説明は乏しい。
今回、沖縄県に連絡があったのは、着工直前だったという。玉城デ二―知事が「極めて乱暴で粗雑な対応」と怒ったのは当然だ。

※・・・・政府には、こと沖縄県に関しては勝手な確執を腹蔵しているらしいと穿って視ざるを得ない。それとも何か裏があるのか?

同じく朝日川柳から 民主主義 辺野古に埋めて 国禿(ち)びる
「おうぼう」と 代執行にルビを振る

2024.1.12 (Friday) Diary Historically and even today, Okinawa Prefecture has faced a sad situation. This time, we are talking about Henoko base modification work. ``Even if the words are true, once you do it, it's over.'' The government has made a mistake. This is ``proxy execution'' that tramples on the administrative power of local governments. It's childish and insolent beyond words. Even if there were similar cases in Tokyo and Kanagawa prefectures, for example, would it be possible to exercise this kind of neglect?
Extract the editorial article from today's Asahi Nespaper page 10 and make it into a memorandum.

.The fundamental doubts about investing this much time and money are only growing. Above all, the goal of eliminating the dangers of Futenma as soon as possible cannot be achieved (construction will be completed after 2030). From a military standpoint, Henoko's runway after completion will be approximately 1,800 meters, which is shorter than Futenma's approximately 2,700 meters, and there are geographic constraints such as being surrounded by mountains and obstructing visibility. Additionally, the U.S. military's East Asia strategy has changed significantly since the Futenma relocation was agreed more than a quarter century ago. In response to China's improved missile capabilities, the current basic strategy of the US military is to ``decentralize'' and ``downsize.'' Why does the plan to build a huge new base with its various problems continue to be the ``only solution''? Rational explanations are scarce.
This time, Okinawa Prefecture was contacted just before construction began. It is understandable that Governor Deni Tamagi was angry, calling it an ``extremely violent and crude response.''

*...I can't help but think that the government seems to be harboring a selfish feud regarding Okinawa Prefecture. Or is there something behind it.

2024.1.9(火曜日)日記
「自民党池田佳隆衆院議員、7日政治資金規正法違反容疑で逮捕」
8日付毎日新聞 風知草コラム 特別編集委員山田孝男 「政策活動費の研究」から、覚え書きとして抜粋。

派閥から、説明のつかぬカネ、4800万円を受け取った。政策活動費だと言えばセーフだと派閥ぐるみで信じたフシがある。
この感覚を生む法律の基盤は「政治資金規正法21条の二ノ2」である。問題の根はそこにある。
規正法21条の二は、政治家個人に対する寄付を「何人も、してはならない」と定めている。ただし、抜け穴がある。すぐ後の二の2に「前項の規定は、政党がする寄付については、適用しない」とある。
つまり政治資金は、いったん政党に寄付する形を取れば、その先、幹部(主に幹事長)が個々の政治家にどう配ってもよい。

※・・・・政治家という人種は、執りあつかう政治の事より、如何にカネを集められるかに傾注する人たちなのかと、うがってしまう。一般の会社で、ある社員が、業務そのものよりもその業務に伴う経費を如何に多くを得られるかに傾注するようなものだ。世の中なべて、特に特筆すべきことでないかも知れない。

2024.1.6(土曜日)日記
人工知能(AI)の加速度的な進歩には目を瞠るものがある。特に米オープンAI社のサム・アルトマンの開発したチャットGPTが世上に現れて巷間関心が高まり、その影響は政産学各界に広がっているのが実情である。
まさか、自分の世に、ここまでAIが日の目を見るとは思わなかった。映画「2001年宇宙の旅」では、宇宙船運行を統合管理する「ハル」というAIが人間に反抗するシーンがあった。そういうSFじみた荒唐無稽なことは起こり得ないと思っていた。機械が自我を獲得するなど在り得るはずがないのだ。
1月4日付け毎日新聞3面「質問なるほドリ」欄に、その辺の解説が載っていたので、記録する。以下抜粋。

・・・・チャットGPTなどの生成AIは、人間のような文章や画像などを作れますが、大量の学習データに基づいて、もっともらしい生成物を作っているだけです。一方、自ら考えて動作する、より人間に近いAIを開発する動きもあります。これを汎用AIと呼びます。
どんなAIか?
状況を自ら把握し、それに応じて判断し目的を定める「自律性」を持つため、たとえ事前に学んでいなくても、あらゆる事態への対応が可能だと考えられています。実現には、人間の脳や感情を模したモデルや、自律性を学ぶ機械の身体が必要だと考える研究者もおり、ドラえもんやターミネーターに例える人もいます。
SFみたいだが。
現行のAIよりはるかに賢くなり、応用が期待されます。一方で、人間の指示に反したり、制御できずに暴走したりする懸念も指摘されています。例えば、汎用AIに「地球環境を守って」と指示したら、環境を破壊している人間を排除しようとするかもしれません。
どうしたら暴走を防げるのか?
よく分かっていません。チャットGPTでは、悪用につながる回答をしないよう制限をかけていますが。特殊な質問によって制限が突破される事態が報告されています。このままAI開発が進めば「人類絶滅のリスクにつながる」と主張する研究者も多く、暴走を防ぐ研究や、使う側のルールを議論する必要があります。

※・・・・想像を逞しくすれば、もし知的生命の住む惑星があったとして、その星を支配しているのは元の生命体ではなく、自我に目覚めたAIかもしれない。

  2023.12.30(土曜日)日記
本日毎日新聞朝刊 1面「余禄」におもしろい一文があったので、覚え書きとして抜粋する。
山田太一さんの、中学生の頃のエピソードである。太宰治作「斜陽」を「しゃとう」と読んで、他に譲らなかった少年であった。

この頑固な少年が国語教師に影響を受ける、仏思想家パスカルの「パンセ」を題材にした授業だった。有名な「考える葦」の断章である。―「宇宙は、なにも知らない。だから、人間の尊厳のすべては、考えることのなかにある」―教師はこれを解説しながら、「だから (for this reason」を「そうだとすれば(if that were the case.)」に置き換えるべきだと教えた。
重要なのは訳の正誤ではなく思考の仕方にある。「だから」は前提をすべて正しいと考え、結論をストレートに導く。この思考法では、居丈高になりがちだ。一方、「そうだとすれば」と留保を付けた場合、他の可能性にも思いを巡らせるため、主張するにしてもソフトになる。
昨今、世の中は「だから」の全盛だ。「ハマスは、テロリスト。だから」「ウクライナ政府はネオナチ。だから」「中国は台湾に侵攻する。だから」。前提を疑わずに自説が展開されるため、社会はぎすぎすしがちだ。
「そうだとすれば」と考えるだけで、「バカいうな」にはならない。完全に正しい前提など多くはない。山田太一さんはその後、「しゃとう」的思い込みを自戒し、「決して威張らない」と誓った。今年も残すところあと僅か。来年こそ「そうだとすれば」が多用されますように。

※・・・・目から鱗が落ちました。原典は、実は英語の「I felt like tha scales fell flom eyes.」でした。「しゃとう」的思い込み執着は、己のこれまでの来し方にもずいぶん在ったように思う。これからは・・・・と自戒するにしても、今さら・・・・という齢になってしまったのが、どうにも悲しい。

2023.12.26(火曜日)日記
今夜、スマフォを覗いていたならば、すばらしい言葉に出会った。それは英語で表記されていた。おそらくは、英語以外ではその真意と妙は伝わらないだろうと思わせた。日本語を最優先させ、世界一表現の妙を顕わす言語として露疑いもしなかった日本人の自分である。しかし、今日は参った。
「You are never too old to set another gool or to dream a new dream.」
強いて日本語に訳するとするなら
「新たな人生の目標を設定したり、改めて己の新しい夢を追い求めるのに、年を経て老いているなどは、まったく謂れもないことだ」
日本語に訳すと説明ったらしく、言葉の真髄がまやかされて真に伝わってこない。言葉の核たる魂は、著した本人の母国語でしか表現できないと知った。水村美苗氏の「言葉の非対称性」というものを、今夜さりげなく諭告された。

2023.12.24(日曜日)日記
今まで熊に遭遇したことは一度だけある。19年前、当時は仕事の閑暇を見つけては東海自然歩道を東へ東へと、遠い東京の八王子の高尾山終点を目指して里山を歩き続けるという優雅?な日々を過ごしていた。秋10月22日、空青く澄みきった日だったが、夏の名残を想わせて少々暑かった。三重県の近鉄青山駅からバスに乗り上高尾バス停で下車、桜峠からメナード青山ゴルフ場、布引峠と順調に歩を進めたが、次の大原橋という国道165との出合いまで来ると、辺りは工事中らしく樹々は伐採されて裸の土がむき出しになっている。自然歩道の道標は見当たらない。おそらく工事の都合で除かれたのだろう。探ってみたがそれらしき里道は見当たらなかった。東方向への林道が方向も同じなので辿ってみた。道は谷へと下っていく。尾根道のはずなので、まちがった道だと分かった。地図を観ると尾根へ上がる小径がある。分かりやすい分岐はしばらく歩いて見つかった。胸突き八丁の急な林道だがしかたない。喘ぎながら上っていくと、視界の上方に、山には似つかわしくない黒点があるのを何気なく気付かされた。上っていくと、黒い軽自動車らしいと観測できた。しかし上りがきついので、気に掛ける余裕はない。一歩づつ上がるのに、当方は全力を集中していた。かなり上りつめ急坂も緩くなった頃、軽自動車の在ったのをあらためて思い出し、こんな山奥になぜと訝しくも覚えたが、しかし位置が変わっているような気がした。よほど近づくと、黒い物体が咆えて立ち上がり、あわてて下へと走り逃げていった。走りながらも咆え続けていた。立ち上がった時に見えた白い月の輪が、この時ようやくそれと納得できたのだった。思えば、熊の方では自分のぶら下げた地図ケースの鈴の音には早くから気づいていたのだろう。結果的に危うく難を逃れたのだったが、その時にはそれほど大事には思わず、単なる山の風物の一つのように受け留め、むしろ珍しいものを見たという愉快な気分さえあった。
今年の春あたりから熊被害のにニュースが聞かれるようになって、山里は騒々しくなった。我が住む箕面の近辺山でも、熊出没の情報が聞こえ、私にしても近場の山歩きをひかえている。近頃の熊は、人を襲うとか言われているので、出合いを避けるに如くはない。
朝日新聞12月22日付 11面オピニオン&フォーラム欄に「人間とクマの共生」という論説が載っていた。筆者は石名坂 豪(いしなざか つよし)野生動物被害対策クリニック北海道代表 以下抜粋を記録する。

ハンターとしてヒグマ対策に携わってきました。世界的にもヒグマの高密度な生息地である北海道・知床では、早くからクマと人間の「境界線」を引く努力をしてきました。
・・・1985年を最後に知床で死亡事故は起きていません。
90年代からは、人への警戒心を学習させるため、ゴム弾やスプレー、DNAがとれる麻酔針などを使った「追い払い」もしてきました。13から18年に個体識別をして、いつ、どこに出没し、何度追い払ったかなどの記録をとりました。残念ながら多くのクマは3〜4年後、問題個体になって捕殺されました。
3年かけて80回ほど追い払いを続けたクマが、釣り人が置いていたおにぎりを食べてしまい、駆除したときには悔しい涙がでました。100回以上追い払いをしたものの駆除せざるを得なかった「顔なじみ」のクマもいます。
・・・殺気のこもる銃によってではなく、追い払いで警戒心を持たせるのは難しいことを感じます。
・・・長年現場において感じるのは、やはりクマ管理においては、防除と普及、啓発、そして駆除も同時並行で進めなければならないということです。境界線を押し返すためにも、銃による捕殺体制の整備は必要です。
根本的に、人と野生動物はすみ分けが必要です。真の意味での「共存」は、野生動物が人に対する警戒心を持っていて、きちんと境界線が保たれていることではないでしょうか。

※・・・世の中には、クマが可愛いとか可哀そうだとかと感じたり唱えたりする人たちも少なからずおられるだろう。或いは幼い頃の童話の影響なのか、或いは人と野生動物たちとの意志の通じ合いを信じる神話的世界に染められているからなのか。例えば、ムカデやゴキブリ・蛇などとの意思の通じ合いを本気で期待する人は万に一人もいないだろう。クマとて同様に越えられない本能の隔絶がある。たとえ、訓練して芸を教え込もうとも、本質的にはクマである限りクマたる本来の野生本能を失わず核として内に保存している。現実は童話に非ず、常に非情を含有しているが故に現実である。19年前の遭遇を愉快とはゆめ思えなくなった昨今である。

2023.12.22(金曜日)日記
 一昨日の毎日新聞に遡る。シルバー人材の清掃の仕事が二日間続き、記録に残すのが億劫になったのだ。
 季節はようやく本来の気象を顕わして、ここ三日の急な寒気にたじろいでいる。衣服の用意もままならない。が、この凛とした寒気は自分を活性化させてくれる。冬山の厳しさと楽しさと甘酸っぱいやさしさを彷彿とさせてくれるからである。

 12月20付毎日新聞朝刊から。2面、水説コラム 元村 有希子 「原子力の持続不可能性」から抜粋。
 先週閉幕した地球温暖化対策の国際会議「COP28」では、「脱・化石燃料」達成に向けた代替エネルギーの一つとして、原子力が初めて成果文書に盛り込まれた。
 日本原子力産業協会は「クリーンエネルギーとしての原子力の最大限活用を訴求する」と歓迎した。対して、温暖化問題に取り組む環境団体は「原子力は気候危機対策を妨げる」と批判した。
 私は後者の意見に賛同する。・・・
 「安全性が高まる」という触れ込みの次世代原発は開発の途上にあり、普及は見通せない。そんな状況で利点ばかりを強調するのは牽強付会というべきだろう。
 稼働すれば生じる「核のゴミ」の問題も未解決である。近づけば死に至るような放射能を帯びており、厳重に管理しながら10万年以上保管することが求められる。処分場を確保できているのは、この地球上でフィンランドだけだ。
 在野の科学者として脱原発を訴えた高木仁三郎さんが書き残している。「現代科学技術の多くは、人々に便宜を与えるものではあっても、安全や心のやすらぎを保障するものではなく、破壊や不安の源泉であり続けている。核技術はその典型である」(「市民科学者として生きる」岩波新書)
 問われているのは「地球沸騰化」を自ら招いた現実を見据え、これまでとは本質的に異なる道を探る姿勢だ。
 危機に便乗するように原子力への依存を強めるやり方は、賢明ではない。持続可能性と言う思想に逆らい、新たなリスクを背負い込み、過ちを繰り返すことにならないか。

 ※…「本質的に異なる道を探る・・・」要は、この地球上で、人類の営みによる増えすぎたエネルギー需要に対して供給が破綻しつつある現実である。「増えすぎたエネルギー需要」とは、単に人口増加による数量的な原因ももちろんあるけれど、問題はその中身ではないかと考える。個人が必要とするエネルギー(インフラも含めて生命活動に必要とされるすべて)と世界人口との積が、すなわち必要とされる世界のエネルギー総量である。その数字を計数された試みやデータはあるのだろうか。おそらくは、現実のエネルギー需要総量よりは、はるかに少ないのではないか。個人個人の費消エネルギーには相当の余分(ムダ)があるように思えてならない。それはズバリ、人間の奥底にある「欲望」が、需要を膨張させているからにほかならない。より大きなる「欲望(エネルギー消費)」を発散するために、より大きなエネルギを費やして営利活動を行い富を得ようとするので、相乗効果となって循環的・指数的に消費エネルギーは増加していく。
 この事の改善は、畢竟人類個々人の課題でもある。もしも改善されれば、再生エネルギーをもって賄っていけるのでないかとは、はかない希望であろうか。(みなわ記)

2023.12.17(月曜日)日記
 ここ二三日急に寒くなり、昨日プールへ行って少しばかり(800m)泳いだら鼻の具合が悪くなりしきりと鼻水が出るようになったので、今日は一日TVを観たりして過ごしてみたが、なお身体じたいが不調である。連れ合いは大阪市内の姉の看病(認知症)のため出かけた。
 関西万博はどうなることやら、開催決行へと各界は事を進めているようであるが、少々心配である。本日の毎日新聞に仏ルモンド紙東京特派員フィリップ・メスシール氏の論説が載っていたので、以下抜粋を覚書に残す。

 こうした巨大イベント推進派の人たちは、万博や五輪が国の評判を高め、経済に良いと擁護する。しかし、経済と観光の専門家であるジョン・クロンプトンは「ほとんどの経済効果の調査は、経済の実態を調べるというより、政治的立場を正当化するために委託される」と指摘する。地元での支出や観光客の数といった項目を意図的に増やすために、投資が投資を呼ぶといった波及効果の「乗数効果」が用いられるという。だが、五輪や万博の来場者は会場でお金を使っても、地元住民が暮らす地域で積極的に使うわけではない。そうした現実は忘れられている。或る場所がもうかれば、別の場所はその機会を失うのだ。
 そして予期しない出来事が起これば、当局がそれをカバーするために、公の側の借金が増えることにもなる。民間企業は責任を取らず、利益を得ていく。
 東京五輪では、建設大手やイベント会社、広告大手だけが利益を得たと言っても過言ではない。余計な費用は納税者によって賄われた。五輪開催後、大いに使われているとは言い難い国立競技場(東京都新宿区)は、金を吸い込む箱と化している。民営化された後も、維持管理費として公費負担が続く可能性がある。つまり税金が投入され続ける。
 大阪万博は、日本の納税者に同じリスクをもたらそうとしている。万博開催の理念がつかみづらく、「成功」が確信し難い巨大イベントによって、また税金があがってしまうかもしれない。その恐れが目の前にある。(訳・五十嵐朋子)

 ※・・・24年開催予定「パリ五輪」のフランス人にして、自国開催における先立っての危惧を関西万博の現状に照らし合わせて、診ているのである。かの国では、特にセキュリティー問題は、混沌として、世界情勢を背景に複雑さを増す。ウクライナ戦争、パレスチナ戦争と、今、世界はきな臭い状況下にあり、開催時関西に飛び火してくるかもしれない状況を考慮する必要もある。
 国外の人の憂いに対し、あるいは意志をくみ取りよって策を講じ、あるいは実意を探るなど、考慮に値するの可否は今さら問うにおよばない。

2023.12.17 (Monday) Diary It's been getting cold for three days now, and yesterday I went to the pool and swam a little (800m) and my nose got sick and my nose started to runny, so I spent the day watching TV today. However, I still feel physically unwell. My companion went to Osaka to take care of my older sister (who has dementia). I'm a little worried about what will happen to the Kansai Expo, although it seems that various industries are making progress toward holding the event. Today's Mainichi Shimbun featured an editorial by Philippe Messir, a Tokyo correspondent for France's Le Monde, and I am leaving the following excerpt in my memorandum.
Those who promote these mega-events defend the World's Fair and the Olympics by saying that they enhance a country's reputation and are good for the economy. However, economics and tourism expert John Crompton points out that "most economic impact studies are commissioned to justify political positions rather than to examine economic reality." The ``multiplier effect,'' the ripple effect of investment attracting investment, is used to intentionally increase items such as local spending and the number of tourists. However, even though visitors to the Olympics and World Expo spend their money at the venues, they do not actively spend it in the areas where local residents live. That reality has been forgotten. When one place makes money, another loses the opportunity. And if an unexpected event occurs, the public's debt will increase in order for the authorities to cover it. Private companies take profits without taking responsibility. It is no exaggeration to say that only major construction companies, event companies, and advertising companies benefited from the Tokyo Olympics. The extra costs were covered by taxpayers. Since hosting the Olympics, the National Stadium (Shinjuku Ward, Tokyo), which has not been much used, has turned into a money-sucking box. Even after privatization, there is a possibility that public funds will continue to be paid for maintenance and management costs. In other words, taxes continue to be added. The Osaka Expo is about to pose the same risk to Japanese taxpayers. It is difficult to understand the philosophy behind hosting the Expo, and taxes may rise again due to a huge event whose success is difficult to be certain of. That fear is right in front of us. (Translated by Tomoko Igarashi)

*As a Frenchman who is hosting the Paris Olympics scheduled to be held in 2024, I am comparing my concerns about hosting the Olympics in my country to the current situation at the Kansai Expo. Ithescountries, security issues in particular become in my contry creasingly complex against the backdrop of the chaotic and global situation.At my japan too dangerous situation with the war in Ukraine and the war in Palestine, and it is also necessary to consider the situation that could spread to Kansai when the event is held. It's too late to ask whether it's worth considering whether it's worth taking measures to address the concerns of people overseas, trying to figure out their will, or finding out their true intentions.

2023.12.14(木曜日)日記
 12月14日毎日新聞朝刊 社説―裏金疑惑と岸田首相「これでは国政任せられぬ」
 辛辣に岸田政治をこきおろした社説である。以下、その言葉の断片を拾ってみる。
・「だが、党による徹底調査には踏み込まず、「当局に対して丁寧に説明する」と語った。(首相は)説明を尽くすべきは国民に対してのはずだ。
・目についたのは首相の危機対応のお粗末さだ。松野氏は政府の情報発信役として機能不全に陥ったが、続投させた。
・政治資金規正法違反(不記載、虚偽記載)の疑いで刑事告発を受けたのは、安倍派を含む5派閥だ。
・今回明らかになったのは派閥に依存する岸田政権の脆弱性だ。
・1988年に発覚したリクルート事件などでは、派閥が金権腐敗の温床と批判された。これを受けて、89年の「政治改革大綱」で総裁、幹事長ら党幹部や閣僚らは「在任中、派閥を離脱する」と申し合わせた。
 しかし、今や空文化している。岸田氏は首相就任後も2年にわたり、岸田派会長に居座り続けた。自らの権力基盤として、領袖の座にこだわり、現政権は各派の幹部を要職にとり込んでバランスを取る派閥頼みの権力構造だ。
以上
この騒動、どういう形(解散・総選挙も含めて)で幕を引くのか、予想がつかない。それにしても、昔から腐臭絶えない党ではある。

   同じく14日付け朝日新聞朝刊 1面 折々のことば から
 「道化ほど完全な人間役が他にあろうかとつくづく思う」 ヨネヤマ ママコ
 「人間生態の可笑しさ、悲しさ、あほらしさを黙々と表現すること」は、切なくも楽しい仕事だったと、パントマイマーはふり返る。仕事も愛も思うようにならず、ボロボロになって知ったのは「自分が自分の支配者でないこと」だったと。その後ろにある「日常の動作の中の沈黙の深さ」に身を寄せることこそ、道化の業なのか。半生記{砂漠にコスモスは咲かない}から。
 ※・・・人の世の哀感がじーんとつたわってくる。
2023.12.14 (Thursday) Diary
Mainichi Newspapers edition, December 14th Editorial - Suspicion of slush funds and Prime Minister Kishida: ``He cannot be left in charge of national affairs'' This is an editorial that harshly criticizes Kishida's politics. Below are some snippets of those words.
・However, he did not step into a thorough investigation by the party, instead saying, ``We will provide a thorough explanation to the authorities.'' (The prime minister) should give an explanation to the people.
・What caught my eye was the Prime Minister's poor handling of the crisis. Mr. Matsuno's role as a government information provider became dysfunctional, but he was allowed to continue in his role.
・Five factions, including the Abe faction, have been criminally prosecuted for violating the Political Funds Control Act (non-statement, false statement).
・What has become clear this time is the weakness of the Kishida administration, which relies on factions. - In cases such as the Recruit Incident that was discovered in 1988, factions were criticized as hotbeds of financial corruption. In response to this, in the ``Political Reform Outline'' of 1989, the president, secretary-general, other senior party officials, and cabinet ministers agreed to ``leave the faction while in office.'' However, it is now empty culture. Kishida continued to serve as chairman of the Kishida faction for two years after becoming prime minister. He is fixated on the leadership position as his own power base, and the current government has a factional-based power structure that maintains balance by holding executives from each faction in important positions.
that's all It is difficult to predict how this uproar will end (including dissolution and general elections).
Even so, it has been a party that has been rotten for a long time.
  Also from the Asahi Newspapers edition, page 1, dated 14th, occasional words. “I really wonder if there is any other human role as perfect as a clown.” Yoneyama Mamako
Looking back, pantomimer say that ``silently expressing the funny, sad, and ridiculous aspects of human ecology'' was a sad yet enjoyable job. He didn't find work or love as he expected, and when he was devastated, he realized that ``I was not in control of myself.'' Is it the act of clowning to take refuge in the ``depth of silence in everyday actions'' that lies behind it? From the semi-life story {Cosmos do not bloom in the desert}.
*..You can clearly the sadness of human world.

2023.12.12(火曜日)日記
 4日前であったと記憶している。午後、夕餉のおかずを買いに出掛けようとする時、たまたまラジオから「パッフェルベルのカノン」曲が流れだしたのである。少々興を起こされた。窓辺を見れば、習字が吊るしてある。「訪ふ人は初雪をこそ分け来しか 路とぢてけりみ山辺の里」西行、とある。自分が書いたものであるにせよ、自分から隔たった一書の言葉であるように見えて来て、自分の在らなくなった時には、独立した一書として、在りし頃なんの輝きも無かった自分の代わりに光彩を放つような気がした。妙なメランコリーに陥ったものだ。とは言え、墨字の出来はたいしたものでない。
外へ出ると、秋の気色はきりきりしている。空は穏やかに澄み風が流れ草木が則にしたがった。人が冬格好を装って歩いている。路面はわずかに湿りを帯びて人の足音に迎合し、鈍色を光らせる。
それらの景色や風物は、どれもこれもすべからく自分にとってはある境界を隔たった対象の一景なのだった。もう少し突っ込んでみれば、世界と我が存在とはひとつに融けあってはおらず、わが身は世界から画然と突き放されている孤独の意識なのだった。ちょうど、薄い透明の膜の向こうで立体の映像が流れていくのを、暗然と観るような心持である。
秋の景物を眺めながら歩いていると、そんな思いこみがふわりと過ぎった。どちらに存在の確かさが在るかといえば、もちろん「世界」の方に分があるのは否むべくもない。としても強がりでなく、孤独感に苛まれはしない。世界との疎通には、間の空隙を埋める「言葉」がある。懸け橋たる言葉が、世界と自我との両者を、統べているのを信じるのだった。それこそが、自分の存在だったと、この時うなづけた。

  「日本語が亡びる時」という過激なタイトルの本は、水村美苗という世界的に名の通ったと言われる女流作家が著した評論である。小林秀雄賞をとったという、たいそうな言葉の論客らしい。たまたま古本の文庫版を見つけたので購って読んだ。確かに読みごたえがあった。例えば以下に抜粋すると

西洋と非西洋のあいだにある非対称性はこれからもずっと存在し続ける。それはあたりまえです。でも、今、その非対称性に、それと同じぐらい根本的な、もう一つ新たな非対称性が重なるようになったのです。英語の世界と非・英語の世界とのあいだに在る非対称性です。・・・
それは、一度この非対称性を意識してしまえば、我々は、「言葉」にかんして、常に思考するのを強いられる運命にあるということにほかなりません。そして、「言葉」にかんして、常に思考するのを強いられる者のみが、「真実」は一つではないということ、すなわち、この世には英語でもって理解できる「真実」、英語で構築された「真実」のほかにも、「真実」というものがありうることーそれを知るのを、常に強いられるのです。もちろん英語で書く作家にも言葉にかんして思考する作家はいるでしょう。でもかれらは、わたしたちのように常に思考するのを強いられる運命にはない。

 ほかならぬ、「書き言葉」とは「話し言葉」を書き表したものだという前提である。
 それは、「書き言葉」の本質を見誤っているだけではない。それは、先ずは、人類の歴史そのものを無視したものである。
等々

一度読み通したが、読み終えて2週間ほどたってまた読み返している。この女流作家、子どもの頃から成人になるまで、アメリカで生活されたという。日本語で書かれた文章は、それほどお上手でない。また韻を踏む書き方は、相当に漢籍や古文などを勉強されたらしいとうかがえるが、やはり全体にぎこちなく、随所に引っかかりがある。だとしても、考えを訴える熱情はそれらの技量を、瑣末という名におしこめて凌駕するほどの作文力を顕わしており、かえって文章の流れに緊張感をもたらし、読者にして好ましい印象を醸し出している。
 私一人が不明だったのか、この水村美苗という女流作家の名を今まで知らなかった。世の中は広く深い、という感慨の秋のひと日です。

2023.12.01(水曜日)日記
「自ら絵を描いた米中安定の構図が崩れる中、”井戸を掘った人“が世を去るのは歴史の皮肉か」一世紀を生きたヘンリー・キッシンジャー氏の逝去に触れた本日毎日新聞朝刊「余禄」の一文である。
たぐいまれなる知能と行動力を持って世界平和の要に跳梁したマキュアベリストたる異才は、この狭間にこそ生きる場所を見出していたのか。謹んでご冥福を祈る。
同じく、世界の平和を、処を変えて訴える人物が、今も静かな問いかけをする。以下は同朝刊の「金言」コラムに載った一文の覚書。
「引退を撤回した理由」小倉孝保
フィンランドを代表する映画監督、アキ・カウリスマキさん(66)が引退を表明したのは6年前だ。シリア難民を描いた「希望のかなた」を撮った後、「疲れた。自分の人生を生きたい。アディオスだよ」と述べた。
それを撤回し、撮ったのが「枯葉」だった。昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻を目にし、いても立っても居られなかった。「無意味でバカげた犯罪である戦争の全てに嫌気がさし、人類に未来をもたらすかもしれないテーマを」選んだ。
新作は直接、戦争を非難しない。描かれたのは「愛を求める心、連帯、希望、そして他人や自然といった全ての生きるものと死んだものへの敬意」である。
派手なシーンはない。時折控えめに笑いが挿入される。労働者である男女は互いに愛情を抱きながらも、その表現はおでこやほおに口づけする程度だ。スマートフォンを持たず、インターネットも使わない。
穏やかな時間の中、ラジオから流れる戦禍がその異常さをあぶり出す。「日常」を通して戦争が描かれている。
戦いでは政治指導者や軍幹部が、勇猛な言葉を口にする。戦車やミサイル弾の爆音が響く。
病院では学校が破壊され、市民の怒号がとどろく。食料や水を奪い合い、遺体を前に泣き叫ぶ。
フィンランドは歴史的に周辺国の脅威にさらされてきた。第二次世界大戦では旧ソ連に領土を奪われ、理不尽な賠償金を科された。
ウクライナが侵攻されたことで中立主義を捨て、今年4月には北大西洋条約機構(NATO)に加盟した。監督にとってロシアは現実の脅威だった。
日々の生活を守り通すことが反戦である。カウリスマキさんは制作にあたり、3人の監督に敬意を表した。ロベール・ブレッソン、チャールズ・チャップリン、小津安二郎である。
ブレッソンは第二次大戦で独軍の捕虜となり、小津は日中戦争に従軍した。チャップリンはヒトラーの独裁政治を批判する映画を撮っている。戦争と縁浅からぬ3人だった。
「枯葉」は12月15日から全国ロードショー。世界で争いが続く今、「日常」の意味を問う81分である。
※・・・観たいとは思うが、小生はずいぶんと映画館には足が遠のいている。なにより不特定多数のおおぜいの中へ分け入るのが、億劫である。また、その時間を捻出するのが、今の平穏な生活空間を乱すようで、意を決し難い。

2023.11.22(水曜日)日記
明日の23日木曜日は神戸市と大阪市で、阪神・オリックスの優勝パレードがある。繰り出した人並みでさぞごったがえすだろう。やはり、自分も嬉しい気分がおのずと湧いてくる。しかし、明日はお仕事、夜のTVでそのハレの興奮を共有したいと思う。
 今朝の毎日新聞社説 関西ダブルVパレード 「政治宣伝」の場ではない と疑念の論評が記されている。以下抜粋
 日本シリーズも59年ぶりの関西勢対決となり、地元に活気をもたらした。快挙を祝うファンや住民の気持ちは自然なものだが、行政の関与の在り方などを巡り、疑問の声が出ている。・・・
 首をかしげざるをえないのは、実行委員会が名称に「優勝記念パレード〜2025年大阪・関西万博500日前!」とうたい、万博の宣伝にも使っていることだ。
 吉村知事が代表を務める大阪維新の会は、万博開催を主導してきた。だが、費用の上振れやパビリオン建設の遅れなど問題が次々と発生している。共同通信が今月行った世論調査では、7割近くが万博を「不要」と回答した。
 そんな中、本来無関係の優勝チームの選手に旗振り役を求めるのは、スポーツの政治利用ではないか。野球ファンからは「便乗アピールは祝勝気分に水を差す」との批判も出ている。
 感動を呼ぶスポーツイベントの力を使って、都合の悪い問題を覆い隠し、世論の注意をそらす「スポーツウオッシング」は、厳に慎まなければならない。
 行政が前面に出るのではなく、喜びを分かち合いたいファンと選手の純粋な思いに応えるパレードにすべきだ。

2023.11.21(火曜日)日記
 関西万博には、わたしは関心が薄い。維新の会が蠢動して無理押ししていたようだが、世間は覚めているように見え、身近の巷にはいっこう話題が挙がっていない。先の50年余前の千里万博では、外国の人々がおおぜい訪れ輝くような異文化の息吹にふれるような気がして、20代初めの私は胸がわくわくしたものだった。そこには、日本の成長を象徴するような気概と夢が充溢していた。今日、冷戦が解けて世界に平和が訪れると期待したのもつかの間、中東とロシアにおいてまた冷酷な戦争が起こっている。こんな時期に、万博は何をテーマとして標榜できるのだろうか。

11月20日付毎日新聞朝刊 コラム「風知草」特別編集委員山田 孝男 「万博中止すべきか」が載っていた。万博に対する世間の冷たい視線の内容を、具体的にあぶり出している。以下全文引用。
2025年4月開催の大阪・関西万博の延期、中止が取り沙汰されている。
資材高騰や人出不足で建設費が雪だるま式に膨れあがった。数カ国が撤退を表明、お先真っ暗という報道が後を絶たない。

万博の総本山はパリにある。博覧会国際事務局(BIE Bureau International des Expositions)である。大阪はBIE条約加盟170カ国の投票で選ばれた。中止なら日本が参加国に違約金を払う。各国合計で上限約350億円と協定で決まっている。
民間のパビリオンや、会場のシンボル・木製リングなど、着工済みのインフラについても補償が必要。だとしても建設予算2350億円(初めは1250億円だった)を使い切るよりは節約になる。
だが、カネで計れぬ義理もある。ちょうど5年前の18年11月23日、BIEの総会で日本はロシア、アゼルバイジャンと競い、開催権を得た。以後、各国に参加を働きかけてきた。
「海外パビリオン、着工ゼロ」「メキシコ、エストニアは撤退」という記事を読めば、万博が崩れ始めたように見えてくる。
その一方で、先週、大阪に149カ国・地域、6国際機関の代表が集まり「参加者会議」が開かれた。加えてスウェーデン、チリ、ジャマイカなど9カ国が新たに参加表明。最新の参加主体は160である。

5日付の共同通信世論調査によれば、万博は「必要だ」28.3%に対し「不要だ」は68.6%だった。10月半ばの毎日新聞の調査を見ると、「規模を縮小して、費用を削減すべきだ」が42%。他は「万博をやめるべきだ」が35%、現状で「やむを得ない」が15%。
是非やるべきだと考えている人は少ない。万博の目的が理解できず、共感が湧かないからだろう。
1970年、高度経済成長の頂点で開かれた大阪万博は戦後、最も成功した万博だった。入場者数6422万人は2010年、上海万博(7308万人)に抜かれるまで世界記録。「大阪の万博」ではなく、「日本の万博」だった。
70年万博のテーマは「人類の進歩と調和」。テーマ作成委員会に井深大、湯川秀樹、貝塚茂樹、大佛次郎らが名を連ねた。基本理念の筆者は桑原武夫。在野の誘致団体「万国博を考える会」には梅棹忠夫、小松左京、開高健、真鍋博、星新一らがいた。
万博誘致案は通産省(現経済相)の輸出振興部門から出た。通産官僚だった堺屋太一は「万博は興行」だと言った。丹下健三は「お祭り」だと言った。岡本太郎を補佐した小松左京はこう書き残している。
「神国日本でも、戦争犯罪国でもない、第三の日本評価の視点をはっきりさせたかった」(コマツ「やぶれかぶれの青春記 大阪万博奮闘記」
動く歩道やテレビ電話は70年万博で芽が出た。今回も新技術の可能性が強調されているが、小松が書いたような、骨太の問題意識が伝わってこない。
25年万博には交戦中の国々も出展する。パレスチナ代表は「パレスチナは死なず、を世界へ示したい」と語った(15日、ANNニュースチャンネル)
万博の議論は資材と労力の不足に偏っているが、不足は他にもある。戦争の時代に敢えて万博を開く意味は何か。日本人の魂を揺さぶる、迫力ある言葉が欠けている。

※・・・「迫力ある言葉」:いずれ方におかれても、「迫力ある言葉」を発しようにも、その「場」が無いのが、現状のありさま。烏合の影がしのびよらない清らな「場」が。
 
2023.11.19(火曜日)日記
愛知県の森敏夫君の細君が胃がんに冒され術後他器に転移ってしまい、この8月に逝去されたとの喪中便りが三日前に届いたので居たたまれなく、一昨日17日お悔みを送る。見知っている人の悲しみに触れることは、「齢の無常」を感じさせて、どうにも寂寥感がすごくてたまらない。
 思えば森君とは55年来の長く続いている知己である。20年前、僕が岐阜根尾村の能郷白山登山の折、麓の宿で森君・細君とお会いして歓談したことがある。その折の細君には饒舌で朗らかな印象があった。森君の悲嘆如何ばかりか、推して余りある。

 11月18日付毎日新聞朝刊 2面 土記 伊藤 智永 「ヤジと民主主義」の文面は、この時代にはこんな社会事件があったとの後年への記録性があり、覚書に残そうと思う。以下抜粋
 街頭演説中の安倍晋三首相に「アベやめろ」と叫んだ男性が、警察官たちに力ずくで聴衆から離された場所へ連れ出され、過剰警備じゃないかとニュースになったことがある。2019年参院選の、現場は札幌市。近くで女性も一人、同じ目に遭った。
 あれは何だったんだろうと気になっていた。というには、二人は「表現の自由の侵害で違法警備だった」と裁判に訴え、22年3月に札幌地裁で認められた。ところが、直後の7月に安倍氏が殺害され、右派メディアやネットが「警察が委縮し警備が手薄になったせいだ」と判決批判を始めたからだ。
 今年4月、岸田文雄首相襲撃事件が起き、批判は勢いづく。6月の控訴審判決で札幌高裁は、女性への警備は自由の侵害だったが、男性への警備は適法だったと訴えを退けた。まさか。
 北海道放送(HBC)が4年も追跡取材を続け、知られざる「排除」の実態を掘り下げていた。テレビ放映できなかった映像も加えた映画「ヤジと民主主義 劇場拡大版」が12月に公開される。メディア向けの試写を見た。
 男性は「言葉を届ける方法が他になかった」と語る。女性は目の前の光景に義憤を感じ「増税反対」と声を上げた。同じ日、市内各所で何人もの市民が同じように発声を制止されたという。年金不安を「ですます調」で訴える新聞紙大の厚紙を用意し、黙って掲げようとした年配女性たちも、警官につきまとわれ、できなかった。
 警察は何がしたいのか。思い出すのは17年の東京都議選である。安倍氏が秋葉原で「アベやめろ」のヤジと横断幕の一群に「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と声を張り上げた一件だ。
 12〜19年の7年間も首相秘書官だった大石吉彦氏は、19年参院選時の警察庁警備局長。組織的な支持か忖度があったのだろうか。開示された公文書が黒塗りのため真相は分からない。大石氏が、安倍氏襲撃時にSPを派遣していた警視総監だったのも因縁めく。
 重大な危害を企てる者は、分かりやすく声を上げたり標語を掲げたりなどしない。教室では先生の話を黙って聞けといわんばかりの会場整理に人手を割きすぎて、肝心の見えない悪意を阻止できない警備・公安とは何だろう。
 ※・・・政権と警察との間に潜む不気味な連係が、覗いたような怖さがある。昔観た映画「Z」(イブモンタン主演)を思い出す。(映画音楽も良い)

  2023.11.7(火曜日)日記
 11月7日付毎日新聞朝刊 2面 「火論」大治 朋子 “「人間の盾」の運命”
 イスラエル―ハマス戦闘を採りあげられている。多くの市民が密集する都市を盾(犠牲)にして、なぜハマスは、イスラエルに対し戦力の点で圧倒的に不利な状況下で執拗に戦っているのか。ガザ市民は自分たちの同朋であり彼らの犠牲を無視するのかと、自分の中にはハマスの非情さと執念に対する疑問があった。その疑問の答えが、このコラムに記されているようだ。以下抜粋。
・・・この違い(17年前のイスラエル・ハマス戦闘に対して)は何を意味するのか。
 イスラエルは、かってないほど「ハマスの破壊」を最優先に掲げているということだろう。
 イスラエルにとって攻撃への抵抗感、つまりハードルを高める要因があるとすれば、市民の被害や米国など国際社会からの批判や外圧だ。だがハードルを押し下げる要因がある。今回の戦闘でいえば報復を支持する国内の世論や政治状況、大規模な攻撃が未来のテロを抑止するという発想だ。
 結果的に、ガザ市民に対する被害回避へのモチベーションはかなり低下しているように見える。
 ハマスの政治部門幹部は先日、メディアの取材に、地下トンネルはハマスの戦闘員を守るものであり、ガザ市民を守るのは国連とイスラエルの責任だ、と述べたという。そんなハマスをいくら非難しても、いや破壊したところで別の勢力が生まれるだけだ。ハマスが言う通り、市民を守れるのはイスラエルであり、その自制を呼びかける国際社会だけだ。
 ※・・・ハマス幹部の述べたことの、真偽ははっきりしていないと思う。もしたとえ真実だとしても、それをもって「ハマス」を是とし、イスラエルを非とするのは、いささか短絡過ぎるのではないか。いずれにしろ、イスラエルにとっては困難な相手であり、宿命的に世界中の反ユダヤ勢力と「血」の戦いを続けざるを得ないのだ。また、人類の歴史が終焉するその時まで、この血の憎しみ合いは消えずに居残り続けるのか。
 「日本人とユダヤ人」イザヤ・ベンダサン著を、再読してみたい。

同じく11月7日付毎日新聞朝刊10面 オピニオン投書欄から。投稿者は東京都のアルバイト 佐藤 建氏(41歳)曰く「試される日本人の人権意識」少々意気に感じたので、全文を記録する。
 旧ジャニーズ事務所創業者による所属タレントへの性加害問題について、長年にわたり追及を避けてきた報道機関に対し、責任を問う声がある。その通りだと思う一方、それだけでいいのかという気もする。
 20年以上前この問題を最初に週刊誌が大きく取り上げた時、ぼくは高校生だったが、「こういう世界もあるんだ・・・」くらいにしか思わなかった。世間の感覚もそれに近かったのではないか。これが犯罪であり、子どもへの人権侵害だと認識できた日本人が、当時どれだけいたのか疑問だ。
 戦前、日本が中国大陸で戦線を拡大した時、戦争記事が量産され、新聞の発行部数が飛躍的に伸びたことは有名な話だが、もしマス(大衆)とメディアとの間にゆるやかな「共犯関係」があるならば、メディアが問題を報じない不作為も、それを無言で支持したのは僕たちの側であると考えられる。
 いま本当に試されているのは、日本人の人権意識そのものではないだろうか。
 ※・・・何より文章が簡潔であり気負いもなく、その主張には素直に頷けました。加えて、人権問題だけに限らず、社会全般の傾向についても危惧するところかと思う。

2023.11.1(火曜日)日記
 10月24日付毎日新聞朝刊 2面「火論」大治 朋子 “紛争を動かす「物語」に、ナラティブという最近頓にメディアに現れるようになった言葉が出てきたので、そのあたりの一部を抜粋して覚書にする。イスラエル―ハマス紛争を材として採りあげた論評から・・・
 病院の爆発事件でいえば、もともとパレスチナに共感を抱いている人はハマスの主張に大きな係数(a)をかけて重視する。一方、イスラエルに共感する人はハマスの主張には係数ゼロをかけて無視する。
 この「a」はナラティブ(物語、語り)とも考えられる。私たちは世の中の出来事を自分の中にすでにある物語と照らし合わせ、より親しみを覚えやすい見方を採用する。だからこそ「何が正しいか」ではなく「どちらの物語を信じたいか」が世の中を動かす。ナラティブは現実を見るレンズのようなものだ。曇りはないか、偏りがないか、私たちは常にそれを点検する謙虚さが求められる。それは紛争を読み解く力にもつながるものだと思う。
 ※・・・「ナラティブ」という言葉、一種の流行語のような印象があって、他のすっきり当てはまる日本語の言葉はないのだろうか。なんだか、軽佻な感じがしてならない。
 
2023.10.21日記
10月18日付毎日新聞朝刊 水説 元村 有希子 「子育てを罰する国」から抜粋。いささか過激なタイトルではある。以下
 きょうだいでの留守番も、おつかいも、子ども同士の公園遊びも「虐待」―。そう定めた埼玉県の条例改正案が撤回された。
 県内の首長や教育関係者、全国の親から異論が相次ぎ、反対署名は10万を超えたという。・・・
 この改正案は、子どもの世話は家庭の責任であるという前提に立っている。預ける場所がない、世話を頼める人がいなければ「非常識な親」とみなされる。
 親とて趣味や道楽で働くわけはない。ひとり親ならなおのことだ。子どもを育てながら安心して働ける環境が整わないのに自己責任に追い込むような状況は、「子育て罰」そのものだ。
 社会福祉学者の桜井啓太さんが提唱した概念で、「まるで子育てすること自体に罰をあたえるかのような政治、制度、社会慣行、人々の意識」を指す。罰という強い言葉は「窮しているのは誰か」とう問いを投げかける。・・・
 子育て中の女性ほど昇進コースから外されやすく、非正規や低賃金から抜け出せない。教育費の負担は容赦なく、親の収入で子の将来が決まると言われる。こんな世の中でも子育ては尊く楽しいものだと、若い人たちに理解してもらえるだろうか。
 30年近く前に取材した、ある女性起業家の体験。夫の暴力に耐えかね、4人の子を連れて逃げた。採用面接で「4人も子どもがいて働けるんですか」と聞かれ、「4人も居るから働くんです!」と即答したという。雇用での女性差別を禁じる法ができる前の話だが、今も内実はそれほど変わらない。
 ※・・・TVなどで観る元村女史は、理知的で世故に長けた大人としての印象が備わっていると見たのですが、この文面を見る限り、やはり内から湧きおこる公憤には突きうごかされたような内心の情を顕わされておられます。それはそれで人間らしく可愛いとさえ思えたりします。しかしまあ、世の中このような公の理不尽と無能は枚挙に暇がありません。でも、一々を 挙げて見ないことには、前には進まないのでしょう。子を育てる母親を称揚するという社会意通念意識こそ、少子化対策とは思うが。
   
 10月21日付毎日新聞朝刊 9面オピニオン 「まるでできの悪い優等生」 金田 秀穂(国語学者)から、かいつまんでノート。
 岸田首相のことである。「異次元の少子化対策」・・・国語教育(言葉の使い方)をもう一度中学校あたりから学び直しなさい、と教授は言うておる。定見がないので、他人(評価を得た人)のコピーをして良かれとポーズをとる首相。さんざっぱらの酷評はすごいが、まだ遠慮されている。
 まだ政治家として成熟していない。結局、そこに尽きるのではないのでしょうか・・・果たして、主意が何たるかお分かりなるぐらいなら、こんな杞憂もしなくて済むが。

2023.10.15日記
新聞やTVなどメディアから流された記事を額面通りに受け留め、今回のイスラム「ハマス奇襲攻撃」なども巷間「けしからん」と非難する情も道理ではあるが、「ちょっと待てよ」という引っ掛かりも実は他の世界各地須らくの紛争と同様に存しているようである。
 10月14日付毎日新聞朝刊 2面掲載のコラム「土記」(伊藤 智永)では、以下のことを言うている。記事抜粋
 米ハーバート大学のパレスチナに連帯する学生団体が、イスラム組織ハマスの攻撃は全面的にイスラエルに責任があるとの声明を出したら、30以上の学生団体が賛同した。・・・
 司法制度の非民主化を巡り世論が二分していた国内は、一転して挙国一致戦時内閣で結束。米国の支持も得て「戦争だ。ハマスを倒す」と宣言する立場を得た。次の展開を考えると、パレスチナ国家を認めず大イスラエル主義を強権的に進めてきたネタにエフ首相の思うつぼではないか。悪魔の戦略(こちらが油断していると見せかけて相手に先に攻撃させ、それを盾にして相手を殲滅させる戦略=日本軍の真珠湾攻撃に対する米国の策した罠が一例)はなかったのかどうか。
 まだ不明な点が多いが、挫折と分裂と停滞を重ねるパレスチナ解放運動の無力に比べ、好戦的軍事国家・イスラエルの歩みを知れば知るほど、米国の若者が疑心暗鬼に駆られるのは分かる気がする。
※・・・日本の若者(学生)は己の姿・格好を見せようとするが、かの国の若者は己の主義主張を顕わそうとする、一つの異文化現実として後にその可否を問うべきか。みなわ記
2023.10.6日記
10月6日付毎日新聞朝刊 2面 土記(コラム)伊藤 智永 「だからロシアと外交を」
 小渕恵三政権・野中広務官房長官の頃の話。官房長官との密約の上で社会党議員がひそかに北朝鮮へ行ったことがあった。裏外交である。以下抜粋
 後刻、議員に取材した。額は言わないが、官房長官から「餞別」が届いたと認めた。「聞かれればこうして話すんだから、やましいことは何もない。むしろ北朝鮮みたいな国とは、正規の外交ルートではできないことを議員外交が担う。国会で丁々発止やっていても、政府は時には野党のパイプも使って必死に情報を集め、交渉の糸口を作るもんだよ」・・・
 後年、野中氏に確かめると、「私の考えでやりました。非公式にいろいろ打診して反応も探らなきゃならん。外務省の言うことだけ聞いていたら、外交なんてできませんよ。官僚は保身第一だから。どうせ外務省からきた秘書官を通じて、何やっているか役所は全部知っとるしね」と答えた。・・・
 鈴木宗男参院議員(日本維新の会)のロシア訪問が「政府の渡航中止勧告を無視したスタンドプレー」と非難の的だ。現地メディアに「ロシアの勝利」と発言するなど言動は過激だが、外交で国論が一色に染まるより、このくらいの政治家がいた方がいい。
 これが実は官邸と気脈を通じているとしたら・・・。荒唐無稽な空想である。ただし、安倍晋三首相の日露交渉に鈴木氏は少なからず関与していた。北方領土2島返還論へ転換したのは岸田文雄氏が外相を辞めた後だから、ご存じないのだろう。一度、鈴木氏の話も聞いてみたら。

 ※・・・裏の現実が、外交にはつきものだということ、歴史上にはよくあるらしい。鈴木宗男氏は胡散臭いが、しかしそれぐらいの「アクの強さ」がなければ裏の世界には通じないのか知れない。物事は裏表両面を観なければ、と勉強になった今日の新聞記事である。

2023.9.30日記
9月30日付毎日新聞朝刊からの 覚書
2面 土記 伊藤 智永 「三度ウクライナ停戦論」から抜粋
 7月に松里公孝著「ウクライナ動乱―ソ連解体から露ウ戦争まで」が出た。複雑さと正面から格闘し、この戦争の来歴と行方を解き明かそうとした本である。・・・
この戦争を米露の地政学的対立とはみなさず、ソ連解体(1991年)の社会大変動がずっと続いていて、その最悪な一例と位置づける。・・・
 プーチン大統領の野望とは何だったのか。ゼレンスキー大統領とは何者か。ウクライナの内側から考え抜いた著者の結論は苦い。
 両国の関係は切れない。紛争解決、恒久平和が戦争を誘発する。一時しのぎの停戦を、ほころびをつくろいながら何十年でも持たせるしかない、と。

※・・・この世界を正邪に分けるのは、もともとナンセンスということか。現実は複雑にして厳しい。この本を購入したとしても、読み切るのに相当の時間と、少なからずの緊張が必要だろうと思うと、やはりためらう。

2023.9.28日記
9月27日付毎日新聞朝刊から、以下に覚書をする。
11面オピニオン・論点 「日本の反戦平和の現在地」と題して、有識者の二人が意見を提起しておられる。まずは、五野井 邦夫氏(高千穂大教授44歳)から抜粋。
 今の日本は、国民意識のレベルでは「戦えない」国である。ロシアによる侵略前の第7波世界価値調査(2017〜20年)で「国のために戦う」との答えは13.2%で世界最低水準だった。
 伝統的な共和制=国民主権の国家は、国は国民自身で守る、いざとなれば国民は国のために死ぬのが大原則だった。だが、日本は戦後、憲法で「平和国家」となった。その帰結の一つが、この調査結果だろう。この「厭戦感」の前では愛国心教育も焼け石に水だ。・・・

 「あいまいな日本」たることで、国内の反戦意識や反戦運動を日米同盟をより対等にすべく活用し、且つ中国を侵攻させない抑止力にも使い、国益を確保する。政府や保守派は、これくらいの戦略性としたたかさを持ってほしい。・・・五野井氏記

 ※・・・将棋は相手があって差すものです。相手の考えに則して、吾手を策さなければなりません。世界情勢は年々歳々・時々刻々意表を突いて変化をする。国益という黴臭い言葉を俎上に上げる若い五野井氏のマキュアベッリの薫陶を受けたような意見は意見として、記録には留められるとは思う。 みなわ記

 次に 加藤 直樹氏(ノンフィクション作家56歳)抜粋
 中国は確かに台湾への圧迫を強めている。しかし日米両政府が台湾に関心を持つのも大国としての安保上の関心からであって、民主主義尊重は名目だ。・・・
 (※・・・お歳を召しておられる分、現実をクールに突いておられると思う。みなわ)
 
 ・・・一足飛びに平和を実現する妙策はない。だが、「帝国の狭間」の平和こそを価値基準として、そこで育まれてきた脱植民地主義と民主主義を基盤に、東アジア地域に大国中心ではない平和をつくる。そんな夢へと一歩ずつ近づければと思っている。加藤氏記
 
 ※・・・現実的主義すぎて、なにやらかったるい。抜本的な平和は、やはり暗愚な人類には、無理であるのか、とあきらめるのもなんだかくやしい。ほんとに、くやしいご意見です。
 もう一つ、最も気になるのは、この欄の表題にもあった「平和」という概念です。いったい何なのですか、平和とは。一人分しかない食料を二人で分け合って、挙句二人は笑いあいながら餓死するのか、それとも他の一人を蹴落とし、われ独り食した挙句、傍らの餓死した人を観て、笑うのか、どちらが平和なのだろう。この欄のタイトル「日本の反戦平和の現在地」へは、すでにこの糾問は、突き入っている筈と思うのですが。 みなわ記

2023.9.23日記
森鴎外の随筆「夜なかに思った事」から
人は社会に立っていて盗坊はできない。盗坊と交際することも出来ない。併し人には盗坊をも実験したい情がある。そこで小説や何ぞで盗坊の事を書いて穴填(あなうめ)をする。人は社会に立って裸体は見られない。併し人には裸体が見たい情がある。そこで絵画や彫刻に裸体を作って穴填をする。社会で或る事を許さぬのが法律だ。文学芸術は社会で許さぬ事を遣る筈のものだから、法律が社会に対する定木を持って来て、文学芸術に当てて見るのは、大間違いだというのだ。
「亡くなった原稿」から
日本語には自家の紳士的地位のために、賤しむべき者に対しても使う敬語がある。
「サフラン」から
凧というものを揚げない、独楽というものを廻さない。隣家の子供との間に何等の心的接触も成り立たない。そこでいよいよ本に読み耽って、器に塵の附くように、いろいろの物の名が記憶に残る。そんな風で名を知って物を知らぬ片羽になった。大抵の物の名がそうである。植物の名もそうである。

9月23日毎日新聞朝刊 13面書評欄
「ある限界集落の記録(昭和二十年代の奥山に生きて)」小谷弘幸著(富山房企画)から、印象に残った文章
その日常―衣食住、祭り・行事、遊び、病気―の記憶がいとしげに辿られる。生業の軸は棚田の米作だが現金収入は少なく、ほとんど自給自足。野菜を作り、山菜や果物など自然の恵みを利用し、みそ・しょうゆはもちろん、砂糖や茶なども手作りだ。しょうゆを切らしたら白菜漬けの汁で代用したそうだ。
制約や労苦も多い日々の繰り返し。自己実現とか自己肯定とか、今風の価値観とは無縁だ。「自然との共生」とも違う。そうするしかないギリギリの毎日。しかし、住人の間の空気は達観であり、諦観ではなかったという。著者は家族の助け合いや旬の食を振り返り、「欠損より充実感のほうが多い気がする」
※・・・町に住む人が、ロマンと自然を求めて山奥の生活に憧れ、実際に移住した方々も多かろう。夢見て憧れることの、なんと贅沢なことよ。
苦労を後で想いおこせる人は、苦労は楽しみであった。苦労ばかりで生涯を送る人にとっては、苦労と苦労の間のわずかな間隙が、至高の幸福に価した。それだけで恵まれた人と同価値の幸せを生きていけた。   記 みなわ

2023.9.16日記
 良い加減辟易している、このいつまでも去りやらない暑さに。頭もだれて、考えることを拒否する。
 16年間すっかり絶えていた水泳を、身体の頓にだらしなくなった負い目もあって、この5月頃から始めた。当時から比べると、余程泳力が衰えており、得意としたクロールやバタフライは全く苦しく、わずかに背泳と平泳ぎに全盛時の勘を少しばかり取り戻したという有様。日曜日ごとにコーチの指導を仰ぐスクールに通っているが、昔の泳ぎはいったん破壊し、コーチの教えに副って新たに泳法を整えようとするが、果たして往年のように泳げるか、希望は儚い。
 買い置きしておいた森鴎外随筆の中古本をだれた頭で読み漁っている。よくもまあこれだけ難解な漢字を駆使できるものだと、あきれる。しかし、自分には胸に通じる部分があって、二は反意し八は首肯する。活字を介して向きあっていると、鴎外が身近になってきた。

  2023.9.8日記
ここ2ヶ月の間に、これはと思う記事や言葉を以下に挙げる。
7月11日付毎日新聞 2面 火論 大治 朋子 記 から
 「コレクティブ(集合的で支配的な)・ナラティブ」が紛争で姿を現しやすいと語った。テルアビブ大学名誉教授 ダニエル・バルタール
@  自己正当化
A  脅威の強調
B 敵の非人間化
C 自集団の美化
D 自集団の被害者化
E 愛国心の強調と犠牲の合理化
物語を拡散させるのは「ナラティブ・エージェント(代行者)としての政治家や各界のリーダー、メディアなど。
 ※・・・近頃、メディアという一職業集団の視線は、本来の有るべき方向とは異なる点へ向いているような気がしてならない。それは、一つを挙げれば自己完結の点というのだろうか。

   8月5日 同じく毎日新聞 余禄から
 「小人の過(あやま)つや、必ずかざる(飾る)(言い繕う)」
 「過ちて改めざる、これを過ちという」 
            論語

 9月8日 同じく毎日新聞 万能川柳から
 自転車に軽車両との自覚なし
 歌壇から七七削り万柳へ

2023.9.5日記
本著作の果たして公に発表できるのかは、ほとんど書き上げているのですがなにしろ我が一存でどうなるというものではなく、全く覚束ないのです。とりあえずは、序文だけでもと、ここに公表します。
 「光と夕顔」概要(序文)
 世界的にも有名な日本平安時代古典文学の珠玉「源氏物語」については、各国言語訳が少なからずあるのもさることながら、とりわけ日本における現代語訳も、明治から今日に至るまで、与謝野晶子、谷崎潤一郎をはじめとして、ベテラン作家諸氏による十作に余る著作があらわされ、百花繚乱たる様相を呈しています。それぞれ優れた文章力を駆使して「源氏物語」の「もののあはれ」の世界を披露されており、ある著作は重厚にして文学の粋を前面に著し、またある訳においては軽妙洒脱な調子を底流にかの物語世界を身近な親しみに著さんとされるなど、読んでいて興尽きない喜びをそれぞれにもたらしてくれます。
 しかしながら、訳本を目にする以前、わたしは「源氏物語」古典原文を、岩波古典文学大系や新潮古典集成などによって入念に読んでいましたので、原文の魅力に対する訳本のそれがどのようなものか、対比せざるを得ないのです。訳本も一編の独立した作品である以上原文から離れたそれなりの評価があってしかるべきなのでしょうが、それにしても私にはどうしても一片の不満がつきまといます。
 現代語訳たとえば文豪谷崎潤一郎氏の翻訳などを読みますと古典原文と乖離のあることが見えてきました。原作者の場合なら同時代同環境に生きたのですから内辺から観測した実地の表現になるのは当然ながら、今に生きる我々には時代を越えて俯瞰的にしか観測できないのであり、そこにはおのずと「遠慮」というものが、文章の行間に伏在してくるようです。いわば、原作者の後を恐る恐るつき従うような姿勢であり、「遠慮」というのはすなわち「盲従」あるいは「尊崇」にほかならない。大方の翻訳者それぞれに当てはまることですが、原作の文章の流れを逐一忠実に準えて(なぞらえて)おられ、如何?と首を傾げる不明な個所までも不明なままに訳されています。古典文学の中でも冒しがたいほどの至宝であり、作者紫式部をよほどに「尊崇」されているのでしょう。あて推量ではありますが、夜空の星になった紫式部にはけっして喜びはされますまい。
 たとえば谷崎潤一郎氏の「新々訳源氏物語」序文には「これは源氏物語の文学的翻訳であって講義ではなく、原文と対照して読むためのものではないのであるが、でもそのことは原文と懸け離れた自由奔放な意訳がしてあるとか、原作者の主観を無視して私のものにしてしまってあるとかいうような意味では決してなく、少なくとも、原文にある字句で訳文の方にそれに該当する部分がない、というようなことはないように、全くないというわけには行かぬが、なるたけそれを避けるようにしてあるので・・・」
と、予防線を張っておられるあたり、謙虚な姿勢がにじみ出ています。いったいに、情報伝達においては、その質は伝達の度ごとに必ず劣化していくものであり、最初の源情報を越えることはまったくありえないという宿命があります。既出の翻訳はそのあたりの轍を踏まえているのでしょう。
 不遜の誹りを顧みずあえて非礼の分を申し上げるなら、原文の「源氏物語」が生きて躍動する物語とするなら、既出の翻訳は固定化された「写し絵」でありそこに口上が添えられたいわば「紙芝居」と類似のものです。
 今回、「桐壺」「帚木」「空蝉」「夕顔」と源氏物語の再現を試みたのですが、眼目は「夕顔」巻の底知れない「あはれ」であり、未熟な光源氏の体験譚です。原作には、伊勢物語などからの引喩や、伏線、隠喩、比喩がいたるところにちりばめてあり、それはとりもなおさず解釈の多様性を含みもっているのだし、また紫式部にも、読者にして解釈の多様性の「ふくらみ」を、期待していたのではないかと推量されるのです。そのような原作者の意を汲むなら、ここは登場人物たちの発意に任せるしかないのではないか、人物たちに人間としての生命を吹き込み物語を現代に活性させても許されるのではないか、と原作者に寄り添う形をもって試みてみたのです。
 二つ目に意図したことは、物語舞台の時間的な立脚位置を確かならしめるという試みです。原作には、「平安の御代」という言葉は一字も出てまいりません。それは当然であって、紫式部は同時代(つまりは彼らの現代)の読者を対象として著されたのですから、「平安の御代」などとあえてあらたまる必要もないのでしょう。しかしながら時代を隔たった今日の我々には、物語の現実味を獲得する上において時代を特定する確かな根拠が欲しいのです。結局、独り物語内容に没入して切れ切れの背景から推し量るしかないのであり、それでは宙に浮いた甚だたよりない架空の時代としか見なされません。
 現代理論物理学に「量子力学の多世界解釈」という考えがあります。最初にアメリカのヒュー・エベレット三世が提唱したのですが「デコヒーレンスは波動関数を、いくつもの世界へと分裂させる、あるいは分岐させる」とあります。(デコヒーレンス=量子系の干渉性が環境との相互作用により失われる現象)
 菅原道真の悲劇を材として、そこに量子力学的な世界の分岐を想定してみました。そうすることによって、「源氏物語」の舞台も平安の世に並行的に継続されていたという時代設定の拠り所を明かされると計ったのでした。紫式部にしか認識し得なかった別の同時代的世界、それが「源氏物語」であるといたします。荒唐無稽の難、さりどころなく。

2023.8.16日記
暑い今夏である。昨日台風7号が来て去った。今年は百日紅の花がわずかにしか見られない。我が団地にも樹はそこそこあるが、みんな花をつけずに裸のままである。
 半月ほど前、酔った夜のちょっとしたことから、右足の坐骨神経を痛めた。当初は歩くにも支障をきたすほどであったが、今ようやく痛みもほとんどなくなり右足先にわずかの痺れが残っているぐらいになった。この歳になって、身体の不自由というものを改めて知った。
 源氏物語「夕顔」の再現に執りかかってもう一年になる。某出版社の応募締め切り10月末に間に合わせ、どうにかして活字にならないかと当てにならない高望みをする。この作は、自分ながらも「時流に適っていない」と思われるので、望みは限りなく薄い。

 異常気象と謂われて久しい。地球温暖化ばかりではなさそうなことも、メディアの情報に見かける。おそらくは、人類の力ではこの勢いは止められないだろう。進行の緩和ができれば、それで是とすべきか。不幸な人類である。古来、優れた宗教は、このこと来るを嘆いていたのか。

2023.6.25日記
一月以上の間を空けて、日記をご無沙汰した。この間何をしていたか、数学の問題に夢中になっていた。難問を解こうと考えることが、脳の喜びになっている。それは習慣になって、半ば麻薬中毒と大差ない。
 新聞ネタから、言葉をピックアップして採りあげる。
 6月9日付毎日朝刊 社説 混乱続くマイナカード「拙速排し立ち止まる時だ」抜粋
・・・人はミスを犯す。それをシステムで補うことはできても、万全とはいえない。マイナ保険証の登録遅れが確認された大阪守口市では、ミスを修正するプログラムを導入したものの、繰り返し発生するエラーに対応しきれず、結局人による確認が必要になった。・・・
 デジタル先進国のデンマークは、ITになじんだ若年層向けの行政手続きから施策を進め、段階的に国民の理解を得たという。日本は、きめ細かい配慮や戦略を欠いている。
6月14日付け毎日朝刊 「余禄」コラム抜粋
 AIとどう付き合っていくか。「大きな可能性もあれば、間違いなく大きな課題もある」。チャットGPTの開発企業トップの言葉は本音だろう。
 6月20日毎日朝刊 火論(ka-ron) 大治 朋子 「シェルター不要な生活」抜粋
 2024年に劇場公開予定のドキュメンタリー映画「沖縄、再び戦場へ」(仮題、三上智恵監督)のために撮影された映像の一部が「スピンオフ作品」(45分)として各地で上映されている。
 それは19年春、駐屯地開設のため陸上自衛隊が先島諸島の宮古島に到着するシーンから始まる。同年10月には、陸自ミサイル基地の弾薬庫建設が着工。住宅地からの距離はわずか200メートル。21年11月、ミサイルが搬入され、座り込む市民らが警察に排除された。
 自宅の近くに武器庫ができて喜ぶ人などいない。・・・
「ガマフヤー「(沖縄言葉で住民が逃げ込んだ自然洞窟ガマを掘る人という意味)代表の具志堅隆松さんがマイクを手に訴える。
 「持てる力の99%は戦争をさせないことに注いでください。シェルター(の議論)が先に来ていることがおかしいんですよ」・・・
 政治家は自らの交渉力、政治力の欠如を軍備増強で補おうとしていないか。私たちは再び沖縄を「捨て石」にしょうとしていないか。紛争回避の政治に全力を投じてほしい。
 6月22日毎日朝刊 「余禄」(日本の難民問題対応について)抜粋
 国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子さんは難民と経済移民を合わせた包括的対策を求めていた。「制度や法よりも前に、まずは人間を大事にしないといけない」。耳を傾けるべき言葉である。
 
 最近の話題について。
 週刊誌の取材記事で明らかになった某中年美人女優と有名料理人とのW不倫事件は発表されてから一月近くにもなろうとするのに、騒ぎは収まる気配がない。いろいろな知名人がそれぞれにコメントを表明するという有様。盛りは過ぎたとはいえ、この女優の持つ魅力の程をうかがわさせられる。
 ひとつの現象が見えてくる。例えば彼女は「リトマス試験紙」のような存在でないかと。恋多き彼女の誘惑に対し、対象の男性には「青か赤か」二通りの反応がある。おのれの立場を熟知し、将来の己の生きざまに対し確固たる生活設計の見通しを有し、リスクを見極める男性においては、「青」の反応を示し、それ以外の男性においては「赤」の反応であり、たやすく誘惑に堕ちてしまうだろう。光源氏ならいざ知らず、並の男性には、色香と将来生活を秤にかけるには、彼女の美貌をもってしても到底つり合わない。身の丈に従うべきなのだ。彼女と取り沙汰されている男性諸氏を観れば、あながち的外れでないような感がある。
 しかしながら、不遜ではあるが仮に自分がそのような状況に置かれたなら、残念ながら「青」の反応を示せるかどうか、はなはだ胡乱である。

2023.5.22日記
5月22日付毎日朝刊 2面 風知草 特別編集委員 山田孝男
「タイムの表題、こう変わった」から、抜粋覚え書き
 G7サミット直前の話題にこういうものがあった。
 岸田文雄首相が最新の米誌「タイム」アジア版(5月22日/29日号)の表紙を飾った。日本政府は「表題と中身に乖離がある」とニューヨークの編集部に掛け合い、電子版の記事の表題が変わった・・・。
 この逸話、取るに足らぬと見えて案外深い。
 4月28日夕、シンガポールから来た「タイム」の記者が永田町の首相公邸で30分間、岸田にインタビューした。岸田は13日付の同誌電子版で「世界で最も影響力のある100人」の一人に選ばれていた。
 サミットのホスト・岸田に焦点を当てた最新号の電子版が流れたのが日本時間5月10日午前10時ごろ(紙の「タイム」は東京で18日発売)。表紙は、上目遣いの、いかにも陰謀家ふうの岸田の肖像だった。・・・
 当初、冒頭に置かれた記事の表題はこうだった。Japan’s choice(日本の選択)-Kishida wants to abandon(放棄する) decades(10年=長年) of pacifism(平和主義)-and make his country a true military power
(岸田は長年の平和主義を捨て去り、日本を本物の軍事パワーへ変えようとしている)
 (元の)記事は、岸田が世界第3位の経済力に見合う軍事力を整え、日本を大国へ戻そうとしていると指摘しているが、平和主義を捨て去るとは書いていない(注:書かれていなかった)。表題と本文にズレがある。日本政府の働きかけで電子版の表題はこう変わった。
 Kishida is giving a once pacifist Japan a more assertive(断定的な) role on the global stage
(岸田は長年の平和主義だった日本に、国際舞台で、さらに積極的な役割を与えようとしている)
 修正前・後の表現の違いから何が見えるか。
 同盟国にして超軍事大国である米国の雑誌が、日本の軍備増強を前向きにとらえるとしても不思議ではない。ただ、日本政府は「平和主義を捨て去る」という表現を拒否した。
 非武装中立は国防軽視で非現実的―という考え方が定着したとはいえ、平和主義自体は、空前の敗戦を通じてあがなった崇高な国是だからである。・・・
 首相官邸には、5・15事件や2・26事件の犠牲者の幽霊がいる・・・。当今は目撃談を聞かないが、よく知られた話である。  広島に集まった国家指導者はウクライナ大統領を含め16人。平和を願う霊の声は届いたか。
 ※・・・「非武装中立は国防軽視で非現実的―」・・・こういう言葉が、公然と新聞紙上に載るようになった。第二次大戦が終わって未だ100年とは経ていない。時期尚早ということか?
 世界は、戦争による危機的状況を弄んでいる、一面にそう見える節もある。
 
2023.5.10.日記

量子力学"

この歳(後期高齢者の保険証を先日いただいた)になって、高校数学2Aの本を買って昨日から本格に勉強している。忘れていた公式などを思い起こしながら訥々と進めているが、元来未知のことを考え尽くすのが好きな性分なので、閑暇の時間の弄びとして結構楽しんでいる。
先日梅田の紀伊国屋書店で見つけた「量子力学の奥深くに隠されているもの」という本に啓発されたのが、発端である。その本はひととおり読んだのであるが、核心について理解できなかったのだ。何が理解できなかったのか、一つは「量子もつれ」という現象、更に一つは、この世界(宇宙)を律するのは「波動関数」であるという記述に対する懐疑がある。宇宙は、人間という生命の考えた数学における「波動関数」によって、一義的に支配されるのか、甚だ不審である。また「量子もつれ」にしても、人間の思念(波動関数)が光速を超えて瞬時に全宇宙に及ぶという、荒唐無稽さが受け入れられないのである。
或いは私は、無理解なままに、自分勝手に咀嚼しているだけかもしれない。本の提示しているのは、「思考の可能性の限界」を述べているだけかとも、考えられる。つまりは人間側に立った哲学的な領域に踏み込んだ提示か。 いづれせよ、波動関数・シュレディンガー方程式の理解を目標として、自分は数学のおさらいを一から始めた。

2023.5.3日記
チャットGPTについて、毎日朝刊に記事が掲載されていたので覚書にする。
5月3日付毎日朝刊 5面 チャットGPTとタイトル 「民主主義に試練」と題して。 国 立情報学研究所社会共有知研究センター長・教授 新井紀子(1962年生まれ。一橋大、米 イリノイ大大学院を経て、東京工業大学で博士(理学)取得。専門は数理論理学など。人工 知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」を主導。…)抜粋
  対話型AI(人工知能)「チャットGPT」が急速に普及しているが、その功罪を巡って世論は割れている。どう向きあえばよいのか、AIの専門家に聞いた。・・・
 チャットGPTは、高度な自然言語処理能力を持つ「大規模言語モデル」に大量のデータ を学習させることで、人間と見分けがつかないくらいスムーズに文章を作る。しかし出てき た結果が正しいとは限らない。膨大なデータから確率に基ずいて出てくるもので、意味を理 解して作られた文章ではない。追及しているのは「もっともらしさ」で、「正しさ」ではな い。
 正しい情報のみから学習すれば、チャットGPTが100%正しい答えを出せるようになる、 との誤解があるようだ。しかし、研究でAIは自然言語処理の過程でハルネーション(幻覚) を起こす可能性があることが分かっている。正しい情報だけから学習しても偽情報が出て くるのだ。チャットGPTの「答え」が確率と統計に基ずくものである限り、正しさについ ては今後も保証されることはない。
 チャットGPTの答えが間違っていても、それが分からないくらい正しく見えるので、理 解や分析する力(リテラシー)が不足していると(正しい)と思ってしまう。それで日常生 活に支障がなければ、チャットGPTに疑いを持たなくなる。そうなるとリテラシーの高い 人と低い人との間で分断が起こる。・・・
 ・・・実は、圧倒的多数の人々は思考の過程よりもタイムパフォーマンス(時間対効果) を重視し、即座に答えを得ることを欲している。チャットGPTはそのニーズに応えてい る。・・・
・・・自分がよく知らないことには使わない方がいい。高い安全性や信頼性、真実性が必要 なことには使ってはいけない。このまま多くの人がチャットGPTを自分の知らないことを 知るために使うと、世の中が混乱して、元通りにするためには膨大なコストがかかるかもし れない。よく考えて使ってほしい。
 ※・・・「民主主義の試練」というより、人の社会そのものに、結果の是非はどうあれ深刻な影響を及ぼすだろうことは間違いなさそうである。

2023.4.23日記
人口少子化問題についてのコラム記事、4月22付毎日朝刊 土記 伊藤 智永
「約束されている失敗」から抜粋
 始める前から失敗と無駄を警告されたようなものだろう。岸田文雄政権の少子化対策は、各種手当・給付の「異次元バラマキ」案を並べるが、国連人口基金(UNFPA)は19日発表した報告書で、そうした施策に効果は乏しいと指摘しているからだ。・・・
 同基金のカネム事務局長は言う。「出生率目標を設けるなど、権力者が女性の出産能力を道具として利用する危険性を歴史は警告しています。夫や義父母や国家といった家父長的社会構造により、女性の身体が押さえつけられてきた慣習に終止符を打つべきです」。家父長制の名残である戸籍制度の廃止は、「4月バカ」の冗談ではなく核心的な少子化対策だ。
 カネム氏は、問が誤っていたのだという。「問題は人口が多すぎるとか少なすぎるとかではありません。女性たちが何を望み、何を選ぶかなのです」。数字を操る政策を取らない方が自由度が広がり、遠回りなようでも経済や社会の活力を保てるとする。
 16日付朝刊で、ノンフィクション作家の河合香織さんが、「結婚と出産は結びつかなければならないのか」と問うた。輝く未婚の母はたくさんいる。
 ※・・・要するに、人間は須らく家畜や鶏と異なり、基本的生存・生活の権利と自由があるということだろう。今は将にそのあまりにも単純にして普遍的な真実(特に女性の)を謳いあげる秋なのだろうと思う。

 3面 万能川柳
 捏造と云うけど上司あんたでしょ 宇都宮 親マンブ
 あれだけの宣誓原稿なしで読み  呉 定 年 誤

    2023.4.22日記
チャットGPTというAI言語ソフトが、日本の政産学界にも反響を及ぼしていることに、いずれ起こるべくして起こったと冷静に受け止めざるを得ない。人間の文章作成能力というものは、作文する自分の身に照らしてみれば、つまるところ「語彙」(Vocabulary)の収集量如何に依存するところが大きいと思う。それが通り相場の世間だ。「難しき語句は使わず平易な文章こそ良し」、という意見も確かにあるが、今は昔か。AIはまたそれに加え、これまで世に出た膨大な書籍を、文章の目的に適うよう即座に検索し、センテンスを真似ることもできるから、もはや人間には太刀打ちできないように思える。一見して、そう考えられる。
 他人に用向きを伝える実務分(論文、報告書、演説草稿文等)では確かに頷けるが、しかし文学系における文章となると、問題はまた別の次元になる。AIにはいくら演算能力(ビット)を増大化(あくまで数量)させたところで、創造性は根本のところで不可能であると思う。素晴らしい「創造作」は、曖昧さといささかの誤謬と、それに人間の喜怒哀楽にまつわる気まぐれな遊び心が、ある時奇跡的に昇華・止揚して花開く産物であるからだ。正確な演算を本意とするAIには、曖昧さや誤謬はありえない。
 4月21日付毎日朝刊1面に、チャットGPT「産業革命」として、東大が見解 抜粋
 <人類はこの数カ月でもうすでにルビコン川を渡ってしまったのかもしれない>東大太田邦史副学長は言う。「AIの進歩は極めて速い。この半年、一年の間にかなりすごいレベルになると考えて、そのような表現になりました」

   4月21日付日本経済新聞朝刊から、気の付いた言葉
 AI Impact 「まほろ」ロボット理科科学研究所 新しい新薬開発にAIは欠かせなくなる状況。
 「アルファフォールド2」英ディープマイルドが開発
 「カスハラ」

 3面 万能川柳から
 人間がお手をしてると思う犬  武蔵野 竹とんぼ
 ぼっちゃんは同行したかなウクライナ 別府 タッポンZ
 ダニの数脅して使うテレショップ 横須賀 だ・ピンチ
 早苗氏に安倍政権の残滓見る  鳴門 かわやん
 廃屋の庭も春には桜咲く    周南 生涯乙女
 
2023.4.13日記
4月12日付毎日朝刊 水説 元村 由希子 「100年の大事業」抜粋
・・・「この木、元気がないでしょう。根本をコンクリートで固めているから」。並木の一本を心配そうに見あげるのは、東京大名誉教授で農学博士の石川幹子さん(74)。都市環境計画の専門家として、外苑の再開発に異を唱えてきた。
 亡くなった坂本龍一さんが、見直しを迫る手紙を小池百合子東京都知事に送ったことで注目を浴びたこの事業に、私も反対である。歴史と自然に敬意を払うこと、民主的なプロセスを尊重すること。こうした当たり前のことが、なおざりにされていると思うからだ。
 老朽化した神宮球場と秩父宮ラグビー場を壊し、場所を入れ替える形で建てる工事は、1000本単位の樹木の伐採・移植を伴う。
 もとは大正時代に国民から募った50種以上の献木だ。樹齢100年を超えるものも多い。それを「邪魔だ」といわんばかりに撤去するのは、傲慢ではないか。
 隣接する国立競技場を建てる際にも1000本以上が伐採された。オリンピックという国際的行事が優先された。
 事業者側は「再開発で緑地面積は増える」と説明するが、石川さんがこだわるのは「質」である。「移植するにしても、高木、低木、草花が家族のようにまとまっているのをばらばらにすれば生物多様性は失われる」と断言する。
 方々から不信と反対の声が上がる中、都は計画を認可し、解体工事が始まった。小池知事は「法にのっとっている」との立場だ。
 適法ならば問題はないのか。例えば一帯は日本初の風致地区だが、美観を守るための建築規制は再開発制度の巧妙な運用によって空文化し、超高層ビルが建つ。
 石川さんらが国立競技場の時から訴えてきた、住民参加型の協議の場も実現していない。「人々が100年間つないできた記憶や思いを一本一本の木が背負っている。利益主導のこの計画は、それらを継承する志に欠けている」  持続可能性と言う思想をこれほどまでに軽んじた進め方がまかり通ることに驚く。外苑は明治神宮の所有物である前に、世紀を超えて受け継ぐべき公共の財産だ。
 事業者には一流企業が名を連ねている。改めて聞きたい。この計画は、100年後の子や孫に胸を張れますか。
 ※・・・事は東京だけではなく、わが国総じて、このような「環境保存より利益主導」の風潮がくすぶってきたように思う。環境保全を前提とした事業計画は無理なのだろうか?それに、今の東京都知事にはたとえ東京都民から選ばれたにせよ、「不良性」という人物イメージが、どうしてもついてまわる。

 3面 万能川柳から
 この頃じゃ顔出すだけで拍手され  静岡 青柳 茂夫

2023.4.12日記
3月27日から昨日までの新聞から、注目する記事(主にコラム)を採りあげ、抜粋をメモした。
 次に4月1日付毎日朝刊から 2面 土記 伊藤智永 「戸籍、廃止します」
 ・・・「生政治」という考え方がある。昔の君主制は「従わなければ命はないぞ」と死への権利で人々を支配した。これに対し、近代以降の政治権力は、人口政策や公衆衛生・健康福祉行政を使い、人民の生そのものを管理・統制する形に変わった。この統治が単純でないのは、軍隊・学校・職場などで規律を施された市民は、「生権力」こそ自分たちを守ってくれる力と頼り、進んで従おうとする点だ。良し悪しはおき、この自発的に支配されたがる意志は、個人の自由や権利の意識に支えられる。
 日本の対策がつぎはぎのお仕着せに映るのは、子どもを産み育てるのは、自由な意志と選択なのだという気持ちを作り出せていないからだ。対策に成功している国と比べ、戸籍法に基づき婚姻届を出した夫婦による出生が98%と言う堅苦しさが、もはや現実と合っていない。ならば戸籍そのものをやめて、非婚カップルや事実婚など子どもを産み育てる多様な意欲を後押しする方がずっといい。
 戸籍を廃止して何か問題でもありますか。歴史的にも文化的にも戸籍廃止は十分可能です。
 ※・・・現在、戸籍制度の在る国は日本、中国、台湾だけです。個人の出生等来歴を目的とするのは、日本だけの制度であるといわれます。いずれにしろ、少子化対策としては、名案だと思う。加えれば、婚外子にも、嫡出子と同様の権利を付与していただきたい。

 4月8日同じく毎日新聞 土記 一週間後の続き 伊藤智永 「結婚のかたち」抜粋
 ・・・少子化対策は、結婚した男女を対象にさまざまな財政援助を打ち出すが、確かな効果は薄いというのが専門家の解説だ。18〜34歳の未婚男女の6人に1人は生涯結婚する気がなく、半数が子どもはいらないという。そもそも結婚する男女が減少し、過去30年間に結婚した男女の3組に1組は離婚している時代。就業と同じく結婚のあり方も流動化している。
 実はこれは日本人になじみのある生き方でもある。明治に戸籍制度が始まり、旧民放が制定されるまで、江戸時代の夫婦は共働きが当たり前、離婚率は今より高かった。元の日本の姿に戻ると思えばいい。向田ドラマに引かれる庶民感覚には、その歴史記憶が受け継がれているのかもしれない。
 「入籍」という誤った結婚観が社会を息苦しくしている。法的な結婚の形にとらわれずに子どもを持つ家族像が社会常識にならない限り、少子化対策は前提が細っていくばかりだ。
 ※・・・昔は(つい70年前?)までは、結婚と言うと家と家との縁組という考えがあったらしい。その名残が尾を引いて、男女の婚姻を堅苦しい制度にさせているかと思う。まさしく、社会の沈滞である。

 4月10日(月)毎日新聞 風知草 特別編集委員 山田孝男 「新トランプ劇場と民主主義」 最後の「結」を抜粋
 日本に米国を笑う資格はない。理想主義の過激化と保守側の暴言・失言は日本政界、言論界の風景でもある。新トランプ劇場に深く学び、民主主義を立て直さねばならない。
 ※…トランプ前大統領が起訴されたというニュースから引かれた記事。日本では「トランプも万事休す」と受け取る向きも多いが、アメリカの現実は検察の政治的意図が疑われ、逆にトランプが勢いづいているという「トランプ劇場」をネタにしたコラム。

 4月8日付毎日朝刊 3面 万能川柳から
 捏造をするほど暇と思えない  札幌 ヨーちゃん
 安倍さんとよく似た台詞高市さん  栃木 とちじーじ

2023.4.11日記
3月27日から昨日までの新聞から、注目する記事(主にコラム)を採りあげ、抜粋をメモした。
まずは3月27日付毎日朝刊 風知草 特別編集委員 山田孝男「由々しき日本の残留農薬」
 自民党が何かと敵視するTBSが、国産食品の残留農薬を問うドキュメンタリー映画を作った。
 映画だから放送法の対象外。安保や歴史ではないから<保守派>の介入はあるまいが、農薬メーカーの反発はあるだろう。
 日本の残留農薬の規制は欧州連合(EU)に比べてはるかに甘い。映画はそこを掘り下げる。<環境過激派>的な偏向はない。ちまたの疑問に答える常識的で公平な編集である。
 映画のタイトルは「サステナ・ファーム」。環境に優しい(susutaniable)な農園である。監督はTBSテレビ報道局の川上敬二郎ディレクター(49)。川上自らリポーター・語り手として出演している。
 主題は科学農薬、化学肥料、有機農薬。全編69分の相当部分が<ネオニコチノイド>系の農薬に費やされる。米、野菜、果物の生産で使われ、ミツバチ大量死や、トキ、コウノトリなど絶滅危惧種の生態系に悪影響を与える一因―と疑われている物質である。
 EUでは禁止・規制されたネオニコチノイド系農薬が、日本ではいまだに多用されているのはなぜか?
 カギを握るのは木村―黒田純子・環境脳神経科学情報センター副代表(医学博士)の論文である。
 2012年、この人は国際的な科学雑誌「プロスワン」に、ネオニコ系農薬が人を含む哺乳類の発達期の脳に悪影響を及ぼす可能性を示す論文を発表。EUが注目し、予防原則(完全な証明がなくても環境への影響に配慮して規制する考え方)にのっとって規制を強化。日本は見送った。
 農水省ホームページ 残留農薬基準値の国際比較表:ネオニコ系農薬の一つ、アセタミプリドの基準値の日・EUで単純に比較すれば、ブドウで日本はEUの10倍、茶葉で600倍になる。
 興味深いのはその先である。東京で初めて「サステナ・ファーム」が上映された今月18日、映画に出ている木村―黒田が終映後に登壇し、あいさつした。
 そこで木村―黒田は、国が農薬を再評価する際、農薬メーカーがつくる報告書と文献リストに依存している―と指摘。この分野で名を知られ、映画にも登場する星信彦神戸大教授の論文10篇のうち6篇が報告書から削られている―と具体的に明かした。
 木村―黒田の挨拶を聞いていた聴衆の中に奥原正明元農水事務次官(67)がいた。安倍政権の農協改革の中心人物である。次官時代の18年、農薬取締法を改正し、最新の科学的知見で農薬を再評価できるようにした。当然、木村―黒田の証言に驚いた。
 「由々しき問題だと思いました。制度を変えた意味がない。行政に自ら調べる意志がない。審議会、委員会の学者に資料を全部見てもらい、消費者も交え、リスクコミュニケーションをキチンとやらなきゃ」
 ※・・・このように、国民にとって不具合な危険でさえある埋もれた事実は、あとどれくらいあるのだろうか。差し当って、「防衛費増額」辺りに、なにかくすんでいそうだ。今回は、農薬メーカー・農生産者の利益を国民の健康よりも優先した「官」の偏向した姿勢が明るみになろうとしている。明治からこの方、「官」のこうした産尊民卑の行政は、連綿と続き、今もなお絶える気配がない。ほんとに、由々しきことである。
 歴史的に観て、欧米系とは異なり消極的で温順な日本の民衆は、為政者にして、最後的な死活に至らない限り団結して立ち上がる行動力がないとの、馴れ切った侮りがあるのではないか、と思う。

 次に4月1日付毎日朝刊から 2面 土記 伊藤智永 「戸籍、廃止します」
 ・・・「生政治」という考え方がある。昔の君主制は「従わなければ命はないぞ」と死への権利で人々を支配した。これに対し、近代以降の政治権力は、人口政策や公衆衛生・健康福祉行政を使い、人民の生そのものを管理・統制する形に変わった。この統治が単純でないのは、軍隊・学校・職場などで規律を施された市民は、「生権力」こそ自分たちを守ってくれる力と頼り、進んで従おうとする点だ。良し悪しはおき、この自発的に支配されたがる意志は、個人の自由や権利の意識に支えられる。
 日本の対策がつぎはぎのお仕着せに映るのは、子どもを産み育てるのは、自由な意志と選択なのだという気持ちを作り出せていないからだ。対策に成功している国と比べ、戸籍法に基づき婚姻届を出した夫婦による出生が98%と言う堅苦しさが、もはや現実と合っていない。ならば戸籍そのものをやめて、非婚カップルや事実婚など子どもを産み育てる多様な意欲を後押しする方がずっといい。
 戸籍を廃止して何か問題でもありますか。歴史的にも文化的にも戸籍廃止は十分可能です。
 ※・・・現在、戸籍制度の在る国は日本、中国、台湾だけです。個人の出生等来歴を目的とするのは、日本だけの制度であるといわれます。いずれにしろ、少子化対策としては、名案だと思う。加えれば、婚外子にも、嫡出子と同様の権利を付与していただきたい。

 本日はここまで。

2023.3.25日記
3月25日付毎日朝刊から
2面 金言 小倉 孝保 袴田さんと「後進国」抜粋覚え書き
 最後の結文から
 「先進国クラブ」とされる経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国で、死刑を執行しているのは日米両国だけだ。その米国は「超適正手続き」で徹底した制限を設けている。
 日本だけが死刑を他の刑罰と同様に扱い、かたくなに維持している。経済では先進国なのかもしれない。人権面ではどうか。日本は途上国ではない。明らかに後進国である。
 ※・・・隠れた発達不適正の方が、世に幅を利かせる社会、日本。その不適正の方を支持し応援する狭小なる野蛮人も、社会階層にあまねく存在しているという現実。我が身に「痛み」という試練を経てこなかった人たちだ。人の不幸を我が身に感情移入ができない人たちだ。
 日本社会の現実は、永遠に春の陽を観ないまま冷たい深淵へと沈潜し続けるのか。
 ※・・・死刑を求刑する検察官は、合法的な殺人を我が仕事に選んだ人だが、大方の人は、その役目を羨望している。

口直しに、万能川柳の抜粋覚え書き
 岸田さん教えて政治家になった訳  東京 伸ちゃん
 戦争は「自衛のため」と始まるよ  小田原 ようつう
3月22日付 万能川柳
 美人画と思い見てたらあら鏡    武蔵野 竹とんぼ

3月20日付 7面 毎日俳壇 抜粋
 白梅の朝日をはじく白さかな 東京 小栗 しづゑ
 孝行の真似も叶わず寒卵   越谷市 金田 あわ
 姉妹うぐひす餅の粉つけて  葛城市 八木 誠
 脇道の小暗き角の初音かな  川口市 高橋 さだ子
同日付 7面 毎日歌壇 抜粋
 この笑みであらゆる時代を照らしたか百済観音一人で居たり  福岡市 中原 晶子

2023.3.19日記
3月18日付毎日朝刊から、覚え書き
1面 余禄抜粋
 足尾鉱毒事件の追求で知られる明治期の政治家、田中正造は地方自治の先駆者でもあった。栃木県議のころから「自治精神の培養」を主張し民権運動に参加、帝国議会議員となった。
 鉱毒問題では、谷中村(当時)など被害に苦しむ人たちを守ろうと政府に抵抗した。1901(明治34)年、有名な明治天皇への直訴文は鉱毒による地方の窮状を「町村の自治全く頽廃せられ」と訴えている。谷中村は結局、遊水池として水没した。・・・
 田中は晩年に「日本人の気風は下より起こらず、上よりす。民権も官よりす(中略)。ああ、一種不思議の気風なり」と嘆いている。今はどうか。地域のあり方を決めていく主役は住民だ。その重みと向き合う場としたい。20回目の統一地方選である。
 ※・・・その昔、といっても120年前ちょっとであるが、このような気骨のある民寄りの政治家も居たという、伝説。今や、夢まぼろしか。
2面 土記 伊藤智永 「死者の奢り」再読 抜粋
 大江健三郎の文壇デビュー作「死者の奢り」(1957年)は、今読んでも古びていない。大学医学部の地下で、アルコール漬けの水槽にぎっしり浮かぶ解剖実習用の死体。アルバイト学生の男女2人が、それらを別の水槽に移す体験を書いた短編である。・・・
 「戦争について、どんなやつも俺ほどの説得力は持っていない」と、終戦前に脱走を試み射殺されたある兵士の死体。・・・
 戦争なんて知らない。怖いもの知らずの若い文学者たちがめざした脱戦後は、長すぎた模索の末にいま「新しい戦前」となって現れつつある。
 ※・・・薄暗い廊下の奥に「戦争」が立っていた、という不気味な畏怖が、今の日本には確かに在る。

3面 万能川柳  学者って名乗るタレント跋扈する 浦安 さやえんど
 少しずつ専守の影が薄くなる   箕面 ツ ト ム
 留守番を妻に頼まれもう3日   東京 ワイン鍋
 
2023.3.10日記
 毎日3月10日付から、覚え書き
2面 金言 小倉 孝保 「冷たいアフリカ」抜粋
 2国間外交では、軍事を柱とする現在の「力」が重要だ。一方、多国間の場合、その国が目指す世界の姿や哲学、経てきた歴史が影響する。外交は過去を踏まえ、現在、そして未来までを見据えた政治的なやりとりなのだ。
 欧州の「過去」がロシアの孤立化を難しくしている。戦争は2年目に入った。アフリカを植民地にした経験のない日本の外交力も問われてくる。
 ※・・・いわゆるグローバルサウスという国々も、今や国連や国際動向に、発言力と影響力をもつようになり、それをまたこの国々の一部は外交的な利器に使い始めたように思える。平均化という面に関して、好ましいと考える。 3面 万能川柳
 幕府ほど民を思ってない閣僚  福岡 龍川龍三

2023.3.9日記
 朝日朝刊3月9日付に刮目すべきコラムがあったので覚書とする。
11面 科学季評 人類はどこで間違えたのか「共感力と技術 賢い使い方」抜粋
 まず、「人類は進化の勝者」という考えが間違っていると、私は思う。・・・
 つまり、人類は進化の大半を「弱みを強みに変える」ことによって発展してきたのだ。・・・
 この時期に人間は、現世の苦しみはあの世で救済されるという考えを抱くようになった。これこそ、人類が長い進化の過程で発達させてきた共感力を、敵意を利用し拡大させる道を開いた。・・・
 産業革命はそれまで家畜の力に頼ってきた人間の暮らしを、人口の動力によって拡大することに成功した。しかし、同時に自然の時間を人口的な時間に変える役割を果たした。農村で季節の変化に従って生きてきた人々は、工場が立ち並ぶ都市に集められ、管理された時間に従って生産性や効率を高めることに精を出すようになったのだ。その結果、自然界にはない製品を作り出せるようになり、支配層だけではなく、一般の人々も過剰に物を欲するようになった。これが無限の経済成長を信じる思想を育て、海外へ進出して領土を広げ、自国にはない産物を略奪する行為を正当化した。大航海時代と植民地主義はこうして始まり、人々を生まれや外見で差別する考えは今でも根深い。・・・
・・・管理された時間から心身を開放し、自然の時間に沿った暮らしをデザインする。所有を減らし、シェアとコモンズ(共有財)を増やして共助の社会を目指すことが肝要だ。それは長い進化の歴史を通じて人類が追い求めてきた平等社会の原則だ。現代の科学技術はそれを可能にしてくれるはずである。間違いを認めず、徒に武力を強化して、再び戦争の道を歩むことだけは、決してあってはならない。
               記:1952年生まれ 京都大学前総長 山際 寿一 

2023.3.4日記
3月3日付毎日朝刊から
3面総合 記事「犠牲の裏に特需も」エルサレム 三木浩治 記
抜粋
 ウクライナ侵攻が多大な犠牲を生む一方で、各国の軍需産業にとって大きなビジネスチャンスになっているのは冷徹な事実だ。「(侵攻は)我々にとってはいい広報になった。これまでドローンに関心がなかった国も、今後、投資するようになるだろう」イスラエルの防衛企業「エルビット」で、ドローンの販売を担当するアミール・ベテシュ氏はそう言う。・・・
 ※・・・哀しい事実である。人類とは、ある意味、もっぱら「共食い」の生き物であったかと、想像してしまう。近代歴史がそれを物語る。

3月4日付の毎日朝刊 土記 伊藤 智水 「新しい戦前」抜粋
 「戦争が廊下の奥に立っていた」 1939年渡辺白泉の句
 「まさかそんなとだれもが思ふそんな日がたしかにあった戦争の前」永田和宏の短歌
 もう長いこと「戦争の終わり」が言われてきたが、思えばそれらは「総決算」や「脱却」といったにぎにぎしい号令だった。
 いま別の方角からひんやりした風を感じとる人たちがいる。風は見えない。鳴らない。においもない。それをどう表すか。白泉の句を手掛かりに考える。
 この「廊下」はどこか。例えば詩人の大岡信はこう読む。
 「わが家の薄暗い廊下の奥に、戦争がとつぜん立っていたという。ささやかな日常への凶悪な現実の侵入。その不安をブラック・ユーモア風にとらえ、言いとめた」(折々のうた)・・・
 「廊下」が場所とは限らない。空想的反戦リベラルと現実主義をかたる軍拡保守のいがみ合い。両側を閉ざされた政治の奥にも戦争は立っている。(専門編集委員)
 ※・・・いつの時代にも、政権側の為政者は、なぜ戦争志向へと顔を向けるのだろうか。
 
2023.3.2日記
3月2日付毎日朝刊から
10面 オピニオン記者の目 「ウクライナ侵攻1年」 ニューヨーク支局 隅 俊之
抜粋
 悲惨な戦争だ。ウクライナで領土が奪取され、罪なき人々が命を奪われ、原子力発電所が危機にさらされ、核兵器の使用さえ懸念される。それなのに、国連はこの戦争を止めることができない。拒否権という特権を持つロシアを前に、世界の平和と安全に責任を負う安全保障理事会は何ら手を打てないからだ。・・・
 この拒否権を定めた国連憲章を改正するには、少なくとも常任理事国の合意が得られなければ実現しない。昨秋の国連総会では安保理改革を求める声が相次ぎ、バイデン米大統領も前向きな姿勢をしめした。だが、安保理改革を推進する国の外交官でさえ「残念ながら、5大国は拒否権を手放すような改革には同意しない」と言う。私たちはいまも、78年前の呪縛の世界に生きている。
 ただ、国連の外交官にそんな悲嘆を漏らした時、こう言われた。「国連は何かを劇的に突破する解決策を生む場所ではない。むしろ、国際社会の今の姿を映し出す鏡みたいなものだと思う」。私たちがいがみ合っている時には国連は機能しない。その私たちの醜い姿を客観的に鏡に映しだし、私たちに思い知らせるのが国連ではないのかという皮肉な意見だった。
 ※・・・鏡に映し出された今の世界の姿は、正反対の虚像ではないのか。正対の実像を観ようとするなら、マジックミラーのような透る鏡でなくてはならぬ。その場合、視る側の人間の姿は、実像の相手には見えない。そんなマジックミラーのような、国際機関はユートピアに過ぎるのだろうか、無言の監視と制裁を行う、見えない影の国際連合体。難しいかな、人の良心は、やはり脆弱だから。

 確定申告をPCを使って行ったけれど、マイナポータル、e-Tax登録等入り口付近で二日を要し、申告書き込みに一日、次の日に送信となった。民間のアプリとは違い、案内が不備なのでまごつくことばかり、また国税庁から送られてきた結果メールは、なにかトラブルがあったらしく、パスワード等何度も確認したにも関わらず、ログイン不可で、中身は分からずじまい。凝り過ぎたシステムは、トラブルの元になる。どうも、お上のやることは、スマートではない、少し、民間の例を習ってはどうか。

2023.2.0日記
 源氏物語「夕顔」の、現代語訳をしている。既刊の訳本は多々あるようだけど、すべてに目を通したわけでもないのでこれと決めつけられないにしても、概ね、原書の古文を忠実に現代語に訳すことだけで事足れりとしているような書きぶりが見える。それでは紙芝居を観るのと変わりがなく、古典の入試問題そのものであって、なんの面白味も、人の情も、物語空間の広がりもなく、ましてや匂、息づかい、背景の因果律などを観ることは、さらさら望めない。
 そんな不満があって、自分なりに訳すことにした、というより半ばは創作に近く、さらに言えば、作者紫式部の意を汲もうとするための蘇えり物語でもあると、自負する。もうひとつ、森鴎外も夏目漱石も指摘したよう、必ずしも文体は冴えたものと言えず筋を追うあまりと思えるが、文章の稚拙さが随所に現れている。たとえば「屋架に屋を懸ける」式、つまり表現の重複が目立つ。そういうところを真に受けて正確に現代語に訳すとなると、かなり不自然な堅い文章にはなると、思う。
 言葉が、鍵であり、現代語にはこれという最適の語彙の見あたらない難しさがあって、語句ひとつに数日或いは週を超えての思案に没頭することもある。遅々として進まず、今ようやく前段階の「帚木」の準備を終えたところ。完成はいつか、今は覚束ない。

 昨日、十五年ぶりに水泳をした。というより、これから水泳練習にいそしむための水ならしといったところ。昔日の頃は、それなりに自信のあった水泳だったけど、昨日水に入るとまるで泳げなくて、歳月の間隙はかくも残酷と半ばはめげてしまう。とはいえ、これから週に2〜3回ほどは通おうと、プールのクラブには正式に入会をしてしまった。

 季節の天候は不安定な顔を見せる。一日晴れるかと看れば、にわかに暗雲の空を覆って、時雨模様となり、飽きたようにまた日差しが差す、今日は、山の箕面市クリーンセンターで、目の当たりにした。

2023.2.9日記
2月6日毎日朝刊 メモ
3面 大見出し 「大国」の過去 露執着 小見出し ソ連崩壊後30年の屈辱晴らす?
以下抜粋
「ロシアは西に向かう旅を終えた」。プーチン政権で長くウクライナ政策を担当したスルコフ大統領補佐官(当時)は2018年に発表した論文でそう唱えた。5年近くたった今、その指摘は意味深長に思える。
 一般的にロシアの歴史は、9世紀末から今のウクライナ首都キーウ(キエフ)を中心に繁栄したキエフ・ルーシ(キエフ公国)に端を発すると言われる。キエフ・ルーシは13世紀にモンゴルの侵攻によって滅ぼされ、それ以降、ロシアは15世紀まで「タタールのくびき」と称されるモンゴルの支配下に入る。
 やがてモンゴル支配から脱却したロシアはモンゴルの影響を社会に内在させつつ、東方シベリアへと領土を拡大、多民族国家ロシアの原型を築く。17世紀にはロマノフ朝が成立.帝政ロシアは欧化を進め欧州の一大強国に発展していった。1917年のロシア革命でロマノフ朝は滅ぼされ、ソ連が成立。91年のソ連崩壊後、現在のロシアに至る。
 スルコフ氏はロシアについて、13〜17世紀の「最初の400年間は東に向かい」、17〜21世紀の「次の400年間は西へ向かった」と指摘。17世紀以降を「欧州の一員」となるのを目指す過程と捉えた。そのうえで、ロシアによるウクライナ南部クリミアの併合(2014年)を、欧州の一員になろうとしたロシアの試みの終焉と結論づけた。・・・
・・・論文発表の4年後に起きたウクライナ侵攻は、欧州の一員になれないと悟ったロシアが、欧州に完全決別の意志を示した出来事といえるのだろうか。
 「ソ連という{帝国が}崩壊した流れから捉えると、より適切に理解できる」。そう言うのは、ロシア史の権威である英ケンブリッジ大のドミニク・リーベン名誉フェローだ。
 大英帝国やオスマン・トルコなどの帝国が解体すると、一定期間を経てから、かって帝国を構成していた国同士が衝突する事例が後を絶たないという。・・・
 「作られた国境」
 ソ連を構成していた共和国が独立すると、共和国同志の境界がそのまま国境に転じ、ロシア系住民が多いクリミヤやウクライナ東部は自動的にウクライナ領に組み込まれた。独立直後のロシアには不満が残ったが、政治や経済の混乱期で「作られた国境」に疑義を唱える力はなかった。
 その後に誕生したプーチン政権は安定を取り戻し、経済も回復させたことから、国境線を変えられる力を持ったと判断したというのだ。プーチン政権の中枢を占めるソ連時代の情報機関の構成員たちが「30年間、耐え忍んできた屈辱、後退、敗北の恨みを晴らすため、遅れてきた復讐に挑んだ」。リーベン氏はこのような見方を示す。
 ソ連を構成した共和国は15に上るが、キエフ・ルーシの発祥地であるウクライナはロシアが大国であり続けるために「欠くことの出来ない一部」との見方がロシア側には強い。ロシアとウクライナ間に「作られた国境」を修正しようと言うプーチン政権の意志もこういった復讐心に支えられているのかもしれない。
 ※・・・時代錯誤は将来を誤る、ロシア政権首脳は承知しているはずではなかったか。承知しながら侵攻を挙行したのは、他に何か理由があるのか?

 8面 毎日俳壇
 廃校のなかなかとけぬ庭の雪 川越市 石田浩二郎
 仮通夜の寒雷遠く幾度も   尼崎市 森下久美子
 いつよりといふこともなく枇杷の花 八街市 山本淑夫

 「事象の従僕として言葉は情報記号としての役を担うが、時として言葉は主人におさまって、事象を従えることも往々にして在り得る」みなわ 2010.1.2
イスラエルの理論物理学者ヤコブ・ベッケンシュタインは述べています。
「宇宙は、その境界表面に刻まれた情報に同型なホログラムである可能性が強い。つまり情報が基本で物質とエネルギーが幻影かも知れない可能性」

2023.2.4日記
 2月4日付け毎日朝刊 4面に「追跡」と銘打って、今、時の話題となっているBBC特派員ルーパート・ウィングフィールド・ヘイズ氏の著した「卒業論文」を採りあげて、紹介記事を載せている。題して「BBC特派員{卒論}大反響」以下、記事の抜粋・要約(特に興味を引いた文節のみ)
 小見出し 怒涛の反響だった。約10年の任期を終えた英公共放送BBCの東京特派員が書いた「卒業論文」に賛否両論が相次いだ。「日本は未来だった、しかし今では過去にとらわれている」。
 ・・・ここで、当該記事の大まかな内容を押さえておこう。日本経済は強力で、欧米に恐れられていたものの、80年代以後は低迷していると指摘。「変化に対する根強い抵抗と、過去への頑なな執着が、経済の前進を阻んできた。そして今や、人口の少子高齢化が進んでいる」と書いた。
 その上で、日本の官僚主義、社会の高齢男性中心主義と彼らの変化を嫌う傾向、自民党による長期支配と硬直化した政治、移民を排斥し家父長制を支持する保守派の動きにも言及。取材などを通じて自らの目に映った、「外の世界に疑心暗鬼で変化を恐れる日本」を描写している。
 ※・・・一面の真実をついている内容だと思う。概ねまちがってはいないけれど、皮相的な見方は否めない。日本の社会全般(ヒエラルキーの底辺も)に亘っての掘り下げが、まったく欠如している。日本は、この記事だけですべてではない、ということである。ケーキのイチゴやクリームを見ただけで、美味しさは、判別できない。
 芥川賞作家の平野啓一郎氏が、ツィートしているのが、紹介されている。曰く
 「ばかげた{日本スゴイ}にかまけてた間に、日本は衰退途上国(衰退先進国?)のサンプルとして、面白がられるようになってしまった。現実を直視できない国粋主義が跋扈してしまったばかりに」
 ※…作家というだけに、生の人間の気象が込められていて、それなりの文学性も見えるのですが、この場ではやはり個の人間ではなく、社会全般を見つめる冷静な識見が求められていると思う。
 一方で、批判も少なくない。米国ブロガーのノア・スミス氏は「実際、日本は大きく変わってきた」との記事をブログで公開。「日本が過去にとらわれている」との主張に反論を試みている。
 ツィッターでは「上から目線」「日本は相当に近代化されている」「{過去にとらわれている}というのは文化を守ろうとしているのだ」といった指摘も見られた。
 東京大学公共政策大学院の鈴木一人教授も批判的な立場をとる。記者の取材に対し、「日本を持ち上げつつ、最後は日本ダメだよねという落ちでまとめる典型的な西洋的な報道だと感じました」と手厳しい。
 少子高齢化や老人が力を持つ状況は「一面の真実ではあるが、「英国や欧州はどうなんだ、という自省が見られない。問題は指摘するがそこに至る過程の説明が不十分で残念」とも述べた。
 私見であるが、このルーパート氏、こうした話題を立ち上げて得意になっている顔が見える。所詮はこうした類の一人だと思う。
 
2023.2.3日記
1月31日朝日朝刊13面 オピニオンに「異次元緩和 費やした10年」と題して、前日銀総裁白川方明(しらかわ まさあき)氏の談話が載っていたので、現日銀総裁黒田東彦氏のその業績結果について、「如何なる腹蔵を持っていらっしゃるか」を探るべく読んでみた。
以下抜粋 
 …「日銀がお金の〈量〉を拡大しさえすれば物価が上がるという議論は、さすがに聞かれなくなりました。低成長の原因が物価下落に在るという見方も、消えつつあります。このことを学ぶのに、日本は20年を費やした。民主主義のコストかもしれませんが、日本の課題を〈デフレ〉というあいまいな言葉で設定したことのコストは、本当に大きかったと思います。
―金融緩和を修正する際の難しさは何か。
「将来を正確に予測できないこと、加えて金融緩和の継続を前提とした行動が深くビルトインされていることです。緩和の修正は何がしか混乱を招くことは不可避です。かといって、緩和を続けても経済を改善する力は乏しい。中央銀行は緩和すれば、その後に景気が無関係な要因で後退しても批判を受ける。それを恐れると、その面からも修正は遅れる。厄介な均衡状態です」
 ※・・・「このこと」を学ぶのに、日本は20年を費やした・・・」日銀の金融政策の誤りを、黒田東彦氏だけに押し付けず、前任者の自分白川にもあると、自省した説明に、ひとり自信たっぷりに構える現総裁に比べ、信頼できるものがあります。
 経済は独り歩きをする。ひとの欲と欲が絡まり運動しあって、誰の手にも負えない独自の動きを表す。したがって、経済という生き物を御すことは、誰の手にも不可能である。
三人いれば、一人は必ず他の二人を利してひとり欲得しようと図る、三人が三人とも同じく我一人笑おうと図れば、これは三体問題になって複雑さ極まる。歴史に視るこの種の駆け引きにおける「トラの巻」は、外見上の「力の誇示あるいは行使」だった。それは、今も変わらず引き継いでいる。
   
2023.1.23日記
 軍備増強だと、岸田内閣(だけでない)がオダをあげている。国防費の財源のための増税も俎上に上っているが、世論調査では68%が反対と、今日の毎日朝刊に載っていた。世間は頓にきな臭くなってきた。憲法第9条もなし崩しにされてしまうのか。
 1月18日付産経新聞朝刊に、気味わるい記事が載っていた。
 内閣国家安全保障戦略の冒頭
 「グローバリゼーションと相互依存のみによって国際社会の平和と発展は保証されない」
 有り体に言えば、国や地域を超えた地球的規模の社会・経済や互いの協調という人類文明の崇高な理念は、当てにできません、否定します、やはり”力“がなければ平和と発展は望めません、となる。内閣が本気に、公然と公表しているところが、怖い。背景には、ロシアによるウクライナ侵攻の国家的暴力や、北朝鮮の軍事的暴走、中国の世界を視野にした覇権主義等々が、あるようだ。軍備という力によって対抗しなければ、「やられる!」という強迫観念が政府をして迷走させたのか。とすれば、いかにも浅知恵というほかない。もっとも、たとえ軍備を各国並みに整えたとせよ、敗戦からこの方78年間も泰平の眠りに馴れたきた我が国は、心組からして戦に向かえる姿には程遠い。
 軍備を無にして、ひたすら外交・説得・協調によって、国家間の軋轢・諸問題を解決できないか、といえば、現実から目を背ける蒙昧なおとぎ話と一蹴されそうな、社会の風向きである。
 世の中には、条理を尽くしても通じない相手が居る、これは避けられない。なるほど、確かに居る、「死の商人」「極端に自己顕示欲の強い為政者」「人に害を与えることに至上の快を得るという異常者」「事の起こるのを待つ無目的な浮遊者」などは、手に負えないのは分かる。とすれば、人類は永遠に平和を望み得ないジレンマを、宿命として内部に抱えていることになる。この方面にこそ、解決の途を探った方が、より効果的で近道だと思うが。
 しかし、世界の大勢は、戦争志向かまたは戦争志向者にたいする軍備を背景にした抑止、という方向に、定着しそうである。
 1月23日(本日)の毎日朝刊 2面 風知草 特別編集委員 山田孝男氏のコラムに、以下の文があった。
 「国防リアリズム元年」と題して(以下抜粋)、文春新書に公表された「シン・日本共産党宣言」を、冒頭紹介している。「党の日米安保条約廃棄・自衛隊解消路線を否定する」と著者(現役党員)は、訴える。主張の核心は「アメリカの核抑止力を頼らず、通常兵器による抑止に努め、日米安保条約は堅持せよ」とある。コラム著者山田孝男氏曰く、この提案、非武装中立論よりはリアルだが、非現実的であることに変わりはない。なぜなら、「核抑止は全く無意味」という極論が前提だから。(核抑止こそ、荒唐無稽であると思うが)
・・・世界中の核保有国の、即時無条件の核廃絶は望むべくもない。ロシアの核の脅しのような暴走を阻む手段は外交や経済制裁だが、「外交の裏付けとして軍事力や経済力がモノを言うのが世界の現実である」以上、山田孝男氏のコラム記事抜粋
 ※・・・「リアリズム」と向き合う時、すでに過去の泥濘に呑まれ手足の自由を奪われたのであり、前へ進もうと望めば、理想を希求し、構築し、実践していくしかない。

  2023.1.10日記
朝日朝刊から 1面 折々のことば 覚書
 才能は自然の賜物以上に社会の創造である。それは蓄積された資本であり、それを受け取る者はその受託者たるにすぎない。 ピエール=ジョゼフ・プルードン
 才能に恵まれた人といない人。その不平等が社会には厳然とある。が、どんな優れた天才も社会から与えられる援助と数多くの先行者や手本がなければ、稔る前に枯れてしまうと、19世紀の社会思想家は言う。才能は個人の特性=所有物でなく、社会の「希望」のために預かっているものである。 「所有とは何か」(長谷川進訳)から
※・・・才能ある人は、自らの才能を自覚していない。人よりも一等のめり込んで努力するので、他の事柄や人と比べる暇がないのだ。

2023.1.9日記
毎日朝刊 社説 小見出し「分断進む世界経済」
大見出し「歴史に学び共存の知恵を」抜粋覚え書き
 米中対立の激化やロシアのウクライナ侵攻を受け、グローバル経済の分断が深まっている。
 冷戦終結後に進んだ相互依存を逆手に取り、経済的な手段を武器にして影響力を行使する動きが常態化している。産業構造の変革期を迎え、技術や資源を囲い込む国も増えた。国際社会には不信感が渦巻いている。・・・
 保護主義は相手の措置を誘発する負の連鎖をもたらし、第二次世界大戦の誘因となった。今日の国際経済のルールは、そうした反省を踏まえて作られたものだ。
 1944年夏、米ブレトンウッズに44の連合国が集まり、戦後の国際金融のあり方を決める会議が開かれた。米英の利害対立も絡んで交渉は難航を極めたが、約3週間かけて議論をまとめ、経済を安定させるための基盤を作った。
 英国の交渉担当者だった経済学者ケインズは閉会式の演説で「我々が協力を続けられれば、戦争という悪夢は終わる」と述べた。今こそ、各国の指導者がかみしめるべき言葉である。
 価値観が異なる国や地域が共存する道を忍耐強く探り、通商秩序の再構築に知恵を絞る時だ。
 ※・・・まさしく忍耐こそ解決の道であると思う。意見の異なる相手を排除するのでなく、忍耐をもって説き伏せるべきと、老生は考える。愚直な人類には、これしかないのだ。しかしながら、このままいけば、いずれ人類文明は今日か50年後か遠くない日に突然、人類による経済・戦争・資源・環境問題が極まり、ある限界点に達した時、いっきに崩壊するというおぼろな予感がある。

2023.1.7毎日朝刊から覚書 2面 時代の風 河合 香里
「タイムパフォーマンス」の対極 抜粋
・・・物事を単純な善悪に、そして白黒に分けることは簡単であり、時間もかからないかもしれない。しかし、真実は割り切れない複雑なものの中にある。その声を粘り強く聞き続けることに、ドキュメンタリーやメディアの役割があるのだと。
  2023.1.6日記
年明け早朝山麓の粟生一宮神社へ初詣に参拝に行ったが、境内は未だ夜の闇であり人もなくましてやドラム缶焚火も新年のお神酒もあろうはずがなく、山瑞をながめると日の出はなお遠く、さては例年よりよほど早くに参ったものだと失態のさびしさを味わった。一時間早かった。
 元旦・二日と朝酒を大いに楽しみ、夜は夜でこれでもかとダメ押しに飲んだ。三日は早起きして京都愛宕山登山に出掛ける。例年に比べ余程暖かく、下の方は雪はまったくついていなかった。途中から中年男性と会話をしながら、程よいペースで登る。水尾の分岐を過ぎたあたりで、男性の所属する滋賀山友会山岳会のパーティーに合流、初対面ながら会員の方々と和やかに会話は弾んだ。頂上愛宕神社まで上ると例年に変わりなく雪は薄くはあるが積もっていた。下山時半ば凍結の急坂を急ぎ足に駆け下りたのがいけなかったのか、足を岩角に捕られて一瞬にして地面へ激突した。顔面強打、一刹那身体が麻痺、朦朧としていた。顔に血が滲んで腫れた。年のせいにしたくないが、一年一年ごとに退潮のあることは認めるしかないのか。
本日朝日朝刊からの、記事覚え書き 1面 折々のことば
 社会が不平等になればなるほど不平等が見えづらくなる。 朝比奈 祐揮
 韓国で教鞭をとる社会学者は、収入の不平等度が近接している日韓で、日本社会の「不平等への寛容」が際立つことに着目する。そして韓国と違い、不平等を前提のように受け止めるうち、各層の生活領域が「隔絶化」し、異なる環境にある人々への関心や想像力も縮小してゆくと危ぶむ。 「ソウルと東京でミレニアム世代に聞いた不平等と不公平」(雑誌世界1月号)から。
※・・・「不平等」これまでたいして意識してこなかった。こうしてみると、私は非社会的生き方をしてきたのかと、来し方をふりかえる。他人との比較・差異には鈍感であった。たぶんに唯我独尊への習い性があったのか。やはり、他人を我が身にふりかえて想像する思考が必要なのではないか、痛感する我が身のいたらなさではある。
 
2022.12.22日記
朝日朝刊 1面 折々のことば
 人生は両極端ではない。悲しいこと、うれしいことの絶妙なミックス。

朝日川柳
 利は上げて白旗上げず理屈こね 三重県 山本武夫
 旧式のバズーカ照準ずれ通し 静岡県 増田謙一郎
 結局は雫も落ちず子の十年  三重県 石井治
 以上覚書

2022.12.20日記
ここ数日間の新聞から拾った記事
12月13日付毎日朝刊から
 1面余禄 抜粋・・・「戈(ほこ)」が入った戦の字は兵器で争うことを意味する。司馬遷の史記には「戦は逆徳なり 争いは事の末なり」の言葉がある。古代から人を傷つける戦争はできるだけ避けるべき愚策と考えられてきたわけだ。
12月17日毎日朝刊から
 2面 土記 伊藤 智永 「ウクライナ即時停戦案」抜粋
 侵攻(2022年2月)される1年前から、ゼレンスキー氏が「クリミア奪還」「ロシアの武力侵攻に対抗」「ミンスク合意(ウクライナ東部紛争の和平合意)完全破棄」と繰り返していた強硬姿勢は、今やよく知られている。米国流の自由と民主主義の価値観を絶対視するバイデン氏(現大統領)らが、数年越しでテコ入れしてきた背景も明らかになっている。
 米欧側がその意図を否定しても、ロシアのプーチン大統領は挑発されていると感じていただろう。さらにバイデン政権の異常な軍事支援を見れば、これがウクライナに戦場と死者を押し付けて米国の「代理戦争」である実態は、否定する方が難しい。
 日本の防衛費大増幅は、中国・台湾を近い将来のロシア・ウクライナに見たてた政策の大転換だ。いや、買わされる兵器と地理的条件を見れば、日本も米国にとっては「東アジアのウクライナ」にならないと誰が言い切れよう。・・・
 ある大使経験者がつぶやいた。「一番重要なのはロシアを中国の側に押しやらないこと。それには議長国(来年の主要7カ国(G7)議長国を務めることが岸田氏の政治目標)・日本が、ウクライナ即時停戦を主導するくらいの大胆さが必要だ。クリミア・南クリル諸島(北方四島)交換案とかね」・・・※本当に大胆な停戦案、実現できれば言うことはないが、ロシア・ウクライナの受け止め方如何であれ、いずれにしろそれでは狭量な日本国民が納得しないだろうな。

毎日万能川柳から気に入ったものを選
 12月13日付 そういうな学歴しかないんだ奴にゃ 白石 よねづ徹夜
        限界じゃなかったことを超えて知る 久喜 宮本 佳則
 12月17日付 アーティスト名乗る厚顔無恥な奴 矢板 遠国旗本
        野火止という粋な名の用水路   福岡 小把瑠都

2022.12.10日記
毎日朝刊から 1面 安保関連3文書の骨子案の全容判明 「反撃能力保持」記事抜粋
・・・既存の防衛計画の大綱の代わりに策定する「国家防衛戦略」の中で、
「反撃能力は{武力行使の3要件に基づき、攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置}として行使すると明記した」
・・・反撃能力の効果については、防衛戦略に「能力を持つことで武力攻撃そのものを抑止する。・・・
 ※・・・云々とある。一見もっともらしい言い条だが、なにかおかしい。明記はこちらサイドだけに都合よくこしらえていて、敵対相手国の攻撃方法・戦術などから目を背けているような節がある。有事の際には、相手国が攻撃を行うに当たって真っ先に我が方の反撃能力諸軍事施設に打撃を与えて無力化することは、たやすく予想できる。また、我が邦軍備・基地・指揮系統・政治経済インフラなどの情報を事前に探る諜報活動もより濃密に浸透するだろうことは十分想定される。単に軍備を増強しただけで事足れるものでないはず。「張り子の虎」を国民に提示しているだけではないのか。あっさり、軍備増強など白紙に戻すのが、賢者の道だと思う。
2面 土記 伊藤 智永 「小国は超大国と戦った」抜粋
 小国の非暴力国民運動は、超大国の武力侵攻に、いかに勝利したか。思えば奇跡のようなリトアニア独立(1991年9月)のいきさつを、当時の現場映像をつなぎ合わせてたどるドキュメンタリー映画を観た。セルゲイ・ロズニツァ監督「ミスター・ランズベルギス」(各地で上映中)
 リトアニアは東欧バルト3国の南端、九州・四国よりやや広い国土に人口約280万人の国。第二次大戦中、ソ連とナチス・ドイツに代わる代わる占領・迫害され、戦後はソ連に編入された。・・・
 だが、ペレストロイカの目的はあくまでソ連「再建」だった。リトアニアを訪れたゴルバチェフが、民衆から西欧風に「ミスター」と呼びかけられ、社会主義国らしく「同志」と呼ぶよう注意する場面がある。独立運動指導者を「ミスター」と呼べば、「脱ソ連」の意志表明に他ならない。
 ゴルバチェフは官僚更迭や経済封鎖、軍事パレードなどで圧力をかけ、ついに首都ビリニュスの武力占拠に乗り出す。多くの市民が死傷しながら、非暴力で立ち向かう実録映像に息をのむ。・・・
 リトアニアの勝利に、欠かせない勝因があった事は分かる。指導者の言葉だ。命がけの局面のたびに、ランズベルギス氏は冷静に、論理的に、時に詩的に、一貫して希望を捨てず、独立への信念を語った。彼の言葉なしに、武力では決して勝てないと知る、あれだけの民衆が不屈の抵抗を続けられたかどうか。
 上映時間4時間8分(途中休憩あり)。見る人を選ぶ記録かもしれない。3年にわたる「奇跡の歴史」を、生映像だけで追体験できる時間としては、それもありかと思える人。あなたは、劇場に呼ばれています。

朝日朝刊より、朝日川柳抜粋
 部屋丸く掃くに似ている救済法 福岡県 真鍋 和端

2022.12.7日記
毎日朝刊 2面 水説 古賀 攻 新法の「触らぬ神」路線 抜粋、最後のくだり
・・・菅野志桜里弁護士が週刊朝日に寄稿している。「30年来政治が放置してきた旧統一教会問題を、臨時国会の3ヶ月で解決しようというのは余りに乱暴」
 論点を国民と共有することなく、衆参2日ずつで与野党が手軽に仕上げていい法律ではない。
 ※・・・30年の放置、それはつまりそれ以前45年間は、旧統一教会のわが邦国会への侵食の年月だったのではないか。今や自民党はおろか野党でさえ旧統一教会に汚染されている現状を看れば、形骸化した法案など今さら何をか況や。
朝日1面 折々のことば
 「高く心を悟って、俗に帰るべし」 松尾芭蕉
 ※・・・返すようで悪いが、「高く心を悟る」など我には永遠に為し難いのである。しかし、悟りに近づこうとする努力だけは、及ばずながら地道に細く続けようとは思った。
12月4日付け 折々のことば
 「写真って、生き方を肯定してくれたりもするんだね!・・・」真理絵さん
 夫婦からテント生活の仲間まで、いろんな「ふたり」を撮る写真家・南阿沙美。その中に15年ぶりに連絡してきた高校の同窓生とその息子もいた。末期のがん患者だった彼女は、写真を見て「私の行き方は結構いいのかも」と言った。じっと見つめてくれる人がいて、その人の眼で私を見たら、その人と混じり合う、知らない私に会えるのかな。エッセイ集「ふたりたち」から。

2022.12.3日記
毎日朝刊から
2面 土記 伊藤 智永 「誠意ある呼応」の手本 抜粋
・・・国会内で11月30日開かれた集まりで、NPO「移住者と連帯する全国ネットワーク」代表理事の鳥井一平さんの話に得心するところがあった。法制度上の建前はどうあれ多くは不本意な形で、朝鮮半島から連れてきて働かせた徴用工たちの歴史を指している。
 「人を使い捨てにしない、させない。国も企業も本気で共生社会を作る気なら、歴史の直視と反省がないと、前へは進めない。・・・
 ※・・・韓国政府の徴用工賠償問題で官民(韓日双方)の賠償金仮建て替えによって韓国民の理解を得る提案に対して、日本政府の「1965年日韓請求権協定」で「解決済み」と拒んでいる態度への、鳥居氏・伊藤氏の考え。余りに頑迷固陋を続けるのも、病か。時宜に応じて柔軟に対するのも健全な大人の裁量かと思う。

1面 反撃能力保有自公合意 ※・・・少しは世間の見える人には、今日日本がたいそうな武装をしようとも、他国の軍事国に対しては「螳螂の斧」に等しいことは自明の理です。政府の意図は、国民に対する付け焼刃のアピールか。

  3面 万能川柳  昔きみ安保反対だったよね 吹田 橋口 雅生

11月30日付毎日朝刊から 水説 古賀 攻 「参議院の自分探し」抜粋
 ・・・自分は何者か確信できない状態を心理学でアイデンティティークライシスと呼ぶが、参院は宿命的にこの危機意識を抱えている。

2022.11.23日記
秋の箕面大瀧
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箕面大瀧へ行った折、余りの賑わいのため下描きだけで止めた絵を仕上げた。あっさり描こうとしたのに、しっつこい絵にはなってしまった。どうも思惑通りには描けない。

毎日朝刊から
2面 水説 「岸田新法にわく疑問」古賀 攻 覚書抜粋
 岸田文雄首相が作成を指示し、近く国会に提出される悪質な寄付規制の法案。この岸田新法にNPO団体が異を唱えている。・・・
 「寄付文化がとばっちりを受けて委縮する」、がその理由だ。きのうもオンラインで開かれた緊急集会に多くの団体が参加し、「なぜ寄付一般の一律規制なのか」「当事者の声が反映されていない」などの意見表明があった。
 旧統一教会のようなカルト団体規制なら分かる。だが、対象が「個人から法人への寄付」一般になったことで危機感が生まれた。大半のNPOは財政基盤が弱い。・・・
 ※・・・岸田首相、何かに突かれるように先へ先へと猛進されている、どうも腰が坐っていないようにうかがえる。

3面 万能川柳から選ふたつ
 見る人の数だけ月は空にある 今治 へろりん
 痛いのは名刀よりも錆び刀  生駒 鹿せんべ
 
朝日朝刊 1面 天声人語=Vox Populi、Vox Dei(民の声は神の声)

2022.11.20日記
 一昨日、自宅から裏山を登り、尾根伝いに4時間半ほど山歩きをして箕面大瀧に行った。平日金曜日だというのに、あまりの人の多さに驚き、さては曜日をまちがえたかと己を疑う。紅葉の季節柄、海外からの観光客が多いのだろう。滝の絵を描くつもりだったけれど、下描きまでで止めた。絵を描くすぐ際まで人が寄ってくるのに閉口して、自粛とした。この日、名物「もみじの天ぷら」は全店売り切れ。まっ、観光客が増えるというのはありがたいのだと、一市民として友好の笑顔にこれ努める。

毎日朝刊から
2面 時代の風 「インド太平洋時代の到来」中西 寛(京都大教授) 抜粋覚え書き
 ・・・それでも歴史の歯車はインド太平洋時代の到来を告げているのではないか。欧州連合(EU)を離脱した後の英国は「グローバル・ブリテン」を掲げたが、その焦点はインド太平洋地域との関係強化である。又ウクライナ戦争の結果、ロシア国際関係の重心が欧州からインド太平洋に移りつつある。さらに言えば中国の一帯一路構想もインド太平洋の地域枠組みの一つと言える。
 この状況は長期的に捉えれば15世紀に欧州諸国が新航路を発見し、世界の中心が大西洋に移って以来の変化といえるかもしれない。歴史が大きく動く時、人間や国家の意識を超えて同時進行で多面的に変化が生じることがある。今はそういう時代なのかもしれない。

1〜3面「国葬」 ノンフィクション作家 保阪 政康 抜粋覚え書き
   インタビュー 池上 彰
保阪:・・・安倍氏の国葬には賛成、反対で国民が割れたというよりも重大な問題がありま    す。それは岸田文雄首相が国葬を私有化、私物化したことです。実施を決める前に    国葬の実施を国会に諮ったり、自民党が野党を説得したりすることはありませんで した。岸田首相は自らの政局認識によって実施を決めてしまったのです。・・・
池上:・・・なぜ民主主義を継承できなかったのでしょう。
保阪:・・・戦前は「軍事独裁」だったとの理解は間違っています。正しくは「行政独裁」です。・・・
行政が独裁になる怖さは今でもあると認識しなければいけません。
  もう一つは「自由」や「平和」は、総合的に検証しなければいけないのに、イメージだけでそれらの言葉が使われています。自由、平和と言った言葉を使えば、社会全体がなれ合っていくような言語空間もできてしまいました。・・・
 現代は、自由、平等、博愛をベースにした民主主義の概念が形骸化しつつあると感じます。ですから民主主義の再構築ということが迫られているのです。
池上:本当にお手本がない時代になりました。・・・
  お手本がないからこそ、自分たちの中で、民主主義って何だろうと考えていくことが重要ではないのでしょうか。
 ※・・・「自由」という言葉ほど曖昧な言葉はないかと思います。たとえば、親の被扶養者である若者や職をリタイヤした高齢者にこの言葉の意味を問いたいものです。

3面 万能川柳
 いざのときちゃんと開くか米の傘 越谷 小藤 正明
 
2022.11.19日記
朝日朝刊 1面折々のことば 覚書
「過去は新しく、未来はなつかしいものなのかもしれません」 佐治晴夫
 今が満たされた境遇でないと、人はつい過去のせいにする。だが記憶はその時々の心情によって塗り替えられるもの。過去の評果もこれからの自分の身のふり方で決まると、理論物理学者は言う。つまり「これから」が「これまで」を決めるのだと。だからむやみやたらと過去にこだわるのでなく、「これから」を見つめ一歩踏み出そうと。随想集「この星で生きる理由」から。
 ※・・・おもしろい考え。「時間の因果律」を自意識によって逆転させている。こういうのもあるのか。
 
2022.11.16日記
毎日朝刊から
11面オピニオン 論点「異次元の金融緩和10年」抜粋を覚書
 西村 清彦 政策研究大学院大学特別教授(元日銀副総裁)
 「異次元」の金融緩和は、ある種の壮大な実験だった。ブレずに腹をくくって金融緩和をやった点では意味があるが、効果は数年でしぼみ、日本経済に大幅なプラス効果はもたらさなかった。金融緩和は「将来の需要の先取り」に過ぎない。それによって景気浮揚効果が期待できるのは短期間。10年近く続けて意味がないのであれば、別の道を探るのが当然だ。・・・

3面 万能川柳
 不都合な記憶はないと言う議員 千葉 東 孝案
 
11月15日付毎日朝刊 14面毎日俳壇から
 久々に紅ひく朝や吾亦紅 北九州市 白岩 纓子
 朝寒や芥ただよふ船溜り 北九州市 宮上 博文
 みな寝て(いねて)灯(あかり)ひとつの夜長かな 岸和田市 妙中 正
 
        2022.11月9日日記
毎日新聞朝刊から、2面”水説“ 「居心地の悪い防衛論」古賀 攻・記 抜粋
・・・中国による台湾への侵攻は、もはやあるかないかではなく、いつあるかだとまでいわれるようになった。
 中国のはったりだという見方もあるだろう。ただ、この問題を考える時、1907年に英国の外交官エア・クロウが欧州の新興国ドイツについて書いた覚書が一助になる。クロウはドイツの意図がどうであれ、強力な海軍を持てば必ず覇権を追及すると説いた。各種歴史書でも引用されるリアリズムの外交・安全保障論だ。
 先週の当欄で、脅威の構成要素である「意志」と」「能力」のうち、能力が高まるにつれ意志が後から生まれることもあるという防衛省の資料を紹介した。これもクロウの覚書が下敷きになっている。
 相手の能力に応じた抑止力を求めると、軍拡を招くおそれがある。だから日本は中国の意志を非軍事的手段によってコントロールするよう努力すべきなのは当然だ。・・・
 2度の世界大戦をへて、人類は国家の意志を次第に洗練させてきたはずだった。なのにロシアは国家の野蛮性が消えないことを見せつけている。中国による8月の大軍事演習は中台紛争が日本を戦域にすることを可視化させた。残念ながら100年以上前のクロウ覚書が有効性を保っている。・・・
 軍事の議論をするのは決して居心地のいいものではない。難解だし、日本の豊かさが失われつつあるからなおさらだ。ただし防衛も国民に必要な公共サービスの一つ、辛抱がいる。
 ※・・・マキアヴェッリ「君主論」から語録を拾う。みなわ
「歴史に残るほどの国家ならば必ず、どれほど立派な為政者に恵まれようとも、二つのことに基盤をおいたうえで種々の政策を実施したのであった。
それは正義とちからである。
正義は、国内に敵をつくらないために必要であり、ちからは、国外の敵から守る為に必要であるからだ・・・マキアヴェッリ語録
16世紀初頭ルネッサンス期と現代とは歴史的に大きな懸隔があるのはそれとして、マキアヴェッリの謂う「ちから」は文字通り軍事を意味していたと思われるけれど、当今の世界情勢においてはそれを「外交のちから」におきかえたいと、切に願望するわけです。軍事という幼稚さを、下に見下すほどの強い「ちから」に。
 
  2022.11.8日記
11月7日付毎日朝刊
毎日俳壇から選ぶ
 見舞客なき日の窓の薄紅葉 志木市 谷村 康志
 さまざまな鳥の言葉や秋澄める 八街市 山本 淑夫
 ひとりとは新酒をひそと酌むことか 加古川市 中村 立身
 指舐めて拾う縫い針やや寒し 瀧ケ崎市 井原 仁子
毎日歌壇から一首
 靴下が落ちていてまた落ちていて二人暮らしのそういう孤独 札幌市 中村 育
 
 この世界いまだ見えぬと人間にひとはさすらふ小さき窟へ みなわ
   
  2022.11.4日記
毎日朝刊 万能川柳のおもしろいのをピックアップ
11月3日付 飲ませれば面白そうな猿がいる 川越 麦そよぐ
     三度目でまた呼んでねとつい祝辞 海老名 しゃま
11月4日付 タレントのお育ち見える食事シーン さいたま 明ちゃん
        
2022.11.2日記
11月1日付毎日朝刊から
 原発についての実相を一端垣間見せてくれる小泉元首相のご意見です。以下、抜粋。
10面 オピニオン そこが聞きたい 原発ゼロの可能性 元首相 小泉 純一郎氏
「首相の決断でできる」
・・・
―政府はこれまで原発の再稼働を進めましたが新増設は封印してきました。岸田首相はなぜいま見直すのでしょう。
 それはわからない。日本は原発ゼロでやっていけることを事実が証明している。福島の原発事故後、(2013年9月から15年8月まで約2年間)原発が全停止したが、夏も冬も停電などなかった。日本は原発をゼロにできるのに、どうしてやらないのか。
・・・
―小泉さんが脱原発を目指す理由は何ですか。
 原発がクリーンで安全で、コストが安いなどというのは全部ウソだとわかったからだ。私はそれを全国で講演しているが、経済産業省から講義は来ない。これも書いたっていいよ、原発推進論者の3大大義名分(クリーンで安全でコストが安い)は全部ウソだと。私が言っていることが間違っているなら、抗議に来ればよい。日本は地震、津波、火山があって、原発をやってはいけない国なんだ。
・・・
―もし小泉さんがいま首相なら、原発も「聖域なき構造改革」をしますか。
 当然やる。脱原発を決断する。でも、私の時代は終わってしまった。勉強が足りなかった。実際に事故が起きないと、脱原発の考え方は、なかなか難しい。(経産省や電力会社は)原発事故は起きなないと言ってんだから。でも事故が起きた以上、私は勉強した。日本は自然エネルギーに恵まれている。太陽、風力、水力。波力や地熱もある。日本は自然エネルギーの資源大国になれる。その政策を進め、原発をゼロにする。
 ・・・※紛れの無い歯切れの良い言い回しです。自信の根拠にはデータや数字などのしっかりした裏付けがあるのでしょう、と思わせる。万に一つでも復活の時代を期待したい。

10月31日付朝刊から 
毎日俳壇 目についたのを選ぶ
 山あいの小さき社百舌鳥の声  盛岡市 船山 治男
 このバスは今日も空っぽ秋日和 伊万里市 田中 秋子
 長き夜の終わりにうすき眠り来る 東京 水野 洋子
 林檎剥く母に齢(よわい)をまた聞かれ 海南市 塚月 凡太
毎日歌壇 
   憂き世なれば楽しきことのみ文にせむ中宮定子に書きたるごとく 和歌山 中西 幸代
11月2日付同じく毎日朝刊から
1面 余禄
 △「書は文集(もんじゅう)」。清少納言が枕草子で漢文の筆頭に挙げたのは唐の白居易(白楽天)の詩を集めた「白氏文集」だ。平安時代に日本に渡り、貴族に愛好された。紫式部は宮中で講義するほどで、源氏物語にも影響を与えたという。・・・
 △「白氏文集は大目に和歌の神」。謡曲を踏まえた江戸川柳だ。白居易は追い返されたが、漢詩は上陸を許されたというわけだ。江戸時代には杜甫や李白の方が好まれたというが、漢詩の人気は高かった。排外主義に陥らず、優れた文化を受け入れる寛容が日本文化を形作ってきたということだろう。
 
2022.10.28日記
朝日朝刊から記事覚え書き
1面 折々のことば
 「役者はもの書きではありません」 渥美清
 俳優は「寅さん」役に徹し、執筆や講演は一切断った。簡素な暮らしながら、撮影が始まると、雪駄履きの足先が薄汚れて見えないよう美容室でペディキュアをしてもらった。一つの役から世界を映し出す。別の生業を同時に動かし関係を拡げる手もあるが、いずれをするにもこの矜持を忘れてはなるまい。山田洋二監督の随筆「夢をつくる」から。
24面 一強独裁を生む「中華帝国」の歴史 抜粋
 今年は日中国交正常化50年だという。しかし、これもいかにも西欧的な考えだ。国交が正常化するとはどういうことだろう。国交がなかった「鎖国」の江戸時代でも、中国と付き合ってきた。関係が悪化し、戦争を繰り返したのは、むしろ国交を開いた後なのである。・・・

2022.10.24日記
毎日朝刊
月曜日の毎日新聞には俳壇・歌壇が掲載される。今日付け紙面から目についたのを、記録として覚書にする。
 おしろいの咲いて灯のつく診療所 大阪市 吉田 晶之
 十三夜灯り遠のく土手の木々   甲府市 清水 輝子
 ただ歩くひたすら歩く冬支度   大阪  下城かよ子
 おのが死を知らざるままに母は逝きいまもどこかでわれの名を呼ぶ 垂水市 岩元 秀人 

 聖人君子もいわずもがな何人であれ、権力の座に永く安住する者は水の流れる如く悪を行う。「中国 習近平総書記による異例の3期目指導部が発足」の記事を読んで、嘆息する。
2022.10.23日記
毎日朝刊
5面社説 トラス英首相が辞任へ 「大衆迎合」に市場が警告 抜粋
 国民受けを狙った無責任な政策に対する金融市場の警告である。
 7兆円超の大型減税を打ち出していたトラス首相が辞任を表明した。就任から2ヶ月足らずと英国史上で最も短命な政権となる見通しだ。
 インフレに苦しむ経済のてこ入れが目的と説明していたが、通貨と株と国債がそろって急落する「トリプル安」に見舞われた。
 市場が「英国売り」で反応したのは当然だろう。
 財政の手当てもせず、減税対象には富裕層も含めた。光熱費の負担軽減策として約10兆円をつぎ込む方針も示していた。典型的なばらまきだ。コロナ禍で悪化した財政への不安を一段と高めた。・・・
 大衆迎合的なポピュリズム政治がはびこるのは、民主主義にとって脅威だ。議会制度の母国で政治が市場からノーを突きつけられた。極めて深刻な事態である。
 ※・・・我が邦に照らし合わせても、あながち無関係ではなさそう。「他山の石」にすべき。

3面 万能川柳 ピックアップ
 いろいろな意味含んでる「若いわね」 中間 西 幸子

2022.10.15日記
毎日朝刊 2面 土記 「女王の二つの身体」伊藤智水 抜粋
・・・女王が権威を保てたのは、権力に立ち入らなかったからだ。政治にこの世のあらゆる問題を過たず解決する力はない。それでも政治の正当性を保つには、権力構造と別の政治シンボルが有用だという知恵の実践である。それは伝統的な保守の思想でもあった。
 国葬は、そうした国のかたちを表す死者を送る儀式であり、みだりに行われるものではない。・・・
 日本の国葬は誰であるべきか。それは、国のかたちの表し方に他ならない。時の権力者や支持層の勢力誇示、内輪ぼめはお門違い。本物の保守には、謙譲と寛容の美徳が欲しい。
 ※・・・過ぎる英エリザベス女王国葬に比し、故安倍元首相の国葬についての滑稽な違和感を、改めて仄めかされている論評です。誰しも早く済ませてしまおうというちっぽけな茶番劇めいた儀式の印象が、そこはかとなく余韻しています。

2022.10.09日記
毎日朝刊から 2面 時代の風 藻谷浩介(日本総合研究所主席研究員)
 この方の、時事問題を論難される文章表現には、新聞記事文章の無機質さとは異なって文体に独特の味わいがあり、常々感心している。今回は、安倍晋三元首相に関わる現政権の「負面」を採りあげています。
「安倍氏の政治と経済運営」抜粋
 なぜ政治を“まつりごと”と呼ぶのか。「祭政一致だった古代の名残」くらいに思っていたが、安倍晋三氏が首相と元首相の間を行き来したこの15年余りで、筆者の認識は改まった。まつりごととは、「誰かをみこしに担いで、皆で祭り上げる」ことだった。・・・
 とはいえ政治とは、皆から税金を集めて国家組織を運営するものだ。企業経営でも同じだが、数字を用いた冷静な自己点検が必要な世界であり、祭りのノリで済ますべきでない。・・・
 経済情勢の悪化に対しては、まだしもいろいろな方策を模索可能である。それより恐ろしいのは無意味な円安を招いた責任、祭りに酔いしれていた者たちの責任が、自覚されないままになることだ。そんな日本であれば、これからもまた誰かを担ぐ“まつりごと”に酔った末の過ちが、繰り返されてしまうだろう。

3面 万能川柳
 目覚めたら悪夢の方がマシだった 成田 離らっくす

2022.10.04日記
毎日朝刊 2面 火論 大治 朋子 「女性を軽んじ組織防衛」抜粋
・・・五ノ井さんは休職後の22年6月に辞職したが、陸自側は母親に「一切の意義を申し立てない」との同意書を書かせた。告発に踏み切ると、隊内での被害を訴える声が146人から、第三者による公正な調査を求める署名は10万人から寄せられた。防衛省は9月29日になってようやく性暴力を認めた。・・・
 自衛隊に限らず組織重視の日本社会では組織の論理が優先され、個人の告発はひねりつぶされやすい。今回の事件は普遍性を含む。
 米国では組織に透明性を持たせるため、問題の処理を「身内」に任せず民間機関などに介入させる法改正の動きも進んでいる。
 これほど女性を軽んじる組織が国民を守れるのか。
 ※・・・言語道断です。さかりのついた犬や猫のお遊戯の場所なのか、自衛隊と言うあやふやなところは。

2022.9.29日記
 日中国交正常化50年 毎日朝刊 5面 「日中50年 識者に問う』と題して北京大教授王新生氏のコメントが載っていたのですが、日本人には気づかなかったーというより見えない―点を突かれた一節がありました。曰く、”集団主義の文化が根強い日本社会では、個人単位で競争するグローバル化に伴う改革は非常に困難だ”また改革によって格差社会が出現し貧富の差が拡大すると、それが社会的な緊張を招き、ナショナリズムやポピュリズムが台頭する。さらに言えば中日両国とも、そのナショナリズムを高揚させる格好の対象がすぐ隣に存在するとも言える。
 ※・・・一度、中国人の立場に立って眺めてみるのも大事でしょう。中国人は中国人なりに日本を眺めていて考えているのが分かります。その上で日本人の視点を作ればよいかと思うのです。老婆心ながら、年寄りは新聞記事からそのように想起しました。

2022.9.25日記
毎日朝刊から
1面 シェイクスピア「別人説」前々から世界中で喧伝され続けられてきた謎であるが、今朝の新聞に具体的な内容が載っていた。
 ストラドフォード生まれの革職人の、教育もろくに受けず系統だった知識もなく外国へも行ったこともない子せがれに、あのように異国を舞台にした巧緻な文学作品など創り出せるはずがない、というのが疑義の論拠になっている。真の作者として、貴族第17代オクスフォード伯エドワード・ド・ビア(映画「もうひとりのシェイクスピア」)がもっとも有力な候補とされている。作品に多くあらわれる語彙と伯の手紙類に書かれたそれとがよく一致すると言われる。喜劇王チャールズ・チャップリンは「誰が書いたかは興味がない。ただストラードフォード生まれの少年だとはとても思えない」と言う。「トム・ソーヤの冒険」作者マーク・トウェインも否定派。貴族の階級としては、身辺に関わる個人的な業を伏せようとの思惑があるので、シェイクスピアを自身のゴーストライターとすべく、二人の間には、余人にはうかがい知れない黙契があったと、憶測されている。
 けだし、本人説も根強くある。教育や学識などと優れた文学作品の出現とは無関係である。芸術作品は突然変異的に、人のこれまでの出自や事績に関係なく生まれることもある。そういえば、20世紀中ごろ、「泥棒日記」を著して突然フランス文壇にデヴューしたジャン・ジュネも、社会底辺の塵芥に生きる孤児でありワルであり男娼でもあった。
 シェイクスピア「別人説」は、永遠の疑問詞として日々の楽しみの種にすれば良いと思う。「源氏物語」五十四巻、ほうぼうにちりばめられた小さな「あやかし」の解明に、日々没頭する楽しみと、相通じるものがあると思います。

毎日万能川柳
 食レポの「不思議な味」はまずい時 香芝 あづき
 無理みたい3つのケーキ4人分け 羽曳野 みつぼん
 ※・・・いえいえ、無理ではありませんよ。簡単です、3つそれぞれを4等分して、3切れづつを4人に分ければよいのです。

2022.9.18日記
毎日朝刊
4面に目を引く記事がありました。
「ウクライナ疲れ」懸念 抜粋
・・・「ウクライナでの紛争は、私たち全員にとって転機になった。警戒しなければ、何十年も軽蔑され、非難されてきた「戦争」という方法が、私たちの国際生活の{道具箱}の中に再び頻繁に登場しかねない」。国連総会のコロシ新議長は13日にあった77期国連総会の初会合でそう演説し、ロシアが侵略という手段に出たことが国際社会に与える影響に危機感を示した。
 ※・・・ルネッサンス期イタリアの、チェーザレ・ボルジアの冷酷を遠い過去と見やって、なるほど、ロシア以外の国に、こういう大それた方法を行使するような国は現時点で見たところ、ないようです。時が来て、状況が変化すれば、同類の国が現れるかもしれませんが、特にアジアにおいて。
1面 近藤流健康川柳
 怖いもん見とうて参加クラス会 
3面 万能川柳
 教会を野放しにしていたメディア 千葉 東 孝案
 コロナより優先ですか?国葬は 松原 ママとんぼ

  2022.9.13(火)日記
 源氏物語「夕顔」の巻(岩波書店・日本古典文学大系)熟読・了
 六条の渡り御忍びあるきのころ、内裏よりまかで給ふ中宿りに、「大貮の乳母の、いたく、わづらひて、尼になりにける、とぶらはん」とて、五条なる家、たづねておはしたり。・・・
 ※・・・光源氏この時十七歳、六条わたりとは、七歳年上の愛人(六条御息所)の住まう邸である。その頃、源氏は忍んで通っていたとあり、ある日の、内裏を下がる折節から「夕顔」の物語は始まる。アンニュイな雰囲気の流れる出だしからゆったりした誌的な雰囲気が続き、そのうち夕顔という世間に隠れるようにして日を送る佳人とのなれそめ、いろごとの成就、そして悲劇へと、物語は、光源氏の裸の未成熟な一面をあぶりだす。
 この「夕顔」だけを採りだして、一編の物語にしあげたいと思った。評論でも良い。
 このところ源氏物語関連の本を数冊読んできた。まず昭和44年発行の「紫式部」今井源衛著、作者を調べつくした書であるのか、290ページほどの小さな本でも読み応えがありました。次に「端役で光る源氏物語」久保朝孝+外山敦子 編、物語の筋を引っ張る主役ではなく、端役に焦点を当てた本、狙いが面白い。「夕顔」にも出てきて源氏と夕顔との情交を取り持つ「惟光」も出てきます。次に今日読み終えた「一千年目の源氏物語」伊井春樹編、源氏物語の京都弁訳をなさったり・研究者として縁の深かった方たちの講演草稿やシンポジウムの記録を載せた本。おもしろい。
 源氏物語の何が面白いかと言えば、作者紫式部の「男女の掛け合いの機微」「宮廷内の虚実を交えた権力へのせめぎあい」「そして自らを物語に投入させようとの仮想空間への参加」等、己の鬱屈した生活空間の捌け口を、「世はなべてこうあればかし」物語作りに求めたことが、すこぶる興味を引くからです。だからたぶん、物語中に、彼女も入り込みあるいはいろごともしていたろうと思われます。

毎日新聞 朝刊
19面 毎日俳壇
 秋立つや手水舎の水新しく 鹿島市 津田正義
 蓑虫の半眼のぞく夕日かな 嘉麻氏 堺成美

2022.9.9日記
毎日新聞朝刊 1面 「余禄」
 「白馬非馬」(白馬は馬に非ず)は外形で分類される馬と、色と外形双方で認識される白馬は異なった存在という主張。中国古代の思想家、公孫竜の論で論理学的には歴史的意義があるそうだが、人を欺く詭弁を指す四字熟語として伝わってきた。
 同じく公孫竜の「堅白論」も有名だ。堅さと色を同時に知ることはできず、堅く白い石は二つであって一つではないという詭弁だ。
 ※・・・現代に通じる含蓄深い論だと思う。「情報」という考えからすると、言葉という情報単位として、「白馬」と「馬」は異なる類になる。

2022.9.7日記
毎日新聞朝刊 9面 オピニオン「世論の暴走」佐藤 卓巳(京都大学大学院博士課程単位取得退学)抜粋覚え書き
 私たちは、戦争と民主主義は両立しないと考えがちだ。しかし、私は、あえて「戦争民主主義」という言葉を使っている。「民主主義」の定義の仕方によっては、平時より戦時下の方が民主主義的な状況になることがあるからだ。
 民主主義が機能しているかどうかを考えるうえで、国民が自ら政治に参加していると感じていることは重要だ。この点、戦時下は全ての人が政治に関わらざるを得ないのだから、非常に高度な政治参加社会と言える。貧しかったり、マイノリティーだったりして政治に疎外感を持っていた人も戦争が始まれば「総動員体制」の中に組み込まれ、閉塞感から解放され、政治に参加しているという満足感が得られる。・・・
 ・・・もし台湾有事が起きて、大量の避難民が日本に押し寄せてきたら、私たちは、どう対応すべきなのか。どのような心構えが必要なのか。それに答える報道がない。
 ただし、こうした事態に備える議論をする上で、日本人の戦争観が足かせになっていることを指摘したい。日本人の考える戦争は第二次世界大戦のように国家が総力を挙げて戦う「総力戦」だが、現代の戦争はほぼすべてが限定戦争だ。「国民を総動員して焦土化する」と考えるから、「戦争は絶対にあってはならない」というところで議論が終わってしまう。議論の前提として、私たちの戦争観を現代的なものに変えていく作業が必要だ。
 私は感情的に動く「空気」である世論と、議論を経たうえで作り上げられた公的意見の輿論を区別する。ヒトラーは街頭で大衆に政治参加を呼びかけ、民主的な世論を背景に独裁者となった。しかし、それは理性的な輿論とは全く別の民意だ。この点を区別しないと、情動のままに世論に流れる状況になりかねない。今回の戦争報道が輿論を作り上げるための役割を果たせるかどうか、日本の将来を考える上での試金石になるだろう。(聞き手・鈴木直)
 ※・・・「戦争と平和」(トルストイ)の結びにある一節・・・「歴史的事件の原因は権力であり、権力とは(政治体制を問わず)支配者に移譲された大衆の遺志の総和である」
 ※・・・民主主義も一歩誤れば、凶暴な怪物の面をも顕わす、大衆の遺志の総和の下に。

2022.9.5日記
毎日新聞朝刊ヨり
 自民党と旧統一教会との黒い癒着関係について、具体的に著した記事が載っているので、その一部を抜粋して、覚え書きとします。
2面 風知草 特別編集委員 山田 孝男
「選挙と宗教 聞きたいこと」
 旧統一教会の自民党支援をめぐる法律上の問題について、内閣法制局はどう説明するのだろう。
 官民の相談窓口に寄せられる悪質商法、献金の被害相談は今なお絶えないという。首相は防止、救済に全力で取り組むと言った(31日)。それは当然として首相に二つ聞きたい。
 まず、旧統一教会への強い依存が疑われる議員、依存をめぐる説明が著しく不合理な閣僚、党幹部の人定と進退である。選挙や秘書の採用を教団に頼り、教団の利害を代弁する政治家は公正に選ばれた国民の代表とは言えない。この点を首相はどう考えるのか。
 次に安倍晋三元首相の責任についてである。
 元首相は旧統一教会を含む多くの宗教団体と親密であり、自力当選がおぼつかない選挙の候補者に宗教票を割り振る<世話役>の顔を持っていた。その力で周囲を心服させ、権力基盤を固めた面があった。
 自民党をむしばむ教団への過剰依存と、選挙重視で宗教票を差配した元首相の執念は無関係か。現首相の見解を聞きたい。・・・
 「初心に帰る」と首相は強調した(31日)。80年代以降の教団の反社会的な活動、それを知りながら教団の支援を頼った自民党の責任。そこに的を絞らないと焦点がぼける。初心に立ち返り、国民の疑問に答えてもらいたい。
みなわ思ふ
 ※・・・「そして、だれも、なっていた」。自民党における(あるいは政界全体か)この邪まな汚辱を浄化するには、岸田首相個人の力ではとうてい及ばないと思う。今やミニ統一教会となった自民党内では、潔白者一人では(ほかにもいるか知れないが、身の危険を感じて動けないだろう)成す術がない。また、政官財あまねく浸透しているだろう。おぞましい200年末期のオウム真理教の比ではない、はるかに巧緻にして周到であるし国境を素通りして巷に浸透しているいわば人類社会の「獅子身中の虫」であるといって過言ではない。
 指数曲線が垂直になったらおしまい、昔読んだSF小説の一節、信者を募るためのある数学的なルーティンを応用する実験が、あやまって実地に施用され、最後には地球全体が破滅的に、一つの宗教に統べられてしまうという怖い空想科学物語、
 人の意識下の領域は脆弱である、意識下へのキーワードをさえ探り当てれば、何の造作もなく意識下の中枢にログインできる、あとは赤子の手をひねるようなもの、本人の意思を思う様にコントロールできる。キーワードを探る為に、宗教はあれこれ行いを実施し反応を診る、そこからワードの目星をつける。宗教法人のイベントなる集まりには、警戒するに如くはない。虫すだく夏の夜の夢であってほしい。
最後に、安倍元首相の襲撃犯は単独ではない、「オリエント急行殺人事件」に類比して、構造的に多数の加害者が存在すると、初めて公にします。

2022.9.4(日)日記
毎日新聞2面 「時代の風」 長谷川真理子(総合研究大学院大学長)
「”自粛“に順応した日本」 覚書抜粋
 この2月から、英国ではなんの規制もなくなったし、欧州諸国を旅した人たちの話によると、公共交通機関でのマスク着用など、一部で推奨はされているものの、法的な規制は何もない。一方、わが国ではどうか?日本では、このような緊急事態に対処する法的な措置はない。そこで、すべてが「お願い」ベースで進むことになった。日本人はそれに見事に順応し、法的にはなんの規制もないにもかかわらず、自粛という標語のもとにほとんどの人々が社会的な活動をやめ、多くの行事や祭りが開催されずに今に至っている。
 自粛というのは、互いのそんたくと監視のもとで成り立つ行為である。一人ひとりの個人がどう考え、本当に何をしたいと思っているのかはさまざまだろう。感染防止が十分にできると思えば、パーティーをしてもよいのだ。しかし、誰もが、そのような自分の考えとはせずに、まずは周囲の人々がどう行動しているかを見る。
 そうすると、自分はなにもせずに周囲をうかがうのが全員のやることなので、見渡せば誰も何も積極的にはしていないのが見える。そこで、周囲はみな何もしない、それが大勢なのだということになって、誰もが自分のしたいことをしなくなる。これが日本での「コロナ対策」なのではないか。
 このような自主規制は法的規制ではなくて、同調圧力によって維持される。これが驚くほどよく働いているのが日本だが、これをどうやって終わらせるのかが問題だ。
   
 欧米では、個人が自分の希望を表出するのが当然であると考えられている。そのままで野放図になっては困るので、それを抑えるために法律で規制する。人々は、自分のやりたいことは自覚しているのだが、法律で抑制されていた。そこで、法律さえ解除されれば、また自分の意思で勝手に行動することに戻るのである。
 しかし、法律による規制ではなくて、周囲の状況を見て互いにそんたくしあう文化による自粛の場合は、どこでどのようにこれをやめるかの基準がないのだ。
 みんなが集まってわいわいと騒ぐことには、経済的効果だけでなく、人間のコミュニケーションや社会関係の構築の上で、多大なメリットがある。しかし、そのようなメリットを全く考慮せず、感染拡大のリスクだけを見るならば、この際、何もしないのが最良の選択になるだろう。
 それを、みんなが他者の行動をうかがうことで自粛する、という構図で達成すると、どうやって終わらせることができるのか?たとえそのうち終わらせることができたとしても、それには長い時間がかかることだろう。個人が自分の選択を表明することなく、周囲の状況を見て判断するという仕組みは、コロナ対策に限らず、意思決定のプロセスを迂遠にし、変化に機敏に対処することを阻んでいると私は思うのである。
 ※・・・日本社会の文化的特異性をあぶりだした論説です。周囲と同じようにふるまっておればまちがいない、破れば疎外されるという集団志向か。

3面 万能川柳
 宝石をつけても人は光らない 福岡 朝川 渡
 バスに乗り遠くの街で降りたアリ 武蔵野 竹とんぼ 
 
2022.9.3日記
毎日朝刊2面 土記 青野 由利
「稲盛さんと京都賞」の最後のくだりの一節
 稲盛さんは京都賞の理念について「人類の未来は、科学の発展と人類の精神的深化のバランスがとれて、初めて安定したものになる」と語っている。その実現の難しさを実感するところだが、一歩でも前進したい。
 ※・・・含蓄深い。
3面 万能川柳
 なんだろうみんなやさしくしてくれる 調布 杉山 竜

昨日9月2日朝日朝刊 1面 折々のことば
 無垢の状態というものは立派なものである。しかし他方また大変残念なことだ。それは保存されがたく誘惑されやすいものである。 イマニエル・カント

「田中六五(ろくじゅうご)」の奇跡 福岡の定番酒
 ※・・・喉に流したいものだ。
10面 朝日川柳
 国葬が弾みにならず足取られた 大阪府 藤井 徹

2022.8.31日記
毎日新聞朝刊 2面 「水説」古賀 攻
「ノーベル賞作家の戦い」から抜粋
 「戦争は女の顔をしていない」の作者アレクシエービッチさん(74)は戦争で心身に深い傷を負いながら沈黙してきた女性たちの声を辛抱強く拾い集め、2015年のノーベル文学賞を受賞した。ベラルーシ人の父とウクライナ人の母を持ち、ロシア語で育った彼女は、当然にも今の戦争に強い憤りを抱いている。
 「ウクライナの人たちはもはや自分たちだけのために戦っているのではありません」「今は悪の力があまりに強い。勝つためには力を合わせるしかありません」
 沼野教授が5月に行ったオンラインのインタビューで、世界が一丸となってロシアのプーチン政権に立ち向かう必要性を繰り返し訴えている(雑誌「ユリイカ」7月号収録)。沼野教授にとってアレクシエービッチさんは受賞以前から重要な研究対象だった。
 「テレビと冷蔵庫の戦い」というのも彼女特有の表現だ。プーチン政権が石油とガスでもうけたカネをプロバガンダにつぎこんでいるから、今のロシアはテレビが優勢だ。でも経済が疲弊して冷蔵庫が空になったら変わる、と。  本の少女たちは祖国が侵略されたから入隊を願い出た。今のウクライナはかってのソ連の立場にある。侵略する側とされる側をひとくくりにし、訳知り顔で双方の当事者をたしなめるのは安全地帯にいるからこその空論だと思う。それは半年で鮮明になっている。
 ※・・・新聞のおかげで、アレクシエービッチというノーベル文学賞作家を知ることができた。貴重な覚え書きとします。

2022.8.30日記
毎日新聞朝刊 1面余禄 抜粋
 「人事の岸田」を自認する首相が、先の内閣改造は自民党内事情を優先した結果、支持率を急落させる墓穴を掘った。市場が注目するもう一つの人事に抜かりはないだろうか。
 来年4月に任期が切れる日銀総裁の後継選びである。在任期間が歴代最長となった黒田東彦総裁はこの10年近く、アベノミクス推進の先兵として国債を大量に買い入れる異次元緩和策を続けてきた。・・・
 これほど何でもありの政策を展開しながら、目標に掲げた賃上げを伴う「良い物価上昇」を実現できていない。・・・
 黒田氏は「粘り強く緩和を続けることが日本経済にとってプラス」と力説するが、専門家は「大規模かつ長期の緩和で市場への影響力を持ち過ぎたため、国の財政への影響や相場の混乱を恐れて動けなくなっただけでは」とも指摘する。
 日銀が思考停止に陥っては、インフレや景気後退に対処できなくなる。次期総裁には虚心坦懐に異次元緩和を検証し、政策を果断に修正する覚悟と力量が求められる。今度の人事ばかりは、しくじれない。
 ※・・・以上の毎日新聞一文に、仮に岸田首相も眼を通したとして、なんらかの反応を励起し、人事策定に影響をおよぼすのかどうか、結果を見るまでは藪の中だ。

3面 万能川柳
 明けぬ夜と冷めない恋はないと妻 柏原 柏原ミミ

2022.8.29,日記
 宇宙から見た地球の中でも日本の明るさは際立っている。リスクだらけの原発を増やし、過度の証明と産業を守るという感覚は倒錯している。国家百年の計はそこにない。
 ※・・・以上は8月29日付毎日新聞2面 風知草 特別編集委員山田孝男氏の「原発新増設 浮上の経緯」という論説の、最後の結びの一文。 16面 毎日俳壇
 病むことも生きる証や夏帽子 和歌山市 菊池 芳子
 風死せり遮断機はまだ鳴ってゐる 大阪市 白濱 素子
 炎天をリヤカー引いて沈下橋 尼崎市 森下久美子 
 
2022.8.28日記
朝日新聞 8面社説 余滴 田井 良洋 抜粋
「ヒロシマの使命 ご存じか」
 人類史の縦軸に一本だけ横軸を引くなら、どこか。それは1945年8月6日午前8時15分であるー。
 広島の原爆資料館3代目館長、小倉馨(かおる)さんの遺訓だ。核兵器が人間に何をもたらすのか未知な被爆10年後、白血病があらわになるヒロシマの実態を独出身のジャーナリスト、ロベルト・ユンクに伝え、いち早く世界へ発信した。
 その妻、桂子さん(80)。夫の遺志を継ぎ、自身も8歳の時に原爆の閃光を浴びた。核大国のロシアが隣国を踏みにじった戦争は、ヒロシマの使命を改めて強く呼び覚ますことになった。・・・
 広島は人類のグラウンド・ゼロだ。時の国情に流されず、世界中に核廃絶を説く責務がある。新たな横軸を決して引かせてはならないのだから。
 ※・・・「横軸」という言葉を用いて時代の警鐘線を説いたところが、核兵器への新しい見方を示している。佳い文章だと思います。

 私事:一昨夜、シルバー仲間の一人に誘われて2軒お付き合いしたが、2軒目のカラオケラウンジでハイボールを飲みすぎついぞない酩酊に陥り、帰りの足もおぼつかなく、ようやく自宅最寄りバス停に降りたものの、家路をたどる途中に石段に転び、怪我は大したこともなかったけれど、スマホの失くしたことに、帰宅してから気づいた。もう一度深夜の夜道を探しに戻ったが、もとより酩酊の境にあっては見つけることもままならず、翌日知人に連絡して店を探してもらうやら、バス会社に問い合わせるやらして、午前中悶々として過ごし、午後飲み相手から見つからずの返答とスマホ屋に行けばGPSで探してくれるとのアドバイスに従い店にいくがやはりスマホ熟知者でも無理であり、店員から警察への紛失届を勧められたので自宅最寄りの交番へ届けると、どうも警官の対応に訝るものがありそれとなく様子を窺いなら指示されるまま筆記をしたり問いかけに答えたりして待っていると、箕面市本庁の方にらしきものが届いているというので、すぐに車を走らせ件の警察署に入ると、まさしく我がスマホが届いており、さてどこで拾われたかと聞くと、自宅最寄りバス停から程経ない場所だというのだから、交番所には最初に届けられたのであり、私が紛失届に訪れたときには警官たちははっきり承知していたのだったと彼ら不審な態度にもようやく合点がいった、という結末ではありました。
 余談:紛失に気付いた夜、スマホの「通信回路」の切断処置を、パソコンからスマホへ入り、処置をしたが、さて手に戻ったので「通信回路」復帰をはかろうとするもののパスワードが違うと言うのでスマホのサイトに入れない。切断した時には入れたはずだったのにと、訝しく困り果て、今日午前中にパソコンを再起動させたり他にいろいろしたが、やはりだめなので、だめもとで手帳の最新頁のワードを入れるとログインが成功、前夜はこのパスワードでは拒否されていた、なぜ、バスワードが日によって異なるのか、謎。

2022.8.25日記
毎日新聞朝刊 5面 
 ・・・9/27日に予定される安倍晋三元首相の国葬に対し、報道各社の世論調査で反対意見が強いことについては「それがあったからと言って国葬をやめるわけではない。国葬は当たり前だ。やらなかったらばかだ」と指摘した。
 答えたのは自民党元幹事長の二階俊博、何という奢りたかぶった言いぐさだろう。この傲岸不遜さに向き合う対象は見当たらず、救いようのない孤独の知的劣性を示しているとしか言いようがない。これで、一国の政治に携わる一員といえるのか、つらつら情けなくなる。

  8.23付毎日新聞 万能川柳 
 落ちて知る落ちる前までいた高さ 行田 ひろちゃん
8.25付同じく万能川柳
 信じるな「無礼講」と「忌憚なく」 白石 よねづ 徹夜
 
8.25朝日川柳
 言い訳は「知らなかった」で統一 京都府 上田邦夫
 五十歩が百歩を責める永田町 静岡県 安藤 勝志

2022.8.22日記
毎日新聞 7面の左端っこにおもしろい論評がのっていたので覚書に留めます。毎日にしろ朝日にしろ、夏の不機嫌な空の下蒸れる眼に、こういう刮目させられるような記事はありがたい。
メディアの風景 武田 徹 (専修大教授・評論家)
「経験の{再生力}を培え」(当事者なき後の戦争継承)抜粋
 77回目の原爆の日に合わせて広島を訪ねた。そこで何度も聞いたのが被爆者の高齢化によって経験の伝承が難しくなっているというはなしだった。
 困難の原因は高齢化だけなのだろうか。哲学者の森有正は著書「経験と思想」で「経験」は血肉となってその人をかたち作ってゆくものだと考えた。そうした経験は当人の生と一体化しており、ある人の人生を別の人が生きられないように他人がそれを経験することはできない。
 もう一冊、近刊の「当事者は嘘をつく」も参考になる。題名の「当事者」とは性暴力被害者となった著者の小松原綾香さん自身であり、「嘘」も誇張や作り話の類ではない。小松原さんは勇気を出して自らの経験を話してみたが、如何に誠実に語ろうとしてもどこか違う感覚が残り、自分は嘘をついているのではと呵責の念に苛まれてきたと言う。
 それも森が言うように経験がその人自身のものだからなのだろう。”個別性の極みである経験は、他の人と共有されて伝承の役割を果たす言葉という器にうまく収まらず、「経験した自分と「語られた自分」が乖離してしまう。“
 水が流れるように経験は経験者から未経験者へと伝わると信じて疑わない人は、こうした伝承を巡る原理的な困難を顧みずに語り部の役割を経験者に求める。そして語り部がいなくなれば、もはや伝承が困難になると考えがちだ。 
 戦争経験者の肉声を聞く機会は確かに貴重だったが、そこで伝承がどのようになされているか、丁寧に分析する必要がある。まず、”伝えられているのは経験そのものではなく言葉だ。だが、家族や友人を亡くした悲しみ、自らが味わった辛苦に裏打ちされた戦争経験者の言葉は重く、聞く者の心を揺さぶって話を聞く前とは異なる考え方、感じ方をするように彼ら彼女らを変化させる。”こうして戦争経験は戦争を知らない世代の新しい経験としてよみがえる。伝承とは経験の単純な転移ではなく、その再生のプロセスなのだ。“・・・
・・・いずれにせよ、総力戦の果てに核兵器まで使った人類の愚かな経験を、次の戦争を忌避する力の源となる新たな経験にとつなげる方法を模索する。それが、第二次大戦も遠くなった今、求められている。
 ※・・・「経験は言葉によって伝えられ、言葉は新たな経験を再生する」という、「経験の劣化・変質」をあえて避けているのか。
 
 かたいはなしはこれまでとしまして、9面毎日俳壇から三句ほど選びます。
 袴能見て玄海の夕日見て 唐津市 梶山
 稲光金平糖を噛み砕く 川越市 峰雄 雅彦
 梅雨しとど空低くして湖(うみ)荒ぶ 神奈川 浜野 節子 

2022.8.20日記
毎日新聞朝刊の記事を幾つか覚え書き
5面 「厚労相が陳謝{不信招いた}」(関係団体に会費)
 加藤勝信厚生労働省は19日の衆院厚労委員会の閉会中審議で、過去に宗教団体・世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係団体に懇親会費を支出したり、イベントに祝電を送ったりした対応について「国民から疑念を持たれ、政治に対する不信を招く判断で、至らない点があった」と述べ、「今後はこうした対応は行わない」と改めて表明した。
 立憲民主党の長妻昭氏や共産党の宮本徹氏らへの答弁。「信者による霊感商法や多額の献金が指摘され、刑事事件、民事訴訟も起きていると指摘されている」として問題がある団体との認識を示した。・・・
8面 「新疆で強制労働」国連報告書結論
 国連人権理事会の小保方智也特別報告書(現代的形態の奴隷制担当)は18日までに、中国の新疆ウィグル自治区で少数民族のウィグル族らに強制労働が課されていると結論付けた報告書を公表した。過剰な監視や移動の自由の制限など「人道に反する犯罪である奴隷状態に相当する可能性がある。さらなる分析が必要だ」としている。・・・
25面 「国葬の差し止め求め仮処分申請」大阪地裁に市民団体
 安倍晋三元首相の国葬は「思想・良心の自由」を保証する憲法19条に反するなどとして、市民団体「安倍{国葬}やめろ実行委員会」は19日、国葬の差し止めを求める仮処分を大阪地裁に申し立てた。国を相手取った民事裁判も起こした。
 仮処分の申立書によると、安倍氏は森友学園の国有地売却問題などを巡り、「国民の評価が真っ向から分かれている」と指摘。国葬は弔いの儀式に国民を強制的に参加させることになるとして、閣議決定の取り消しと予算支出の差し止めを求めている。・・・
 27面 「性別変更女性は{父}認定」(保存精子利用)男性の時 誕生の子
 男性から女性に性別変更した40代会社員が、自身の凍結精子でパートナーの30代女性が産んだ長女(4)と次女(2)を子として認知できるかが争われた訴訟で、東京高裁は19日、性別変更前に生れた長女の認知を認める判決を言い渡した。木納敏和裁判長は「長女は会社員が法律上{男性}の時に生れており、認知を請求できる」と判断した。一方、性別変更後に生れた次女は会社員が「女性」の時に生れたとして認知を認めなかった。
 ※・・・以上、問題意識の反芻材料のためとして、留めておきたいと思う。
口直しに、万能川柳と二句
 生きるとは初体験のくりかえし 行田 ひろちゃん
 タレントが評論するとテレビ消す 福岡 名誉教授 
2022.8.19日記
 毎日新聞朝刊 万能川柳 おもしろい句を覚え書き
 誠意とは翻訳すればカネのこと 生駒 鹿せんべ
 後ずさり児がして気づくノーメーク 川崎 さくら
 若者と優先席を奪い合う 和歌山 有田川野望
 納税者より偉いのか使う人 北九州 藤井真知子

2022.8.18日記
 終戦の日8月15日の毎日新聞朝刊に載っていた記事の一文を覚え書きとして残します。
 2面 風知草 特別編集委員 山田孝雄記 「2022年の戦争と平和」抜粋
 「戦争と平和」の結びにこういう一節がある。「歴史的事件の原因は権力であり、権力とは(政治体制を問わず)支配者に移譲された大衆の意思の総和である」ー
 歴史の歯車は権力者が回すように見えて、実は民衆の想いや行為に引きずられるというのである。
 トルストイに学べば、戦後日本の平和主義が揺らぐかどうかは、単に防衛費が増えるか否かではなく、日本国民一人一人の意思の問題である。
※補注・・・大衆迎合主義(ポピュリズム)と集団志向の両在する日本社会は、ひとたび事ある時は、「大道」を見失うという不安を抱えているように思える。

 毎日8月18日付朝刊 3面 万能川柳
 読めない字メガネをかけたら読めぬ字 柏原 柏原のミミ

 杉田水脈というひと、総務省政務次官に抜擢されたとか、やんぬるかな物議をかもしている。ある人いわく「それにしてもこの人事、誰か止める人はいなかったのか」

2022.8.17日記
毎日新聞3面 万能川柳
 「微力です」会場からは「その通り」 西宮 B型人間
 まず酒をやめろと言われ医者を替え 東京 ワイン鍋

朝日新聞 朝刊 
8面 朝日川柳
 図書館に座敷わらしのごとくおり 山口県 岩本 和彦
19面 なにわ柳壇
 どん底を知っている人の温かさ (堺・西)山崎 達彦

 以上、本日はおもしろい川柳を拾ってみた。毎日・朝日とも目につく記事はなかった。夏バテのせいなのか、好きな酒も程よく飲んだつもりが身体にこたえるようになった。今朝などは起きぬけに急な下痢にみまわれた。シルバ人材の労働をして昼食を摂るときには回復していたけれど、それでも具合はしっくりしない。夕食時、ハイボールを通常の半分にし、あと日本酒を半合ばかり飲み、湯豆腐とおじやの食事にすませる。味気ない。
 手持ち文庫本の「源氏物語」を1巻から再読しているが、解説が別ページなので意味をひろうのに苦労するので、今夕図書館から岩波書店「古典文学全集」巻1を借りる。解説意訳抜きで、読めるようにしようと図る。

   2022.8.14日記
朝日朝刊 天声人語抜粋 終戦記念日を明日に控えて
 ・・・出撃が死を意味する特攻は、異常な戦闘行為である。しかしそれは、もしかしたら戦争の本質をグロテスクに示しているだけかもしれない。強制的に国民の命を差し出させるという戦争の本質を。
11面 脳トレ川柳
 亡き母にその後の人生を話したい 山口 山川康昌

2022.8.13日記 8月12日付毎日朝刊
7面 オピニオン「世界を覆う景気後退危機」と題して、現在の景気動向分析の記事が載っている。ピンポイント抜粋
 まず窪谷浩(ニッセイ基礎研究所主任研究員)
 ・・・問題はインフレの要因となっている供給制約と資源高に関し、金融政策で対応するには限界があることだ。資源高によるインフレ局面では本来、財政出動で物価高の打撃を受ける低所得者層を支援するのが主導だ。しかし、米国はその道は取らず、利上げなど金融引き締めを加速して経済を強引に減速させ、需要を供給に見合うレベルまで下げようとしている。
 次に小峰隆夫(大正大地域構想研究所教授)は日本国内について分析している。「日本、金融政策正常化は必定」ピンポイント抜粋。
 物価上昇が継続する状況になれば、日銀が大規模な金融緩和でデフレ脱却を目指す根拠はなくなる。金融政策を正常化するタイミングが近づいている。日本はこれまでデフレやコロナ禍などを理由に金融緩和や財政出動など大盤振る舞いを続けてきた。しかし、「非常時対応」が長期化した結果、財政規律は緩み、金融機関の経営が打撃を受けるなど副作用が顕在化している。政府は石油元売りに対する補助金など目先の効果にとらわれた政策に巨費を投じるより、労働移動の円滑化や非効率な企業の市場からの退出などを進めて経済成長を阻害する岩盤を取り除くことが重要だ。

8月13日付朝日新聞
1面 折々のことば
 「人間が二人います。力は倍になります。しかし、責任は半分になったと感じるのです。」
            なだいなぎ 「人間、この非人間的なもの

8月13日毎日新聞
3面 万能川柳
 軍人のパレードに見る幼児性 
 
2022.8.11日記
朝日朝刊 1面 折々のことば
 「能力というものは、自分が持っているものと考える筋合いのものではない。」辻 静雄
 料理研究家の「フランス料理の手帳」から。能力は、その人の仕事ぶりを見ている人が測ってくれるものなのに、人はそこを勘違いして、努力が報われないとつい他人や社会のせいにすると、辻は言う。誰にでもできる仕事をこつこつやっているうちに、まわりの人から「これはあの人にまかせておけば大丈夫」と言われるようになって、はじめてその人の能力となるのだ。
 ※・・・ということは、能力(ability)は、基からその個人にそなわっているものではなく、日々切磋琢磨して造り出していくものであったか。

毎日新聞 万能川柳
 桃太郎一体鬼は何をした 古河 ぺあーの
6面 {解説}山川草木悉皆成仏(さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)自然界のすべてのものは生き物であること。

2022.810日記
8月9日 11面 毎日俳壇
 面影は齢重ねず墓洗う  和泉市 中川 永子
 母をまだ仏と言へず茄子の花  東京 吉田 かずや
 日盛りや犬にも小さき影生れ  小平市 斎藤 幸枝

8月10日(水)毎日新聞 万能川柳
 本物のマゴにオレオレ詐欺に遭う 宮崎 砂土原ナス

覚え書き 「専守防衛」の重要性。政権が変わろうとも、日本はこれを守りぬかねばならぬ。憲法には多少逸脱しているとはいえ、ぎりぎり譲歩できる軍事力とはあらんか。
 
朝日新聞朝刊から
2面 大見出し 「海峡 ペロシショック」
 概ねどのマスコミ紙・政府筋・欧米関係は、今回の中国狂気の大規模軍事演習事態の招来を憂い、藪をつついたペロシ氏に、表向き非難の目を注いでいる。
 しかし、今回の中国反応は狂気じみた幼稚さであった。長い目で見れば、これで中国首脳の、軽佻浮薄程度が露呈したと言える。もう少し歴史を知る賢い首脳筋なら、外交面でもっと実効のある手段を講じたろうに。ペロシ氏の勇気ある決断を評価したい。
   
2022.8.7日記
読売新聞朝刊
1面 編集手帳から抜粋
 石麻呂に我物申す夏痩せに良しというものそ鰻捕り食(め)せ 大伴家持
3面 大見出し「対ロシア 欧州政局不安」 インフレ拍車 高まる不安

朝日俳壇 8面
   表情を蒸発させて炎天下 東京都 竹内宗一郎
 昼寝して海の鴎となりにけり 三郷市 岡崎政宏

みなわの一句
 焼ける日にひとり紅染むさるすべり 箕面市 みなわ

2022.8.6日記
 今現在の、世界を取り巻く核兵器禁止状況について、記憶として整理しておく、
朝日朝刊から14面社説抜粋
 広島、長崎の惨禍を経て、戦後世界が堅持してきた規範がある。条約や制度に限らない。「核兵器を使うことは本質的に過ち」とする。モラルの「芯」というべき不文律である。
 それは米政治学者のニーナ・タネンウォルド氏は「核のタブー」と呼ぶ。
 「非核を求める市民の声。核軍縮などに向け機能した国連。破壊への想像力」が禁断の意識を育み、越えてはならぬ一線を共有してきた。その規範が「揺らいでいる」という。
 背景にはまず、平和の秩序を守るルールや枠組が軽んじられてきた現実がある。例えば大国の専横で機能不全に陥った国連安全保障会議だ。
 規範を守るよりも破ることを売り物にする政治が蔓延するなか、理性の歯止めをかけるリーダーはどれだけいるだろう。
 そして忘却。政治家の世代交代で、「ヒロシマは彼らの集団記憶枠外にある」と、米歴史家のダニエル・イマーバール氏は英紙への寄稿で指摘する。
 規範が弱められた先に、ロシアの侵略戦争と核脅しがあったとみるべきだ。核を保有する国、依存する国全てが、その責任とむきあう必要がある。
 ※・・・不完全な知性を有する人間が、原子核の応用産物をこしらえたのは、大きなる過誤であった(神様のミス)。核を兵器として使うそもそもの発端の意図が、人間の愚かさを象徴している。なるほど、核兵器は相手を恐怖におとしいれ、その脅威によって相手国を屈服せしめる。この有益な兵器は、世界の版図を塗り替えるだろう。しかし、そんな手品は通用するはずもなく、どの国にでも核兵器は物理的に製造することは可能になった。世界を治める手段に、知ではなく力を用いるという歴史が繰り返され、とうとう禁断の道具を作ってしまったことは、どうしょうもなく悲劇である。且つ又、劣等な知性を有する個人が、世界に影響をあたえる国のトップに在ることも、悲劇である。
 いずれ早挽、世界的な核戦争は避けられないだろう。一般の無力な人間にそれを回避する術は皆無だからだ。人類はおろか地球上の生物はすべて滅び、火星地表面のように、地球は荒廃するだろう。  地球および全生物消滅は、すべての人間の責任である。

朝日夕刊 天声人語から 抜粋
 今は哀れ原子爆弾うけし前日の勝つとう流言にわれら依りしが
 可憐なる学徒はいとし瀕死のきわに名前を呼べばハイッと答えぬ
     被爆歌人 正田 篠枝

ある映画の一場面が、未だに瞼に浮かぶ。新藤兼人監督の「原爆の子」。乞食生活をしながら孫の少年を育てる岩吉老人は、原爆被災者であり、無残な原爆ケロイドを顔面にもつ。或る夕、乞食小屋の外で、岩吉老人の焼く鰯を診て、11歳の少年は小躍りして喜ぶ。「わぁい、お頭つきの魚だ!」どうして、こんなご馳走なのかと、孫少年は老人に何度も尋ねる。実は、岩吉と少年が夕食を共にするのは、これが最後だった。翌朝、少年は岩吉知りよりの女性に引き取られ、老人から離されていく。若い女性は、当時広島で教師をしており、教え子のその後の安否を尋ねていた。岩吉は彼女の家の使用人だった。自分の手元で育てると気負っていた岩吉も最後には折れ、孫の将来を女性に委ねた。
 粗末なバラック小屋の前で、七輪で焼かれる鰯が、この世で最高のご馳走に映り、今も一抹の悲しみをもって脳裏に浮かぶ。

2022.8.4毎日新聞
3面 万能川柳 どこにでも不良長寿は居るもんだ 鎌倉 狩野稔

最近古本屋で買った本「端役で光る 源氏物語」、そのうち3の「夕顔物語を演出する端役たち」外山敦子、4の「紫の上と少納言の乳母、そして女房たち」吉井美弥子、二つに特に興味を持って読んだ。女性だからこそ共鳴し得たと思われる「女の繊細な情」をよく採りだしていると思う。夕顔の意を受けた女童が、光源氏の随身に、折り取った夕顔の花弁を受ける扇を差し出す、扇には夕顔の歌が記されていた、源氏は同じく扇に返歌を記して女童に手渡す。これだけの所作に、屋内の影から源氏の動向に興味をつのらせて眺めていた、夕顔という陋巷に身を置く佳人の、つつましやかな情が顕われてくる。また、紫の上という物語女性には、私は特に内心惹かれるものがある。祖母の尼に死に別れた若紫の、心許ない身に付き添う少納言の乳母は印象ぶかい。

2022.8.3日記
毎日朝刊から
9面 オピニオン「論点」安倍元首相国葬 宮間 純一 中央大教授(1982生れ)の論評抜粋
 今回の国葬を巡る経緯は、二つの観点から、現代日本の民主主義に反している。一つ目は国葬が、かって言論・思想を抑圧する性質があったという歴史的経緯、二つ目は国葬の決定に際し、国民の意思を排除した過程の問題だ。・・・
 過去の経緯から国葬は被葬者のためではなく、主催する側が政治的意図を持って利用してきたことが分かる。・・・
 個人的には国葬は現代にそぐわず、不要と考える。国家がある人物への評価を固めるのは、特定の思想への評価を下すことになり、反対する思想への侵害になりかねない。・・・
 国葬は予定通り行われるだろう。わたしたち国民は何ができるか。それは他人に強制しないことだ。法整備がないため、国葬で何を国民に求めるのか分からない。過去の国葬では、小学校校長や企業経営者が部下に弔意を指示した例もある。また同じことが起きないか、注意が必要だ。
(※・・・他方、有馬晴海氏(政治評論家)になると、概ね肯定意見の論評となる。)以下抜粋
 ・・・国葬は安倍氏を美化するための手段でなく、首相としての重責を長年、果たしてくれたという思いで死を悼む。そんな時間を国がつくる、という位置づけでよいのではないか。
 囲み記事として以下の実例が挙げられている。
戦後の実施は1例のみ
 国葬を定めた「国葬令」は戦後、日本国憲法の施行に伴い廃止。戦後の首相では、吉田茂元首相が唯一の「国葬」となった。佐藤栄作元首相は1975年に内閣と自民党、国民有志が主催する形の「国民葬」。岸信介、福田赳夫、大平正芳、中曽根康弘各元首相は「内閣・自民党合同葬」。鳩山一郎、池田勇人各元首相は「自民党合同葬」、田中角栄元首相は「自民党・田中家合同葬」だった。
   ※・・・戦後、GHQと渡り合い日本復興の礎を築いた吉田茂元首相の実績に、安倍元首相のそれをなぞらえるのは、一政党による狭小な牽強付会というべきか。岸田首相の思惑は那片にあるのやら。

2022.7.28日記
朝日新聞
11面 論壇時評 「知られぬ事象 拾う報道こそ」 東京大学大学院教授 林 香里
 安倍元首相殺害・統一教会に関して、女史の採りあげた出版物を以下に記します。(抜粋)
@ <独自>安倍元首相を撃った山上徹也が供述した、宗教団体「統一教会」の名前
   (現代ビジネス、7月9日)
A 鈴木エイト 「矮小化される安倍晋三氏と統一教会の関係」
   (週刊金曜日 7月22日号)
B 北丸雄二 「安倍元首相殺害事件が照射する自民党とカルト宗教との親和性」
   (論座、7月14日)
 最後に、女史の締めくくり論評抜粋
 ・・・いったん話題になると報道が集中し、注目が下火になると報じなくなるメディアの横並び体質。その繰り返しでは、宗教右派と政治の闇や、そこに沈んだ人々の苦しみには到達できない。民意が反映されない歪(ゆが)んだ政治運営を止めるためにも、ジャーナリズム本来の権力監視機能を研ぎ澄まし、巻き返しを図ってほしい。
 ※…女史の歯痒さを、察します。今のマスコミは、きわどい冒険を避けるようです。
 論壇委員会から
 ・・・なぜ新聞社が宗教法人名を当初明示できなかったか、委員からも問われました。「宗教法人」といったあいまいな言葉だと、ネット時代には陰謀論が増えかねないという指摘は重大です。記者として誤りを出さぬよう、慎重な取材と執筆を心がけてきましたが、慎重さが疑念を招くことがある。報道のあり方の根本を揺さぶられた思いです。
 ※・・・もっともっと追及して全容を明るみにあばきだしてほしい。(みなわ)

2022.7.27日記
 旧統一教会が、今回の安倍元首相銃撃事件により不気味な存在として社会表面に浮かび上がってきた。昨日今日と、毎日新聞が取り上げているので、その抜粋を拾い上げてみます。
2面 水説 古賀 攻 旧「統一教会への依存」
まとめのくだり・・・阿部派の下村博文前党政調会長は事件直後、テレビで岸田文雄首相向けに「安倍派がつかんできたコアの保守の人を疎んじることになったら自民党から逃げるかもしれない」とすごんでみせた。
 コアの保守とは何か。日本会議や神道政治連盟に加え旧統一教会も入るのだろう。一種の宗教利権として教団の反社会性を追認してきた政治家は、カルト被害の道義的な責任がある。
5面 社説
・・・旧統一教会は68年、反共産主義を掲げて政治団体「国際勝共連合」を発足させた。当時から「反共」という点で一致した安倍氏の祖父、岸信介元首相ら自民党のタカ派議員を中心に、日本政界との関係をつくってきた。
 ・・・自民党議員にとって資金援助や選挙での組織票以上にありがたいのは、ビラ配りやポスター張りなど人でと手間がかかる仕事を信者がしてくれることだという。
 ・・・国会や報道機関が実体を解明するのは当然だ。そして何より、自民党は長い歴史を検証し、国民に説明するとともに、教団との関係を清算すべきである。
 ※・・・もう30年前になるのか、有名歌手・芸能人、オリンピック体操選手らが入信して、合同結婚式をしたとのニュースが話題になった。ある人は後になってマインドコントロールされていたという。今も不気味に暗躍しているのだろう。中国の歴史を看ても、民衆の蜂起した乱の背景にはたいてい宗教が基にあった。
 今や、政界・経済界・マスコミ界・社会全般にも深く浸透しているような気がする。ある日たまたま隣に居る人に質せば、信者の一人だった、というような冗談で済まされない現実がやってくるかしれない。
 人の心をコントロールするのは、ある種の人間にとってはたやすい。決められたルーティンに沿って、人にはたらきかけていけば良いのだ。犬や猫に比べて、ひとの心は微妙に進化したおかげで、脆弱な領域がある。猫に通じないコントロールでも、人間には通じるのが可能だ。

万能川柳
 こんなにもタレントいらん思うけど  川越 麦 そよぐ
 猫だけど話し相手をしてくれる    横須賀 だ ピンチ
 夕方の空など知らず台所       北九州 お 鶴

朝日朝刊から
1面 折々のことば
 人としては善にほこらず物と争わざるを徳とする。他にまさることのあるは大きなる失なり。 兼好法師 (徒然草より)
 ※・・・わたしの愛読書です。

2022.7.26日記
毎日朝刊
2面 火論 大治 朋子 「カルトと全主義の足音」と題して、現状日本社会にたちこめる暗雲の不気味な兆候を、先の安倍元首相銃撃事件の余波を通して慨嘆しておられるコラムです。以下抜粋、冒頭と、まとめのくだりを拾います。
 「マインド・コントロールの存在やその強力さを信じられないひとは、戦前、戦中の日本社会を考えてもらいたい」
 立正大学の西田公昭教授(社会心理学)はその著書「マインド・コントロールとは何か」(紀伊国屋書店)でこう書いている。
 日本は当時、「勝利」の幻想を抱いて、破滅へと突き進んだ。
 「破壊的カルトは、これと同じようなことをしょうとしている。彼らがメンバーに与えている{自由}は、マインド・コントロールによって見せている{幻想}である。つまり、破壊的カルトは、全体主義思想による支配を現代の自由主義社会の真ん中で、こっそりおこなおうとしている」
 ・・・そういえばもう10年も自民党「1強」を支え、社会的弱者へのいじめや虐待は広がるばかりだ。
 現政権は、殺害された安倍晋三元首相の国葬を早々に決めた。号令一下、疑問の声はなきものと見なす。一方、「カルト」と批判されて久しい「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)との関係についてはだんまり。これが「民主主義への挑戦」と仰々しく叫んだ安倍氏殺害事件への答えなのか。
 カルトが幻想を見せるように、私たちも民主主義の幻想を見せられているのか。オウム真理教を生んだ社会。カルトが巣くい、全体主義への足音が響く。
 ※・・・少々研ぎ澄まし気味の論評ではありますが、しかしながらこれも「もしかしたら」ありえるのかと、こころしておく必要があります。岸田政権の、事件後の妙な落ち着きようとそれにしては「国葬」などとジャンプするような態様に、不自然さは今もつきまとっています。「もしかしたら」だけど、統一教会がなにか関与しているのか。疑念は日夜膨らんでいく・・・

2022.7.23日記
毎日朝刊
5面社説 安倍氏「国葬」を決定 
 「なぜ国会説明しないのか」
 (毎日新聞が、国葬に対する疑問点と非理を、過去の例と条理を並置して挙げている)
 銃撃事件で死亡した安倍晋三元首相の「国葬」を9月27日に行うと、政府が閣議決定した。
 ・・・自民党の茂木敏充幹事長は「国民から{国葬はいかがなものか}との指摘があるとは、私は認識していない」と述べた。異論に耳を傾けようとする姿勢が見えない。
 ・・・まず、首相経験者の国葬に法的根拠がないにもかかわらず、国会に諮ることなく政府の独断で決めたことだ。
 ・・・75年の佐藤栄作元首相の葬儀では、法的根拠がないことを理由に国葬が見送られた。今回は内閣府の設置法に記された「国の儀式」として行うというが、政治家の葬儀に適用されたことはない。
 弔意の示し方は個人の内心の問題だ。押しつけにつながらないかとの懸念もくすぶっている。・・・学校や自治体、企業などに対する同調圧力が生まれないよう、配慮しなければならない。
 吉田氏の国葬では、政府が官公庁などに黙とうを指示し、民間にもイベントなどの自粛を求めた。
 ・・・日本の民主主義の基盤は、国民の代表で構成する国会である。国民の疑問に答えるには、政府が国会で説明し、議論することが欠かせない。

 ※・・・反対意見:共産党(国民のなかで評価が大きく分かれている安倍氏の政治的立場や政治姿勢を、国家として全面的に公認し、安倍氏の政治を賛美・礼賛することになる)
 慎重意見:立憲民主党(岸田政権が拙速に決めたことに大きな疑問を感じる。透明性がこれまでにも増して求められている。閉会中審査で政府からの国民が納得できる説明を求める)
 なぜ、国葬などとの発想が事件二日目に、湧いたのだろうか?普通なら、事件の全容解明がある程度済み、政府・関係者の状況が落ち着いた頃に、挙がってくる提言ではなかろうか。そこに引っかかり、それからそれへ疑問が展延していく。

2022.7.20日記
毎日朝刊
2面 水説 古賀 攻
 「国葬という政治判断」 最後の結のくだりを抜粋します。
 ・・・今回の銃撃事件は101年前に起きた原敬首相刺殺事件と比較されることが多い。パンデミックの影響下という共通点もある。
 暗殺情報を得ていた原はもしもの時は東京で何もするな、葬儀は地元盛岡でやれとの遺書を残し、遺言通りに行われた.原が政党政治の確立と国際協調に多大な貢献をしたとの評価は定着している。葬儀の形が政治家の値打ちを決めるわけではない。
 ※・・・岸田首相がなぜあわてて国葬と決めたのだろうか?なにか動かしがたい大きな裏があるような気がしてならない。
 私事 昨日今日とクリーンセンターのおしごとをし、明日はまた市のチラシを各配布者の家へ卸に行く仕事が臨時に入った。主に配達の車を運転するのだという。無為に過ごす楽しみの時間が減っていく。
 明日は晴れますように。

2022.7.19日記
新聞記事にも、これと目を引く記事もみあたらないこの二日三日である。最近読んだ本の、これはと感じた二冊を、記録として残します。
 一つは「わが淀川」(やぶにらみ浪花噺)著者:井上俊夫 椛錘v社 1979年4月発行
 井上俊夫という方は、17歳の頃まで私と同じ寝屋川市中村という村に住まわれていたのですが、雑誌か何かの本でそれを知ったのもちょうどその頃でした。わたしはそれから父との不和もあって親元を離れたのです。そうして知ってから思い出したのですが、井上氏のご夫人はわたしの小学一年生の時の担任教師だったことです。鮮烈な記憶です。同じ村内の同級生を、教室で私は誤って鋏で傷つけてしまったのです。先生は血相変えて怒り、「けいさついこ、けいさついこ!」と私の手を引っ張ったものです。この先生には妙な習癖があり、授業中、傍らに用意したコップに始終唾液を吐きだすことです。痰だったかもしれません。授業の終わるころには、コップに八分ほど溜まっていました。そんな事ばかり、目に留まる子供だったようです。
 内容は、淀川沿岸の各地域にまつわる郷土歴史話なのですが、なかなか出典がしっかりしていて、特に古典の物語に由来する逸話は読みごたえがあり、このまま貴重な資料として残しておきたい本です。
 二つ目は、「中国長江 歴史の旅」 竹内実著 朝日新聞社発行
 長江に関する歴史・風土、文化、経済を織り込んだ紀行文ですが、さすがに京大教授という学究だけに、やや微に入り過ぎて冗長な部分があるとはいえ、アカデミックな視点で捕らえられたアプローチには、読んで惜しくない価値があります。あらためて熟読したいと思う。一つめの「わが淀川」は、そのような気負いとは異にして、気が向いた折、手に取って気楽に頁をくる本とは言えます。

2022.7.17日記
毎日朝刊
1面・3面 「時代の思想 ドラマが語る」 佐藤優 元外務省主任分析官として、対ロシア外交で活躍。2002年、背任容疑と偽計業務妨害容疑で東京地検特捜部に逮捕・起訴された。09年、最高裁で上告を棄却され、有罪が確定した。失脚後は作家として活躍。「国家の罠」「日露外交」など著作多数。
 対談 聞き手 池上彰 抜粋
・・・外交は「価値の体系」「利益の体系」「力の体系」という三つから成り立っています。しかし、日本の報道や有識者は「価値の体系」の話だけ。民主主義対権威主義、あるいは自由対独裁というような二項対立です。
 ・・・即時停戦(ウクライナ戦争)で、戦闘以外の方法で解決を探求すべきです。このような話ができるのは、タイミングが変わってきていると私は見ているからです。
・ なるほど、どう変わってきているのでしょうか。
・・・残念ですが二つの要因があります。一つは戦局で、ロシアが制圧する地域が増え、「これではウクライナは勝てない」と米国関係者が見ていることです。もう一つが米国の世論調査。ウクライナの戦争にどれくらいの人が関心を持っているかというと最近は3,4%にとどまっています。権力者にとって、この戦争は早く手じまいしないといけない、という流れになってきています。
 米国が軍隊をウクライナに派遣する、あるいはウクライナが必要とするだけの兵器を送れば局面は変わるでしょう。でも、米国はウクライナの勝利よりも、ロシアとの直接戦争を避けることを優先させているのです。そうした管理された戦争をしている限り、ウクライナは勝てない。冷静に情勢を分析している人は、米国からの武器支援や、そのタイミングを見ていると管理された戦争であると分かります。しかし、日本の報道ではなかなか見えてきません。
・ そのようなことを佐藤さんが指摘するとたたかれるという日本国内のムードも影響しているのでしょうか。
・・・たたかれても私には関係はありません。それよりも怖いのは情報を入り口で拒絶してしまい、冷静な議論、あるいは外交は三つの体系から成り立っているという当たり前の話をしても、受け手が耳を塞いでしまうことです。そうなってしまったら発信する意味がありません。
 インテリジェンス(情報収集・分析)の政治化が起きていることも指摘したい。日本の防衛研究書の分析官が、ウクライナ戦争は、NATOの東方拡大問題も原因の一つだと公にすることは、米国を批判し、ロシアを利することになるから言わないという。政治化したインテリジェンス分析はプロの仕事ではない。重要なファクターを無視することはよくない。
 ※・・・いい加減うんざりしてきたウクライナ戦争である。同じ主張と援助を乞うゼレンスキー氏の無精ひげ顔も、平然と構えるプーチンの偉そうな態度も、見飽きて食傷気味になった。この戦争に終止符を打てる人物の欠如が、そのまま世界の弱くなった結果でもある。

2022.7.16日記
毎日朝刊から、目についた記事を抜粋
2面 {焦点}「世界経済 覆う危機感」の大見出し、縦字で「中国 都市封鎖で失速」と小見出し、中ほどに「G20 機能不全を露呈」と内容の説明
 ・・・しかし、ロシアもメンバーとなっているG20は完全に機能不全に陥っている。ロシアと、それを非難する日米欧の亀裂が深まり、踏み込んだ議論ができない状況が続いているためだ。
5面 安倍氏の国葬 共産党が反対
 …「国民のなかで評価が大きく分かれている安倍氏の政治的立場や政治姿勢を、国家として全面的に公認し、安倍氏の政治を賛美・礼賛することになる」などと実施に反対する談話を発表した。
 ※・・・モリカケ問題、「桜を見る会」領収書問題、100回以上の国会虚偽答弁、アベノミクスの功罪等々、真実を明かすべき課題を残したままで逝った人間を、国民こぞって送るに値するのだろうか。(ほっとした人間にとっては、礼賛したくもなるのだろう)
11面 「時代の潮流は変わらず」井上寿一の{直接行動の事件史}から抜粋
・・・安倍元首相の銃撃事件は、国民に大きな衝撃を与えた。他方で10日の国民の投票行動は冷静だった。事件前の予測と実際の選挙結果との間に、この事件の直接的な影響を見出すことはできないだろう。「同情票」などによって自民党に有利に働いた形跡も乏しい。事件が選挙結果を左右することはなかった。
 他方で現代版の「投票階級」がSNSなどを通して、政治を動かそうとした。限られた情報に基づく牽強付会な議論は、事件の原因と「安倍政治」の功罪への評価と短絡的に結び付けた。事件をきっかけとして、言論は封殺されるどころか、質の劣化を露呈する有様だ。言論の危機は自ら招いたのである。
 ※・・・思慮の足りない一部の人が、己をアピールするために暴走したのだろうか?嘆かわしい。

 2022.7.13日揮
朝日朝刊
1面 折々のことば
 どのような逆境でも、ときでも、にんげんの(または女の)、庭をはくなどという営為にうたれる。 石牟礼 道子
 庭を掃く音に作家は目を覚ます。そして戦後、防空壕に住みつき食を乞う人らの一人が道の一画を掃き、一日の始まりとする姿を思い浮かべる。とにもかくにも一時、安んじて身を置ける場所、寄る辺、よすがを恵まれたことへの感謝とともに、そこを通ってゆく人々の安寧への細やかな祈りとして。 「目録B」(「アルテリ」13号)から。

   朝日川柳 
 シーソーは上がったほうが軽い人 茨城県 五社 蘭平

2022.7.11日記
毎日朝刊
15面 「自民勝利 笑顔控えめ」の大見出し その右下片隅に識者の意見として、参院選投票結果の総括が載っていた。
 有権者「現状維持」を支持 神戸女子大名誉教授 思想家の内田樹さんの話 (全文)
 今回の選挙では、改憲や経済問題ばかりでなく、大きな問題である新型コロナウィルスのパンデミックス、気象変動、戦争、人口減少も論点であったはずだ。今の政治はこうしたシリアスな問題に対応できず、日本の国力は落ち、国際社会での地位も低下しているが、有権者は現状を支持した。僕としては「ああ、そうですか」としか言いようがない。
 野党に政権担当能力があるとか、自公連立政権の代わりに政権を取ればすべて解決するとは全く考えていないが、野党は今が危機的な状況であるとは訴えていた。だが、国民にとっては、自公がやって来た政策が正しかったし、日本が衰微していくシナリオを選んだことになる。国民が一番割を食うことになるが、責任は国民が引き受けるしかない。それが民主主義だ。
 ※・・・とまれ!有権者全てが 自公に票を投じたわけでなく、あくまで量的な多寡としての結果なのだから、悲観するにはおよばないと思う。民意はたえずひるがえり、流動していく。選挙結果はその節目として、その時々の断面を映しているに過ぎない。歳月に腰を据えて、政治風景を気長にながめていこう。いつかはきっと、弱者の住みよい社会になると期待して。
 「争点隠し」功を奏した 政治アナリストの伊藤惇 抜粋
 与党にとっては、国民の意見が対立しそうなテーマを避けた岸田文雄首相の「争点隠し」とも言える姿勢が効を奏した。

余談 何か引っかかるものがある。TV/新聞のニュースは、今の場合、軽々にうのみにできない危うさがある。山上徹也独りの犯行なのかどうか?

2022.7.7日記
朝日朝刊
1面 天声人語から抜粋
 福島の原発事故について最高裁が先月出した判決は、国に対してずいぶんと寛大だった。・・・
 役割を果たさなかった国に対し、驚くべき優しさである。未熟者ゆえに大目に見られたかのような印象すら受ける。認めがたい判決だが、百歩譲ってその理屈に従えば、はなから国には原発規制を担うだけの能力がなかったことになる。
 ・・・原子力の問題は突き詰めて言えば、人類に担う当時者能力があるのかということだ。
 ※・・・三権分立の制度がゆらいできたのかな。昨今、行政府と司法が、熟れあってきているような観をうける。
 折々のことば
 悪い変化が起きたときは対応(how)を考える、よい変化が起きたときはその理由(why)を考える。  信田さよ子

 覚書言葉 「ESG」
 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)・・・企業が長期的に成長するためには、経営においてESGの3っつの観点が必要だという考え方。
 ※・・・昨今は、なんでもかんでも横文字で、新しい考えを表すようになった。若い世代には、その言語文化がウケるのだろうか、にしても英語力は普及しているように見えない。

2022.7.6日記
私事、選挙投票について考えてみた。
 この歳になるまで幾ども投票をしてきた。自分の一票を投じた候補者が落選したことも多々あり、そのたびむなしい思いをしたものだった。
 6月26日付朝日新聞の「葛藤のすすめ」友野隆成宮城学院女子大教授の記事を読んで、むなしさは虚しさでないことを教えられた。それを契機に、投票という国政参加への心構えがすこし改善されたように思う。
 友野さんは言う、「民主主義はあいまいさと向き合う営みでは」。投票した人が当選するとは限らない。期待通りの政治をする保証もない。でもあきらめない。とことん葛藤する。それでいい。と。
 当選というのは、二義的なことではないか、たとえ落選したとしても、その意志や考えは廃れないし、後々生き続ける。投票というのは、競馬のように本命狙いや、穴馬狙いではない。自分がこれと考えた候補者に、己の生きざまと未来を託せる候補者を選ぶ行為が、投票である。当落に依拠されず、ひたむきにおのれの信念を貫き、志を同じくする政党や候補者を選ぶ、これが競馬の賞金狙いとはまったく異なる、民主主義の国政参加というものではないかと、考えた。つまりは、ささやかな有権者の一滴の意思表示なのだが、一滴の水は岩をも穿つ、
 憂いる、TV等マスメディアの攪乱は甚だしい。享楽の混沌へ大衆を誘導するのが、彼等の目先の仕事なのか。そういう風潮に乗っかる一部の政党や候補者も、嘆かわしい。わたしは、憂いる。

2022.7.5日記
 今日の新聞朝刊では、朝日・毎日とも「人口問題」を、軌を一にして採りあげている。なにか符牒の合うことがあったのか。以下毎日新聞では5面の社説において
 ’22参院選 進む人口減少 「大変だ」では、どうする と題して
冒頭 人口減少問題は従来の国政選挙に比べ、参院選の遊説などで言及されることが多い印象だ。とは言え、各党の公約での位置づけは総じて低いままである。と嘆き・・・
 なぜ、多くの政党が正面から向き合わないのか。と訴え
最期に 内政の最重要課題は、人口減少である。手遅れにならないよう、各党は今回の論戦を通じて、その認識を共有してほしい。と願う。
 一方朝日新聞では、1面・3面と続けて、「深論」とコーナータイトルを設け、東大名誉教授 北村 凌二氏のインタビュー・対談記事を載せた。
「減る人口 成長の可能性はあるのか」と題して。以下抜粋
・・・ローマ史研究の泰斗、木村凌二東京大学名誉教授(75)は「歴史上、出生数が少ない国家や民族は繁栄しない」としたうえで、西ローマ帝国崩壊の遠因も人口減少だったと語る。「2世紀半ばに大規模な疫病が発生し、ローマ人の3分の1が失われたと言われています。この影響が残るなか、3世紀になると東はペルシャ、西はゲルマン人などの攻勢にさらされました。軍事費がかさんで財政は破綻寸前なのに、安易に通過を増発し、物価は高騰。財政危機は経済危機、更には社会危機へと拡大しました」
 歴史家はこれを「3世紀の危機」と呼ぶが、なんだか既視感のある光景だ。普通、国債の残高が約1千兆円あるのに異次元金融緩和を続け、物価高が進み、景気の悪化が忍び寄る今の日本と、どこか重なって見えてくる。
 だがそれでも日本は、できることはあると木村さんは考える。「経済の衰退と文明の衰退は別です。他者への気遣いや礼儀正しさと言った文明としての日本の良さは、諸外国でも美点として評価されています。まず歴史から学ぶこと。そして古代ローマのように、潜在力が自らあると信じる人材をつくっていくことでしょう。
・・・ローマには共和制の伝統があり、奴隷でない限りは相手の自由も認めるという意識が強かったからです。そうした寛容さが、約200年間にわたって大きな戦争がない「パクス・ロマーナ(ローマの平和)」の時代を築きました。
 ・・・ところが衰退期になると、次第に寛容さがなくなっていきます。「自分たちはローマ帝国の栄光やローマらしさを失いつつある。それは侵攻してくるゲルマン人のせいだ。他の宗教を認めない、かたくななキリスト教のせいだ」と考えるようになったのです。ローマに限らず、社会の中核にいる人たちが寛容さを失くしていくことは、国家が衰退していく際の大きな指標だと思います。
   ※・・・既存の政治家の中で、「人口問題」について真剣に取り組まれた方はおられるか。人気取りのうわっすべりな取り組みでなく、専門知見者もまじえ、あるいは諸外国各界専門家などの幅広い意見を採り入れての科学的な研究であるが、だれかおられるか。

2022.7.3日記
 昨日の選挙公報配布が相当こたえたようで、今日一日なにをしようともその気にならず、唯一午前中にスタッドレスタイヤ交換の準備のため、懇意にしている車店にタイヤの手当てをしたぐらい。ぐったり数独に没頭したり古典本を読んだりして、夕刻まで怠惰に過ごした。図書館にも行ってないので、時事情報のネタがない。TVおよびスマホのNetにしか接していない。思えば、いままでついぞなかった一日の過ごしようだった。

2022.7.1日記
毎日朝刊
9面 時の在りか 伊藤 智永 抜粋
 ・・・「ねじれ(衆参議会)」は政治の安定を揺るがす異常事態と吹聴されてきた。でも、考えたらそれはおかしい。そもそも2院制は異なる視点で法案を審議し、行政をチェックするための制度である。
 「ねじれ」が起き得るのは憲法の想定内。だから、予算や条約に関する衆院議決の優越、一般法案の議決が両院で違った場合は衆院の3分の2以上で再可決されれば成立と、といった速さと慎重さを使い分けたしくみが定められている。
 議会が議会らしく働くための手間と思えば、与党が参議院で野党対策に手を焼くぐらいがちょうどいい。連立の面倒くささも民主主義のコストである。よもや「コスパ(効率)がどうの」とは言わせまい。
 むしろ問題は、議会が議会らしくない場合だ。通常国会はひどかった。政府提出法案すべて成立。対決法案も印象に残る議論もなし。万事「事なかれ主義」の岸田政権はご満悦でも、これじゃ政治がないに等しい。参議院など影も形も見えない。国民は何を審判できようか。ああ、「ねじれ国会」が懐かしい。
 ・・・だいたい衆議院で落選したら参議院へ転がり込み、首相を目指す参議院の重鎮が我先に衆議院へくら替えするようでは、誰が真剣に投票できようか。
 ※・・・野党にもおおきに責任がありますよ。人物は、時を得て現れるのか、今はその時でないのか。

毎日 万能川柳
 水道は外の温度を連れてくる 今治 へろりん
 役立たずミクスとマスクはお蔵入り 倉敷 三宅 彰

産経新聞朝刊
3面 林鄭氏退任 習政権が見限る
 香港返還25年 (デモ対応失敗 国案法導入招く)
 2017年から香港政府トップの行政長官を務めた林鄭月娥(キャリー・ラム)氏(65)が、5年の任期を終えて退任した。返還後最大の反政府デモを招き、中国共産党による香港国家安全維持法(国安法)の導入を許した長官として、香港の歴史にその名を刻まれるに違いない。
 ※・・・月娥女史を暗に批判している文言であるけれど、彼女は彼女なりに中国に対する香港の盾となり、解決の糸口を求めてそれなりに苦悩し努力したのではと、推測する。結果的に彼女の努力は実らず成果は残らなかった。誰が代っても、中国共産党の露骨な強権力には抗しきれなかったと思う。個人的には、林鄭月娥氏に、5年間の労をねぎらいたいと思う。

 私事 今朝、5時半に「選挙公報冊子」300枚をカートに載せ、家をでる。3時間後、残り100枚余を、家まで戻り、カートに積み、元の場所からまた配布開始。配り終わったのは、9時半だった。昨夕、届けられた公報冊子A3判2種類を折りこむのに2時間半ほど費やしているので、〆て6時間半の労働である。対価は2千4百円ほど、ボランティアと割り切らないと、この汗は拭えない。

2022.6.30日記
朝日朝刊
9面 オピニオン&フォーラム 論壇時評
「家計簿の堅実さ 政治にも」 林 香里 東京大学大学院教授 抜粋
 家計簿は、実は日本独特の実践らしい。予算を立て、将来の蓄えを取り分けながら心豊かに生きるーkakeiboは和食や整理整頓と同様、シンプルな「日本流生活」の象徴となって、海外でも実践されるようになっていると聞く。
 経済学者の浜矩子は、「毀損する円」大誤算の日銀{異次元緩和}(週刊エコノミスト6月21日号)で昨今話題の日銀の「異次元緩和」金融政策が政府の借金体質を悪化させており、「政策の犯罪」だと厳しく批判する。浜は「罪その一」として、中央銀行にとって禁じ手の「財政ファイナンス」に乗り出したことを挙げる。つまり、日銀が政府の借金である国債を、発売直後に「買いまく」って事実上直接の引き受け手になっている。この脱法的な運用が日本の借金体質を増幅させたのだという。「財政ファイナンス」は、冒頭に挙げた戦後の急激なインフレと預金封鎖を招いた原因であり、諸外国では歴史の教訓から封印されてきたものだ。「罪その二」には、自国通貨安の追求を挙げる。今日の日本経済は輸入大国であり、円安は輸入製品の価格を押し上げるはずだが、浜は、日銀はいまだに輸出主導型経済を想定しているのではないかと懸念。この二つの罪は、国民の生活苦を政府の経済統制をもたらすと警戒する。
 ※・・・経済学者先生も、やはり危惧しておられた。黒田東彦日銀総裁のようなエリート階層の、リッチで優雅な生活感覚しか持ち合わせない方々には、庶民のつましい家計簿など、まさしく異次元世界なのであろう。

朝日川柳
 頃合いとトルコ二国に恩を売り 三重県 山本武夫
 かの地では大口たたく人となり (岸田首相?)東京都 塩田泰之
 団扇もて扇げば愛し我が五体 埼玉県 田島和男 
 
2022.6.29日記
毎日朝刊
3面 総合 「世界秩序安定へ努力を」欧州局長 宮川裕章 抜粋
 ・・・サミット会場に近いドイツ・ミュンヘンでは1936年、チェコスロバキアのズデーテン地方の帰属問題について話し合うミュンヘン会議が開かれた。英仏首脳が融和的な姿勢を示したことがナチス・ドイツを増長させ、第二次世界大戦に道をひらいた場として記憶されている。ロシアへの妥協や弱い姿勢は、紛争の拡大を招く恐れがある。台湾統一を狙う中国に対しても、誤ったシグナルを送ることになりかねない。
   一方、サミットを通じて、G7の危うさも 感じた。G7は経済発展に成功した民主主義国家の集団だ。同質的であるがゆえに、外部と隔絶する懸念がある。G7の決定が先進国の独善に陥っていないか、中露への強硬対応が世界の分断を助長していないかに細心の注意を払う必要がある。・・・
 ・・・果たしてG7は成熟した国家の集まりと言えるのか。G7にとっては、世界秩序の安定化に向け並々ならぬ努力を求められる局面が続くことになる。
 ※・・・G7に集まった各国首脳の自信に満ちた笑顔が、どうにも嫌味な懐疑を催させる。
5面 社説 憲法改正(‘22参院選) 「ムードに流されぬ議論を」抜粋
 ・・・ロシアによるウクライナ侵攻で安全保障政策に注目が集まっている。だが、共同通信社の世論調査では、投票の際に重視する政策は「物価高・経済政策」が42%と最も多く、「憲法改正」は3パーセントに過ぎない。
9面 通商白書 特定国依存に警鐘 「ウクライナ侵攻 世界経済分断」抜粋
 経済産業省は28日、2022年版の通商白書を公表した。ウクライナに侵攻したロシアに対し日本など主要7カ国(G7)が中心となって制裁を科す一方、制裁に加わらない国も多く、世界経済が分断される懸念が冷戦後かってないほど強まっている。・・・
 白書はウクライナ情勢について「国際経済秩序の歴史的な転換点となる可能性が出てきている」と分析した。
 ※・・・関連して、「国連の在り方にも転換点が出てきている」、と言えるのでは。

2022.6.27/日記
毎日朝刊から
1面 余禄 面白い記事があったので、抜粋・要約して、採りあげます。
米アウトドアメーカー「パタゴニア」。フリースやシャツに欠かせない化学繊維は、1990年代からペットボトルなどのリサイクル素材を使っている。その分、原料である石油の消費を減らしたつもりだったが、製品に加工する過程で多くの温室効果ガスを排出していた。(加工するために24時間稼働している工場の電源は、近くの石炭火力発電所だった)
 同社は環境対策で先進的な姿勢が評価されたことも追い風に、成長を続けた。だが、販売数量が伸びればそれだけ資源を使い、ごみも出る。そうしたジレンマに観て見ぬふりを決め込めば、エコを装って利益を上げる「グリーンウオッシュ」と見なされかねない。  環境に負荷を与えずには成り立たない日々の暮らしである。そうした自覚と節度を欠けば、いよいよ持続可能でなくなる。
 「クローゼットの中の怪物」・・・パタゴニアのウェブサイトで公開された動画のタイトル。怪物とはタンスに眠る大量の衣服か、消費社会に生きる私たち自身か。
 「必要ないのに買わないで。そんなにいらないでしょ」と、パタゴニアの製品開発をするウィットマイヤさん。

閑話休題 26日ドイツ南部エルマウで開幕した主要7カ国首脳会談(G7)。ウクライナ問題への対応は、「ロシア制裁持続」というなんら進展・思考のない「お手盛り決議」となった。TVに映った7カ国一同の記念写真に揃う顔ぶれの、「にこやかさ」にそら寒さを覚えた。
 このままでは、当分戦争の終結は見えない。戦争に費やされた資源・費用。破壊されたインフラ、なにより人命は、人類全体の損失である。プーチンとて人間、ここは捨て身の外交を通じての話し合いが、最後に残された闘いだと思う。

2022.6.26日記
朝日朝刊から 1面 中絶権利認めず 49年ぶり判例覆す
「米最高裁の政治化象徴」
 米連邦最高裁は24日、人工妊娠中絶を憲法で保守された権利として認めない判決を言い渡した。最高裁は1973年「ロー対ウェード」の判決で中絶を選択権利として認めていたが、49年ぶりに判例を変更した。73年の判決は保守派らが「司法による政治介入」と批判し、長年にわたって見直しを求めてきた。ただ、今回の判決も最高裁の政治化を象徴する内容となった。
 ※・・・社会における宗教的な枷なのか、時代の逆行を感じさせる。女性の側に立てば、理不尽ともいえる。一つ心配なのは、堕胎処置が、闇の医療機関によって秘密裡に行われ、巷間にはびこること。1920・1930年代の禁酒法のような悪法になるうる。

3面 日曜に想うコーナーから 「葛藤のすすめ 見通せぬ時代に」抜粋
 ・・・「今はロシア憎しで結束できても、生活の苦境が続けば民意は変わりうる。既存政治への反発から、ポピュリズムが蔓延した時が怖い。民主主義の弱体化こそロシアの思うつぼでしょう」
 ・・・「経済か、平和か。性急に選択を迫らず、説明を尽くし、長い射程で議論する。そのプロセスを経るべきです」 仙台白百合女子大で国際政治を教えるセバスティアン・マスローさん(39)から。
 毅然たる態度、威勢のいい弁舌がもてはやされ、旗幟を鮮明にするよう迫られる時代は、果たして健康だろうか。
 民主主義は「あいまいさと向き合う営みでは」と友野さんは考える。投票した人が当選するとは限らない。期待通りの政治をする保証もない。でもあきらめない。とことん葛藤する。それでいい。 宮城学院女子大 友野隆成教授(パーソナリティー心理学)

8面 社説 参院選(経済・財政)
「地に足を付けた議論を」抜粋
 与野党ともに、国の借金を青天井で膨らますことができると考えているのだろうか。歳出拡大や減税ばかりを強調し、財源確保を棚上げにした論戦に、不安が拭えない。

朝日歌壇から
 里山の地蔵の脇に一対の鬼瓦ありカップ酒あり 神戸市 松本淳一
朝日俳壇から
 望郷の色に紫陽花咲きにけり 境港市 大谷和三

  2022.6.25日記
毎日朝刊から
3面 核廃絶 保有国へ圧力 抜粋
 「核なき世界」の実現を目指す核兵器禁止条約の第1回締約国会議は23日、核兵器は「人類の存亡に深刻な影響を与える」と強調する政治宣言と締約国の今後の方針をまとめた50項目の行動計画を採択し、ウィーンでの3日間の日程を終えた。
ウィーン宣言のポイント
■核が二度と使われないことを保証する唯一の手段は「核なき世界」。即時行動が必要。
■9か国が依然計1万2705発の核弾頭を保有していることを強く懸念。いかなる状況でも核の使用や核による威嚇をしないことを要求。
■保有国も「核の傘」に下にいる同盟国も核への依存を減らす真剣な取り組みをしていない。
■核軍縮を前進させるための被爆者の献身を称賛。今後も協力。
 ※・・・一度手にした「魔法」の道具を、善意に解釈して「そうですか」と手放すのはなかなかむつかしい。物理的な「物」が消えても、製造方法の技術記憶は永遠に残るのだから。厄介なのは、世界これだけの人間がいれば、今後トルーマンに類した人物の一人二人現れることは、避けられないことです。今のところ、「強圧的な封じ込め」が不可能に近い世界の実情。ホモサピエンスの性善説にすがるしかないのか。

2022.6.24日記
朝日朝刊から
5面 参院選 候補者、読み解く 朝日・東大(谷口調査室)共同調査
 コロナ対策、ウクライナ問題、物価高と数種項目に別れているのですが、その中の「財政」を採りあげてみます。内容に目を通すことにより、今まで見えなかったもの、各党の政治に対する姿勢・思惑などが見えてくるはずです。
財政 「財政より景気、与野党問わず」
 景気対策のために、財政再建よりも財政出動を優先すべきかを尋ねたところ「賛成」「どちらかと言えば賛成」の賛成派は82%にのぼり、2003年以降で最多となった。コロナ過で打撃を受けた経済やロシアのウクライナ侵攻に伴う物価高などを背景に、与野党問わず財政出動を求める傾向がつよくなっている。
   財政出動を優先する賛成派は各党でいずれも最多となった。通常国会で補正予算編成を強く求めた公明党は96%、自民党85%だった。野党でも国民民主党とれいわ新選組が100%、日本維新の会93%、共産党86%などと続く。賛成派の割合が候補者全体より低かったのは立憲民主党64%、社民党42%だけだった。
 財政出動を優先する態度は、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)についての回答でもみてとれる。「長期的なPB均衡達成の先送り」について尋ねたところ、賛成派が46%で最多となった。
 特に目立ったのが自民党で58%にのぼった。
 政府の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」ではPB黒字化目標の年限が削除されており、財政規律より財政出動を求める意見が強いことを改めて示したと言えそうだ。
「財政の変化 議論し説明責任を」 谷口将紀 東大教授(現代日本政治論)
 ・・・第1に党内で議論を尽くし、投票日までに意見を求めてもらいたい。
 第2に「政府の規模(社会福祉など政府のサービスのあり方)」「外交政策」などの基本原則を転換するときには、国民に説明責任を果たすべきだ。
 そして第3に次世代への責任感も示してもらいたい。現代貨幣理論(MMT)を支持する政治家は少数に見えるが、今の財政赤字危機的水準とする割合は減少している。ならば財政赤字を将来、誰が負担するのか。選挙戦を通じた議論の深まりに期待したい。
 ※・・・現代貨幣理論(MMT)マクロ経済学の一つ。そのさわりを転記しますと、三つのことが挙げられる。
・自国通貨を発行できる政府は財政赤字を拡大しても債務不履行になることはない。
・財政赤字でも国はインフレが起きない範囲で支出を行うべき。
・税は財源でなく通過を流通させる仕組みである。
 とまあ、従来の経済学とは一線を画した斬新な理論です。
 閑話休題:今さらあらたまって述べることではないけれど、目の前の有権者の気にいるような公約を述べるのが、おおかたの政治家の選挙戦ですが、次世代(子や孫等、子孫)のために施策を論じる政治家は皆無に等しい。各党首の公約を見ると、なにやら生き急いでいるような性急さが感じられる。なにを怯えているのか。
 次世代に莫大な負債を残すことに、うしろめたさを感じなくなった、2022.6月の政治家諸氏でありました。子孫に美田を残すとは遠い昔の話、おのれ一代の栄耀富貴がもっかの目標であるのか。時代の変遷は、ひとにして卑しい狡知へといざなう。社民党あるいは立憲民主党が、まだしも良識のこころに通じているのか。しかし、ひとのこころは魑魅魍魎、摩訶不思議、千変万化、一寸先は闇。

朝日川柳
 しゃべるたび悪夢八年よみがえる (まだしゃべる安倍氏) 東京都 土屋進一

2022.6.23日記
朝日朝刊から
5面 9党首の第一声 抜粋 
・自民党 岸田文雄総裁
 ・・・今回の物価高は、ロシアのウクライナ侵攻によって世界規模で引き起こされている。いわば有事の価格高騰だ・・・
 ※・・・物価高についてはロシアのウクライナ侵攻とは別に、他にも国内的な要因があるのでは。国外だけを物価高の要因になすりつけるのでは、その対策の真実度に疑問を抱かざるを得ない。国内経済を我がこととして本気に取り組んでほしい。
・立憲民主党 泉健太代表
 ・・・ウクライナ情勢にかこつけて、軍備ばかりに行く政治は抑えなければいけない。立憲は必要な防衛力は整備する。だが防衛だけ2倍にしたら国家予算はどうなるのか。
 ※・・・どうも主張に気迫が足りないように思う。またセンテンスの組み立ても粗雑さが否めない。社民党の福島党首とは対照です。
・公明党 山口那津男代表
 今、政治に求められているのは、国民のみなさんの不安をなくし、安心をお届けすることだ。さらに人をはぐくみ、希望を作り出すことが求められている。
 ・・・今回の選挙戦は物価高にどう対応するかが焦点だ。まずは今年度の予備費を使って物価対策をやる。
 野党は消費税を下げろと言っているが、社会保障を長く支えていくためには消費税が必要だ。継続的に賃金が上がるように手を打っていく。
・・・そのための日本の防衛力は大丈夫か。しっかり点検して、防衛力、真に必要なものを強めていきたい。
 ※・・・「継続的に賃金があがるように」、どういった手を打つというのか?「真に必要な防衛力」とは何か?耳に心地良い威勢のよい台詞をぶち上げておられるが、よく聞けば中身が空白です。街頭演説などで、人を引き付けるその場限りの口舌をぶつことには、巧みな弁士だと思う。
・日本維新の会 松井一郎代表
 ・・・目の前の現実に向き合って、みなさんの生活を守ることが政治家の役割だ。
 野党第一党にしてもらいたい。野党第一党になると、国会運営の協議の場に出て、自民に圧力をかけることができる。自民をピリッとさせないといけない。
 ※・・・いやはや、おそまつな政治ヴィジョンであります。政治家の役割は、現実もさることながら子供たちに明るい未来を見せることではないか。それだけに、長くひたむきな政治活動が必要になる。大阪の風土のせいなのか、ポピュリズムの時流に乗っかって頓に人気を得てきた政党です。政治の根底を、もう少し勉強していただきたいと思う。
・共産党 志位和夫委員長
 今回の参院選は戦争か、平和か、日本の命運がかかった選挙だ。ロシアの蛮行に乗じて、岸田政権などは敵基地攻撃、軍事費2倍、(憲法)9条を変えると大合唱を行っている。軍拡で平和を守ることができるか。日本が軍拡で構えれば、相手の軍拡も加速する。軍事対軍事の悪循環に陥る。その道が一番危険ではないか。
 ・・・今求められているのは、金融頼みの政策はやめて、実体経済をよくする政策を中心に据える経済政策への転換だ。消費税を5%減税する。アベノミクスで膨れ上がった大企業の内部留保に時限的に課税を行い、最低賃金を1500円に引き上げるための中小企業に充てたい。
 ジェンダー平等の日本を作ろう。男女の賃金格差ゼロの日本にしてこそ、ジェンダー平等の日本の土台ができる。
 ・・・※共産党らしいおおげさな言葉まわしであり、言葉にひっぱられからまれているような論調ですが、他の政党と比べ、一等まともな公約であり且つ真摯さがうかがえます。
・国民民主党 玉木雄一郎代表
 ・・・今回の参院選。「給料を上げる」。「国を守る」シンプルなこの二つの公約方針を掲げて戦う。
 ※・・・中身の空白さが見える。この党のアイデンティティーは何か?
・社民党 福島瑞穂党首
 大企業が潤えばすべてがうまくいくという新自由主義を続け、国民の生活を破壊し続けるのか。それとも暮らしが一番の政治を私たちの力でつくるのか。そして二度と戦争をしないと決めた憲法9条を持つ平和国家であり続けるのか。これが問われる選挙だ。
 ・・・3年間消費税ゼロ、そして大企業の内部留保への課税を実現していく、非正規雇用に歯止めをかけ、全国一律最低賃金1500円以上、中小零細企業には社会保険料の負担の軽減などの支援策、そうしたことをしっかりやっていく。
 ※・・・これぞ見本というべき、ベテラン政治家福島瑞穂氏の政治公約です。やはり、うわべの形を売りにせず、誠意と真面目さを押し出すところなど、注目に値します。
 残り、れいわ新選組とNHK等は申し訳ないのですが、割愛させていただきます。

       2022.6.22日記
毎日朝刊から 5面社説 「22‘参院選」きょう公示 抜粋
「民主主義問い直す機会に」
 ・・・物価高や円安への対策などが主な争点となる。
 ・・・ロシアのウクライナ侵攻により、世界中で「民主主義の危機」が叫ばれる中での選挙だということだ。
 ・・・だが、もう一つ、私たちが今回目の当たりにしたのは、批判勢力が乏しいと権力者は暴走する、という現実である。
 翻って日本の民主政治は今、きちんと機能しているだろうか。参院選は有権者一人一人が、それを点検する機会となる。
 ・・・しかし、首相がアピールする「聞く力」は、主に「自民党内の声」を聞くことに注がれてきたのではないか。財政再建の進め方や防衛費の増額など国の根幹にかかわる重要課題で、安倍氏らの主張に配慮する場面が目につく。
 ・・・結局、看板の「新しい資本主義」もアベノミクスとどう違うのか、分からなくなっている。
 ・・・自民党は有権者全体の4分の1程度の支持で、衆参で大多数の議席を占めているのである。
 最近は、政府を批判するのはもってのほかで、政治を語ること自体が、「場を乱す」と敬遠される日本社会の風潮がある。
 多様性を認め合うのが民主主義の基本であるにもかかわらず、「政権支持か、不支持か」で、敵と味方に分断されがちだ。
 ・・・与党に今後も任せるのか。それとも野党に力を与えるのか。じっくり考えて投票に行こう。「政治家に任せておけばいい」という姿勢から脱皮する時である。
 ※・・・なかなか名調子な、本日の社説文であります。ポイントは、ロシアによるウクライナ侵攻を現実の背景として今の日本の民主政治を見た場合、有権者としてどのような評価をするか、だと思われます。
3面 万能川柳
 オフィスラブ応援団にこわされる 海老名 しゃま
 ピンヒールちらっと見えた絆創膏 東京 ワイン鍋

2022.6.21日記
朝日朝刊から
1面 同性婚認めぬ法律「合憲」 大阪地裁、札幌と判断割れる
2面 異性婚との差 判断に違い
 識者はどう見る 「司法の役割放棄」と「憲法は妨げぬ明記」
 政治思想史が専門で、自身が同性愛者であることを公表している同志社大大学院の岡野八代教授は、「同性愛者への差別的な現状を追認する判決で、司法の役割を放棄している」と指摘する。「国会の立法プロセスを重視した点からも、少数者の声が反映されにくい政治の現状を直視していない」
 判決は、異性カップルと同棲カップルで得られる利益の差異が一定程度緩和されていると判断した。この点ついては、家族は法律によって社会で認識されることで、病院での対応や職場での福利厚生などを享受できる。自治体のパートナーシップ制度には法的効果がなく、同性カップルの不利益は今なお大きい」と話す。
 広島大大学院の新井誠教授(憲法)は、「同性カップルに対して、婚姻や類似制度を作ることを{憲法が禁止していると解すべきではない}と明記した点は、憲法が同性婚を禁じているという主張がある中で、踏み込んだ判断だ}と評価する。
 ただ、同性・異性カップルが受ける法的な利益に関し「判決は{必ずしも等しくなくていい}と述べているようにも見え、婚姻制度自体へのアクセスを求める原告の思いとずれていると指摘。異性間の婚姻を「子を産み育てながら共同生活を送る男女への法的保護」とした点も、「国の主張に沿った{子の有無にかかわらず、共同生活自体の保護も重要}と述べた札幌地裁判決と比べて一面的だ}と話す。
 ※・・・かねがね思っていたことは、男女の性差というものは「質的」でなく「量的」であるということ。たとえば、男性にあって女性らしさがあらわれ、女性にあって男性らしさがあらわれるということがあり、それは人により度合いはそれぞれ大小する。このような生物個体における融通性を閲するなら、今回の大阪地裁判決は過去の旧態依然とした表層の因習に囚われており、考究の足りない判断と言わざるを得ません。

2022.6.20日記
毎日朝刊から
1面 余禄コーナー 抜粋
 「米国は間違っても時間がたてば必ず正しい道を歩む」と述べたのは国際政治学者の高坂正尭だった。米国の民主主義を実地調査した19世紀の仏思想家トクビルは「欠点を自ら矯正する能力がある」と記した。苦境を乗り越え、未来を切り開く復元力にともに驚嘆している。
 ▲50年前のウォーターゲート事件はその一例だろう。1972年6月17日、ワシントンの民主党全国委員会本部に侵入した男5人が逮捕され、それを端緒にニクソン共和党政権の大がかりな政敵追い落とし工作が判明し、史上初の大統領辞任で決着した大スキャンダルだ
 ・・・▲半世紀を経て米国は再び窮地に陥っている。昨年1月の連邦議会議事堂襲撃事件を調査している下院特別委員会の公聴会では、大統領選の結果を覆そうとしたトランプ前大統領の驚くべき「陰謀」が次々と明らかにされている。▲だが、トランプ氏の「不正選挙」の主張を信じる国民は今も多く、身内の共和党は大半が追及に及び腰だ。事実すら共有できない分断を前に高坂らの希望はかすんで見える。
 ※・・・高坂正尭(まさたか)氏 元京都大学法学部教授 1996年5月15日逝去 往年の頃、TVにも出演され、その気さくなしゃべり口で国際政治などの時事をわかりやすく解説されたのを、楽しく視聴した思い出があります。特に「文明が衰亡するとき」という著書に触れ、不才も国際政治と歴史に目を瞠らかされました。
 閑話休題 もしトランプ氏が大統領に返り咲くことにでもなれば、米国の復元力は潰えたと、見なせるだろう。そして重い病は世界中の隅々に蔓延していくだろう。

2022.6.19日記
朝日朝刊から
6面 社説 日銀政策会合 「円安の影響急ぎ検証を」 抜粋
 日本銀行が17日、大規模な金融緩和の継続を決めた。各国が利上げに進む中、急速な円安や株安傾向が続く。「現状維持」だけで日本経済の安定が保てるのか。日銀は検証を急ぎ、先行き指針の再検討など、的確な対応をとる必要がある。
 ・・・為替相場の変動スピードだけでなく、円安そのものの影響についても十分な検証と説明が必要だ。日銀は1月に、19年までのデータをもとに、円安の実質GDPへの効果が近年も含めプラスとの分析を示した。現状でも妥当なのか、改めて分析を急ぎ、国民に示すべきであろう。
 一方、日本の消費者物価上昇率は、いまのところ欧米に比べれば、かなり低い。資源や食料などの国際価格の高騰による影響も、長くは続かないと日銀は見ている。景気回復や賃金上昇の遅れもあり、金融緩和で下支えする必要は理解できる。
 ただ要因は何であれ、2%の物価上昇率目標を大きく上回る状況が持続するようなことになれば、経済への弊害が大きい。欧米の当局がインフレ高進を見通せなかった教訓も踏まえ、経済の変化に目を凝らさなければならない。
 ※・・・10年以上も異次元金融緩和を続けてきたが、目立った効果は表れていないように思う。黒田東彦日銀総裁、ほかの方策を検討なさったことが、おありなのか?それとも依怙地に陥っておられるのか?
7面 フォーラム 「SDGs うさんくさい?」
「持続可能な開発目標」
一般の意見
゜持続可能にしょうとしているのは未来の人間世界ではなく、現在の資本主義経済ではないかと疑う。 (愛知、男性、10代)
゜SDGsは未来のためにも大切だし、必要なことだ。でも、企業の「やってますよ」アピールは面倒だ。商用に使われていることに違和感がある。 (栃木、女性、10代)
゜SDGs自体は意味があると思うが、本気で環境負荷を減らしたいのか疑問。企業の宣伝に使われ、問題がある企業も、SDGsをしていることが免罪符のようになっている。(京都、女性、60代)
゜欲しくもなかったものを欲しいと思わせ、資源や労働力を浪費している。資本主義をどう変えるべきか、という議論が活発になってほしい。 (東京、女性、40代)
 ※・・・たしかに、大企業になるほど、現状の企業利益とそぐわないSDGsを、鼻にかけているような節が見受けられる。表向きは、企業イメージアップのため、とりくんでいる格好を繕ってはいるが。
9面 朝日歌壇
 二時間目じぶんのせきでこわくないおばけの本をひとりでよんだ (大阪市)おくの花純
朝日俳壇
 猫といる矛盾と暮らし五月闇 御坊市 水原 凛
 姿見に骨皮をさらし更衣   対馬市 神宮 斉之

毎日新聞 3面万能川柳
 批判する野党いなけりゃ北の国 本庄 支持 拾六
 チャタレイの夫人今なら只の女人(ひと) 東京 カズーリ
 
   2022.6.16日記
日々の怠惰が減じた替わり、日々のスケジュールに気を遣う張りが多くなった。明日は、市の公報チラシ配りに半日を費やす予定、その翌日は市の施設で一日雑仕事、それなりに身体の運動筋トレに満足している。
毎日新聞朝刊から万能川柳
 終わるまでどれだけ殺す大河観る 東近江 よへえさん
 この国にヘンな議員は不要です  東京  新橋裏通り

2022.6.14日記
朝日朝刊から
1面 折々のことば
 経済人が理性と自由を謳歌できるのは、誰かがその反対を引きうけてくれるからだ。カトリーン・マルサス
 自己利益を動機にひたすら合理的に行為する「経済人(ホモ・エコノミクス)」を軸に市場を考える経済学は歪(いびつ)だと、スウェーデン出身のジャーナリストは言う。日常生活をケアする人や職業がなければ、経済人としての彼らの活動もない。経済の根底にはつねに人の身体的生活がある。経済学もそこから構築しなおすべきだと。「アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?」  (高橋 瑠子訳)から。
 ※・・・との、ご託宣も、哀しいかな今の世となっては、人の奥底に巣くう「欲」を矯めるのは、容易でない。その「欲」は、ヒエラルキーの上位にあって世間的に賢人と言われる人ほどより顕著であるような、社会の景色である。
3面 旧文通費使途公開 今国会も先送り
 ※・・・自分たちの「タガを締める」法は、後回し。
3面 ロシアによるウクライナ侵攻後に初めて開かれた「アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアログ)」(英国際戦略研究所主催・朝日新聞社など後援)では米中が台湾をめぐり激しく対立した。米国は対ロ批判を強め、アジア各国に同調を求めたが、中ロに対する温度差も露呈した。それを埋めようと、岸田文雄首相がアジア各国の事情に「寄り添う」姿勢を強調した。会議を通じ、日本外交の課題も見えた。
 米国のオースティン国防長官は11日の公園で、ロシアの軍事侵攻は国際ルールを軽んじる姿勢が引き起こしたと強調、中国の動向を念頭に「こうした時に、共通の目的に向け、共に連携しよう」とアジア各国に訴えた。だが、こうした主張が浸透したとは言い難い。
 直後に登壇したインドネシアのプラボウォ国防相は、地域が植民地化され、大国競争に翻弄された歴史に触れ、「我々は全ての大国を尊重するよう常に努力している」と訴え、「(中国も)良き友であり続ける」と強調。マレーシアのヒシャムディン国防相は「自分たちの進む道は自分たちで決める」と語った。
 会議の参加者に取材して感じたのが、各国事情の複雑さだ。例えば、国連総会の対ロ決議で棄権を決め込むインドの関係者は「我々は同盟国を持たず、アフガニスタンから勝手に撤退した米国はあてにできない。こうした状況でもロシアとの関係維持を見せることで、中国を牽制している」と語っていた。
 ・・・日本の防衛力強化でも岸田首相が約束したように「透明性をもって丁寧に説明する」姿勢は不可欠だ。それを怠れば、むしろ遠心力が働く。首相が演説で訴えた「謙虚さ・柔軟性・寛容さ」の外交を、どう具現していくかが問われる。編集委員 佐藤 武嗣
 ※・・・米国は、劣勢に立っているのか?この情報だけでは、よく見えない。ただ、米国流の怜悧な合理性に裏打ちされた行動には、よくよく注視する必要がある。やはり、日本はアジアの一員であり、地政学的に共通の利害を持ち合わす。場合によっては、米国に対し、「面従腹背」の方策も現実味を帯びてくる。
朝日新聞記事の覚え書き
 「グローバル安全保障イニシアチブ(GSI)」 中国習近平国家主席が、4月に提唱した。
 GSIには「安全保障の不可分性」という文言がある。自国の安全保障は周辺国の安全保障と切り離せないとの原則であり、NATOの東方拡大を警戒するロシアプーチン大統領が、ウクライナ侵攻を進める際の論拠になっている。  この原則に照らせば、中国の国防費が30年で約40倍に膨らみ、周辺国に不安を与えていることも問題となる。だが魏鳳和国務委員兼国防相は「中国は防衛的国防政策を取っている」として脅威を与える意図はないことを強調し、「中国は永遠に覇権を争わず、軍拡競争もしない」と正統性を訴えた。
 ※・・・「覇権も争わず、軍拡競争もしない」とあるのは、明らかな誤謬なのかそれとも開き直った欺瞞なのか。今現在、アジアに繰り広げている軍事行動のあれこれは、どう説明をつけるのだろうか。中国政権側の辞書には、もともと「真実」の言葉がなく、時宜に応じて作りだす一過性の真実もどきである、とすまし込んでいるようだ。

                   2022.6.13日記
 世界が騒がしく、殺気立ってゆとりを失くしてきたように思う。百年後、地球上の人類は2022年、2月24日という日を、忌まわしい木曜日として歴史に記録するだろう。
 なにもかもが、世界が音をたてて崩れだしてきた・・・。まるで、台本とおりに進んでいるといわんばかりに。

2022.6.12日記
朝日朝刊から
6面 社説 アジア保障会議 「力の支配許さぬ連携を」 抜粋
 岸田首相がシンガポールで開かれているアジア安全保障会議に出席し、基調講演をした。・・・
 講演の中心は「平和のための岸田ヴィジョン」の提唱だった。
 「自由で開かれたインド太平洋」のさらなる推進や「核兵器のない世界」に向けた取り組み、安保理改革を始めとする国連の機能強化などの5本柱からなるが、そのひとつが日本自身の防衛力の抜本的な強化だ。
 5年以内の実現、防衛費の「相当な増額」、敵基地攻撃能力の検討・・・。国内での説明が不十分でないまま、対外的な約束を先行し、既成事実化しているのではないか。「平和国家としての在り方は不変」というなら、軍拡競争によってかえって地域の不安定化を招くことのないよう、慎重な対応が必要だ。
 台頭する中国と平和的に共存するには、力による対峙だけではなく、直接対話や国際機関を介した協調など、重層的なアプローチが欠かせない。
 ※・・・「防衛費の抜本的な強化」の「抜本的」というのは具体的に何を想定しているのだろう?軍備の質的な改革か、防衛費の増額にともなう員数・兵器の量的な拡充なのか、それとも、自衛隊そのものの性格付けの改変なのか、不気味である。しかし、今の時期徒に軍備増強とオダを挙げたところで、「螳螂の斧」「時代錯誤」「世界情勢認識に対する発達障害」などと、宴果てて後に顔を出す幇間そのものではないか。外交努力を第一義に考えるべきだと、考えます。
朝日歌壇
 峠越え棚田に映る紫は藤のむらさき桐のむらさき 長岡市 柳村 光寛
朝日俳壇
 かの日へと還る径あり桐の花  川西市 上村 敏夫
 夏帽子淋しく回すくるりんぱ  さいたま市 斎藤 紀子

毎日新聞から
1面 「台湾海峡、危険性顕著」 抜粋
 シンガポールで開催中のアジア安全保障会議で11日、オースティン米国防長官が演説し、中国が台湾周辺で軍事的な挑発を強めていると警戒感を露わにした。一方で、中国との「新冷戦」は求めず、大国同士の意思疎通を維持する必要性も強調。インド太平洋地域を「米国の戦略の中心」として最重要視する姿勢も明確にした。
 ・・・「特に台湾海峡では危険性が顕著だ」
・・・オースティン氏は、台湾を領土とみなす中国の立場に異を唱えない「一つの中国」政策を堅持する立場を改めて表明。「台湾の自衛能力維持のための支援は継続する。米国は台湾海峡の平和と安定、現状維持のために引き続き注力する」と中国をけん制した。
 ※・・・一方で「一つの中国」を認めまた一方で台湾の「自衛能力のための支援を継続する」いったい最終結果として、どのような形を想い描いているのだろう。台湾が平和裏に中国に併呑されるのを理想としているなら、余りに現実乖離した白昼夢である。米国のこのような矛盾した態度も、外交のテクニックパターンのひとつとして常態化しているのか。
 朝日と毎日、社説に採りあげられた同じ事柄における対象の違いは、新聞社の力点の置き所・姿勢の相違を表しているようだ。
万能川柳
 蜘蛛が巣を作る近さの両隣り 東京 松竹梅子
 「じいさんが来るな」と両者すれ違う 鴻巣 雷 作

2022.6.11日記
毎日朝刊から
5面 社説 「文通費」公開先送りへ 「やる気のなさが明らかだ」 抜粋
 ・・・国会議員に、歳費とは別枠で月100万円が支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の見直し問題である。
 使途の公開と、未使用分を国庫に返納する仕組みについて「今国会中に結論を得る」と与野党で合意していたはずだ。ところが、結論が出ないまま15日の会期末が迫っている。
 ・・・昨年の臨時国会では全く対応せず、今年4月に日割り支給に変える一方、名称と目的を変更して事実上、使途を拡大した。
 問題なのは、透明性確保に不可欠な公開を後回しにしたことだ。
 ・・・民主政治を機能させるには、議員活動を公費で支える必要がある。ただ、適正に使われているかどうかを国民がチェックできることが大前提である。
 維新は領収書を自主的に公開しているが、新人議員が家電や寝具など生活用品を購入していたことが判明し、物議を醸した。共産党を除く他党は使途の公開すらしていない。
 地方議会では政務活動費の領収書を公開する動きが広がる。国会議員もならうべきだ。そうしないのは、使い勝手がいい現状を変えたくないだけではないか。
 岸田文雄首相は「いつまで、と区切って議論することではない」と結論の先送りを容認している。・・・
 原資は国民の税金である。「既得権益」にしがみついているようでは、政治不信が募るばかりだ。
 ※・・・「選ばれた我々議員や公務員は、特権階級なので、国民の税金は役得としてある程度私費流用させてもらっても良い。人民よ、羨ましいなら選挙に当選して議員になりなさい」との思い上がりが、明治時代黎明の頃から根強くはびこっているように思えてならない。民主主義の裏面の悪であり、日本社会の構造的悪弊である。中には真面目に政治を考えておられる議員もきっと居られるはずだと思うが、白地に一滴の墨が落ちると全体が染まってしまう、という集合体の脆弱性があるのを、漫然と傍観するしかないのか。
3面 万能川柳
 欠点はあるけどマシな民主主義  福岡 朝川 渡
 その時はそこになかった捜しもの 桜川 今賀 俊
  2022.6.10日記
 誤解が生じて、此の世に自惚れやが五万とはびこり、世をつまらなくさせた。
毎日朝刊 万能川柳
 スマホ閉じ降りる気配が寝るのかよ 横浜 おっぺす

2022.6.9日記
朝日朝刊から
1面 天声人語 抜粋
 きょうはロックの日。6月9日の語呂合わせだから、日本だけの記念日だ。
12面 オピニオン&フォーラム 声(投書)
 「僕は憲法改正には反対だ」高校生 加藤 あゆむ 北海道(16)抜粋
 ・・・憲法は権力の乱用を防ぎ、国民を守るものである。しかし、自民党が2012年に発表している改正草案で逆に憲法が国民を縛るものになってしまっている。「国と郷土に誇りと気概をもって自らを守」ることが国民の責務とされ、新たに書き加えられた「第9章緊急事態」では総理大臣が緊急事態を宣言すれば、国会を通さず法律と同等の効力を持つ政令を発することが可能になる。・・・
 ※・・・16歳の高校生の方が、一般の大人よりもよく勉強している。

毎日新聞
5面 社説
 値上げ許容度発言 「問われる日銀の物価認識」 抜粋
 国民生活の実装に対する日銀の認識が問われかねない。
 「日本の家計の値上げ許容度は高まっている」と講演で述べた黒田東彦日銀総裁が批判を受け、発言の撤回に追い込まれた。
 ・・・新型コロナ禍で外出などが制限され、家計の貯金は増えた。その結果、値上げを受け入れる余地が生まれた可能性があるとの見たても披露した。
 ・・・一つの調査結果を、自らの主張に沿う形で恣意的に利用したように見える点も問題だ。
 ※・・・金融政策、おまかせして大丈夫ですかな?黒田東彦さん。
22面 近藤流健康川柳
 「自分的には」と言ってもみんなそう 貝塚市 創健寿
 ゆったりと犬が老女を散歩させ    堺   東区 千利子 

2022.6.8日記
 今朝、4時半に床を離れてシャワーを浴びた。Net時事ニュースなどをチェックして、5:30にカツサンドとコフィーの朝食。6:15に家を出て、車でクリーンセンターの市の仕事に出る。二人の互いに仲の悪い仕事仲間と一緒に構内の清掃の仕事をするが、昼休み時間に仕事仲間一人から他の一人に対する悪口を執拗に聞く。古希を過ぎた歳になっても、人間同士の軋轢は底強い、と思ってへきへきとした、今日一日でした。
毎日朝刊 万能川柳
 毎日が宝物だよ有難う 佐倉 蒼白美人
 ※・・・まさにそのとおり、この宇宙に、束の間生きているというだけでしあわせが、充ちてきます。
 貴方にはだいぶ慣れたと妻が言い 高槻 かうぞう
 ※・・・互いに、男だ女だと、陣を張って対向している間に、歳月は容赦なく過ぎていくものです。男は女であり、女は威をもって男に変化する

2022.6.7日記
毎日朝刊から 万能川柳
 この収入で(かね)でへそくりしてた妻エラい 白石 よねづ 徹夜
5面 社説 再浮上した「桜」疑惑 抜粋
 安倍晋三元首相の後援会が主催した「桜を見る会」前夜祭を巡って新たな疑惑が浮上した。
   サントリーホールディングスから2016〜19年、酒類の無償提供を受けていた問題だ。
・・・仮に安倍氏が秘書任せにしていたとしても、疑惑が発覚した時点で、きちんと調査をしなかった責任は極めて重い。
・・・都合の悪い話には口をつぐむというのだろうか。欺き続けた国会で説明するのは最低限の責務だ。
 ※・・・こんなこと書いてはいけないが、夕食時かの人の顔をTVで見ると食事がたいへん不味くなる。永遠に贖罪という言葉を理解するには、無理な人である。

朝日川柳
 リュウグウの一握の砂命詠む 兵庫県 小林 哲也
 白い髪青い海原走り終え   神奈川 梅若 茂晴

  2022.6.6日記
毎日朝刊から
3面 「ソ連侵攻 刻まれた記憶」というタイトルで、フィンランドの内情を特集している。フィンランドは第二次世界大戦中にソ連の侵攻を受け、国土の1割を失った苦い経験がある。ソ連が崩壊したとはいえその中核たるロシアを隣にして、またこれまで中立の立場をとっていたとしても、有事の際の対応・準備について周到な構築が施されている、とある。たとえば、地下シェルターが各地・各処にあり、首都ヘルシンキの地下鉄駅はそのまま巨大な地下シェルターになるという。また、徴兵制であり、退役した一般人も定期的に射撃などの訓練を行う。
 ※・・・フィンランドとロシアの国勢を比較した表が載っていた。人口はロシア約1億4500万人・フィンランド約550万人、総兵力(予備役を含めて)はロシア290万人・フィンランド30万人(予備役も含めて動員可能員数)、一人当たり国民総所得ロシア1万690ドル・フィンランド4万9780ドル、とその差は際立っている。数字から診ると、フィンランド人個々の能力の高さが、はっきりうかがえる。それだけ、しあわせ度も高いのだろう。
3面 万能川柳
 子に次はいつか聞けずに送る駅      大分 赤峰 ユキ
 数合わせだったと知ったのは後日     北九州 智 鈴
 「誰がした?」二人住まいで無駄な問い  札幌 北の夢
9面 毎日俳壇 みなわ選
 鹿の子の覗く春日の巫女溜(みこだまり) 東京 徳原 伸吉
 足跡の深々のこる余り苗         仙台市 引地 恵一
 蝶の来て明るき庭となりにけり      福津市 瀧 あき子
 河鹿鳴く野仏も耳傾けて         和歌山市 福本 秀昭

2022.6.5日記
 堀江さん(83) 無寄港太平洋横断西回り、無事帰還。おめでとうございます。
朝日歌壇
 病とて短歌ばかりは奪えまじ飛行機雲の白まばゆし 和泉市 長尾 幹也
 その人は瓦礫の中のピアノを撫でショパンを弾いて母国を去れり 東京都 八巻 陽子
 (※・・・ウクライナの女性のこと)
 みちのくの野宿の旅が由来だと聞けば「露伴」の号は美し 横浜市 我妻 幸男
朝日俳壇
 二階から祭り見おろす人見上ぐ 彦根市 阿知 波裕子
 葉桜や老いて初めて知ることも 大阪市 真砂 卓三
 この年も桜に置いて行かれけり 仙台市 柿坂 伸子
  毎日新聞 万能川柳
 愚かさを張り合うような番組(テレビ)増え  神戸 安川 修司
 バラエティー芸能人の遊び場ね  大和郡山 苦っ気
5面 {解説}
 李下に冠を正さず、瓜田に履(くつ)を納(い)れず。 (※・・・覚え書き)

  2022.6.4日記
毎日朝刊から
3面 万能川柳
 お日様が見るものみんな影をもつ 小平 まさボン
8面 オピニオン 「時の在りか」 伊藤智永 抜粋
 ・・・侵略が起きてしまった今となっては、徹底抗戦を指揮する戦時指導者としては理想的なのかも知れない。しかし、「これは世界を独裁陣営と自由陣営に二分するあなたの国自身の戦いだ」「もっと武器を。弾を、弾、弾が足りない」とあおる演説には、共感より違和感を禁じ得ない。
 インターネット上ではウクライナ軍の戦争犯罪も確認されている。まして米国の異常な兵器の供給ぶりを見ると、ウクライナが米露代理戦争に命と国土を提供している実態は誰の眼にも明らかではないか。
 開戦3カ月で民間人死者4000人超、国外避難者600万人、暴行され強制移住させられた人多数・・・。非難されるべきはロシアであるにせよ、現時点でこれだけの被害を出した政治責任は重大である。
 ウクライナが今日の侵略を招くまでには、20世紀末から10年ごとに繰り返された政変・革命による分断と非人道的暴力を放置してきた長い荒廃の道のりがあった。その責任も、政治指導者たちの過誤に帰する。
 政治家の責任は、国民をいかに戦争へ引き込まないか、にかかっている。本物の知略と勇気と説得術を持っているのなら、平時の内政と外交に使わなければ。戦争になってから発揮されても遅い。
戦争指導者の人気はナショナリズムによるアドレナリンの作用であり、戦争が終われば消える。第二次世界大戦の勝利を指導したチャーチル英元首相も湾岸戦争に勝って支持率89%を記録した父ブッシュ元大統領も、戦後の選挙であっけなく有権者から見放された。ゼレンスキー氏もブーチン露大統領も先の運命は大差ないかもしれない。政治指導者の人気はかくも移ろいやすい。
 ・・・今のところ民心は、岸田氏の政治姿勢と奇妙に共鳴している。岸田氏が池田隼人元首相の「所得倍増計画」や大平正芳元首相の「田園都市国家構想」といった派閥の大先輩たちが残した昔の看板を持ちだすのは、独自の物語を生み出す気概ガハナから欠けているためだろう。だが政界も世論も、底流にはきっと飽きたらなさがくすぶっている。だからゼレンスキー氏に英雄の幻像をみたがるのだ。
 ※・・・ゼレンスキー氏への辛くちな釘を刺す意見です。冷静に見つめてみれば、このとおりかもしれません。岸田首相も、そろそろメッキが剥げてきたような、今日この頃の政治対応ぶりです。
11面 今週の本棚
 「編集の提案」津野海太郎 著、宮田文久編 伊藤亜紗 評 (東京工業大学教授・美学)
 抜粋・・・テープおこしとは、話されたことばをそのまま文字におこすことではない。それは書きことばに話しことばを演じさせることである。つまり、それが話されたときの身体的リズムや場の力とともに、ことばが立ち上がるようにすることである。著者は言う。そこには、人類が初めて文字を知ったときにも通じるよろこびやおどろきがある、と。
 生きのいい原稿とは、そうしたゆらぎを含んだ存在として人間が扱われているような原稿である。自身の考える堅固な正しさをぶつけあう討論ではなく、矛盾、裂け目、弱みといった含みとともにある、人間たちのやりとりを現出させること。
 ※・・・文章を書くための、たいそう含蓄ある著述のような気がします。読みたい本です。
 「ゆく川の流れは、動的平衡」福岡伸一 著  小島ゆかり 評 (歌人)抜粋
  ・・・最近よく耳にする「持続可能な」という言葉に対しても、過去から現在へつながる生命の捉え方の中で、考え直す契機を与えられる。ヒトははじめから永遠の現在進行形であるという認識は、科学を越えて芸術などすべてのジャンルの力となるにちがいない。
 ※・・・ダーウィンの「進化論」の重要なことは、サルからヒトに進化したことでなく、人間も生物変遷の現在進行形の中にあり、今の生物界の頂点である位階は仮の姿である、ということ。冒頭の説明文です。進化と退化は同義語であり、生物の遺伝的変化はランダムであるという考えと、やはりその変化には「ある恣意的な方向性の力」もある、という考え。今日の大勢の考えは、どっちの結論になっているのでしょう。

  2022.6.3日記
朝日朝刊から
1面 折々のことば
 トムちゃんがいなくなってもホントは困らないんだけど・・・。でも口では「困るよ」って言ったりしているんだよね、私。   妻鹿年季子(めがときこ)
 脳内出血で半身不随になった夫を介護する夫婦脚本家「木皿泉(きざらいずみ)」の妻は、夫がいる横でこう漏らす。困らないというほうが夫の負担にならないけれど、困らないと言って寂しい思いをさせるのは絶対嫌だしこんなこと本人の前で言えるほどの仲だと惚気(のろけ)たくもあるし、せつない。「木皿泉〜しあわせのカタチ〜DVDブック」から。

毎日新聞から
2面 金言 「英国会の禁句」 小倉孝保 抜粋
 新型コロナウィルス感染が拡大した2020年から翌年に欠け、首相官邸などで職員がパーティーを開き、首相も飲んだ。
 ・・・首相の国会(下院)答弁も問題となっている。「ガイドラインは守られ、規則に反しているとは思っていなかった」。疑惑発覚後の答弁に虚偽の疑いがでた。
 野党・スコットランド民族党(SNP)の院内総務は1月、下院で「首相は議会をミスリードした」と発言し、議長に退席を命じられた。
 下院には、議員が互いに向け発してはならない言葉がある。「ミスリード(mislead)」のほか「臆病者(coward)」や「愚か者(idiot)」「うそつき(liar)」なども禁止されている。
 ・・・英閣僚が国会に対し、わざとうそをついたりミスリードしたりすれば、解任理由になる。下院は今回、虚偽が疑われる答弁を無視し特別委員会を設けた。
   与党・保守党は下院で圧倒的多数を占めながら、特別委設置を認めた。国会に行政を監視する機能がある。虚偽答弁なら、議長を含め全議員への裏切りであると考えられているのだ。
 翻って、同じく議院内閣制の我が国である。安倍晋三氏は首相時代の2019年11月〜20年3月国会で「桜を見る会」前夜祭に関し、事実と異なる答弁を118回している。英議会ならどう対応するだろう。
 ※・・・「118回の嘘」煩悩の数も総じて108回であるそうな。今でもシラッとして、やれ「日銀は政府の子会社だ」「核のシェア」だとか、昨日はまた「アベノミクス」を虚仮にしたと周りに八つ当たり三昧、10回余分に煩悩に迷っておられるのだから、まだなにかし足りない悪あがきの魂胆を、蔵していると診た。

    2022.6.2日記
昨日は金剛山から紀見峠まで日帰り縦走をし、やはり今日は足腰に痛みがありました。

読売朝刊から
1面 四季
 あの麗しき村は!/黒い大地よりも暗い顔をした人々が/あてもなくうろつきまわっている。 シェフチェンコ
 地主の横暴によって荒れはてた故郷ウクライナ。それを糾弾する詩は「緑したたる庭は からからに乾き、/白壁の輝く家は 汚れて傾いている。」とつづく。
 ウクライナを苦しめたのは外敵だけではなかった。詩集「コブザール」から。
 
毎日新聞から 万能川柳
 可愛げの無い年寄りにある元気 富士 富士のマク
 風つよくみんな社長のズラ見てる  東京 ホヤ栄一
 
季語刻々 今昔
 六月の女すわれる荒筵   石田 破郷

みなわの今日のできごと
 ヘマをやった。近道をしようと、図書館から見える下の土手道を歩いて行くと叢となり、なおも強引に踏みしめていくとさる会社の敷地下へ来て、コンクリート塀の下の幅20センチほどのスペースをたどって行くと橋げた(会社の駐車場用)に突き当たりとうとう行き止まり。しようがないので高さ3mほど下の川原へと飛び降り、さらに橋下をくぐって進むも水が迫って進めなくなり、高さ3mばかりの護岸壁のひび割れを利してレイバックの登りで強引に上へ上がったが、幅40センチばかりの通路は茨混じりの密な藪に行き手を阻まれる。もう少し(5mばかり)で橋上へたどり着けるので、そこも強引にかきわけ絡みつく薮木や蔦を振りほどいて抜けた。手や腕が茨に掻かれて血があちこち滲んでいた。それにまた、非常に痒くなって、部分部分ミミズ腫れとなりました。
 川の左岸土手をたどって行けば、ちゃんと道があることを、あとで思いだして、臍を噛む。

    2022.5.30日記
毎日朝刊から。
3面 「完全閉じ込め」の不安 ALS男性 新技術待望 抜粋
 脳と機械をつないで機能的に連動させる技術「ブレーン・マシン・インターフェース」(BMI)の発展が目覚ましい。念じるだけで機器の操作や文字入力ができるなど、SFの世界で語られていた技術が最近、一気に実用化しつつある。
 ※・・・本当にSFの世界。「フラットライン」ウィリアム・ギブソン作というSF小説を思い出します。世が進めば、いずれはその方面に移っていくと思います。
9面 毎日俳壇
 点滴の一滴づつの日永かな 北九州市 宮上 博文
毎日歌壇
 戦ない世を誇っても虐待で死ぬ児が多くこの国は病む 伊賀市 菅山 勇二

独り言・・・ 疲れすぎた身体は、明日の希望をむずかる。

2022.5.29日記
 箕面市のシルバー人材センターに登録し、一昨日はクリーンセンターで掃除業務の研修を受け、昨日は住まいから二区域離れた地域の市広報誌424部数の配布を行った。20頁ほどの冊子なのでけっこう重く、424部総数で35キロほどになる。昨日は連れ合いと共に車で現地まで行き、路上駐車の番に連れ合いを残し、独り歩いて配布した。9時半に配布開始、終わったのは午後1時半、4時間を費やした。時間給にして630円ばかりである。労力は費やすが、自由気ままな業務なので仕方ないかと、甘んじる。
 年金だけでは、月々かつかつのやり繰りなので、小遣い銭に不如意が生じたし、また貯蓄がままならなくなった。そのようなわけで、仕事をリタイアした去年8月から8ヶ月余り、ここに至ってようやく優雅な遊び暮らしをする事にも限界を感じたのである。何年働き続けられるかは、模糊として見通しがない。
 一つには、ホームページのアフィリエイトからの収入を当てにしていたのであるが、鳴かず飛ばずのありさまであり、まったく期待できなくなった。以上、今日この頃の近況を記録。

毎日朝刊から 万能川柳
 早起きか不眠症かの午前4時 八王子 タカさん
 不祥事は与党にあれば野党にも 佐倉 繁本 千秋

9面 Sunday Column 「マルクスの墓」に見る富と権力 篠田 航一 ロンドン支局長
 世界で最も人々に影響を与えた本は何か。・・・抜粋
 だが20世紀以降で考えれば、結果的に世界の歴史を動かしたという点で「資本論」を挙げる人もいるだろう。著者はユダヤ系ドイツ人のカール・マルクス(1818〜83年)。搾取の構造を説明し、資本主義を批判的に考察した。その影響を受けたロシアでは20世紀に世界初の社会主義革命が起き、ソビエト連邦が誕生した。
 19世紀にマルクスが「資本論」を書いたのは、英国の首都ロンドンだ。政治的な分子として大陸欧州を追われ、英国で生涯を終えた彼は今、ロンドンのハイゲート墓地に眠っている。
 実は墓の付近は今、高級住宅街になっている。資本主義の限界を説いたマルクスが眠るすぐそばで、皮肉にも資本主義の権化のような大富豪たちが暮らしているのだ。その代表が「オリガルヒ」と呼ばれるロシアの財閥である。・・・
 時代が変われば見方も変わる。英政権とオリガルヒの関係だけではない。かって世界の一部に希望を与えたマルクスの思想も、ソ連崩壊など社会主義の「失敗」が明らかになった20世紀終盤には時代遅れと言われた。マルクスの墓は過去に何度も荒らされており、社会主義を嫌う人々にペンキで「憎悪の教義」と落書きされたこともある。
 ※・・・マルクス主義を全的に否定されたわけではないと、考えます。やはり「弁証法」という方法論は今も一面においては有効であると思います。

2022.5.28日記
毎日朝刊から
7面 「中国、最も深刻な課題」
 ブリンケン米国務長官は26日、首都ワシントンで、バイデン政権の対中国政策について説明した。
 ・・・中国の急速な発展は国際秩序が提供する「安全と機会によって可能になった」として、現在はその秩序を「弱体化させようとしている」と指摘。そして中国の習近平国家主席の下で「中国共産党は国内でより抑圧的に、国外でより攻撃的になっている」と批判した。
 その上で、中国自身がこうした姿勢を「軌道修正することに頼ることはできない」と断定し、「自由で包括的な国際システムを推進するために、中国を取り巻く環境を整えていく」と強調した。
 ※・・・現米国政権にとって、中国はよほど嫌味で目障りな存在になってしまったのだろう。アジア諸国はなべて、米国に対し協調的な態度をとっているのに、中国と北朝鮮だけは、肩臂張って米国に競い合おうとしている。腹にすえかねるはずだ。それは、アジア国であることも、歴史的な遠因として、暗に含みもっているせいかもしれない。昭和の時代「エコノミックアニマル」と揶揄された日本も、やはり対象になっているし、先々に日本の中国化を警戒していてもおかしくない。
 
万能川柳
 永遠を誓い刹那にあこがれる 北九州 お鶴
 数式を聞こえよがしに「美しい」 行目 ひろちゃん

朝日新聞
1面 折々のことば
 独り視(み)る、まだ居るんだぞ 昼の月  ふじやん
 3年の野宿生活の後、生活保護と末期がんの治療を受ける男性は、陽光にかき消されそうな自分だけれどここに確と在ると、月に自らを映して詠む。
 
  2022.5.26日記
朝日新聞 11面オピニオン&フォーラムから
 沖縄「復帰」50年 「交差する抑圧を見つめる」林香里 東京大学大学院教授
 以前、4月28日にも林香里教授の論評「国家より人間優先の視点を」を採りあげたことがあります。今回も、同じ非権力の側に立った論評の、全文を載せたいところ、細かい経緯や数字などの多い箇所は割愛し、大筋のみを抜粋します。
 インターセクショナリティとは、いうなれば「差別をよく見よ」ということ。
 「復帰」50年というこのタイミングに、沖縄が各種の抑圧の交差を背負い、多くの住人が不安定な暮らしを強いられているという現実を(一人当たりの所得は全国で一番低い)、いま一度、本稿の読者と共有したい。
 沖縄が直面する抑圧を、インターセクショナリティの思想に倣い、「よく見て」いくと、さまざまな位相が浮かび上がる。たとえば「主権」や「自治」。ウクライナ侵攻で見られるとおり、これはときに武力衝突を招くほど重要な概念なのに、沖縄の文脈では軽視される。地域社会学者の熊本博士によると、名護市の辺野古基地建設は「国防及び外交に関する問題」であるから、生活環境の悪化が予想されても、名護市民に建設の是非を決定する権利は与えられていない。
 ・・・インターセクショナリティの概念は、一つの差別で完結しない輻輳的な抑圧の構造を丁寧に検証する。それは、包摂と連帯を理想に、すべての人をあらゆる排除から守ろうとするものだ。「復帰」から50年経っても「本土並み」が実現しない沖縄のことを、私たちは知った気になっていないだろうか。抑圧の交差と言う視点が、見直しを迫る。
 ※・・・我々庶民レベルで、何ができて何をすれば良いか、どのような方法を探るべきか、考えていく必要があります。
同じく11面オピニオン&フォーラム
   「あすを探る」市原麻衣子 一橋大学教授 国際政治学
 ・・・今後、規範侵害の常態化を防ぐ上で重要なことは、ロシアに譲歩しない姿勢は保ちつつも、非欧米諸国を遠ざけないよう留意して足並みの揃った理解と参画を取り付けていくことである。そのためには、我々はこの戦争を権威主義対民主主義の構図で語るべきでない。そして、この戦争が自由と突きつける問題に実態的かつ本質的に対処することを通して、自由の唱導がイデオロギー的なものでないことを示すべきである。
 ※・・・要点は、非欧米諸国(アジア・アフリカ諸国)の対ロシア態度の不明瞭・不一致に関わらず、丁寧な説得・対話努力を継続する、ウクライナ侵攻をメディアの多くが唱える「権威主義対民主主義」という狭義なく繰りに片付けず、輻輳的な見方で対応するべき、となります。

朝日川柳
 失言に松竹梅のあるを知り 愛媛県 西谷浩次郎
 ※・・・バイデン氏の「イエス」は「松」と評価?

  2022.5.25日記
毎日朝刊から
2面 水説 「終身独裁が持つ危険」 古賀 攻
 冷静な視点を持っておられる論客古賀氏、今日の論評の全文を採りあげます。
 今回の日米首脳会談はどこに力点を置いていたのか。木原誠二官房副長官の記者団に対する次のような説明にそれが現れている。
 国際社会がウクライナ侵略に対処する中に「あっても」、また現下国際情勢に「かかわらず」、日米が共同でインド太平洋地域に関与し続けることが狙いだと。
 有り体に言えば、日米が最も警戒すべき安全保障上の相手は、侵略戦争を継続中のロシア以上に中国である、ということだ。
 「ロシアは想定より弱い」。日米の当局者には、戦況の分析からそんな共通認識が生まれているという。それでも大国が戦争を始めてしまうと、世界が被る不利益、経済的なコストがいかに大きいかを見せつけられた。
 現在の中国が持つ軍事力や経済力はロシアの比ではない。「中華民族の偉大な復興」のスローガンには国際秩序を自国中心に塗り替える野心がにじみ出ている。
 而も、無謀なウクライナ侵略がプーチン露大統領による無期限独裁下と老害の産物だとしたら、中国の習近平国家主席も同様の危険を抱えていることになる。
 4年前に憲法の任期規定「2期10年まで」を削除した習首席は、今秋の共産党大会で3期目を確実にするとみられている。事実上、終身独裁への道だろう。日本の外交・安保担当幹部はずばり言う。「5年後の習近平は今のプーチンである可能性は高い」
 そんな習首席が中台統一に断固たる決意を示すからこそ、台湾が焦点になる。米国の国家情報長官は今月、2030年までに台湾進攻の危機が続くと議会で証言した。米軍首脳は既に進行が27年までに起きる可能性を指摘している。
 昨年4月の日米首脳共同声明では「台湾海峡の平和と安定」との明記が大ニュースになった。当時の日本側にはまだ中国の反応へのためらいがあった。今回の共同声明では同じ文言に「国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である」と言う修飾語がついた。
 もはや台湾海峡は単なる地域問題ではなく、有事になれば地球規模で混乱をもたらす最上位課題と言う意味が込められている。ロシアが情勢認識を変化させた。
 だから台湾への軍事関与を問われたバイデン米大統領の「イエス」発言は、ハプニングでも失言でもない。革新的なけん制だ。
 日本政治にとって「台湾」はより高度なテーマになっていくだろう。米ソ冷戦期の西ドイツのように、日本は米中対立の最前線に位置している。やり過ぎるのでも、見て見ぬふりをするのでもない賢慮がいる。 以上
 ※…古賀氏を冷静な視点の持ち主と最初に挙げたけれど、ある側(国どうしの力学と対立)に立てばまちがってはいないとしても、大道の側から解せば冷静さを欠いたとも受け取れる論評です。米中或いは日中という、二項対立を前提とした考えであると思われます。昨日の朝日新聞社説の「…だが力による対峙を強め、経済安全保障の名のもとに、相互依存関係の切り離しを進めるだけでは、平和と安定は保てない」との主張からみる「中庸の徳」が、見られない。中国も或いはロシアも「同穴の貉」のごとく、「民主主義国家の対立国」と一方的に色分け突き放している論調である。中庸な賢慮のあり処を示していただきたい。

朝日新聞から
1面 天声人語から抜粋
 ・・・しかし、ロシアの蛮行を許した背景には別の長い経緯がある。米欧は北大西洋条約機構(NATO)を東へ東へと拡大してきた。結果として、国民に被害者意識を煽るプーチン大統領に勢いを与えた面もあろう。中国に対しても、軍事や経済などの包囲網が度を越してしまう危険はないだろうか。
 暴挙を許さぬ姿勢と、対話のできる回路。求められるバランスはかってないほど難しい。
 ※・・・この短い文節の中に、奥行のある立体感が見えるだろうか。
4面 「バイデン氏 台湾防衛発言」
 ・・・一方自民党の佐藤正久外交部会長は24日の党会合で、「米大統領が最高の失言をした」と歓迎。「この地域の安全に資する発言であり、バイデン氏の本音が出た極めて良い失言だ」と述べた。
「失言とは政治家が言わないはずの真実を語ることである」:米コラムニスト、マイケル・キンズレー氏の言葉。
 
朝日川柳
 まだしてるなんて顔され朝散歩 東京都 上田耕作
 (※・・・マスク解禁)
朝日なにわ柳壇
 化けて来いあんなに苦労させたのに 寝屋川 岡田憲一
 にんげんが一番怖いというおばけ  天王寺 高杉力
 おばけより鏡が怖い化粧前     八尾  森田恵子
 ロシアの空にやがておばけの群れが舞う 堺 立石雉枝子
毎日万能川柳
 理想とはそんなものかい娘の彼氏 神奈川 荒川淳

2022.5.24日記
朝日朝刊から 
1面TOP 「台湾防衛 軍事関与を明言」抜粋
  バイデン氏「あいまい戦略」転換示唆
 来日中のバイデン米大統領は23日、岸田文雄首相との共同記者会見で、台湾有事の際には台湾を防衛するため、軍事的に関与する意思があることを明確にした。
2面 「バイデン氏発言 ウクライナ侵攻意識」抜粋
 ・・・バイデン氏は、中国を正当な国家と認める「一つの中国」政策を維持していても、「中国が台湾を武力で奪う権限を持っているという意味ではない」と強調。中国が台湾進攻に踏み切れば、「ウクライナで起きたのと同じような行動になる」と語った。
 ・・・米ホワイトハウス当局者は、バイデン氏の会見直後「米国の{一つの中国}政策の変更はない」と声明を出したが、バイデン氏の「台湾防衛」発言自体を否定しなかった。
3面 「ゼレンスキー氏 ロシア制裁訴え」抜粋
 ・・・ロシアの侵攻により壊滅的な被害を受けた国内インフラなどの再建のため、ロシアの凍結資産を復興資金に振り向けることを提案。
 ※・・・いくらなんでも、それは道義的に無理でしょう。戦争当事国の一方の資産を一方へ配分するなどは、広義に言えば略奪です。また、凍結した当事国が、戦争当時国の一方の側にだけ便宜を図るなどは、フェアな施策でもない。ゼレンスキーさん、少々図に乗ってはいませんか。
4面 維新公約に「9条改正」 保守色協調「全国政党」狙う 抜粋
 維新の動向などと、採りあげるのは「バイデン訪日」に比べれば、宙に浮く感が否めないけれど、残しておきたい記事です。
 日本維新の会が夏の参院選で打ち出す公約の原案がわかった。防衛費増額などの安全保障政策や、自衛隊を憲法に明記する9条改正などを前面に掲げる。・・・
 ※・・・所詮、与党政権に追随するという、この程度の発想しかできない、発展性が見られません。
7面 日米同盟進む先は  考/論
慶応大総合政策部 新保謙
 ・・・まずは核抑止を強化するが、将来的には核軍縮を進めるという二重構造を示している。
 ※・・・だとすれば、二重構造とやらはずいぶん日和見的な主体性欠如に思える
ハワイ東西センター デ二―・ロイ 上級研究員
…米国にとって今回の訪問の大きな目的は、自由主義国家が団結して国際的なルールを形成できることを示し、中国に二つのメッセージを送ることだった。(中国に米国の介入を予期させつつ、米国との外交関係を断ち切らなければならないとまでは思わせない利点がある)
米スタンフォード大 フーバー研究所 マイケル・オースリン特別研究員
 ・・・今回の日米首脳会談が重要なのは、日米関係がこれまでのような二国間関係だけでなく、中国や北朝鮮などに対応するための多国間の取り組みの一部になっていることだ。
10面社説 日米首脳会談「対中 力に傾斜の危うさ」抜粋
 透明性を欠く軍拡を続け、既存の秩序に挑む中国の対外政策が、地域に緊張をもたらしていることは紛れもない。だが、力による対峙を強め、経済安全保障の名の下に、相互依存関係の切り離しを進めるだけでは、平和と安定は保てない。米国の前のめりな姿勢を抑え、対話や信頼醸成の取り組みを交えた共存の道を探るこそ、中国の隣国でもある日本の役割だ。
 …日米同盟が基軸で、防衛力の着実な整備が必要だとしても、単に追随するだけではない、日本自身の主体的な対中政策が問われている。
毎日朝刊社説 「日本が外交力を示す時だ」
 ・・・ただし、アジアの安全を維持するには、何よりも日本が国益を守るための独自外交を戦略的に展開する必要がある。
 ※・・・毎日新聞も大筋は外交を重要視しているが、朝日新聞の方に具体性があり、「力による対峙」にNo!を唱える姿勢に、共鳴できます。
朝日朝刊 
11面 ウクライナ政府の公式ツウィッターと見られるアカウントが投稿した動画に、ヒトラー、ムソリーニに加えて昭和天皇の写真が掲載され、その後謝罪・削除された。問題の背景を聞いた。
  橋爪大三郎さん 社会学者 抜粋
 ・・・だから、3人を同列にする見解に対して日本政府が抗議をすることは当たり前だと言えるのです。ただ、問題は別の点にあります。
 昭和天皇が有罪になっていないという一点に依拠する抗議は、自らの見解ではなく外国の考えに乗っかっての抗議だということです。「同列にするなと言うなら昭和天皇はどれぐらいヒトラーと違うのか」「そう考える根拠な何か」という問いへの回答を日本政府が用意した上で抗議したとは思えません。
高橋哲哉さん 哲学者
・・・今月9日に行われたプーチン・ロシア大統領の演説には、日本を指すと思えるくだりがありました。冷戦後に米国がより特別な国のように振る舞い始めたと指摘しつつ「(米国は)何も気づかないふりをして従順に従わざるを得なかった衛星国にも屈辱を与えた」と述べたのです。
 この衛星国の典型は、米軍基地問題や沖縄問題などで米国への忖度や追随をし、主権国家としての振る舞いができずにいる日本ではないでしょうか。そんな日本にプーチン氏は「屈辱は感じないのか」と言っているように思うのです。しかしウクライナの動画への敏感な反応とは対照的に、この発言への不快を示す声はほとんど聞かれません。
 自国の不快な現実を直視できているのかー。外からそう問われていることへの自覚が薄い日本人の姿を映し出している点で、動画問題と通底する現象だと思います。
 ※・・・開き直る気はないのですが、日本人とはそうなんだ、と妙に納得してしまいます。日本人が鋭敏なのは、個人名を名指しての非難や侮辱ですが、あいまいさにぼかし遠回しな分かりにくい言辞を弄して、虚仮にされても、反応が弱いようです。同じ集団内の分かりやすい言葉でならば、敏感に反応して集団内の相手に怒りを表します。多年、島国として海外と交じることが滅多になかったガラパゴス文化としての、今に残る劣等点でしょうか。

2022.5.23日記
川柳を詠みました。
 鳥たちはへいわへいわと空に飛び
 仲良しの子犬どうしがたわむれる (逢瀬)
俳句を詠みました
 降りはててみどりしたたる夕明かり
 春陽に裸身をさらすさるすべり
 みずたまり空を映してさくらびな 
 つくばいに筧の水も梅雨の朝

2022.5.22日記
 今日は、沖縄についてもう少し知識を深めたいと思いますので、以下の記事を採りあげます。
朝日朝刊から
3面 「日曜に想う」 論説委員 沢村 亙
 レケオ人とは、いったい何者なのか。中国、インド、欧州を結ぶ海洋貿易の中継地として15〜16世紀ごろのマレー半島で栄えたマラッカ王国に、異彩を放つ人々が出入りしていたという。
 正直で気位が高く、奴隷を買わず、同胞を売らない異教徒たちーピレスによる見聞録「東方諸外国」にそう形容されているレケオ人が、「琉球人」であったことを裏付けた外交文書が存在する。
 1424年から1867年までの444年間、琉球王国が交易相手の中国、東南アジア、朝鮮の国々と交わした公文書を編纂した「歴大宝案」である。
 ふたつあった原本は消失した。写本などから内容を復元する沖縄県の事業が1989年に始まり、全15冊の校訂本が刊行されたのが5年前。注釈を加えて読みやすくした800万字の訳注本がこの春に完成した。
 ・・・“あいまいさ”に”したたかさ”が加勢する。17世紀以降、琉球王国は薩摩藩を通じて日本の間接的な支配下にはいりながら、明・清の冊封国でもあり続け、独自の外交や通商、文化を保持した。
 かといって海洋が無法空間だったわけでない。歴大宝案には、他国からの漂着者をお互いに手厚く保護し、祖国に帰した記録が多く含まれる。海で生きるための「法の支配」が秩序の礎になっていたことを示している。
 海洋交易が培った琉球社会の多様性も注目に値しよう。外交文書の作成や操船・造船の技術を中国から渡来した華人が担い、対日交易には日本の禅僧らが関与した。国際貿易港となった那覇には様々な背景を持つ人の定住空間ができた。
 歴大宝案の編纂を手がけたのも華人だった。明治初期、日本の統治に組み込まれた「琉球処分」以降、それを守ったのはその末裔たちである。
 ※・・・日本を除いて、昔は、明・清、東南アジア、朝鮮、琉球と、東シナ海域の国々はみんな仲良くしていたのですね。
 朝日俳壇
  春の月淋しき者を見つけだす  柏市 藤崎 務
  惜春やこんな春でも春は春    玉野市 北村 和枝
  ※・・・戦火や疫病があっても、春はやってくる。

毎日朝刊から
3面 万能川柳
 何かしら池で語らう鯉と亀  東京 恋し川
   
2022.5.21日記
毎日朝刊から
2面 「世界経済から露を孤立」と大見出し G7財務相が共同声明
 ※・・・穏やかならぬタイトルであります。少々行き過ぎの言辞かと訝しく思えます。ウクライナ侵攻により、世界の国から半ば四面楚歌におかれているとはいえ、ロシアはやはり世界の中で影響は無視できない大国です。その国を抜きにしては、世界の経済も地球環境対策もさらに文化でさえも、少なからず痛手を被るのではないか。危惧というより危険です。
 関係各国には、戦火の収まるまで、なお外交努力を続けてもらいたい。
万能川柳
 アベノマスク博物館に残してね  杵築 口先介入
   独立はしたが自立できぬ彼    札幌 北の夢
5面社説 「不祥事相次ぐ維新議員」 ガバナンスの不全が問題
 ※・・・世のため人のため真面目に政治に取り組もうとの姿勢が、党そのものには見えないのです。
13面 本紹介
 「何が記者を殺すのか」 斉加 尚代(さいか ひさよ) 著 集英社 ¥1,034
 ※・・・5月19にも採り上げた 気骨のあるジャーナリスト斉加尚代さんの本です。「教育と愛国」というTV版のドキュメンタリー映画も発表されています。斉加さんは、取材を通じて、現役時の維新橋下徹氏と言い合いをしたという豪傑です。今後のご活躍を期待します。

2022.5.20日記
毎日朝刊から
1面 余禄コラム 抜粋
 スェーデンのNATO申請・・・ロシアのウクライナ侵攻が招いた結果だが、今後、中立国の役割をどこが引き受けるかと心配にもなる。
 ※・・・ごもっとも。二項対立の間に弾力的な緩衝帯があれば、ずいぶん緊張も緩和されると思う。
 万能川柳
 モリカケの政治不信末代へ  柳川 昼の目
4面 困難女性支援法の成立―都道府県に計画策定義務 抜粋
 新法は「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」
骨子
・ 困難な問題を抱える女性の福祉の増進や人権擁護が基本理念。施行は2024年4月
・ 国と自治体は支援に取り組む責務がある。国は基本方針、都道府県は基本計画を策定。市町村は努力義務
・ 自治体は関係機関や民間団体と会議をつくり、官民連携で支援策を検討
・ 婦人保護施設を「女性自立支援施設」に名称変更
・ 売春防止法の一部を切り離し、改定して盛り込む     以上
 ※・・・女性が社会的弱者であるとの診たてからの法律であるけれど、こういう法律を必要としない社会に成熟するよう、われわれ社会の成員は日頃から心がけ或いは意識改革をしていく必要があります。女性には男性に劣らない潜在的能力があると考えます。古くから形成された男尊女卑の旧弊な文化のせいで、能力の発揮を抑制されてきたのです。
5面社説
  「米国のアジア外交―緊張招かぬ抑止と対話を」 抜粋
 ・・・経済制裁で対抗すると事前に警告したが、通用しなかった。米国の抑止力の低下を物語る。
 ※・・・本当にそうなのだろうか。「事前警告」は別の意図を持っていたのではないかと、今現状のウクライナ戦線を見ると、そんな影の疑惑も深読みしたくなる。このまま戦争が長引けば、どう見てもプーチン政権は劣勢に立たされるからだ。
5面 「平和外交や減税」-共産党が政策骨格
 共産党の志位委員長は19日の記者会見で、夏の参院選で訴える政策の「骨格」を発表した。
・ 消費税の緊急減税(現状10%→5%)
・ 9条改正阻止とASEAN各国と日米露などを加えた東アジア(EAS)の枠組み強化を主張
・ 国連憲章の順守→全世界が一致結束
   ※・・・革新左派野党でありながら、当たり障りのない骨格、陳腐にすぎる。もうすこし、党色の濃い革新的な案はでないのか。昼日中の陽炎のように、まわりの景色に溶けこんでしまいそうである。
6面 衛星ネットサービス「スターリンク」抜粋
   露軍に対抗 実践投入
 「サンキュー、イーロン!」ウクライナ軍のドローン部隊「エアロロズビドガ」は3月、マスク氏に謝意を示す動画をツウィッタ―に投稿した。
 スターリンクは、小型衛星を使うネットシステムだ。一般的にネットに使う電波や光ファイバーは地上の基地局を経由してつながっているが、スターリンクは通信電波を衛星で中継。衛星と通信する小型アンテナ(直径約55センチ)さえあれば、サービス提供地域ならどこでもネットが使える。
 マスク氏によると、投資額は最大で300億ドル(約3兆9000億円)になるという。
 なぜ衛星ネット事業に多額の投資をするのか。それは、ネット格差の解消という社会課題の解決にとどまらずIT業界の様相を変える「ゲームチェンジャーになり得る」とみているからだ。
 宇宙ビジネスに詳しい野村総合研究所の八亀彰吾氏は「現在ネットに接続できない約30億人の巨大な市場が生まれたり、これまで難しかった場所でネット接続できるようになったりすることで、新たなサービスを提供する新興企業が生まれ、業界の勢力図が変わる可能性もある」と話している。
 ※・・・ユーチューブの動画に、ロシア軍戦車や軍用車両がまるで蠅が蠅たたきでたたかれるように、つぎつぎ砲弾やミサイルで爆破されているのが配信されている。これも、上空からドローンで位置確認をし、衛星ネットを通じて地上のウクライナ兵に伝えているのかなと、推測する。その命中率が、おそろしい。

朝日朝刊から
13面 コラムニストの眼  トーマス・フリードマン 抜粋
 ・・・しかし、私たちは、信じられないほど不安定な要素、特に、政治的に傷ついたプーチン氏に対処している。ロシア軍将校たちの殺害や艦船の沈没を自慢し、ウクライナと恋に落ちて、永遠にそこから逃れられなくなるのは、愚の骨頂である。
 ※・・・アメリカ人ベテランジャーナリストの冷徹な眼。ロシア軍将校の殺害や旗艦「モスクワ」の撃沈については、アメリカの衛星監視情報がウクライナ軍にもたらされた効果だ、とのスクープがメディアに公表された。マスコミへのリークについて、バイデン大統領は激怒したらしい。
朝日川柳
 またひとつやってる風の「庁」作る。 埼玉県 椎橋 重雄
 ※・・・「こども家庭庁」

2022.5.19日記
朝日著官から
11面 オピニオン&フォーラム 「委縮するメディア」抜粋
 毎日放送ディレクター 斉加 尚代(さいか ひさよ)さん TV版「教育と愛国」ギャラクシー賞テレビ部門大賞
 経済原理を背景に政治やSNSを怖れ、自ら縮こまる現状
―MBS(毎日放送)は今年のお正月のバラエティー番組で橋本さん、松井一郎大阪市長、吉村洋文大阪府知事を揃って出演させ、「政治的中立性を欠く」と指摘されました。これも経済原理が背景に?
 「大阪では今、維新の首長たちは視聴率が取れる。ビジネスとジャーナリズムの切り分けができにくくなっている状況にあります」
 「いろいろ問題がある番組でしたが、橋本さんの知事時代について、松井市長が「女子高生も泣かせたし」と笑いのネタにした場面がありました。08年の高校生たちとの討論会を指していると思います。経済的に困窮し私学助成削減に反対する彼女らに、橋本さんは激しく反論し、「あなたが政治家になってそういう活動をやってください」と言った。強者が、声を上げる弱者を{ひっぱたく政治}の象徴のように見えました。それを{討論会で女子高生を泣かせた}というテロップまでつけて流したのには、目を疑いました。
 「昨年、私は局内に全員メールを送り、良心に基づく{個}の視点を持つのが大事だ、と書きました。この件も、それぞれのポストにいる人間が{一線を越えています}って言えば止まったかもしれない。そういえないこの空気は何だろうと思えてなりません。
―メディアは委縮してしまったのでしょうか。
 「委縮しそうな状況が生まれたら、逆に跳ね返さなきゃいけない。それがメディアの役割です。政治家の声は力があり、しかも今はSNSで拡散される。政治家が{表現の自由}を言い出した時点で、私は世の中おかしくなったと思いました。表現の自由が必要なのは、意見をたたかれたり黙らされたりする人たちです。なのに政治家やSNSを前に、今はメディアが自ら縮こまっています」
 「橋本さんと私が言い合いをした時、会見場にはパソコンでメモを打つ音ばかり響いていた。{あの取材を否定する記者は記者じゃない}と声をかけてくれた人もいましたが、{早く質問をやめれば炎上しなかったのに}という同業者の反応は、その後のバッシングよりもショックでした。
―記者はどうすべきだと考えますか。
 「ある沖縄の人が、デマを大阪のテレビが暴いてくれて希望を感じたと言ってくれました。民主的な社会を維持する土台として、市民と学校、メディアには、信頼や対話が必要です。メディアは、強い言葉を発せられない人の言葉のスペースを確保する役割がある。失った信頼を築き直さないといけません」
 ※・・・斉加尚代氏、たいそう骨のあるジャーナリストを今回知りました。毎日・朝日新聞・TVといわず、メディア広範囲に亘って活躍され、どんどん我々庶民に情報発信してください。原点に立った、素朴な疑問・問題提起がとても光っています。
もともと結党当初から、浅慮な姿勢が見えて、どうにも首肯できない党です。
朝日川柳
 政治家も言ってますよと近畿大(ルッキズム・日本維新の会 石井章参院議員) 大阪府 芳村和則

毎日新聞から
8面 「米UFO公聴会50年ぶり実施」抜粋
 未確認飛行物体(UFO)に関する公聴会が17日、米下院情報特別委員会の小委員会で開かれた。米メディアによると、米議会がUFOに関する公聴会を開くのは約50年ぶり。国防総省の高官2人が出席し「説明できない目撃例もある」と証言。議員からは「国家安全保障上の潜在的脅威として扱う必要がある」などの指摘が相次いだ。
 ※・・・ウクライナ危機の折柄のせいか、UFOといえば、何か空想の産物めいた不真面目さがつきまとうが、米議会小委員会が正面切って真面目に取り組む記事を読むと、あながち怪奇の類として片付けられない実在性があるように思えてくる。永きに亘って世界中からたくさんの目撃例もあることだし、実際に実在するのかしれない。しかし、外宇宙からやって来たとばかり決めつけられず、あるいはこの太陽系内からか、もっと言えば月か火星か、それともこの地球のどこかからか、そのへんが不明です。まあ、想像するだけで、暇つぶしにはなります。
万能川柳
 「こう見えて」どう見えたって古希は古希 別府 タッポンZ
 味聞いて食べやすいよと言った彼 伊達 いいやん 
 
   2022.5.18日記
毎日朝刊から
2面 水説コラム 「琉球処分と独立論」古賀 攻 抜粋
・・・「蛍の光」が文部省唱歌になったのは1881(明治14)年。歌詞はこの2年前に強行された「琉球処分」の反映がある。(歌詞4番 「千島の奥も沖縄も/八洲(やしま)の内の護りなり」
 学校で習う琉球処分は、かっての琉球王国を沖縄として日本領に組み入れた出来事くらいにとどまる。しかし、日本近代史の流れで見ると、後に朝鮮半島や台湾の植民地化に乗り出す帝国主義の走りと見なすことができる。
 明治政府は薩摩藩と清国の二重支配下にあった琉球国王を、72年に一方的に「琉球藩主」として天皇との君臣関係に仕立てた。これに琉球側が清や列強に訴えて抵抗すると、79年3月末、首里城に群を動員して国王を追いだした。  だから実態は武力による「琉球併合」だ。処分と呼ぶのは、琉球が天皇の意に背いたという自分勝手な理屈による。これらは琉球新報の連載をもとにした「沖縄の自己決定権」(高文研)に詳しい。
 ・・・沖縄で大きな壁にぶつかったり、苦難に見舞われたりするたびに、一部で「沖縄独立論」が頭をもたげるのは、特異な歴史があるためだ。凄惨だった沖縄戦。27年間もの米軍統治。理想とは異なる日本復帰。なぜだと突き詰めると、明治の起点が浮かび上がる。
 復帰に関する世論調査では、沖縄の若い世代ほど「良かった」という肯定感が強く、年代が上がるほどに弱くなっていく傾向が見られた。沖縄にあこがれる移住者が増えていることからも、独立論が広がっていく状況にはない。 ・・・では時間の経過とともに自然に消えていくものだろうか。本土側の無関心や安易な同情論がある限り、異議申し立ての突破口としては残ると思う。
 ※・・・昔琉球王国は清や台湾と交易を結んで営みをする、平和な島でした。島民たちは、畑を耕し、豚や牛を飼い、海に出て漁(すなど)り、交易し、食べ、飲み、歌い踊り、それはそれは幸せな日をおくったということです。
毎日万能川柳
 婆さんが余所見で桃は海の上  佐倉 繁本 千秋
 芸人に無付けたいのが多い   豊田 阿保椰念

  2022.5.17日記
朝日朝刊から
11面 オピニオン&フォーラム インタビュー
環境対策を軽視しものづくりを過信 世界の潮流乗れず 京都大大学院経済研究科教授・諸富 徹さん
 日本は主要国で真っ先に経済成長が滞っただけでなく、脱炭素など環境対策でも出遅れが目立ったようになった。環境と経済の関わりについて研究を重ねてきた経済学者の諸富徹さんは、そこに日本の資本主義の「老衰」を見る。産学の新陳代謝を促し、経済を持続可能にする道を、どう見出だせばいいのか。
―日本は「資本主義の転換」に取り残されつつある、と指摘しています。
 「世界の産業はデジタル化やサービス化が進んでいます。経済の価値の中心は、モノから情報・サービスへと大きくシフトし、資本主義は{非物質化}という進化を遂げているのです。それなのに、日本はいまだにものづくり信仰が根強く、産学構造の根本的な転換ができていません」
・・・「二酸化炭素(CO2)を1単位排出するごとに、経済成長の指標となる国内総生産(GDP)をどれだけ生み出したのかを示す{炭素生産性}をみると、日本は先進国で最低水準です。成長率が低いうえ、その割にCO2排出を減らせていないことを示しています。エネルギーを多く使いながら付加価値が低い、20世紀型の製造業に依存しているせいです」
―かって日本は、環境技術を誇っていたのでは。
・・・「しかし、2000年代に入っていくと様相が一変します。欧州は再生可能エネルギーに真剣になったのに、日本は不安定でコスト高だと軽視し続けました。いずれは新しい産業になりコストも下がるとの主張も、政財界の「真ん中」の人たちは聞く耳を持ちませんでした」
―なぜでしょうか。
・・・「デジタル化でも脱炭素でも、世界でパラダイム(考え方の大転換)が起きているのに気つけず、対応が後手に回ってきた。日本の資本主義は「老衰」を起こしているのではないでしょうか」
一環境対策にお金を使えば、利益や経済成長の足を引っ張るのではとの懸念があるようです。
「現実は逆です。脱炭素を着実に進めたスウェーデンのような国の方が、環境対策で出遅れた日本などよりも高い成長率を達成しています。経済の非物質化により、CO2を減らしながら成長する{デカップリング(切り離し)}が進んでいるのです」
・・・「環境対策は人類の存続にとって根源的なニーズなんだ、という認識に変わりました」
・・・「製造業は本来、もっと人材や知的財産に投資し、工場もデジタル技術を駆使した次世代型に革新しておくべきでした。また団塊の世代が抜ける前に、彼らのスキル(技能)を言語化して残しておく必要もありましたが、それも怠った。工場は古くなり、人は減らされ、ノウハウを持ったベテランはいなくなる。それなのに厳しい目標だけは現場に押し付けられる。検査を飛ばさなければ達成できないとなれば、不正も起こります。
一岸田文雄政権が掲げる「新しい資本主義」は、こうした「老衰」への処方箋になりますか。
 「まだ古い資本主義です。・・・岸田政権は、経済の新陳代謝を促す仕掛けが弱いのです」
・・・「しかし、現代文明がもたらした気候危機は、そうした考え方への賛同の広がりでは対応できる段階を、すでに超えています。再エネ転換には技術革新が欠かせませんが、成長がなければ新技術に投資する原資も生み出せませんし、停滞した社会では格差も固定化されます。資本主義の中でシステムを改革する道を模索すべきです」
 ※・・・日本の明日について、非常に厳しい現実を提言されています。昨日の藻谷浩介さんの「ガラパゴス化」改善と同じく、一朝一夕には成しがたい業ではあります。結局人材がキーワードになるのでしょうか、進取のひらめきを持った新しいタイプのリーダー(牽引者)が現れること、そのような人材の胚胎と活動を可能ならしめる社会の包摂性も、必要条件になります。
10面 声(一般投書)
報復攻撃招く「反撃能力」 東京都(73)大学教員 安西信雄
 ・・・「反撃能力」という言葉は優しく聞こえるが、現実はそう単純ではない。相手から報復攻撃を招くのだから。
 私たちは、政治のことだからと政治家まかせにしてはいられない。もっと現実的で賢い方法はないか。一市民もわがこととして考えていくことが、危機にさらされている民主主義を支えるのではないだろうか。
 ※・・・江戸時代末、諸外国が日本を侵そうと食指を伸ばしてきたとき、巧みな幕府要人らの外交術によって、危難を防いだという話があります。外交の道を探ることも、一つの方法かと。
朝日川柳
 これでまた沖縄少し忘れられ 千葉県 飯島 史郎

2022.5.16日記
昨日の毎日朝刊(5.15付け)の2面「時代の風」コラムから藻谷浩介(日本総合研究所主席研究員)の文章を抜粋・紹介
 ・・・日本は、アクリル板と消毒液だらけだが、換気の不徹底な店や職場がまだまだ多い。この認識のずれ、対応の遅さは、何なのだろう。
 「こびりついた先入観を、新たな事実で上書きできず」、万事を惰性に任せているからではないか。日本が「ガラパゴス化」している場面では、いつもこれと同じ態度が背後にある。・・・
 補注:筆者がシンガポールへ行った時の体験と現状日本との比較(シンガポールの公共施設ではアクリル板と消毒液がない代わり換気がゆきとどいてそよ風が吹いていた)
 ・・・先入観への隷従と事実への無関心が、変化する世界の中で日本の立場を狭くし、体力を奪っていく。これをいま改めずに、いつ改めるのだろう。
 ※・・・筆者は現状日本の「ガラパゴス化」(日本のビジネス用語のひとつ。孤立した環境で製品やサービスの最適化が著しく進行すると、外部の製品との互換性を失い孤立してとり残されるだけでなく、適応性と生存能力の高い製品や技術が外部から導入されると、最終的に淘汰される危険に陥るという、進化論におけるガラパゴス諸島の生態系になぞらえる警句である。ウィキペディアから)現象を、コロナ対策や交通インフラ(諸外国は整備・維持費について公金を導入している)を例に採りあげて憂いている。
 筆者の憂いの矛先は、現状日本の文化なのかそれとも国の行政なのか、おそらく全てを含んでの不満なのだろう。国の施政に対する諫言とすればいずれ上申され改められる可能性も無きにしも非ず、と思われるが、文化となると一朝一夕には改善を期待するのは難しい。それに国の施政も、広義に均せばこれも文化に属すると思われので社会全体の改革となり並大抵には難く、それこそ言論キャンペーンを駆使してたゆまざる啓蒙を社会に発信し続ける必要がある。かくほどに、一国の文化(社会の癖)を改革するというのは、壮大にして大変な難事業だと、私は思うのです。
   「ガラパゴス化」と言われてみると、社会がすべて染まっているわけでなく傾向として在るのではないか。それに「温故知新」という言葉もあり、これもまた日本文化には捨てがたいドグマとして、今も有効ではないかと思われます。

2022.5.15日記
朝日朝刊から
10面社説 沖縄復帰50年 抜粋
  「いったい、日本は何なのか」
 連載「街道をゆく」で各地を旅した作家・司馬遼太郎氏が沖縄を訪れたのは、1974年4月だった。沖縄の1年のうちで最も過ごしやすい「うりずれ」と呼ばれる季節だ。
 だが司馬氏は物思いに沈む。見聞きする断片のどれもが、「そそり立つようにして自己を主張して」おり、「一体、日本とは何かという事を否応なく考え込まされてしまう」と書いている。
 沖縄が日本に復帰して、きょうまで50年を迎える。
・・・島の置かれた状況を見ると、司馬氏と同じ言葉を、違う意味で繰り返さなければならない。いったい、日本とは何なのかーと。
 ・・・自らの意思と関係なく、他人に物事を決められてしまう境遇から脱したい。基地を「本土並み」に減らしたい。それが復帰を迎える沖縄の願いだった。
 現実は違った。
 ・・・機動隊や警備船を繰り出し、県民が何度「ノー」の意思を示しても聞く耳を持たず、情報を隠し、脱法的な手法を駆使して異議申し立てを抑え込む。辺野古の海の埋め立てをめぐって、国がやっていることだ。
 沖縄はずっと基地負担の軽減を訴えてきた。2010年ごろからは「本土による差別」という指摘が加わった。
 「甘えているのは沖縄ですか。それとも本土ですか」
 翁長雄志前知事が生前に放った、矢のような言葉である。
・・・「日本の政府はあらゆる方法をもって琉球を利用するが、琉球の人々のために犠牲を払うことを好まない」。米国の歴史学者G・H・カー氏の1953年の著作の中の言葉だ。一面の真実を言いあてたものと、沖縄では受け止められきた。
 
 「沖縄復帰50年」については、毎日朝刊でも稲嶺進氏名護市前市長を採りあげて、1・2・3面に「基地なき島はまだか」という見出しで、掲載しています。
 3面 「闘いは続く」抜粋
 ・・・今年3月、稲嶺さんは埋め立て工事現場が見渡せる辺野古の浜に立ち、海をじっと見つめた。「風景が変わったな。(建設中の岸壁が)あんなに高くなかった」
 尊敬する政治家で、復帰後の初代知事となった屋良朝苗氏は72年5月15日に那覇市で開かれた政府主催の復帰記念式典でこうあいさつした。「復帰の内容を見ると、必ずしも私どもの切なる願望が入れられたとは言えないことも事実だ。従って、これからもなお厳しさは続き、新しい困難に直面するかもしれない」
 あれから50年。辺野古のエメラルドグリーンの海を前に稲嶺さんは言った。「平和憲法の下に戻ろう」というのがあの頃の県民の大きな願いだったが、今も基地があるがゆえに基本的人権や地方自治は守られず、憲法や民主主義が沖縄にはきちんと適用されていない。取り巻く状況はどんどん悪くなってきている。
 それでも決して下を向くことはない。・・・幾度も「世替わり」を経験してきた沖縄は、いつの時代も多くの苦難に耐え、皆で助け合いながら乗り越えてきたからだ。「諦めることは負けること。勝つためには諦めないこと」そう力を込める。
 いつか、その日まで。一人のウチナーンチュ(沖縄の人)の闘いは続く。
 ※・・・沖縄(琉球)は、江戸時代よりこの方苦難の歴史を歩んできた。古くは薩摩藩島津氏に、近代は明治政府に、先の戦争では軍国日本政府に、1972年復帰後は現日本政府に、いずれも虐げられ、本土に住む人々の犠牲になってきた。その歴史事実を伝え続け、いつの日か報われるように、なべて本土の我々はかの地に感謝をこめて衷心に努力する必要があります。

朝日俳壇から
 姉を追ふ妹の補助輪風光る  福岡市 松尾康乃
 朝寝してけふの半分終わりけり 仙台市 鎌田魁 
毎日万能川柳
 小百合さんさすがにプハー言わないね 大阪 佐伯弘史 
 
2022.5.14日記
毎日朝刊から
5面社説 経済安全保障の成立
    「乱用防止へ 国会が監視を」 抜粋
 ・・・問題は、政府に大きな裁量権が与えられていることだ。
 特定重要物資の範囲や事前審査の対象などは、国会審議を経ずに政府が定める政令や省令に委ねられた。過度な規制につながる恐れが拭えない。
 更に、国会が運用実態をチェックする仕組みも不十分だ。これでは政府による濫用に歯止めをかけられない。
 ・・・時の政権が企業を恣意的に選んで助成金を出したり、省庁が天下り先の確保に使ったりするなど、利権の温床になりかねないとの、懸念も残る。
 企業活動の自主性を重要する観点から、政府は具体的な規制を必要最小限にとどめるべきだ。
 この法律が適正に運用されるよう、国会は監視を強めなければならない。
 ※・・・法成立に際して、やはり不透明さが在る。
9面 見出し 「欧州の均衡喪失 日本も安保具体化を」
   北欧2国 NATO加盟申請へ  岩間陽子 政策研究大学院大教授
 ・・・フィンランドには、1939〜44年の対ソ戦に代表される抵抗の歴史がある。脅威であるロシアに配慮しつつ、自由な体制への意思を持ち続けてきた。ロシアは中立を条件にそれを許してきた。その誇りある外交がプーチン大統領の軍事侵攻によってつぶれてしまったのは、悲しいことだ。
 フィンランド、スウェーデン両国が中立国として戦後欧州で東西間の均衡を保つためにしてきた努力は大変なものであり、それを失うのはとても重い。それほどまでに世界の秩序は壊れてしまった。
 ・・・国際秩序は今回の侵攻で大きく変わった。アジアでは北朝鮮や中国の脅威がある。NATOやアジアの民主主義国と連携した安全保障の枠組みを具体化すべきだ。
 ※・・・北欧二国が軍事的中立を保つ努力をしてきたおかげで、東西間の緊張緩和に役立っていたこと、今改めてその重要な意義を知った。ソフトな干渉域になっていたわけで、今回NATO加入によってソフトな弾力が取り払われると、硬と硬が直接対峙することになり、一触即発の危険が増したことになる。
 「安全保障の枠組み」を図るより先に、外交的解決努力を模索する方が、正論ではなかろうか。そのためには、国際世論の機微に通じるセンスと外交術が必要となり、それに相応しい人物やブレーンが必要とされる。

朝日朝刊から 朝日川柳
 五十年已(や)まぬ「虐待」母国より 神奈川県 朝広三猫子

2022.5.13日記
朝日朝刊から
1面見出し フィンランド、NATO加盟申請へ
 フィンランドのニーニスト大統領とマリン首相は12日、北大西洋条約機構(NATO)について、「フィンランドはただちに加盟申請しなければならない」とする共同声明を発表した。
   フィンランドはソ連(当時)に侵攻された第二次世界大戦以来、ソ連との関係悪化を避けようと、軍事的中立の立場をとってきた。ロシアとは1300キロ以上にわたって国境を接する。
2面見出し NATO拡大 ロシア誤算
 フィンランドが北大西洋条約機構(NATO)に加盟申請する方針を表明した。ウクライナに軍事侵攻したロシアの脅威が「中立国」を動かした。スウェーデンも続き、NATOは北へと拡大する方向だ。ロシアが侵攻前に掲げた「拡大阻止」の要求は裏目にでた。
 ※・・・世界各国はおしなべて、ロシアに対し否定的立場をとる。ロシアの側に与するとはっきり態度を示しているのは北朝鮮だけだろう、中国は国利次第によってどのようにも変節するので、必ずしもロシアと一味同体とはいえない。ロシアの採る道はと言えば、長期的にはほぼ見通しの立たない暗雲状態であり、短期的にはこのまま強面の態度を維持し、最悪は西側を威嚇する捨て鉢の意味で、核を使用するだろう。その決定以前に、ロシア首脳部の内部において何らかの阻止の動きが表れるかが、世界平和の如何に関わっている。
朝日川柳
 沈黙は罪だと言った詩人あり (金芝河氏逝去) 大阪府 山崎 達彦

毎日朝刊 万能川柳
 釣りバカのイメージ抜けぬ法皇さん 川崎 古代UFO
 戦前の日本見るよう露の世論    大阪 ださい 治
 念願の物価高だよ黒田さん     観音寺 四国虎
 ※・・・西田敏行の演技がひかっている。
     当時の日本でも、国民はお上に従順だったし熱狂的な愛国者も巷間にいたと聞く。
     黒田東彦日銀総裁、苦笑いか?

2022.5.12日記
朝日朝刊から
1面 折々のことば
 最終目標は「世の中、ついでに生きてる」というような、たかが噺家という事ね。そう思うところに早く行きたいわけですよ。 古今亭志ん朝
 ※…芸のある人の、卓見ですかね。
4面 見出し 訴えるべきことは「政策実現のリアル」国民民主党 玉木代表 抜粋
 ・・・有権者は与党か野党かではなく、「何をやろうとしているのか」に関心が向いている。政権交代の可能性が低いなかで、訴えるべきことは「政策実現のリアル」。野党第一党はいろいろ言うが、何も実現していない。スピード感をもって、具体的な成果を示していかないと、既存の支援者をつなぎとめることができない。
 ※・・・そらぞらしい言い条である。有権者の関心事を勝手に決めつけないでほしい。そもそも玉木代表の言い分は、議会制民主主義の根本から逸脱している。議会において、何のために与党・野党が対立の構図を成して議論をたたかわすのか、理解しているのだろうか。既存の支援者云々に至っては、噴飯もの、政治本筋から目を背けたポピュリズムそのものではないか。「政策実現のリアル」?それならばいっそ党を解散して自民党に鞍替えすれば良いでしょう。党それぞれに、政策がまったく同じくすることはあり得ない。異なる部分の議論を経ないで安易に賛成するなどは、単なる妥協でありお追従にすぎない。
8面 JICA(国際協力機構)ビル前に、気候危機対策を求める若者運動「フライディー・フォー・フューチャー(FFF)」の人たちが、途上国への石炭火力発電所建設に反対デモ。
 ・・・中核にあるのは「気候正義」という考え方だ。(石炭火力反対が一例)
―先進国や富裕層の経済活動によって、途上国や貧困層が、気候危機の負荷を押しつけられているーそんな不条理を正そうと、運動の輪は世界に広がった。
10面 朝日川柳
 世論見てひめゆり首をうなだれる  静岡県 増田 謙一郎
 賛成が多いからねと賛成し     三重県 山崎 末男

毎日朝刊から
3面 万能川柳
 企業だけ儲けていては国滅ぶ 生駒 鹿せんべ
 主催者が拍手始めるアンコール 倉敷 中路 修平
 ※・・・世相を皮肉った辛口の川柳は、気味が良いものです。

 2022.5.11日記
ロシアのプーチン、中国の習近平、北朝鮮の金正恩、この三人は時代に逆行しているし、世界中の武器製造商人たちの格好のカモにされていることに、思いおよばないのだろうか。アメリカの餌食になっているのを、承知なのか。アメリカは今、この機会を逃さず起死回生の案を練っている。

 毎日朝刊から 万能川柳
 美人って良いことばかりじゃないと妻 大阪 ださい 治
 ※…この平和さを評価すべき 

2922,5,10日記
朝日朝刊から
1面 折々のことば
 「法が終わるところ、暴政が始まる」 ジョン・ロック
 暴政とは「権利を超えて権力を行使すること」。統治者は「その権力の下に在る人々の善のため」にのみ、自らが手にする権力を用いることができると、17世紀英国の哲学者は言う.法は「野心、復讐の念、貪欲さ」など個人の気まぐれな情念に左右されてはならないと。法はどこまで折らずに撓められるものか。法は変えても曲げてはならない。
                    「統治に論」(加藤節訳)から。
 ※・・・どこの国においても、統治者は上の原則を守ってほしいものであります。人は弱い、権力の座にのぼると、その弱さはより深まっていく。

毎日朝刊から
毎日俳壇
 爆撃を逃れし野犬春の月  羽曳野市 池川 晴美
 石鹸玉(しゃぼんだま)幸せそうに消えにけり  白井市 毘舎利道弘
 柳生には柳生のいろの紫木蓮  奈良市 上田 秋霜
 声明のやむ時のあり若葉風  神奈川 大久保 武
 ※…今週は、良い句が出そろったように思います。「・・・野犬春の月」一幅の絵画になります。

2022.5.9日記
 昨日までの気持ちの良い五月晴れの空を、今日はおがめない。それに肌寒い。七十歳前と比べ、やはりこの歳になると身体が衰えたのかと、自覚する。
 今日月曜日は、近所の市立図書館がお休みなので、新聞にはお目にかかっていない。従って、人文記事を当てにした蘊蓄もなりを潜める。
 生駒〜金剛山縦走から帰って、やはり物足りない消化不良の気が嵩じてきて、金剛山から先の道程や食料や寝場所についてのあれこれ計画を、午前中いっぱいを使って練り、ITネットで調べたりした。未知の土地へ踏み入り、どんな風物や地域の有様なのか確かめたい。その好奇心は抑えがたく、今月下旬にはまたぞろ出発しようと、秘かに決める。
 明日午後からの、市のシルバー人材センター説明会に参加し、そのまま入会しようと思う。年金だけでは、思わぬ公的な出費につい預金を取り崩したりしているので、先行き心細くなり、また自由に使える小遣いにも不如意になったからである。

2022.5.8日記
朝日朝刊から
1面 見出し 防衛力強化「賛成」6割超
   有権者 ロシアの侵攻影響か
 「日本の防衛力はもっと強化すべきだ」と考えている有権者が増えていることが朝日新聞と東京大学の谷口将紀研究室が実施した共同調査で明らかになった。賛成派が2006年の調査以来、初めて6割を超えた。ロシアによるウクライナ侵攻の影響と見られる。
 ※・・・少々眉を顰める調査結果です。外国の脅威を怖れてすぐ軍事力増強に意識が向くというのは、短絡に過ぎる浅慮と言わざるを得ない。昨日毎日朝刊の「今週の本談」面に、おもしろい記事があった。題して「文学を探しにロシアへ行く」
 勝海州晩年の時局談話集「氷川清和」に幕末、帝政ロシアが武力で対馬を占領しかけた事件を外交で解決した回顧談がでている。
 朝鮮半島と九州、日本海と東シナ海を結ぶ要衝・対馬は、西欧列強から日本進出の足がかりに虎視眈々と狙われていた。桜田門外の変の翌年、ロシアの軍艦が修理を口実に対馬の湾に居座った。測量し、小屋を建て、土地の者に乱暴し、退去を迫ると開き直る。「事実上占領されたのも同然」(海舟談)となった。
 クリミア戦争でロシアが英仏などに敗れて間もない頃。幕府の外交官たちは半年後、巧みな外交術で対抗勢力の英軍艦を現地に向かわせ、ロシア艦撤退に成功する。幕末の対馬は、第二のクリミア半島になっていたかもしれないのだ。
 後に「これが彼によりて彼を制すさ」と説く海舟は、新聞に談話を公にした前後、日本中が沸き立っていた日清戦争の勝利を危惧し、戦後の三国干渉を予見していた。
 日本海軍の創建者は、軍事の何たるかを知ればこそ、いかに武力を使わず争いを収めるかを考えていた。その思想は、あの江戸城無血開城に通じる。長い後半生「意気地なし」「変節漢」の悪評は絶えなかったが、「ご勝手に」と受け流した。
 ロシアのウクライナ侵攻で、にわか軍備信奉者が増えた。ロシアの隣国日本も明日は我が身、武力には武力とばかり「反撃能力だ」「核共有だ」「憲法改正だ」と政治家があおりたて、世論は浮足立つ。
 政治家は今こそ外交を論じるべきだが、あいにくとんと聞かない。為政者に論じる力が無いのは、聞く側にも聞く力、問う力がないからだろう。外交論抜きの半可通な軍事放談ほど俗耳に入りやすいものはない。
 ※・・・どうですか?読んで耳に痛い人もおありだろうと思う。
7面 中国、米国への批判強める。
 ウクライナ危機をめぐり、ロシア寄りの姿勢を米国などから批判されてきた中国が「(侵攻の)原因は米国にある」との批判を官学連携で強めている。対ロ批判に加わっても米国の対中政策は変わらないとの政権の判断が固まったことをうかがわせる動きだ。
朝日俳壇から
 戦争は憎むべし花は愛すべし   (東松山市) 小熊 なが子
 世捨て人とは違ふ孤や風光る   (船橋市)  斉木 直哉
 真っ暗になるわけでなし春の闇   (志木市) 谷村 康志
 
毎日朝刊から
3面 万能川柳
 理事国は武器の輸出で稼いでる    (千葉)  東 孝案
 お台場の地図で探したダイバーシティ (さいたま) 英さん

     2022.5.7日記
毎日朝刊から>
5面 社説 「国民民主と与党の協議」 抜粋
 国会軽視を助長している
・・・問題なのは国民民主の対応だ。政府と与党が政策をあらかじめ調整する事前審査に野党でありながら、3党協議の形で事実上参加している。それでは国会の形骸化に拍車がかかりかねない。
 国民民主の玉木雄一郎代表は、トリガー条項の凍結解除が拒否されれば3党協議から離脱する考えを示していた。にもかかわらず、結論の先送りと協議継続をあっさり容認した。
 もはや政権を監視する野党の役割を放棄し、与党におもねっているという批判を免れない。
 3党協議に応じている与党の狙いが、参院選に向けた野党の分断にあることは明らかだ。
 ・・・3党協議は、首相の言葉とは裏腹に、国会軽視の風潮を助長するものだ。
 国民に開かれた国会で与野党が議論を尽くし、結論を得る。3党はそうした議会政治の原点に立ち返るべきだ。
10面 オピニオン 投稿欄
 大学名誉教授 山路憲夫氏の投稿 抜粋
 ・・・連合会長(芳野友子氏)に求めたいのは、労使関係にきちんと向き合い、連合内をまとめること、働く人々が直面する課題をわかりやすく発信することだ。政治や政党に近づき過ぎるのは、その努力を怠る「逃げ」ではないか。
 ※・・・国民民主党も連合会長も、周囲に霧がたちこめているかしれない。
書籍紹介欄 サルトル「実存主義」について。「君は自由だ。選びたまえ。つまり創りたまえ」人間はある意味「自由の刑に処せられている」

朝日朝刊から
1面 折々のことば
 その「余計な」行為は、何と人間の密度に充ちていることでしょう。 栗原 彬
 病に臥せっていても医師が来ればドアのところまで出迎えようとした哲学者・カントの逸話。(作家のオーウェルが語り伝える)死刑台に向かう時にふと水たまりを避けた死刑囚の話。ともに無駄で無意味な行為に見えようが、ここに人の尊厳の極致があると、政治社会学者は言う。内に自分なりの矩(乗り)や礼節を抱いた人の姿がかもす勁(つよ)い静けさ。「<やさしさ>の闘い」から。

生駒〜金剛山縦走顛末3日目
水越峠野営地にて、4:10起床 森の中はまだ暗いけれど、こずえ越のきれぎれの空はほんのり青みが差していた。見ているうちに、白く明るんでくる。ローソクを灯して辺りの木立を浮き上がらせ、コーヒーを入れ夜明けのしじまを憩う。下から都合3人の単独登山者が上へと上がっていった。
 5:40 野営地を出発。登りはじめは、林道の坂道を延々と上っていく。何度も歩いた道なのでなんだかだれ切った感覚で歩く。林道から分かれ、山道へと登っていくと、二日間の足の疲れがあらわれてきた。だれきった身体も、本気を強いられるようになった。山道が変わったのか自分が変わったのか、歳月は無言の表情をもって冷笑する。昨日から今日、最近のTV放送の影響なのか、トレランの若者を目立つほど見かけるようになった。今さら自分には無理なのかなと思ったりするけれど、山岳会夏合宿で上高地から涸沢まで半ば駆け上がった頃をおもえば、幾星霜の時が流れたか、夢のような気がする。山道がきつくなってくる。(おそらくは、以前に登った時は別ルートを辿ったのだろう)
 紀見峠分岐点で単独登山の青年に声をかけられる。ここから葛城山へ登るには幾らの時間を要するか、往復するのです、と問う。水越峠まで下山に2時間、葛城山まで2時間、合計往復8乃至9時間と答えると、青年はなおも逡巡している。車を下の伏見峠に駐車しているという、いったん車を取りに行き水越峠に回そうかと言い、独り納得した様子。随分無駄の遠まわりかなと、私は思った。一度雪の金剛山に来て、靴が滑るので途中で引き返したとか、いろいろ話題を振っておしゃべりをされ、結局青年は伏見峠の方へ行った。
 金剛山頂上(葛木神社)9:00着 型通り礼拝して懐旧の念にひたる。往年の頃は、年若い巫女さんもおられたが、今はそんな雅の気配もとどめてはいないような。国見城跡の頂上広場へ行く手前の売店で、辛ラーメンカップ麺と缶ビールを求めて食す。辺りの頂上広場や園地はまるで街の雑踏と見紛うファッション豊かなにぎわいだった。犬を連れた方もおられる、粋なスタイルを決めたお嬢さんも優雅にそぞろ歩き。男女の和気あいあいたる馴れ合い。今まで数度登っているが、こういう観光的な場所に足を踏み入れたことはなかった。頂上の広大さ・施設の多種多様に目をみはり、私はまるで街にまよいこんだ田舎人の態である。
 ロープウェイを利用して下山しようと、はなから決めていたが、金剛山駅に行くと強風のため運休とある。広い頂上をまた元の場所へと戻ったが、天気は快晴なのになぜ運休なのか腑に落ちない。やはり、山の風は見た目以上に強く吹いているのかと、その時思った。(後に分かった、2019年からこのかた運休しているのだった。事前チェックミス)
 10:30伏見峠から、JR北宇智駅方面への標識を頼りに、山道を下る。普段あまり利用されていないのか、相当に道は荒れている。尾根伝いの道としても、流水跡の襞底に沿うので道は混沌として、辺りに目を配りながらのルートファインディングを強いられる。高宮廃寺跡という岩をご神体にした旧跡を道の確認とし、さらに下ると徐々に道の荒れはおさまり、歩きやすくなった。林道から田園へ下りたところは、御所市の西佐味という里だった。農家のご婦人に道を尋ね、ようやく近鉄のバス停に着いた。時刻は13:00。近くに「風の森」というバス停があり、以前「近鉄てくてく歩き」の案内地図を頼りに高天原・住吉神社・一言主神社・御所駅へと歩いたこともある地域だったので、なつかしい。
生駒駅を出発して金剛山まで歩いたが、ここへ来て縦走を断念する。和歌山まで歩くには、このありさまでは無理だと思い知った。一つは、計画(食料等)に不備があったこと、さらに一つは体力不足がある。これからは、飲酒をひかえ、暴食を慎み、基礎体力向上をめざすのである。テントを持参しなかったのは正解だと思う。ツェルトがあれば、少々の雨が降ってもしのげることが分かったし、そもそも雨は我身に添う友のようなものだ。これからも仲良くやっていきましょう。
 
2022.5.6日記
朝日朝刊から
8面 社説”声“ 「外国籍住民の人権」抜粋
 ・・・基本的人権を定めた憲法第3章の表題には「国民の権利及び義務」とあり、一見すると日本国籍を持つ者にのみ適用される想定のように読める。
 だが最高裁大法廷は、1978年の「マクリーン事件」判決で、「権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ」と述べている。
 判決は一方で、外国人の在留の拒否について国に大幅な裁量を認めたため、各界からの批判が絶えない。だからと言ってただのリップサービスと片付けるべきでない。・・・
 判決当時から時代は大きく変わった。昨年10月時点の外国人労働者はコロナ禍で伸びはにぶったものの172万7千人と過去最高を更新した。
 ・・・ではその人たちは、どんな環境に置かれているか。非正規用、長時間労働緒、低賃金に甘んじることがなく、雇い主に旅券を事実上取り上げられ、離職できない例もある。コロナ禍でも調整弁あつかいされ、解雇や雇い止めが相次いだ。・・・
 3年半前、外国人労働者のさらなる受け入れ拡大に向けて改正出入国管理法が成立した際、政府が約束した「共生社会」の実現は、はるかに遠い。
 憲法は国民主権、平和主義とともに人権の尊重を基本原理とし、前文で「全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成する」と宣言する。その誓いを果たさねばならない。
 ※・・・ウクライナ危機による避難民等を契機として、日本の外国人受け入れ姿勢にも変化が起きると思う。文に記された判例ではなく、人と人との相互理解・つながり・宥和が、重要になってくると思う。

毎日朝刊から
1面 余禄抜粋
 20年ぶりの円安が進む中、市場で「今度こそオオカミが来るのでは」との懸念が浮上している。「オオカミ」とは、約2000兆円にのぼる個人マネーが、円預金から外貨預金などに一斉にシフトするキャピタルフライト(資本逃避)のことだ。
・・・巨額の財政赤字を積み上げながら、日本が持ちこたえてきたのは、潤沢な円預金を元手に銀行が国債を買い支えてきたからだ。その構造が崩れればどうなるのか。日銀は「円安はプラス効果の方が大きい」と言い張るが、イソップ童話も最後には本当にオオカミが来る。
 ※・・・各新聞メディアや経済界でも危惧していることであるけれど、日銀黒田総裁は「円安プラス効果」にこだわってどこ吹く顔の態である。本当に大丈夫なのか?

生駒〜金剛山縦走顛末
二日目 5月4日 3:40起床。ツェルトの膜が内側へ垂れ下がり埋もれそうだった。雨はほぼ上がっていた。まだ暗く、ローソクを灯し、コーヒーを二杯喫す。コンロガスカートリッジ残量が半分以下ほどになっているので、びっくり。途中で購えるだろうか、不安。右足の痛みは治まっていた。昨日コンビニで求めたおにぎり一個を食すが、ぽろぽろだった。日の出の光に無量の喜び。
6:10野営地出発。→二上山雄岳7:15→雌岳7:45〜8:00 ビスケット3枚を食す。→岩屋峠から竹ノ内峠方面へ分岐→竹ノ内峠上9:00→平石峠10:05 干し葡萄を口にする。足が重い。他登山者二人ほどに追い抜かされていく。10年前東海自然歩道を縦走した時は、二日三日と経つうちに足が慣れ、調子は上がったものだったが、今は日を重ねるにしたがい、疲れも判を押したように如実に溜まるようだった。歳月は否応なく体力を奪い去っていくものかと、嘆息する。それならと開き直り、今回はのんびり漫遊縦走と洒落こむ。→岩橋山11:30 二組の他パーティーの若者たちや単独登山者と一緒になる。ビスケット6枚とチーズ二切れを食す。どうもシャリバテらしい。朝食といい行動食といい、今回は担架量を気にするあまり、少なすぎた。ビスケットばかりでは、持たないようだし、飽きもする。やはり、柿の種や木の実、カステラ、羊羹、カロリーメイトなどを用意すべきだったか。一人の壮年から「どちらまで?」とお愛想に問われて「葛城」とだけ答える。→持尾の辻13:00 立派なトイレ棟があるので覗いてみたら、便器に糞が溢れていた。水が乏しいので流れなかったのだろう。何とかならないか?登山者一人ひとりの意識の問題か。→葛城山頂上キャンプ場15:00着。大勢のキャンパーがいたが、みんな一緒の青少年ボーイスカウト団体だった。自販機の茶など飲んで寛いでいると、大柄の壮年から「ここのキャンプ場敷地は全部借り切っているので、部外者は遠慮してください、料金を払っていますので」と告げられる。隅っこの方でも野営できないか、と応弁すると「それは困る、子供たちが大勢キャンプするので何人もこのあたりへは立ち入らないで欲しい。疑義があるなら上の事務所にいる管理人に訊いてください」と頑なに拒否する。事務所に行って管理人と称するおじさんに「山の自然なので、誰にも開放されているはず、宿泊施設でもあるまいし、金銭の問題ではないでしょう」と質すと「そうですね」と奥へ行き誰かと相談したのか思案の末「ボーイスカウトの責任者と話し合って了解を得られたら、良いと思います」と応じた。もう一度ボーイスカウト責任者にその旨を伝えて、野営の許可を求めると、やはり無下に断られた。「子供たちがキャンプのイベントを行い、双方に不愉快が生じる懸念がある。また女子もいて、夜半公衆トイレに行くこともあり、部外者の男性は具合が悪い」と女子なる言葉を挿入してまで訳の分からないことを言う。己の責任ばかりにこだわる責任者の狭小さと非寛容にうんざりして、当方この場所での野営を断念し、金剛山へと先へ進むことにした。
 健全なる精神の青少年育成を目的としたボーイスカウトの野外レクレーションなるものに、不可解さが嵩じる。全的人間として、自然にも人間にも共に宥和な精神をもって臨むべきではないか、人の世の責任ばかりにとらわれる管理社会のおぞましさ、従事する小さき人間の浅はかさとあわれなど人間社会のひずみ断面が見えて、頂上に着いたという晴れやかな気分がけしとんだ。
 葛城山のつつじ園を横に見て、急な山道を下る。
 水越峠、山からの降りくち、小さな渓流傍に、猫の額ほどの緩やかなスペースがあったので野営することにした。時刻は16.10 やや傾斜のある地面を、枯れ杉枝などで地ならしをして寝床にした。すぐ横を渓流の水が流れ落ちている。アルファ米の食事の後、ウイスキーを口にして、シェラフに入ったのは19時過ぎだった。時折、ヘツ電LEDの明かりが寝床に差した。最終は21時ごろに山から下りてきた。峠に車を駐車している登山者なのだろう。
 次回に続く。

2022.5.5日記
生駒山〜金剛山縦走顛末
   数日前を振り返って、日記形式で綴ります。
5月2日、自宅最寄りのバス停から6時28分発のバスに乗車、阪急北千里駅・地下鉄堺筋本町と乗り替えて、近鉄生駒駅に8時頃着く。
 8:15徒歩出発、天気は晴れたけど、やや雲がかかる。→宝山寺・山道分岐8:45→生駒頂上9:45連休とあって家族客が多く賑わっている。→暗峠(古の街道)10:40→「僕の広場」という丘10:50〜11:05休憩、「ツツジ園はどこですか?」と中年婦人二人から道を問われる。案内標識を目印に行けば自然に行きつくと応えるが、腑に落ちないご婦人連。先ほど来からベンチで腕立て伏せをしている中高年のおじさんが、どこそこと教える。納得した婦人たち。ビスケット3枚とチーズひとかけを口にする。→鳴川峠11:30
ここで後ろから追いついたお嬢さん登山者に声をかけられる。私のザックの大きいのに目を留められたらしい。「縦走ですか、どちらまで?」「生駒から和歌山までです」「私は比良山を出発してきて、この先高野山まで行きたいのです」夜は適当に山で寝るという。陸上田中希実を思わせるスリムな体系と元気の良さに、当方ついていけず、先へゆずる。
十三峠12:45 60代くらいの老登山者に「荷物大きいね」と話しかけられる。「遠くまで縦走するつもりなので」と当方。いろいろの山域の登山の話を交わす。そこそこ山に詳しいそうな話しぶり。おじさん軽装なので、徐々に先へ行く。→高安山駅(ケーブル)14:00〜14:10 途中から先ほどの老登山者が現れてまた会話。「こんな長距離登山がお好きですか?」と問う。私は、東海自然歩道縦走の経験を話す。おじさん、展望台へ見物に行った。ビスケット3枚と自販機のミルクティーを口にする。ここから河内国分の駅まで下りる予定だったが、高安山霊園のはずれの分岐に、道案内標識が目につき、恩智駅が近いと知る、このあたり3・4回ほど足を向けているのに、今まで気づかなかったし気にも留めなかった。河内国分の駅まで里道を延々と3時間歩くことを考えれば、あらためて予定を変更しそちらへ足を向ける。整備されたハイキング道を辿り、恩智駅15:45着、近鉄電車に乗り二上駅で降車。駅頭のコンビニで日本酒を購う。朝食用の食パンにも食指を伸ばしたが、かさばるので結局断念する。そこから歩いて二上山登山口上の、山中空き地で野営5:25。右足付け根に痛みとだるさを感じて、不安。夜は寒い。冬用のアノラックを着込む。用心のためツェルトを張る。8時にシェラフに入る。他にすることなし。夜どうし弱い雨が降るも、ツェルトのおかげでシェラフぬれねずみだけは避けられた。次回に続く

2022.5.5日記
朝日朝刊から
1面 折々のことば
 ちゃんとものが言えないから泣いているのである。言えるくらいなら泣きはしない。多田 道太郎
 だから子供が泣いている時、泣いてばかりだと判らない、ちゃんと言いなさい、と言うのはおかしいと、フランス文学者・評論家はいう。深い闇の中に抑え込まれているものは「翻訳をもとめて」感覚の表層に浮き上がる。それがやがて「社会的皮膚」となって路上に溢れる。そう考えると街を行く若者の奇抜なファッションも「泣いている」ように見えると、{風俗}から。

毎日朝刊から
3面 万能川柳
 匿名で表現の自由言われても  鶴ヶ島 駄句斎凡人
 接触は禁止眠ったままの姫   北九州市 智 鈴

2022.5.1日記
 新聞朝刊を二誌(毎日・読売)に目を通す。目に留まるような記事・論説もなし。ちょうど雨降りの最中だったので、図書館内は閑散としていた。ウクライナ危機、知床半島沖観光船遭難、山梨県道志村の不明女児の靴や靴下発見等の記事が、大半を占める。例えば、「ロシアがドル建て払いデファルトを何とか回避」(昨日)の記事が流れ、スカをくった感じのマスコミは、論評の勢いをそがれたようだ。
 これから一週間、どんな事件が出来し、ウクライナ危機の解決に進展あるやなしやが気になるけれど、わたしは明日から山中に旅するので、情報はほとんど遮断される日をおくる。たまには、浮世を離れ、鳥獣とかけあい仙境に遊ぶのも良いか。

2022.4.30日記
 グレアム・グリーン「おとなしいアメリカ人」(田中西二郎 訳)読了
 第1次インドシナ戦争は、1946年から1954年続いたベトナム民主共和国の独立をめぐって、時の統治国フランスとの間で展開した戦争。第2次インドシナ戦争は、南ベトナム・アメリカ対南ベトナム解放戦線(ベトコン)・北ベトナムが戦ったいわゆるベトナム戦争。小説は、第1次ベトナム戦争における、サイゴンとハノイ、周辺戦場が主な舞台となっています。
 ベトナム人の若い魅力的な高級娼婦に翻弄される中年イギリス人ジャーナリストと若きアメリカ人政府要人(OSS?)の物語。後のベトナム戦争を予感させるアメリカの狡猾さが背景に敷かれています。同じベトナム人でありながら、無慈悲に犠牲になる者もいれば、女の武器を使って大国の恩沢に授かろうとするフウオング姉妹のような市民、戦争を受け流したくましく生きるベトナム商人、フランス・政府・ベトミンの間を暗躍して利権を狙う武装組織などなど、当時の複雑な社会背景もなんとなく書かれています。(実際を調べるには、専門書を読む必要あり)
 魅力のベトナム人女性フウオングの天真爛漫にして性を超えた淫蕩性に、いささか興味を惹かれ、その印象が最後に残った小説でしたが、現地の実際と実在の人物をモデルにしたと思われる骨太な描写も、もちろん読み応えがありました。
朝日新聞朝刊から
朝日川柳
 そのうちに「大連合」と言い出すぜ  北海道 小野寺 祐次

2022.4.29日記
朝日新聞朝刊から
2面 円急落 発端は日銀声明「指し値オペを毎営業日実施する」抜粋
 28日正午過ぎ。日銀のホームページに掲載された金融政策の方針を、市場は驚きを持って受け止めた。
 急速に進む円安への懸念が高まるなか、円安の原因である緩和政策路線を微修正するのではないか一。
 そんな観測が、市場に広がっていたからだ。それが実際に出てきたのは、金利を強制的に低く抑えるオペを連日行うという異例の強攻策で、逆に円安を促しかねないものだった。
 (指値オペ:日銀があらかじめ決まった利回りで金融機関から国債を無制限に買い入れる公開市場操作)
7面 藤巻健史さんが語る「悲観論」抜粋 
・・・5月3〜4日の連邦公開市場委員会(FOMC)で量的引き締めの方針が決まれば市場の景色はすっかり変わるだろう。ドルの争奪戦が始まり、円安がさらに深刻な水準まで進む」
―どのくらいまで?
 「1ドルが400〜500円という水準になってもおかしくないと思う」
―そんなにですか。
 「円を発行する日銀が債務超過に陥る危険があるからだ。日銀は2013年、黒田東彦総裁のもとで異次元緩和を始め、紙幣を刷って政府財政を支えてきた。その結果、大量の低利回り国債を抱えている。金利上昇やインフレが始まって日銀が金融引き締めを迫られると、日銀自身が保有する国債の含み損は急に膨らんですぐに事実上の債務超過と見なされる状態になる」
―仮に一時的に債務超過になったとしてもすぐおかしくなるわけでない、と日銀は反論しています。
 「債務超過になったら、海外の金融機関には日銀の当座預金口座を閉じるところが出てくる。そうなれば日本で外国為替取引ができなくなり、ドルを買う手段がなくなってくる。外資は撤退、日本国債は投げ売りにとなる」
―防ぐ手段はないのですか。
 「日銀の債務超過を防げたとしても、日銀の信用低下は避けられない。歴史的にも財政ファイナンスの帰結は必ずハイパーインフレだ。個人なら、自衛手段としてドルを買うしかない」
  藤巻 健史氏 元モルガン銀行東京支店長として「伝説的ディーラー」と呼ばれたこともある元参院議員。
※・・・日銀の9年間続いている過剰な金融緩和もデフレに対して効果を上げず、今回はまた円安の歯止めのない上昇気配。日銀の金融政策は、本当に大丈夫なのでしょうか?先日の、安倍元首相の日銀政策後押し発言も気になり、なおさら不安になる。

8面 朝日川柳
 鈴を持つネズミを前に凄むネコ  茨城県 岩井廣安
 憲法に反撃してるような党    静岡県 増田謙一郎

  毎日新聞朝刊から
3面 見出し:IR誘致 コロナで暗転
   申請結局大阪、長崎のみ
5面 社説
 見出し:大阪、長崎がIR申請
 「突き進んでは禍根を残す」
     ※・・・怪訝です、両府県とも、世間的にこれだけ風当たりの強いIR計画を、何故推し進めるのかと。IR敷設に多大な資本を投下しなければならないこと(民間業者の負担と言いながら、大阪市ではすでに液状化対策費として410億円を、税から計上している)。世界的に見て、賭博事業の衰微がみられること、風致・治安等、周辺環境悪化の懸念のあること、等々。自治体にとって、必ずしも明るい将来をもたらすとは、期待できないのではないか。それでもなぜ、計画に固執するのか、怪訝です。どうも匂う、裏にはびこる利権の匂いが、莫大な金が蠢く裏の暗躍が、おぼろに映る、まるで、人の死を念頭に儲けようとする武器商人のような、みにくい影が。

  2022.4.28日記
朝日朝刊から
11面 オピニオン&フォーラム 論壇時評(既刊書の解説・論評)抜粋
 「国家より人間優先の視点を」フェミニスト外交 東京大学大学院教授 林 香里
 外交の場では通常、主権、領土、軍備等がテーマになる。しかし、こういった従来のあり方を問題にするのが「フェミニスト外交」という考え方だ。(書籍:Cornelius Adebahr 「What Germany’s turning point mean for its feminist foreign policy」ポリティコ3月21日)
 「フェミニスト外交」はいわゆる「人間の安全保障」の理念を引き継ぎ、国家本意ではなく、人間一人ひとりの尊厳と福祉を重視する。それはまた、ジェンダー、民族的出自、宗教、性的志向、生涯、年齢などを理由に阻害されるすべての少数派社会グループに対して、外交舞台に平等な参加を促す包摂性を理念に掲げる。
・・・アンジェリーナ・ジョリーがUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)特使として活動する例などを挙げながら、西側社会の私たちはメディアでもてはやされる有名知識人やセレブの人道支援の訴えに対して「いいね」を押し、寄付の呼びかけに応じ、報道にコメントすることで、「人道的恩人」となって連帯する。「ポスト人道主義」とも呼ばれる手軽な人道支援は、西側各国に属する人々の自己中心的なコスモポリタンニズムだと批判する。
・・・国家より人間を優先一平時には当たり前に響く「フェミニスト外交」のモットーは、戦場でいとも簡単に覆される。戦争で、多くの人が故郷を追われ、無差別殺戮が敢行されてきた。今後、日本もウクライナの難民受け入れを整備する際、ぜひ取り入れるべき視点だ。はやし・かおり記

毎日朝刊から
1面 余禄抜粋
   ・・・サンフランシスコ講和条約の発効で戦後の日本が主権を回復してきょうで70年。当時「国民待望の独立」と報じられたが祝賀気分はなかった。
3面 万能川柳
 日本語で歌っていても要る字幕  尾道 瀬戸の花嫁
 熊にすりゃ自分の山と思ってる  武蔵野 竹とんぼ

 ※・・・日常の憂きこと:図書館は退職閑暇老人の、エゴイズムと倨傲の発散する場となっている。4人掛けテーブルの半ばを占めて荷物や帽子を散らかす、人が熱心に読書をしている場に後から来て、テーブルの上へ荷物を放り出し、はばかることなく静謐を破る、新聞・雑誌を数種手元に抱え、読み終わっても元の棚に戻そうとしない、己ひとりの私的な空間と、心得違いをしているように見える。いやはや、目に余ります。

2022.4.27日記
毎日朝刊から
2面 水説 「野卑になった大統領」抜粋 古賀 攻
…安倍政権を通して日露交渉に携わってきた元外交官が効指摘する。「数年前からプーチンの顔つきが変わった。それまでは冷徹な秀才のオーラを発していたけれど、今は精悍さがなく、野卑で知性を感じさせない顔になった」
 ・・・先週、ロシアの国防相が恭しく大統領に「マリウポリ制圧」を報告する映像が流された。大統領は無造作に「カタコンベ(地下墓所)に入る必要はない。製鉄所を封鎖しなさい」と命じた。
 これは何を意味するのだろう。もし製鉄所の地下施設に避難する多くの人命へのあざけりを含んでいるとしたらー。世界は一段と深刻になる。
 ※・・・プーチン氏は、人格を失ったアンドロイドではないか。
3面 万能川柳 
 手拍子を入れて歌うなドナドナは  札幌 紅 帽 子
 キクラゲを噛みつつ思う生きる意味を  津 ちょちょ
9面 オピニオン 「断捨離」考
 「捨てて」人生を楽しむ 抜粋  やました ひでこ 「断捨離」提唱者 
 新型コロナウィルス対策で外出を控えて家にいることが多くなり、…「仕事や学校に行っていた夫や子どもが四六時中、家にいて自分の時間や空間がなくなった」「モノの居場所はあるのに自分の居場所がない」と言ったことへの「気づき」をコロナが促した。この気づきこそ、空間を新陳代謝させながら新たな思考と行動につなげる「断捨離」の大事なポイントだ。・・・
 同じオピニオン欄に、作家五木 寛之氏の反対意見が載っている。以下抜粋
 僕はモノを捨てることはめったにしない。仕事部屋はモノだらけである。・・・
 どれひとつとっても、それを手に入れた時の人生の風景、記憶が宿っている。僕は「依代(よりしろ)」と呼んでいる。喫茶店のコースター、バーのマッチ、古雑誌、何でもいい。あのバーには誰と行った、あんな曲が流れていた、その時こんな話をしたっけ。そんなモノをきっかけに、長らく思い出すことのなかった過去の記憶がよみがえる経験は、誰しもあるのではないか。
 だから依代は多いほうがよい。それらに囲まれ、それぞれに宿る記憶や人々を思い起こし、回想する。実に温かく、豊潤な時間である。過去の回想は後ろ向きだと思われるかもしれないが、そうではない。思い出すことで心が生き生きし、明日への活力になる。前に進むためには、後を振り返ることが必要だ。「人生100年時代」の後半は、そんな豊かな記憶を味わい、楽しんで生きる「黄金の時代」だと思う。
 ※・・・人の生活スタイルはさまざま、エコサイクルとかSDGs(持続可能な開発目標)と、世間ではいろいろお題目を唱えているけれど、要するに、無理をせず自分に合ったやり方をするのが、一番だと思う。誰にも等しく、人生は一刹那。
20面 季語刻々
 うぐひすに箸洗ひつつ老ゆるかな  奥坂 まや
 ※・・・この句にでてくる鶯は、さえずりの上達した老鶯であります。

朝日朝刊から
1面 折々のことば
 節制も勇敢も「過超」と「不足」によって失われ、「中庸」によって保たれる。アリストテレス
 栄養の過多も不足もともに体の健康を損なうように、勇気のありすぎもなさすぎも人を無謀か臆病にすると、古代ギリシャの哲学者は言う。若い頃は、中庸とは結局は妥協だと決めつけていたが、齢を重ね日々の身動きにも慎重を要するようになり、適切な中間を選び取ることこそ、断崖に挟まれた尾根を歩む様に難しいと思い知る。「二コマコス倫理学」から。
10面 朝日川柳から
 この先のウィズロシアなる大迷路  神奈川県 丸山 千登喜

2022.4.26日記
朝日朝刊から
4面 経済安保 過剰に中国意識 狭い価値観
       寺島 実郎 日本総合研究所会長
―国会審議が進む経済安保法をどう見ますか。
 一見もっともなことが書いてあるようだが、狭い価値観のもとで構成されている印象を受ける。米中の覇権争いを背景にした「中国の封じ込め」の問題意識が先行するあまり、日本を防護しようという自己完結の発想が凝縮されているように見える。
―法案に欠けている要素とは何でしょうか。
 枝葉の議論が中心になっている。肥大した金融資本主義とデジタル資本主義を制御し、経済安保保障の問題意識と相関させた新しいルール形成をどう目指すかという樹木、広くて深い世界観が描き切れていない。
―・・・
・・・だが法案は「中国封じ込め」で米国とだけ歩調を合わせることに終始している印象だ。
 ※・・・中国の側から日本という国を見た場合、どう映るか。そのような弁証法的視点の移動も必要かと思います。
6面 分断あらわ 仏に試練。まるで勝利 ルペン氏に貧困層共感
 ※・・・マクロン氏、もう鼻高々と演説をぶつことにも、翳りを伴わざるを得なくなった。地に足をつけて、ひとの顔色を窺う政治、それも必要となった。

産経新聞朝刊から
12面 風を読む 「守るべきは国か、命か」
                 論説委員長 佐々木 類
・・・19世紀ドイツの法学者イェーリングはいう「隣国によって一平方マイルの領土を奪われながら膺懲(ようちょう)の挙に出ない国は、その他の領土をも奪われてゆき、ついに領土を全く失った国として存在することをやめてしまうであろう」
 ※・・・産経新聞の、拠って立つ政治姿勢が、如実に表れている論説です。はっきり言って、時代錯誤と見る。
 国とは、今現代のわれわれにとって、何だろう。開発と称して利権業者たちによって蝕まれつくされた山・川・国土か、古事記伝以来築き上げてきた文化・伝統・歴史か、国の主体たる国民なのか、オリンピックにおける「君が代」であり日の丸なのか、はっきりしない。はっきりしない概念に義理を尽くすことはない。時の政府から恩恵を受けた覚えもない。金を上手に儲ける人間をもてはやす社会には、雷同する謂れもない。
 領土を失っても、その気になれば人は生きていける。命あっての、未来であり希望である。

2022.4.25日記
 今日は、私の74回目の誕生日、しかし実際に私がこの世に生を受けた日とは、異なっているか知れない。私は幼い頃、人より知恵が遅れていたらしく、自分の誕生日について父母に確認したのは、小学二年生八歳のころだった。 「秀雄の誕生日?いつだったかしら」と母
「何言ってんだ!4月25日だ、役所に届けたろ」と父
「そうそう、あなたの誕生日は4月25日だよ」
 以上の会話をもとに、学校に出す書類の生年月日の欄に記入したのだった。生まれた月日には、格別の重きがあるなど、てんから気に懸けない当時の自分であった。
 連れ合いが、ボロネーゼパスタをまた味わいたいというので、午前中の早い時間から材を求めてスーパーへ足をはこんだ。昼食後、午睡をして目覚め、少しワープロ文章に手を入れて、また買い物に出かけた。平打ちのパスタ(リングウィーネ)とソース材料の安物赤ワインを求める。知らぬ間に疲れ、夕方また横になって眠った。
 過去の新聞切り抜きを見て、気に入ったのを以下に載せます。
2020年.6/16毎日朝刊から
毎日俳壇
 桜しべ降る退院の車いす 福岡市 礒邊 孝子
 紅付きしマスクを洗う春深し 東京 山下 留美子
 牡丹咲ききって牡丹を誰も見ず 大竹市 二階堂 頴二
 幼子に一つもらふやさくらんぼ 横浜市 藤川 和男
 百幹の竹騒然と青嵐      横浜市 相沢恵美子
 ひとしきり鳴いて葭切ひとやすみ 越谷市 安居院半樹

2022.4.24(日)日記
産経朝刊から
2面 主張 「日韓合意発言」抜粋
 韓国の尹錫悦次期政権で外相候補に指名されている朴振氏が、慰安婦問題をめぐる2015年の日韓合意について「公式合意だ」と発言した。
 次期政権の代表団が24日に訪日するのを前に、文在寅政権下で極度に悪化した日韓関係の早期改善を目指す意思を示したものとも受け取れる。
 日本側にも一部で歓迎されたが、「最終的かつ不可逆的な解決」と明記された日韓合意は国家間の約束であり、政権交代の有無にかかわらず、約束を守ることは至極当然の行動である。
 ※・・・産経新聞に目を通す頻度は少なく、馴染んでいなかった。この記事・解説は、少々ナショナリズム寄りの強気姿勢を、印象付けさせられます。
 3面 日本の未来を考える「50年ぶりの円安の原因は」抜粋
                    東京大名誉教授 伊藤 元重
 ・・・円の実力が95年のピークの半分以下になってしまったのは、名目レートが80円前後から130円近くにまで円安になっただけでなく、なによりデフレで日本の物価や賃金が諸外国に比べ安くなったからなのだ。その結果、円の購買力は下がっているし、私たちの賃金の購買力も下がっている。要するに日本は貧しくなっているのだ。
 これは構造的な要因によるものである。世の中では、これは「悪い円安」だ、いや「良い円安だ」だと、あたかも名目レートの変化が問題の根源であるような言い方をするが、名目レートは経済状況の原因というより、結果であるとみた方がよいだろう。これだけデフレが続くのに名目レートが円安になっていること、また名目レートが円安になっているのに日本の物価が上がらないこと、何より実質実効レートが下がり続けていることは、日本経済の構造的停滞の結果という面が大きい。小手先の為替レート対策で構造的な要因が是正されるわけではない。
・・・ここまで円安が進むとメリットよりもマイナス面が目につく。輸入原材料が円安でさらに高騰する一方で、それを価格に転嫁できないデフレ経済で多くの企業が苦しむ。「悪い円安論」の背後には、デフレ対策で進められてきた過剰な金融緩和をそろそろ見直す時期に来ているのではないかという見方があるだろう。海外での物価値上昇の展開をみると、日本での金融政策の見直しもそう遠くないだろう。そうなれば名目レートの過度な円安も影響が及ぶだろう。
 ※・・・学者先生による、円安・デフレ・金融緩和等、日本経済低迷の整理です。頑固な日銀黒田東彦総裁の耳には、どのように響くでしょう。ただ、ここ最近になって生活諸物価の値上がり傾向が避けられない情勢になってきたと、メディアでは伝えている。物価が上がり賃金はそのままとなれば、デフレ感がいよいよ顕著になってくるのでしょうか

朝日朝刊から
1面 折々のことば
 「こうすればOK」を求めるとダメなんじゃないか  釈 徹宗
 ※・・・働いていたときを振り返ると、身につまされます。
9面 朝日俳壇
 人嫌い桜も嫌い十五歳  さいたま市 與語 幸之助
 こはごはと花見楽しむ今年かな  鎌倉市 吉田 和彦

毎日朝刊から
5面 毎日ことば(第288回)
 「春風に舞う綿毛」  柳絮(りゅうじょ)・・・柳の種子を含む綿毛 (覚書)

2022.4.23日記
毎日朝刊
15面 今週の本棚 「生き直す 免田栄という軌跡」高峰武 著(再審無罪を勝ち取った免田栄さんを描いた本)抜粋
・・・免田さんに襲いかかったのは、警察や検察、裁判所という組織に忠実な人間による「凡庸な悪」に他ならない。一旦、事件のストーリーが構築されると、それから外れる証言や物証は精査されず、大きな流れに追随していく。免田さんのアリバイは足蹴にされ、死刑による事件解決が進められる。しかし、再審によって結論が一転すると、命令に従っただけで、自分には責任がないと言い逃れる。
 問題は警察情報をもとに事件を報道してきたメディアにもある。「凡庸の悪」の連鎖は、構造化し、弱い立場の人間に容赦なく押し寄せてくる。
 ※・・・「凡庸の悪」、「モリカケ」・「公文書改竄と赤木さん」「花見会」等の、本人や連なる人間にも当てはまるようである。
1面 余禄 (敵基地攻撃能力→反撃能力改称の記事について)抜粋
・・・ロシアのウクライナ侵攻で国民の不安が高まっているのは確かだろう。だが、便乗するような形で結論を急いでは禍根を残す。安保論議こそ情緒を排し、冷静に進めるべきである。
 同じ記事に基づいて、朝日朝刊から 8面社説 反撃能力提言「危うい本質は変わらず」抜粋
 憲法に基づく専守防衛の原則から逸脱するとともに、軍拡競争により、かえって地域の不安定化を招く恐れがある。本当に日本の安全を守る抑止力になるのにかも多くの疑問がある。岸田政権には、軍事偏重でない、外交努力も含めた総合的な戦略の構築こそが求められる。・・・
 提言案は、ミサイル技術の急速な進展で迎撃が困難になっており、反撃能力の保有で「攻撃を抑止」するという。しかし膨大なミサイルを持つ相手に対し、その使用を思いとどめらせるのに、どれだけの備えが必要になるのか。そもそも目標を正確に把握する能力があるのか。抑止が破綻し、攻撃を受けた場合にどう対処するのか。実際問題としても、多くの無理があると言わざるをえない。
 ※・・・具体的な方策や成案もないまま法案だけを表面化させ、憲法改正(軍備保有・行使の明示化)と、戦後一大変革への周辺法制の地均しを図るという、自民党の姑息な意図が透けて見える。
おそらく言い出しっぺは、安倍晋三元首相だろう。狡猾にして無思慮なるご仁には、早く政界から去ってほしい。百害あって一利なし。
朝日朝刊 1面 「天声人語」
 きょうは初代ロシア大統領エリツィン氏の命日。15年前、76歳で亡くなった。若き官僚・無名だったプーチン氏を抜擢し引き揚げたのは、エリツィン氏でした。

2022.4.22日記
毎日朝刊から
1面 近藤流健康川柳
 老い二人禅問答の日向ぼこ  伊丹市 我流我流亡者
3面 クローズアップ 「インフレ対応急務」抜粋
 ・・・世界的に経済の潮目が変わるタイミングで起きたウクライナ危機は、世界経済をさらに不安定にしている。・・・
 ・・・議長国インドネシアが公表した総括文書では、各国はインフレ圧力に対し懸念を表明。ロシアのウクライナ侵攻について「人道危機だけでなくエネルギーと食料の価格上昇をもたらす」と指摘し「最終的に、世界の国々がこの戦争の高い代償を支払わなければならなくなる」と警鐘を鳴らした。だが、ウクライナ侵攻とロシアへの経済制裁は長期化する恐れもあり、資源高などを打開する有効な手立ては見当たらないのが実情だ。
 ※・・・コロナ蔓延とウクライナ危機、21世紀の上半期において、政治経済を眺めた世界模様は、冒頭の言葉を因として改変されるのだろうか。
3面 万能川柳
 人類のピークはとうに過ぎてそう  福岡 名誉教授
 新しい自分発見したと爺      神奈川 荒川 淳

朝日朝刊から
24面 「NATO東方不拡大は 約束はあったのか」抜粋
 ・・・ドイツ統一の結果、西側は冷戦の勝利を確信し、ソ連は東西対立の克服・融和を期待した。この両者の認識の乖離は、90年代に双方が十分に努力すれば埋められたはずだ。だが、NATOは東方に拡大し、反発するロシアは国内事情が混乱する中で次第に権威主義化していった。結局ロシアを含めた新しいヨーロッパの安全保障秩序を構築する機会は失われてしまった。
 ※・・・1989年11月にベルリンの壁が崩壊した後のドイツ統一の過程で、NATO東方不拡大に関する明示的な約束はなかったというのが、研究上の通説とされている。
 しかし、90年2月9日に米国のベーカー国務長官はソ連のゴルバチェフ書記長に対し「NATO軍の管轄は1インチも東方に拡大しない」と発言した、とある。その言質を、罪のない舌禍とするか、重い約束だととるか、そこに双方の認識の懸隔がある。
朝日川柳
 敵基地を狙うこっちも敵基地だ  東京都 土屋 進一

2022.4.21日記
毎日朝刊から
3面 木語 「仕掛けられたワナ」抜粋 会川 晴之
・・・ウクライナは「非核化を選ぶ」
 問題は安全保障、「核も同盟国も持たない国が、どうして安全保障をするか」。そんな重い課題を前に、米英露3ヵ国が甘い言葉をささやく。「核兵器を放棄すれば、我々が安全を保障する」と。さらに、フランスと中国も同様の文書を結ぶと請け負った。
 「核クラブ」は、自分達の優位を崩す核拡散だけは防ぎたかった。それが「安全保障する」という口約束だけで手に入る。絶好な機会を逃すまいと、これを文書化したのが、94年12月・ウクライナなど3ヵ国が核兵器保有国と結んだ「ブタペスト覚書」だ。
 ウクライナのクチマ大統領は、核兵器保有国がかけた「ワナ」を見抜けなかった。国連安保常任理事国すべてから安全保障を取り付けた喜びに震え「神様の懐に抱かれたような幸せな感覚」に包まれた。・・・だがその直後、クチマ氏は耳を疑うような言葉をミッテラン仏大統領から聞かされる。「このような文書を信用してはならない。いずれ後悔する時が来る」と。
 ミッテラン氏の予言通り「覚書」は紙切れになった。ウクライナはもっと怒ってよい。
 ※・・・誰に怒りを向ければよいか?それは、はっきり言って米国である。94年当時、ソ連崩壊の結果として世界の覇権国(思いこんだ)となった米国が、最も「核不拡散」にこだわっていたからだ。
3面 万能川柳
 誰もみな余人をもって替え難し   岡山 邪 素 民
 
朝日朝刊から
10面 朝日川柳
 ロシアにもウクライナにもいる晶子   岡山県 小野 礼子
    (※ 君 死に給ふな)

2022.4.20日記
毎日朝刊から
1面 余禄欄抜粋
 政権に向き合う立場があいまいな野党は「ゆ」党と評されることがある。「やいゆえよ」で野(や)党と与(よ)党の中間にある、との意だ。・・・
・・・国民民主の協調路線も含め、国会は与党ペースで推移している。さきの衆院選で敗北した立憲民主党は提言路線に転じたが、存在感は薄い。野党の結束不足も目立つ。
 21世紀英国の政治家、ディズレーリの言葉に「いかなる政府も、有力な野党なくしては長く安定しない」とある。政治に緊張感をもたらす野党の役割と責任を説いたものだ。「や党」がかすむ無風国会。政治はゆるんでいないか。
 ※・・・自民党には骨のある優れた方もおられるでしょうが、それにしても旧弊の害をもたらす仁が幅を利かしているようでは、総じて腐敗の印象がつきまとう。野党連は、たしかにふがいない。我々国民も、政治に緊張感も期待感も見いだせず。あさってを向きたくなる。
2面 水説欄抜粋 「不都合な寄付の真実」 古賀 攻
 ふるさと納税を活用してウクライナへの支援に取り組む自治体が目立って増えている。
 ・・・国の制度というより、今では仲介サイト業者を含めた産業に近いふるさと納税。その知名度の高さが生きているのは確かだろう。だが、善意のツールと単純には使えない矛盾を抱えている。・・・
 ・・・自治体が寄付の実質的な中継窓口になることに、今はそれほど違和感を持たれることはない。ただ、ふるさと納税で入ったきたお金は自治体の一般財源になるため、理論上はウクライナに限らず対中国支援だってできる。
 総務省に問い合わせると、「寄付先の自治体の活性化に使うのが本来の趣旨なので」とこもごも。住民が負担し合って地域を支えるという民主主義原則に、ふるさと納税という「異物」が紛れ込んだことが不具合の原因だ。
 ※…同じ寄付をする場合でも、@直接赤十字へ寄付:所得税率に応じて控除がある、A直接ウクライナ大使館へ寄付:控除は受けられず全額自己負担、Bふるさと納税を使った間接的な寄付:最終寄付先が赤十字でもウクライナ大使館でも、実質的な自己負担は、寄付額102000円のうち2000円で済む。古賀氏は、戦争で苦しむウクライナの人を助けたいと同じ思いから出発していながら、寄付のルートによって自己負担額にこれだけの差がでることに合理的な理由を見出すのは難しい、と問題提起をされている。
 結局、地方行政への不干渉・不可侵という縛りがあるため、自治体と政府、自治体相互の、「調整(すり合わせ)」が、現行制度では難しいということか。
3面 万能川柳から
 「長電話最後に訊いた「どちらさん?」 札幌 北の夢
 極楽に少し感じる猥雑感        富士見 みいじい

  2022.4.19日記
 ウクライナ問題に関し、近頃になって気になりだしたこと、露大統領プーチン氏の顔の表情に生きた人間の喜怒哀楽が見えないのである。常に冷たく言い放つ顔が、TV面に映る。飛躍した想像をありていに漏らせば、メディアに現れる彼は、実はプーチン氏とは別人ではないかと。そして、当のプーチン氏は既に存在しないのではないか。では別人のプーチン身代わりは誰かと推し計れば、いささか荒唐無稽であるけれど、プーチン氏生前の思考パターンをインストールしたAIであるとの予想。つまり、今のプーチン氏はアンドロイドである、との巷の噂も以前TVに観たこともあった。真偽は不明。
 常軌を失した冷酷な戦争犯罪を、喜怒哀楽のある生きた人間に、行えるわけがない。21世紀になった今、ロシア兵も含めて軍も露政府も、戦争犯罪を承知した上の蛮行であるところに、救いがたい悲劇があり、過去の戦争とは性格を異にしている。誰にも責任所在が不明瞭なのだ。

毎日朝刊から
3面 万能川柳
 この人がCMするなら不買です  四条畷 うたこ姫
 らいてうや梅子は遠い女性議員  福岡  龍川 龍二
22面 季語刻々
 げんげ田に屈みて摘める人をらず 茨木 和生 (句集「みなみ」から)

   2022.4.18日記
毎日朝刊から
2面 [風知草]コラム欄 「ウクライナ 別の視点」 特別編集委員 山田 孝男 抜粋
 ・・・とはいえ、戦争の背景を考えることは自由だし、むしろ必要である。実際、フランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッドや中国研究者の遠藤誉(ほまれ)が米国の責任を問うている。
 ・・・興味愚深いのは、此の論客が、「メディアが冷静な議論を許さないフランスでは取材を断っているが、日本は私にとって安全地帯(だから応じる)と断ったうえで、「戦争の責任は米国とNATO(北大西洋条約機構)にある」と主張していることである。
 彼は、バイデン政権のウクライナ政策を批判する元米空軍軍人でシカゴ大教授の政治学者、ミアシャイマーのユーチューブ動画を紹介し、こう指摘した。
 「米欧は{ウクライナのNATO入りは絶対許さない}というロシアの警告を(反撃せぬとタカをくくり)無視してきた」
 「米英はロシアの進行が始まる前から、ウクライナへ大量の高性能兵器と軍事顧問団を送り込み、{武装化}を促していた」
 中国研究の論客、遠藤誉の最新刊「ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略」(PHC新書)の帯にこう書いてある。
 「ウクライナは本来、中立を目指していた。それを崩したのは09年当時のバイデン副大統領だ。{ウクライナがNATOに加盟すれば、アメリカは強くウクライナを支持する}と甘い罠をしかけ、一方で狂気のプーチンに{ウクライナが戦争になっても米軍は介入しない}と告げて、軍事侵攻に誘い込んだ」・・・
 遠藤は反米主義者ではない。むしろ舌鋒鋭い中国批判が身上だが、「第二次大戦以降の米国の戦争ビジネスを正視しない限り、人類は永遠に戦争から逃れることはできない」との信念から、米国批判に的を絞った文章をヤフーニュースに投稿した(13日)。
 時局柄「ひどいパッシング受けるのでは」と身構えたが、280万を超えるアクセスがあり、大半は好意的で、「議論を受け入れる土壌ができつつあると感じた」と振り返る。
◇ ウクライナの事態は平和に慣れた日本人の目を覚まさせた。東アジアの現実は日米同盟を軽視できるほど甘くない。国防の意思と努力が欠かせないが、国際情勢を自ら読み解き、戦争ビジネスに加担しない日本でありたい。
 ※・・・以前の新聞にも、参院議員鈴木宗男氏らのロシア擁護意見の記事が掲載されていましたが、エマニュエル・遠藤両者の論調はそれを裏打ちしているようです。今現在のロシアプーチン氏の、心の内が見えてきます。耐えに耐えた隠忍自重が決壊した今、「狂」と化してしまった己の姿を、ウクライナ侵攻という行動によって、米国とNATOに明示していると想像できる。さらには、「狂」なるが故の戦争拡大不可知をもって、米国・NATOへの恫喝としていることです。
 或いはプーチンは、米国の巧妙に仕掛けた陥穽に、はまったかもしれない。
 物事は、視点を変えると異なる景色がみえてくる。
 「戦争ビジネスに加担しない日本」・・・潜在的に、これは難しい。戦争ビジネスが、最もなる儲け口であることは、政治家と関係大企業にとって先刻承知済みなのですから。政治より先に、民間の商倫理を厳格化することでしょうが、人の欲得心と性はおいそれと習いますまい。今の日本の世論に、巨大権力に抗するような理知と朴訥を求めるのには、未だ機を熟してないように思う。

2022.4.17日記
朝日朝刊から
4面  「仏大統領 その先に」 対談 抜粋
    仏政治学院    パスカル・ペリー 教授
    同志社大     吉田 徹 教授
  ―マクロン大統領とは、どんな人物なのでしょう
 手法はとても中央集権的です。彼は国会を議論の場に使わない。マクロンという政治家がただ一人権力を行使しています。
 彼は「シックなポピュリズム」という側面がある。彼の作った政党「共和国前進」(与党)は国会ではマクロン氏に従うだけですし、地域の地盤を持ちません。マクロンの政党なのです。そうすると、国民が求めていることに直接答えようとするポピュリズムに駆られてしまう。・・・
 マクロン氏は「権力行使というのは、たえず大討論会をすることだ」といっているが、それではデマコギー(扇動)です。
 マクロン氏はどんな考えの持ち主がわからないと言われますが、国民の要望にそのつど応えようとすれば政策は矛盾し、選挙受けを狙っていると映る。彼の強みでもあり、限界でもあります。
―「シックなポピュリズム」は社会の要請なのでしょうか
 そうです。市民と権力を媒介する中間的な存在がどの国でもなくなってきているためです。労組もないし、伝統的な大政党もなくなりかけている。・・・
―ソーシャルメディア(SNS)の発達もそうした傾向に拍車をかけているのでしょうか
 その通りです。SNSは、個人の意見をたやすく表明できます。自分と似た考えを持つ人と簡単に結びつけますね。多様な人々がニュースを見るテレビのような従来型マスメディアとは異なります。
 政治刷新をめざしたマクロン氏はこの「退会現象」の申し子です。古い政治を壊すけれど、新しい政治は生み出していない。
 今見えているのは「開かれた世界」を目指すマクロン氏のような勢力と、国家に再び軸足を置こうとする勢力の対立です。決選投票は、こうした裂け目を明らかにするでしょう。
 ※・・・侵攻前、ロシアの気配を憂慮した西側ヨーロッパの中で、積極的に動き、プーチン氏と事態解決のための二者会談まで行った人として、脚光の人仏マクロン大統領には、スケールの大きさと行動力を感じたものでした。今日、朝日新聞からその人となりの幾分とも読み取ろうと、紙面を開いてみた。気になったのは「シックなポピュリズム」というキーワードです。ひかえめな大衆迎合と訳すのでしょうか。とすれば、案外に弱気な政治態度ではないかとの、印象を覚えてしまいます。大衆の顔色を窺っているようでは、自信に裏打ちされた決断は、望めないようです。このポピュリズム、民主主義国家では隠然と流行しているように見え、我が日本の政治においても、その兆しが垣間見られます。是非は別として、重大事に処する時、政策決定に一貫性を欠くという懸念があります。皮肉なことに、露プーチン氏が今行っている決定には、ポピュリズムの影が見えないようです。好悪いずれになるか、結果によって、今後の世界政治の動向を占うでしょうか。

2022.4.16日記
毎日朝刊から
3面 万能川柳
 花の下ストレッチャーの母が止め 川崎 捨石 こすみ (※囲碁好きな方か?)

朝日朝刊から
1面 天声人語
 明るい未来でなく、暗い未来を描く物語をディストピアという。2015年に公開された香港の映画「十年」も、中国の統制が強まった近未来の話だ・・・
14面 読書欄
侵食される民主主義(上・下) ラリー・ダイアモンド<著>
人権と国家          筒井 清輝<著>
 「世界は民主主義の不況に陥っている」。政治学者のラリー・ダイアモンドは早くから警告していた。民主主義を脅かすのは支配者の腐敗と権力欲、議会や裁判所の監視制度の弱さであり、民主主義に広がるポピュリズムは政治権力への自由で公正な競争を破壊している。
 民主主義が衰退の一途を辿る一方、専制はより抑圧的で攻撃的になっている。「専制の十二段階プログラム」に沿って進行する権威主義では反対を維持できず、市民社会の抑圧・経済界への脅し、公共放送やインターネット・公務員や治安機関への厳格な統制、選挙規則の改悪が顕著である。
 社会学者の筒井清輝は、人間は本質的に自分の所属する集団の外には無関心であり、普遍的人権思想の歴史は長くはないと述べる。植民地の住民を人権保障の対象から除外し、民族自決権は人種で限定した。欧米諸国は人権外交を掲げながらも自国の事情を優先させてきた。ルワンダのジェノサイドなど、大国には戦略的な重要性を持たない地域の人権侵害は黙殺された。
 ※・・・これら深い憂愁は、世界の人間にひとしく投げかけられている。
 二十世紀、内政干渉を嫌うはずの国家が互いに自らの権力を縛る人権システムを発展させた。これには「国家の偽善」の側面もあるが、国家のむき出しの権力行使が深刻な人権侵害を生むという筒井の指摘は示唆的だ。「人権力」の強化は不可欠だ。人類の窮地を救うために。 評・阿古 智子 東京大学教授 現代中国研究

15面 読書欄 「著者に会いたい」コーナー
 <たとえば君 ガサッと落葉をすくふやうにわたしを攫って行っては呉れぬか>歌人 河野裕子
 ※・・・嗚呼、哀しくせつなく、ひとすじの希望

                       2022.4.15日記
毎日朝刊から
1面 余禄
 フィンランドのマリン首相は北大西洋条約機構(NATO)への加盟を望む意向を表明した。「ウクライナ侵攻ですべてが変わった」。これがロシアを知り尽くした国の判断である。(19世紀、帝政ロシアの支配下、第二次世界大戦時に旧ソ連に侵攻され、国土の12%を割譲した。)
 ※…極東アジアの小国日本には 肌身には理解できないのです。かの国は理屈ではなく、肌の感覚で恐怖するのでしょう。
2面 金言 ありがとう「42」  小倉 孝保
 米大リーグの各球団には永久欠番が多い。
・・・ただ、リーグ共通の欠番は一つしかない。「42」。
 近代大リーグ初の黒人(アフリカ系)選手、ジャッキー・ロビンソンが、ドジャースで付けた番号である。黒人リーグで活躍していたロビンソンは1947年、ドジャースに入団する。
・・・ロビンソンは俊足、強打の二塁選手として活躍し、黒人たちに勇気・自信を与えた。その後、他チームも黒人を選手に加えた。「多様性が組織を強くする」。ロビンソンはそれを証明した。
・・・彼のデビューからきょう15日で75年。大谷翔平選手、鈴木誠也選手らの活躍も、「42」なくしてはあり得なかった。
11面 オピニオン 武力行使は「慎む」が現実
         長 有紀枝 東京大大学院博士課程修了
 第二次世界大戦の教訓から生まれた国連憲章は、武力紛争を違法化する到達点と言われる。武力行使の禁止は2条4項で規定しているものの、「禁止」という言葉はない。武力行使は「慎まなければならない」と表現しているだけだ。これは単語としては「タバコを吸うのを慎みましょう」というのと同じ程度の意味合いだ。さらに、国際社会には統一的な世界政府や強制管轄権のある裁判所も存在しない。
 ・・・しかし、国連の司法機関で国際法に基づいた国際紛争の平和的解決を目的にする国際司法裁判所(ICJ)は、核兵器の使用について「絶対的に違法」との見解を示していない。ICJは存亡がかかっているような極限的な自衛状況での使用については、「合法か違法かについて明確な意見を出すことができない」としている。
 ・・・現時点で戦争がどのように終結するか、見通しも立たない。仮に終結したとしても、国際社会はその負の遺産への対応で難しい時代を迎えると思う。
 ※・・・これは大事なことだと思う。情や誼で、国際関係のタガを緩めるわけにはいかない。しかし、人類は今なおこのような、動物の悪の遺伝子を背負っているかと思うと、未来への希望を諦めざるを得なくなる。

 朝日朝刊から
1面 折々のことば 
 忘れられないのは、全く私と同じ目線で対等に話してくれたことです。 鶴見 俊輔
 哲学者は15歳の「不良少年」だった頃、ずっと年上の女性(のちの精神科医・神谷美恵子)に普通の大人に対するように話しかけられた。年齢差も上下関係も意識になく、だから近所の「坊や」に対するようにではなく、語り合う別の<個>として。そのことで彼女もまた一人の<私>であろうとした。デモクラシーの感覚は足許から育まれる?{神話的時間}から。
11面 オピニオン&フォーラム
 非暴力抵抗こそ民を守る  想田 和弘さん 映画監督
 確かに主権国家には自衛権がある。でも攻められたからと言って応戦すれば、相手も応戦し、暴力の連鎖が始まります。本当に国や人を守れるかというと、難しい。今回のウクライナを見ても分かるでしょう。町や村が破壊され、大勢の人が死んでいく。これは取り返しがつきません。侵略者を駆逐できたとしても、国がめちゃめちゃになった後では、元も子もない。
 それより、もしかしたら、国の指導者が一切交戦しないことを決断し、国を挙げての組織で徹底的な非暴力・不服従の抵抗を呼びかけた方が、国や民を守れる可能性があるのではないか。軍も警察も官僚も労働者も、組織をあげて一切協力しないのです。人々の協力なしに侵略者は国を支配できないからです。
 ※・・・映画監督さん、すばらしい処し方だと思います。まるで、ハッピーエンドの映画を観るようです。さすがです。でも、ひとつ気になる事があります。みんながみんなこの意見に賛同すれば良いのですが、わずかでも考えを異にする人たちがいれば、スト破りとなって、結果難しいかと思われます。人の生き方はさまざま、民主社会なればこそ、ハト・タカ・コウモリ・日和見鳥なんて、いろんな鳥が出そろうかと思います。拷問に堪える人の傍らで、宗旨替えをした同胞人が、嘲り笑い美酒に酔っている光景が、見えるのです。

 朝日川柳
 どの口が よくもしゃあしゃあ「悲劇」だと 京都府 近藤 達

2022.4.14日記
朝日朝刊から抜粋
1面 記事 円安 20年ぶり 126円台
 日銀総裁「緩和続ける」発言で加速
 円安が加速したきっかけは、日本銀行の黒田東彦総裁の同日午後の発言。東京都内であった式典で「強力な金融緩和を粘り強く続ける」との考えを改めて示すと、126円20銭程度まで円売りが進んだ。
―関連して 9面 円安 経済の見通しは? 考/論 
「輸出増や賃上げにつながるか」第一生命経済研究エコノミスト熊野英生
・・・有効な円安対策は、日本銀行や財務相が「行き過ぎた円安」とのメッセージを明確に出すことだ。ただ、長期的には円安の恩恵を受けられることが大切。政府は海外機関などと連携し中小企業の輸出も増えるよう後押しすべきだ。国内では難しい価格転嫁も、物価が高い国への輸出なら進めやすい。

1面 折々のことば
 「霧のおかげで傷が癒えたのかしれない」 カズオ・イシグロ
 英国の小説「忘れられた巨人」(土屋正雄訳)から。英国がまだ英国でなかった頃のブリテン島。竜の息かと噂される霧が人々から記憶を奪う。その渦中、記憶を取り戻そうと、離れて暮らす息子を訪ねる旅に出た夫妻は、覚醒を願いつつも密かにそれを怖れる自分に気づく。共通の記憶を失くすと関係も干上がるが、忘れることがないと関係は煮つまるというジレンマ。

11面 オピニオン&フォーラム なぜロシアは力ずくなのか 抜粋
 憲法季評 「生命と尊厳と、重い問い」 松嶋 陽 名古屋大教授
 ・・・ウクライナ情勢が示しているのは、民主制の尊厳という価値(これも日本国憲法上規定されている価値である)が、個人の生命という価値と相克することもあるという厄介な状況である。
―日本が同様の状況に直面した時
 独裁体制のもとで尊厳が無くとも個人の生命が救われるならばそれでよしとするのか、民主政や尊厳を守るべき価値に加えるのか。ウクライナ情勢が日本に突きつける問いは深く重い。
 ※・・・難しい選択です。他人はともかく、自分自身が、その状況になればどっちに転ぶか自信がない、不確実さと怖さがあります。7割方は、「個人の生命」に傾いていますが。

朝日川柳
 真っ先に藁人形が浮かぶとは  栃木県 久保田 清

読売朝刊から
1面 四季 長谷川 櫂
 なれなれて雲井の花を見し木の間もりこし月ぞ忘れられぬ 後鳥羽院

  2022.4.13日記
朝日朝刊から
1面 折々のことば
 オレはいつも列外におるつもりでいたから。 山田風太郎
6面 記事 ロシア鉄道 デフォルト 国営企業 初の認定
8面 朝日川柳
 敵基地撃てばどうなる聞かせてよ 東京都 鈴木 了一
 金持の道楽ような議員かな 大阪府 末綱 百合子

 近所の東図書館の裏は、洪水対応の池ですが、普段は窪地の公園となって、子供たちの遊び場になっています。その池畔を巡る土手道に、厚ぼったい花弁をのせて、八重桜が満開になった。にわかに豪奢になったような景観です。
 夏を思わせる、空から温気が降りおりて、暑さをもよおさせる日です。
 俳句を詠みます
 今や咲く姿かなしきやえざくら
住んでいる七階フロア向かいの、太平婦人(同い年)と、EVで一緒になる。「あつくなりましたねぇ」互いに同時に同じ言葉を発した。かの婦人は、年を経るほどに若やいでいくようだ。
  晩げの酒の肴に、シマアジの頭を煮つける。身は少ないが味が良く、左党にとっては最良の肴です。
昨日、最寄り駅まで50分歩き、郵貯銀行や他行ATMなどへ、各支払いの不足分を手当てするために、慣れないATMや預金担当者に向き合ったりしたので、今日はさすがに疲れが発現したらしく、気だるい居眠りの多い一日だった。

  2022.4.12日記
朝日朝刊から
 オピニオン&フォーラム ロシアへの「兵糧攻め」 耕論
 元日銀決済機構局長フューチャー取締役 山岡 浩巳さん
 ウクライナへの軍事侵攻に対し、ロシアの外貨準備凍結や国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除といった金融制裁が科せられています。経済制裁の中で最も効くのはロシア産原油や天然ガスの禁輸ですが、米国などを除いて難しい。
 気を付けた方がいいのは、制裁の手段として金融は本来なじまないという点です。
 SWIFFTは国境を超えたお金のやりとりをスムーズにするため、通信メッセージを遣る組織です。多くの銀行が加わることで利便性が増すプラットフォームで、世界の銀行が出資してつくった。政治からは本来中立です。
 本部がベルギーにあるため、制裁は欧州連合(EU)の決定によって行われています。でもEUの決定で特定の銀行が排除されると意識されれば、自分達で独自のインフラをつくろうという国が今後出てくるかもしれない。例えば中国がそう考えれば厄介なことになる。中立だからこそできたグローバルな決済システムが分断化され、それぞれのつながりがなくなる「サイロ化」の方向にもっていってはいけません。
 金融制裁がルーブル相場やロシア株、国債が暴落し、国内の物価は上昇しました。マクドナルドなどの世界企業もロシアを離れた。制裁は効いています。でも、だからといって「金融は制裁に使える」と考えるなら、世界経済のブロック化につながります。
 ・・・ロシアのような核大国に武力で対抗すれば、第3次世界大戦になるかもしれない。そこで金融を含む経済制裁となるのですが、制裁する側も返り血をあびる「両刃の剣」です。
 ・・・それでも「制裁に踏み切ったのは、プーチン大統領に代償を払わせなければ、追随する国が出るかもしれないからです。力で現状を変える試みの連鎖を防ぐため「経済合理化」を超える判断をしたのだと思います。
 ※・・・さすがは金融関係プロだけあって、冷静に分析されたご意見だと感心しました。
軍事侵攻した当初の目的が頓挫した今、プーチンは何をめざしているのか。報道から洩れる彼の自信ありげな施策を診ると、何か当てにしている現実的な拠り所がありそうにも思えてくる。それは何か?何がして、彼に自信を与えているのか。米国やNATOなど民主国家の腑抜けをと、見くびっているのか。否、それだけではなさそうな不気味さがある。

 同じくオピニオン&フォーラムから抜粋 政経一体「耐性」備えた国 上智大教授 安達 祐子
 経済制裁でロシアの市民生活に影響が出ています。食品をはじめ物価全般が上がっている。イケアの営業停止前日には行列ができました。モノ不足が当たり前だった旧ソ連の光景を見るようです。
 ・・・ロシアには、いわゆる「企業城下町」が多くあります。制裁によって、例えば鉄鋼会社の工場が操業停止に追い込まれると、町全体がダメージを受けます。ただ、情報統制が厳しく、反戦デモが禁止されている現状では、プーチン大統領を動かすことは難しいでしょう。ロシアは制裁に「耐性」があると考えることもできるのだと思います。
 ・・・今回の制裁では、14年のクリミヤ併合時に比べて相当厳しいのは間違いありません。短期的にはロシアの「耐性」があっても、打撃はじわじわ広がります。24年の大統領選に影響を及ぼすことはできるかもしれません。そこまで視野に入れた制裁なのか、あるいはウクライナ侵攻に区切りがつけば、一郭を緩和するのか、制裁を科す側は、少し長い目で考える必要があるでしょうう。
 ※・・・安達さんの文章を読んでいると、言葉と言葉の間に脈切れがあって、文脈がスムーズにつながらないのです。当方が、抜粋しているからなのか。例えば「城下町」から「耐性」へとつながる部分の意味合いが、言葉としてつながらず、ジャンプしてしまっている。
 それはそれとして、果たして、この戦争長引くのやら。

 毎日朝刊から
1面 余禄欄から抜粋
 「神がつくったものとしては人間は無情すぎ、不完全すぎる。しかし自然が生んだとしたら、あまりに傑作すぎる」。作家の武者小路実篤は「不完全な処」を「だんだんとおぎなって完全なものにする」人間の能力に驚嘆している。
 万能川柳から一首
 耕せば影くっきりと土の上  伊賀市 菅山 勇二
 ※・・・畝と畝の間の土肌に、影の屈曲するのが、鮮やかに見えるようです。

2022.4.11日記
 今日は新聞休刊日ということで、拾い上げるネタがない。最近興味を引いたのは、先日NHKで放映された番組「数学をめぐる数奇な物語 難問a b c予想証明 数学界を揺るがす激論…」が、その後Netなどで話題になっていることです。実は一年前になりますか、証明したという望月教授と「a b c予想」を解説した加藤文元著の本「宇宙と宇宙つなぐ数学」を一通り読みました。
 素数と素因数分解が元のこの問題は、たし算とかけ算の根本的な性格の相違を採りあげています(a b c予想)。望月教授も、この問題(和と積)をいかに分離し、そして一つにまとめるか、そこに没頭したようです。和と積、この二つは、算数(数学)としてまったく性格が異なり相いれ合わないので、同一の土俵では取り組みできません。
 平素、我々は、この二つの計算をなんの苦も無く躊躇せず当たり前に行っていますが、実は、積というのは尋常な数え方ではなく、いわば頭の中の空想の数え方です。PCプログラムでは、積は足し算のアルゴリズムに変換して演算させます。掛け算そのものを、二進数アルゴリズムにはできません。
 和とは、実体の個を手に取って数えることですから、全体はやはり実体の集まりです。積とは、数え上げた実体の個の集まりが、幾つ集まれば全体としてN個になるかを、頭の中で算定(想像)することですから、全体の個数は実体ではありません。いやそれはおかしいぞ、目の前に数え上げた個の集合と、同じ集合をn集団か持ってきて混ぜ合わせ数えれば、全体の数が実体として数え上げられるではないか、とおっしゃる向きもあるでしょうが、この場合は積ではなくて、和そのものですね。要するに、a(実体個数)×n(群)=N(個)でなければなりません。
 a b c予想そのものは,二つの素数組み合わせに、たし算と掛け算(単純ではない)を行い、その二つの結果についての予想ですが、詳しくは手に負えるので割愛します。

2022.4.10日記
 物ごころ(正確には小学三年生頃、10歳)ついた頃から本を読みだし(主に小学校の図書館)文字には馴れ親しんできた。小学5年生頃になると、芥川龍之介などの大人の小説も読書の対象になっていた。おかげで、読みやすい文章、読みにくい文章、難しい文章、わざと読みにくくもったいぶった文章、などの区別が自然につくようになった。
 老境に入ろうとする今、読書における来し方を振り返ると、まとめとして、あることがわかった。文章には二つの種類があって、一つは内容を読者に伝える目的のために、便利な言葉を用いて文章を作るのであり、もうひとつは、文章の「力」を恃むあまり、言葉を弄び言葉の取捨技量を尽くすことに、重きを置いた文章である。
 私には、やはり前者の文章を贔屓にする。内容が立派なものであれば、文章の言葉運びも自然美しく充実するように思えるからだ。後者の場合、言葉に凝り過ぎる余り誇張な表現や無用な飾りが見えてしまい、かえって内容が見えにくく色あせてしまう。
 有名な文学作品にも、後者のような得意然とした言葉追い文章が、少なからず見られる。
 確かに、美文に接すると薫風に吹かれたような、さわやかな感慨に浸ることができる。これも、内容の良さと文章の運筆が、うまく溶け合い醸しあった成果だと思う。こういう作文に出会えた時、人生における貴重な掘り出し物を得たような、幸福感をもたらしてくれる。
 私は、人生における生活手段としての働きを終えた今、新聞を読むのを日課とする。それは、ニュースや提言などの記事の中に、「小さく光る」ものを探すためである。新聞記事の文章は華美な装飾を省き、簡明に書かれてある。その簡明な文章の中に、内容の「光るもの」がありはしないかと、日々複数新聞社の記事に目を通す。できるなら大手4社の記事全てに目を通したいが、個人ですべてを購うのには負担が多く、近所の図書館に足をはこび、棚に取り残された新聞を、ありがたく読ましてもらい福とする。

 産経新聞朝刊
 1面 産経抄から
 六歳の照美は、人から親切にされてもうまく笑えない。両親は早くに別れ、父に引き取られた。
 「ありがとう」と言えないのは、同情を拒み、自立を望んでいるからだ。<たとえどんないいことにしろ、それを知れば、それは悲劇の色しか帯びない>「化粧と口笛」 川端康成
 ヤングケアラーの悲しみ

3面 閉店の「丸亀」 露側が無断営業
 外食大手「ドトールホールディングス」(東京都)が露国内での閉店を決定した傘下の「丸亀製麺」について、現在も営業が続けられていることが9日、分かった。屋号は「マル」に変更されたが、メニューやサービスは同一。同社とフランチャイズ契約を結んでいた露企業が、ブランドとノウハウを無断で使用しているとみられる。
 ※・・・旧ソ連の外国に対する無法性が、戦争という免罪符を得たと錯覚し、民間企業の商道徳違背にまでいきついた、と思われる。嘆かわしい。一体に、かれらはこの今の特異な戦時状況が、いつまでも永続すると考えているのか、それとも、大陸的な鷹揚さで、その時はその時、成るようになる、と開きなおっているのか。

5面 為政者の自滅「歴史と教訓」 磯田 道史 国際日本文化研究センター教授
 ・・・国の力は軍事、経済、知、人口という総合的な力でできている。軍事力だけ高めても目的の達成が難しいことは、ロシアを見ても分かる。大事なのは政権批判も出来る国家の健全性だ。無理筋の進行が起きてしまうのは、人口の見積もり、経済・知性の尊重、言論の自由がないからで、秀吉もそうだった。それが失敗のもとになり得ることをかみしめたい。
 ※・・・ソビエト連邦の栄光時代を知るプーチンには、自国の歴史だけが手に取ることのできる実感であり、他国の歴史は実感できない絵空事に見えているのか。

 朝日朝刊
 折々のことば
 頭が切れたり、器用な人より、ちょっと鈍感で誠実な人の方がよろしいですな。(故西岡常一 法隆寺宮大工)
 器用な人は苦も無く先に進んでゆけるので、往々にして「本当のものをつかまないうちに」作業を終えてしまう。反対に不器用な人は「とことんやらないと得心できない」から、要所を疎かにせずに熟練すると、奈良の宮大工は言う。画家の場合だとたしかに、手がそつなく動く、その器用さを不自由と感じ、あえて利き手とは逆手で筆を持つ人がいる。
 ※・・・今から44年前、「薬師寺再建」というタイトトルで、西岡棟梁の現役の頃の様子を描いたTV放送を観て、たいそう感銘を受けたことを覚えています。当時わたしも大工の端くれでしたので、特に注意を引かれたものです。建築とは、「土組」、「木組」、「心組」という言葉を今も覚えています。当時の私の大工親方も、大工の家に内弟子に入った頃は当分の間や後の暇な折、「肥え汲みなどの畑仕事ばかりさせられた」、と話したことがあります。今となっては隔世の感があります。

 朝日俳壇から
朝寝してみても戻らぬ夢があり      高松市 島田章平
 この星に出る他なき地虫かな      八王子市 額田浩文
 啓蟄やそろそろ旅に出てみるか     尼崎市 松井博介
   毎日朝刊
 万能川柳から
 カニカマはカニに出せない風味ある   巣鴨 雷 作 

2022.4.9日記
毎日朝刊から
1面 余禄欄抜粋
 「ごまかし」という言葉は、「胡麻胴乱」という江戸期の菓子に由来すると言われる。
 「文書通信交通滞在費」(文通費)見直しを巡る与野党協議は、名称を「調査研究広報滞在費」と変えることで大筋一致した。
・・・使い道の公開義務化などを求める声も強く、議論を仕切り直したのは当然だった。
 さぞかし踏み込んだ案が出てくると思いきや、名称を変え日割り支給とする以外、改革は先送りとなりそうだ。
 改革どころか「調査研究広報滞在費」への改称で使い道が広がると、どんな支出でも「調査研究のためだ」と言い繕う口実を与えかねない。これでは開き直りの改悪である。
 衣を変え、怪しげな調査研究がはびこるようでは、とても食指が動かぬ。国会の胡麻胴乱だ。
 ※・・・国・地方を問わず、およそ公の議員たる人たちには、どうしても胡乱な性格がついてまわる、一つの例だろう。中には、真に政治を行わんとする骨格の備わった方もいらっしゃると思うが。
3面 {「最低限の合意」形成失われる恐れ} 東大公共政策大学院教授
  …今回の決議(露、人権理事会理事国資格停止)は、国連の正統性が揺らぐことにもつながりかねない怖さも含んでいる。国連の強みは、対立国も含めて「最低限の合意」を作ることにあるからだ。例えば日本の国会で特定の政党を排除して決議を取っても、民主的と言えないのと同じだ。ロシアが国連に背を向けてしまうと、世界の重要な問題に関して国際社会として最低限の合意もできなくなってしまうかもしれない。
 ※・・・5面社説の一本調子の「決議」賛成とは異なり、今回反対に回ったアジア・アフリカの国々と同様の考え・危惧を、感じられているようです。
15面 今週の本棚
{「トランプ信者」潜入一年} 横田 増生 著 小学館 ¥2,200
・・・適正な人格識見を欠いた指導者を竹とすれば、支持者はその地下茎だ。地下茎がある限り、竹は伐っても生えてくる。ネットを介して縦横無尽に張り巡らされたフェイクニュースと他責感情のネットワークが、これからも日本を含む世界各地で、問題を噴出させるだろう。 藻谷 浩介 評
 ※・・・前大統領トランプ氏は、未だに共和党内において相当の支持を集めているらしい。

 朝日朝刊から
1面 天声人語抜粋
 「ロシア軍のウクライナでの行動を支持しますか」。先週発表されたロシアの世論調査を見て驚いた。8割超が「支持」。どこまで実情を映した調査かはさておき、やはり理解し難い。
・・・偽ニュースと聞いて浮かぶのは、冷戦終結時の東独を描いた映画「グッバイ、レーニン!」。主人公の母は病床にあって、ベルリンの壁の崩壊を知らない。東独こそ至高の国と信じる母を気遣う息子は、架空の報道番組を作る。「社会主義がついに資本主義に勝った」。母の表情は信じているようにも、信じたふりをしているようにも見えた。
   ※・・・今のロシアは、ゴルバチェフ以前のソ連時代に逆戻りしたのか。

2022.4.8日記
 昨日より、体調のくずれが生じて悩んでいる。左上の歯茎が腫れて痛むだけならまだしも、鼻にも炎症の類火が及び、挙句微熱がおこり、不快な事極まりない。今日も、朝方気分が持ち直したかと、午前中に1時間余り歩いて野菜を仕入れに行ったが、午後になって図書館で新聞を閲覧しているうち、寒気がきざして、元の不快さに戻った。頓服を服用して、今はなんとかおさまっている。
 こんなことで、4月下旬からの、一週間の山歩きがモノになるのかどうか、少々不安になってくる。年齢と言ってしまえば、それまでである。

朝日朝刊から採りあげ
1面 折々のことば
 知識は伸びる手であり、「わかる」というのは結ぶことだ。
 明治の作家、幸田露伴は娘に、本を読んでものが「わかる」ということの意味を訊かれ、「氷の張るようなものだ」と答えた。知識は知識を呼び、それらの先端が伸び、ある時急に牽きあって結びつく。こうしてこの線に囲まれた水面を氷が薄く蔽う。それが「わかる」ことだと。以後、文はこれをずっと心に留めおく。
 随想集「幸田文 老いの身じたく」から。

2022.4.7日記
朝日朝刊から抜粋
折々のことば
 「あたしの背負ってたの、なにかしら。」
 「なんの荷をおろしたんだろうね。」
 作家の呟きに娘はそのつど「さあ」と返すばかり。終いに一言、「どうしたの、なんだか寂しそうだわよ」と、背負った荷を「落とすともなく落としたせい」か、老いのおぼつかなさになじめてないからか、ひっそり「気抜けがした」と作家は言う。荷が下りたのか業が果てたのかも知らないけれど、軽くなるのは悪くないと、随筆集「幸田文 老いの身じたく」から。
 幸田文氏の小説「台所のおと」が気に入っています。お父上露伴先生の小説も好きでした。父上の躾はきびしかったそうです。

   毎日朝刊から抜粋
 万能川柳から
 「平和ボケなんてステキな言葉でしょ」 尾道 瀬戸の花嫁

 小説「侮蔑の時代」 アンドレ・マルロー(訳:小松 清)から抜き出し
 ナチの監獄から釈放された主人公カスナーは、ドイツから出国するのに、共産党同志の小型飛行機で、チェコへ飛ぶ。嵐に見舞われて飛行機が危なくなったが、幸便にチェコ・プラーグの飛行場に着いた。その町に住む妻アンナに再開して、言う。
「飛行機が飛びあがったとき、おれたちの眼下(した)には、あらしのようにざわめく木の葉があったっけ。喜びというものは、いつでもこんなもんじゃないかね・・・軽い木の葉みたいな…地面にくるくる舞あがり・・・」
「だがね、いいかい、牢屋のなかじゃ、みんななにものかをもとめてやまないんだ。苦痛と同じ深さのところに生きているなにものかをね。・・・喜びには、それを現す言葉がない」」

    2022.4.6日記
毎日朝刊より抜粋
1面 「戦争犯罪」安保理で訴え ゼレンスキー氏演説 対ロ圧力求める
 ・・・また、「安保理が保証しなければならない安全保障はどこにあるのか。安保理はあっても、平和はどこに在るのか」と語り、改革の必要性を訴えた。
 ※・・・悲痛な訴えです。一国の為政者として、いずれの国の為政者でもこの状況にあえば、同様の嘆きを覚えるはずです。ただ悲しむべきは、これも世界の為政者なべて同様ですが、自国の改善すべき素因には一切触れず、相手国の素因を挙げることです。これも、戦争の戦争たる「曖昧」のせいなのか。
1面 折々のことば
  自転車を盗まれた日 猫を拾った
  傘をなくした日 虹をみつけた
  風邪を引いた日 花をもらった
               詩集「戯れ言の自由」から 詩人 平田 俊子

毎日朝刊から抜粋
 水説 「避難民」と呼ぶ曖昧さ  古賀 攻
 ・・・つまり今回の受け入れ枠組みは裁量行政の一環だった。明確なルールがないから曖昧さがつきまとう。政府が受け入れ者を「難民」ではなく、法律に無い「避難民」と呼ぶ理由がここにある。
 それはおかしいと、立憲民主党は3月末、「戦争避難者」という新たな在留資格を設ける法案を衆院に提出した。行政の裁量には委ねずに、国際機関の見解に沿った基準で認定し、就労制限なし、期間は更新可能となっている。
 法案作りを主導したのは昨秋に初当選したばかりの鈴木庸介衆院議員(46)だ。NHK出身。落選を重ねた浪人中に生活の糧として外国人向けシェアハウスなどを経営してきた経験が生きた。
 「ウクラライナだけではなく、ミャンマーやシリアから逃れた人にも適用していけば、日本はまともな人権国家になれる」と語る。
 根本には、日本が外国人の定住という課題に正面から向き合ってこなかった歴史がある。多くの職場が技能実習生や留学生なしには回らなくなっているのに、一時的な労働力としてしか見ないから、共生活動が育たない。日本の難民認定者が他国より極端に少ないのは、もう耳タコの話だ。
 ロシアの非道な侵略で世界は変わった。外国人政策が従来通りでいいはずがない。全国からのウクライナ支援の申し出が、転機になればと思う。
 ※・・・江戸時代の鎖国政策が、怨霊として、今に、まつり事の影に容喙しているのか。
        毎日万能川柳
 愛があるうちは寝息と呼ぶイビキ  今治 へろりん

2022.4.5日記
朝日朝刊から 11面オピニオン&フォーラム「無料を選ぶ私たち」から抜粋
 送料ぼやける「人の働き」 一浦 靖博 祇園藤村屋店主
 「送料無料はありまへん」こんな文章をホームページにアップしています。「送料込み」や「送料当店負担」なら、まだ分かります。でも、だれかが配達しているんだから、送料が「無料」なわけないじゃないですか。
―お客さんが「無料がいい」と思うのは分かります。僕も「一番安く買いたい」と思いますから。でも「送料無料」は、実は無料ではないことが多い。送料分が上乗せされた商品「〇円以上送料無料」と言われ、必要以上に多く買っている人もいるでしょう。
 送料に限らず、今、「人の働き」にお金を払わなくなっていると感じます。「モノ」に払うのは抵抗がないんです。買う時には必ず、売る人、運ぶ人といった「人」がいるのに、ネット通販で見えなくなってしまったからでしょうか。
―送料は、通販で選ばれるかどうかに大きく影響します。正直に言うと、「セット商品なら送料込みの価格にして<送料無料>で売ってもいいか」と考えたこともあります。でも、やめました。送料のためにうちを選ばないお客さんもいるけど、違うところで内を選んでくれるお客さんもいるんじゃないかと。
 ※・・・商いの要諦が、ここにあります。「良い商品を消費者に提供する」を突き詰めれば、こうなるのでしょうか。祇園藤村屋:創業以来百七十余年の老舗食品店.ちりめん山椒や漬物が人気。
 
 3面 香港 林鄭月娥(キャリー・ラム)長官 次期行政長官選に不出馬
   きりっとして端正な女史の面立ちは、印象に残ります。

2022.4.3日記
読売朝刊より抜粋
7面 広角多角 「露や独を見て思う国会の心配の種」編集委員 伊藤 俊行
(プーチン氏のウクライナ侵攻に見る暴走と、独議会が新首相オーラル・ショルツ氏選出に半年ももめたが、今回のウクライナに対する武器援助には、須臾にして衆議一決したことなどから引っ張った論説)
 衆院事務総長を務めた向大野新治は著書「議会学」で、議会は統治ではなく権力闘争の場で、「統治者の考え方や行動を制約し、最善の統治へ向かわせる」ことが大事だと説いた。
 野党が政権のスキャンダル追及に明け暮れ、国会で物理的に抵抗するのも当然と言わんばかりの記述に眉をひそめる人もいる。ただ、国会の緊張感と活力が政府に「良い統治」を促すとの見方は傾聴に値する。
 その意味で、政権寄りの姿勢を強める野党の国民民主党が国会の活力をそぎはしないか、気になる。
―どの道を進むにせよ、参院選の前に態度をはっきりさせた方がいい。政党としての「背骨」があれば「良い政治」を導く力は出てくる。民主主義の名のもとで独裁や軍部の暴走など「悪い政治」が生まれた歴史も、忘れてほしくはない。

毎日朝刊から抜粋
2面 時代の風コラム 「人間の安全保障への脅威」 高原 明生 東京大法学部教授
・・・冷戦敗北の屈辱へのルサンチマン(怨恨の情)が、プーチン氏の侵攻の動機だと分かる。中国のリアリズムからは理解し難いことだろう。
・・・プーチン氏を侵攻に突き動かしたのはロシア民族のロマンチシズムだった。それは中国多理解できずとも批判をしないのはなぜか。何よりも、米国が主導する世界秩序に挑戦する上でロシアが最重要のパートナーであるからだ。
・・・非民主的体制下の権力の乱用こそ、人間の安全保障を脅かす大きなリスクなのである。
※・・・ウクライナ戦争が始まって以来、官界民間いずれの学者先生方々も、新聞社説やコラム欄において、いろいろ意見を著してこられ出尽くしたようですが、一応上述高原氏の歯切れいい意見に収束されたように思われます。今後のロシア動向の次第では、新しい追加意見の、必要になるか知れませんが。
ただ、3月26日付朝日朝刊 オピニオン&フォーラム異論のススメ「ロシア的価値」と「侵略」と題した、佐伯氏の意見は「ロシアの今に至る歴史的因縁と風土」を織り交ぜた点と、ロシア非難だけに染まらない筆致において異色でした。
 
2021.4.2日記
朝日朝刊から抜粋 13面オピニオン&フォーラム
 「国際秩序のリアリティー」 国際政治学者 藤原 帰一
・・・「相互抑止力を破って自滅の可能性を選ぼうとしている相手を武力で撤退させるのは不可能です。<侵略している相手にひるんでよいのか>という問題に直面しつつも<ひるまなければ戦争がエスカレートしてしまう>という問題もあって、解がない状態なのです」
 ※・・・ウクライナ戦争について、学者先生から何らかの問題解決のための、提言なり示唆でもあるかと読んだのですが、「解がない状態」と開き直られては、身も蓋もありません。
・・・「日本国憲法前文の<専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位をしめたい>というくだりに注目すべきです。理想や幻想だとする批判もありますが、ここにある国際主義は<現実>の一部でもあります。実在したナチズムと日本の軍国主義を前提にしたものだからです。
…「嫌な言い方になりますが、幻想だったのかどうかは、実際に侵略が起きてみれば分かります。今はその状況ではないでしょうか」
 ※・・・ウクライナ問題は、現実のリアリティーを基にして考えていかねばならない、と説明される主旨は、一方では分かるのですが、問題解決のための新しいものの考え方が見えません。大人(うし)に容喙されない、次の時代を切り開く新しい模索の努力が必要かと思います。非暴力を徹底しなければなりません。その上で何ができるか。要するに、本当は、国家そのものを相手にするわけでなく、国家を統べる権力者個人の意思をどうにかしたい、というのが現実ではないのか、と考えます。権力者は民衆を最も恐れる。「No!」意思表示の運動が、全世界の人々から湧きおこれば、一つの大きな力になるでしょう。幸い、我々にはインターネット(通信情報)という強力な武器があります。より良き世界を夢見て。

2022.4.1日記
毎日朝刊より抜粋
1面 余禄
 「丁」の字には「よほろ」の訓が在る。膝の裏のくぼみのことで健脚の意味を持った。古代中国から律令制を導入した際、課役を担う健康な成年男子を指す丁にこの読みを当てたらしい。大宝律令では21歳から60歳が「正丁」とされた。丁年は成年と同じ意味である。
9面 「プーチン氏は 裸の大様」 米 分析「正確な情報伝わらず」
 ※・・・普通なら、情報の分析結果はマル秘のはずだが、互いの情報戦の中、意図的に漏らして、プーチン氏を攪乱し、孤立させるのが狙いらしい。

朝日朝刊から抜粋
1面 折々のことば
 あなたは何もきづいていないのですね/この世に満ちてる悲しみへの予感がもうすでに/ちいさな心にふくらんでいくのを  ブッシュ孝子 (ブッシュ孝子全詩集 「暗やみの中で 一人枕をぬらす夜」から)
3面 対中国ODA(日本政府の途上国援助)全事業が3月末終了。40年超 計3.6兆円支援。日中関係が冷え込む中、日本が中国を「助ける」時代が幕を閉じた。
 ※・・・対中国ODAが今まで続いていたことを、まったく知らずにいました。驚きです。
7面 ウクライナ現地被害住民の声「第3次世界大戦はもう始まっているんだ」
12面 社説 米の核戦略「破局を防ぐ出発点に」
―バイデン政権は、オバマ時代の「核なき世界」の理念を前進させるとしてきたが、結局は従来の政策踏襲になった。・・・
 ―どんなに道は険しくとも、結局、核兵器をなくすしか根本的な解決はない。核の脅しに核で応じる構図が続く限り、人類は甚大なリスクにおびえ続けねばならない。
 ※・・・もう一歩突き進んで、世界から全兵器を撤廃すべきである。百害あって一利なし、世界の貧しい人々のどれだけ多くが救われることか。死の商人・死の科学者・死の技術者らを根絶させねばならない。人の、邪まな欲望を、摘みとらねばならない。(最後の項目は難しいか?)

2022.3.31日記
朝日朝刊より記事抜粋
1面 折々のことば
 「年表には成功物語しか書かれず、その影に膨大な失敗の歴史が隠れている。」 池内 丁(さとる)
 
3面 米、中ロ念頭に核抑止力維持(核戦力見直し)使用厳格化は盛り込まれず
 米国防総省は29日、バイデン政権として初めての「核戦略見直し」(NPR)の概要版を発表した。中国やロシアによる核兵器の脅威を念頭に、同盟国への「核の傘」を含む核抑止力を維持することを引き続き「最優先」と位置づけた。
 ※・・・プーチンの狂気がいつしかバイデンにも伝染していくようだ。

11面 オピニオン&フォーラム「論壇時評」
情報大戦下の「挑発には理性を言葉で抗う」世界  東京大学大学院教授 林 香里
※・・・ウクライナ・ロシア戦争に対する知識人の各様の意見を、林氏が以下に挙げている。各意見には、それぞれ解説が載っているが、暈の関係で割愛。
@ 高橋彬雄「市民を(巻き添え)ではなく<ターゲット>にしたロシア:ウクライナ侵攻という、<クラウゼビッツ> の鬼子」(フォーサイト3月13日)
 ※・・・クラウゼビッツ=18世紀、ナポレオン時代のプロシア軍人・戦術研究家。ナポレオンの軍を破ったと言われている)
A 八田浩輔 「SNSと衛星画像を駆使するもう一つの戦争・活躍する在野のオシント」
※・・・オシント=オープン・ソース・インテリジェンス(公開情報を分析し、各情報を突き合わせて事実を解明するリサーチ手法)
 (毎日新聞 3月8日)
B 川口貴久 「SNS時代の戦争、<制脳権>争いが激化。市民が<兵器>になる恐れ」朝日新聞デジタル 3月25日)
C Ann M. Simmons「プーチン支持なお絶大。ロシア田舎町の熱気」ウォールストリート・ジャーナル日本版 3月18日
C リンジ―・アダリオ 「愛は戦火を駆け抜けて。報道カメラマンとして、女として、母として」 (KADOKAWA.2016年初刊)
※・・・「論壇時評」欄に、別枠で載っている意見がありました。今回のウクライナ戦争に対して、異色な意見なので抜粋
{あすを探る}「平和のため遠まわりでも」 三浦まり 上智大教授
ここでは長期的な視点から考えたい。
今年の国際女性デー(3月8日)に寄せてアントニオ・グテーレス国連事務総長は「私たちに必要なのは持続可能なフェミニスト的復興だ」と言い切った。気候変動やパンデミックによる窮状に女性と少女は一段と苦しみ、かつウクライナをはじめとする各地の紛争で彼女たちは最も弱い立場に立たされ、最も強く平和と正義を求める声を挙げているからだという。
女性やマイノリティーの前進を中心に据えた新しい経済復興のあり方はフェミニスト的復興と呼ばれる。・・・
性暴力は戦時下で悪化するが、それを引き起こす構図は平時にすでに存在する。人道支援が不可欠なのは戦場だけではない。平和に向けて私たちが取り組むべきことは多い。
※…本当に視点を替えています。女性の側から診た戦争平和論と、一言では片付けられない、普遍的なフェミニズム文化論が脈打っています。

毎日朝刊 万能川柳から 気になる人への不満の一句
「志らくって何を根拠に威張るのか」 福岡 小把 瑠都

2020,3.30日記
毎日朝刊より抜粋 1面 論理国語に小説
23年度高2教科書検定に今般新要領の目玉の一つは、現代文の学習を論理的な文章と文学作品に分ける国語改革だった。
・・・論理的な文章と文学作品を分離して扱おうとする分科省の方針・・・
2面に続いて 「クローズアップ」では、明治大 伊藤氏貴教授の反駁が載っている。
 <論理・文学の分け「困難」>と題して
 ・・・新学習指導要領による科目再編は文学と論理を二項対立のような構図に置いた点に問題がある。文学作品にも論理はあり、評論など多様な文章と融合的に学ぶことに意義がある。すみ分けを明確にしたことで国語教育から多様性が失われることを危惧している。
※・・・所詮、文科省の、お役人根性にどっぷり浸かった方々に、言葉・文章の生きた働き・本質の理解を求めるなど、無理だろうと、私は嘆息する。

2面 水説 「命綱は切れていない」 古賀 攻
 ・・・日本の「ミスター国連」明石康子さん(91)が57年2月に国連入りし、最初にやらされたのがハンガリー事件(ハンガリー動乱)の報告書作りだった。
 「ソ連の実態を暴露したものの、第三次世界大戦を覚悟することなしにソ連を実力で懲らしめることはできなかった」
 出口の見えないウクライナ侵攻も根底には同じ問題が横たわる。
 主権侵害はもちろん病院・学校・避難所への爆撃、原発攻撃、民間人の拉致など国際法への横行の限りを尽くすロシアの行為は「もはや戦争とは呼べず、犯罪行為に等しい」(山添博史・防衛研究所主任研究員)のが実情だ。
 それでも首謀者のプーチン露大統領を止められない。戦争犯罪人として訴追する展望も開けない。
 世界には悲観が広がる。
 「問題の本質は国連のみならず米国による戦争抑止も虚構だったという事だ。・・・
 もしも「プーチンの戦争」が核大国のやり得になってしまったら、世界の道義は際限なく後退し、核に頼ろうとする国が続出するだろう。最悪のシナリオだ。
 しかし、人類がそこまで愚かとは思えない。ロシアの核は確かに厄介だが、国連の緊急特別会合はすでに今月2日と24日の2回、193ヵ国中141ヵ国と140ヵ国の賛成とロシア非難を決議している。7割強の圧倒的多数だ。
 可視化されたこの国際世論も痛みを強いる経済制裁を支えている。最良のシナリオはプーチン失脚につなげる事。「命綱はまだ切れていない」
※・・・プーチンの側とすれば、いまさらヨルダン川を渡り返すなどすれば敗北になる。これだけ国際世論から非難を浴びせられているからには、妥協点など及びもつかない。自分にとって明るい希望はないが、行くところまでこのまま突き進むしかないだろう。母なる偉大なロシアは、最後に自分の後ろ盾になってくれるはずだ。もはや、人類未来の結果を自分は見切ったのである。
 という声の、聞こえるような気がする。ロシア自身で決着をつけるしか、道はないのかと、考えます。
 
 毎日 万能川柳から
「文明は進めばいいと思ってた」 東京 カズーリ
[ケンカするクマとライオンみるパンダ] 豊後高田 いちじく
「朝ドラも大河も見ないのはへんですか?」 熱海 アグリ

朝日朝刊から 3面
 米国防費要求 最大規模(議会へ)
 中ロ意識 バイデン政権、方針転換
※・・・バイデンもやはりただの人だった。今さら軍備増強へと意思が向くのも、凡俗の故なるか。話し合いにもっていこうとする前ドイツ首相メルケル氏には足元もおよばない。

3月29日 昨夜はなぜか13時過ぎに目が覚めて、以後眠れなくなった。文庫本に目を止めたりPCを覗いてみる。半村良「となりの宇宙人」上手にまとまった短編を、布団の中で味わう。
仕事をリタイアしてからこっち、家でPCに向き合ったり本を読んだりと、運動不足になっているのを嘆くようになった。去年8月までの現役の頃は通勤に体力を費やしたり、それにまた山へ行く頻度も今より多かったように思う。今日、自宅から勝尾寺を経由して東海自然歩道に上がり、箕面大瀧へ行く。気が向けば滝のスケッチをと簡易な画材を用意したけれど、あいにくの曇り空とあって描画の気分も消し飛んだ。
 岩波古典文学大系「太平記」を読んでいる。既に太平記1は読み終え、今太平記2を読んでいる最中。和漢混淆の文章は当初読みにくく文字の連なりを何度も行きつ戻りつしたものであったが、今となっては英語文節に似た文字の連なりも要領を得て、なんとかまっすぐ読み通せるようになった。とはいえ、やはり通常の和文を読む場合からすれば、疲れはより深く生じる。
 毎日新聞に目を通す、ウクライナ問題にしてもこれと言った目新しい記事は見当たらず、収穫無し。

   2022.3.27日記 「言葉遊びと本当の自衛」藻谷浩介 日本総合研究所須関研究員
 TVにも時折出演なされるこの方の文章は、分かりやすく、譬えをまじえて綴られる文体には、余人の真似できない特異な才能を見せつけられて、ほとほと敬服するのです。今日のコラムにも、その才がいかんなく発揮されています。内容は、ウクライナ情勢ですが、他の記事とはいささか趣を異にしており、分かりやすく意見を述べておられます。以下藻谷節論調の抜粋。
―確かに20世紀半ばまで、人類の歴史は戦争の歴史だった。しかし21世紀の今、物質文明が国境を超え、複雑な分業の上に成り立つようになって、戦争に実利はなくなった。食料やエネルギーは、買うか自製する方が早くて安全だ。住民の居る場所を侵略しても、統治に手を焼くだけでである。
 それでもまだ、宗教やイデオロギー、権勢欲、身勝手な筋論や被害妄想に駆られて、戦争を起こす者はいる。ロシアのプーチン大統領はその最新であり、米国によるイラク侵攻などもそうだったろう。
 今の時代において戦争は、もはや大規模なテロ行為以外の何物でもない。唯一正当化できるのは、ウクライナがいま行っているような、先制攻撃に対する正当防衛としての戦いだけだ。
 とはいえ、身をていし、戦力で圧倒的に勝るロシアの進行を食い止めているウクライナも、残念ながら膨大な数の市民の人命被害は防げていない。「人命を守るために降参すべきだ」とは筆者は言わない。だが「正当防衛の権利を行使するからといって個人の安全が増すわけではない」というのは、絶対的な現実である。過去に侵略者に踏みにじられた無数の国々の圧倒的多数も、防衛意識にあふれていたけれども破れたのだ。(少々、興奮調の文節です)
 こういう現実をまったく見ていないのか、「憲法改正で国を守ろう」と唱える人がいる。そもそも憲法は、自国の政府権力を規制するものであり、どう改正しても外国をけん制はしていない。改正せずとも日本には、攻撃を受けた際に正当防衛する権利があり、自衛のための武装もある。それらに加えて「武力行使は辞さないぞ」と憲法に明記することに、言葉遊び以上のいかなる意味があるのか。(注:憲法はお上の下々への縛りだと受け取っておられる方が大半ではなかろうか。権力に永く在る者は悪を行うという歴史の教訓から、政権を縛るためにつくられた法です)
―ウクライナの人たちをどう救い、プーチン氏にどう落とし前をつけさせるのか道筋は見えない。
 しかし、金より命である。彼の後に続く者を出さないためにも、目先の損は辞さずに経済制裁を徹底すべきだ。
―何のことはない、「戦争を国際紛争解決の手段として使わない(正当防衛は除く)という、日本の平和憲法を世界に広める努力こそ、言葉遊びではない本当の自衛行為である。
 「9条改正」は、日本の現実的な安全を損なう自滅の道ではないか。以上
※ 失礼ながら、作文を進めるうちに、言葉に酔っていかれる様子が、文章行間に見受けられます。言葉の紬がより深い想いを、編み上げるのでしょうか。けれど、仰る言霊は、ただしく伝わりました。昨日朝日新聞のオピニオン&フォーラム<「ロシア的価値」と侵略>を著された佐伯啓思 京都大名誉教授のアカデミックな意見を、表の解説とすれば、藻谷氏の意見は、市井の市民の生の声と、言えると思います。
ひとつ気になるのは、「正当防衛は除く」の但し書きです。過去、戦争勃発の歴史を看ると、ほとんどは「正当防衛」のための宣戦布告というのが常套でありました。言葉の言質を取られないための念押し条件書きとは計られますが、いずれにしろ、武力行使は表向き非ではあります。もう一つは、「攻撃を受けた際に正当防衛する権利があり、自衛するための武装もある」という文言です。もし、中国なりロシア等外国が、本気に日本を侵略しようと攻撃してきた場合、それらの防衛武力は何ほどのことやあらん、「螳螂の斧」に過ぎないのです。防衛に手を下したとしても、今のウクライナのように徒に戦争を長引かせ、人的・物理的に被害を増やすばかりです。
「イマジン」歌のように、世界から、軍事力の無くなる日を、想像しようではありませんか。けっして難しいことではないのです。
ティータイム
万能川柳から 
  「猫家出わたしひとりになりました」  津山 大西雅風
  「思い出は時間が化粧して見せる」  宝塚 没 句 斎

2022.3.26日記
朝日朝刊より 13面オピニオン&フォーラム(異論のススメ)
「ロシア的価値」と侵略 佐伯 啓思 京都大名誉教授
 このところウクライナ情勢の記事ばかりが目につき、また、ひとなべて、ウクライナ贔屓の中で、まさしく異論というべき少し辛口の提言が、標記の教授より寄稿されたので、以下抜粋します。
 「文化」とは、ある特定の場所に根づき、時間をかけて歴史的に生育する民族の営みである。アメリカ文明と、ソ連が掲げる普遍的な抽象的理想や歴史の最終的な目的といった観念とは相いれない。
―またプーチンのウクライナ侵略はけっして許容できるものでなく、国際法にも人道にも反する暴挙である。だが、この暴挙の背後には、西洋との内的な葛藤をはらみつつ、社会主義による近代化を遂行し、しかもそれに挫折したロシアやウクライナの苦い歴史事情が存在するのである。・・・
 むしろ真の問題は、冷戦以降の世界をまとめるはずであった米国中心の西洋的価値や、世界秩序構想の破綻にこそある。リベラル市場競争、個人の基本権利・主権国家体制・ユートピア的志向を持った歴史観、米国の覇権による世界的秩序。こうした近代的価値がうまく機能しないのである。
 かくして、冷戦以降の「グローバルな世界秩序」や「西洋近代の思想」という表皮が剥がれ落ちてゆくと、その背後に隠れているものがむき出しになってくる。中国は西洋的価値を共有せず、中華帝国の再来とばかりに膨張路線にはいる。ロシアはロシアで、ユーラシア大陸の中心部にあって、非西洋的なスラブ文明圏を夢想する。端的に言えば「近代主義」の二大典型である「社会主義」と「アメリカ型のグローバリズム」が失敗すると、その背後から、いわば隠れていた「精神的な風土」とでも呼びたくなるようなものが表出してくる。あの大地と民衆、ロシア正教、ツアーリズム(皇帝主義)などの残影を伴ったロシアの精神風土、それは西洋の個人主義、リベラルなデモクラシーなどとは大きく違っている。・・・
 ロシアが、一方で西洋近代から「圧倒的影響と脅威にさらされつつも、半ばアジアに属して、独自の「ロシア的なものを」を模索したという歴史は、実は、日本とも無縁ではない。日本の近代も西洋の脅威にさらされつつ、同時にアジアの一員であるという意識を放棄できなかった。西洋近代の価値がうまく機能しない今日、日本もまたその「精神的な風土」を問われているのではなかろうか。にもかかわらず、戦後の日本は、そのような問いを発することもなく、米国流の歴史観・世界秩序観の信奉者であった。
※ はたして、軍事的侵略をする今のプーチンの、内面の複雑な思惑・拠って来る背景が、なんとなく見える気がする。単にヨーロッパ東端の内輪の戦争とだけに捕われず、欧米・アジア・歴史風土も併せて俯瞰した、非常に興味を引くご意見です。

  2022.3.25日記
毎日朝刊より コラム金言「プーチン氏の歴史観」小倉 孝保
連日ウクライナ情勢ばかりの記事であり、私も倣っている次第ですが、ひとつ気になったのは、大方の人は、先の第二次世界大戦(太平洋戦争)を肌身に経験しなかったのではないか。1945年の時点において物心ついたほどの人は、今日幾ほどの割合をこの国に占めて居らるのだろうか。かくいう私にしても戦後生まれです。確かに、傷痍軍人の街頭に物乞う姿や、殊更に戦争体験を面白げに物語る大人たちの有様にも接したり、身近の叔父に至っては傷痍軍人の特権を得て恩給をもらい、飲酒の時に任せて上海事変での武勇伝を語ったり、あるいは身近に使う品々に米軍払い下げ品の多く氾濫したりと、いろいろ見聞きしたのですが、如何せん子供にとっては戦争の実体験ではなく、ほか事のように見なしてきたように覚えます。今の新聞・TVの報道にしても、同様の類を免れず、川向こうの火事と看ている節も、いささか見受けられます。ここでひとつ、先の大戦の歴史を振り返ってみても、あながち無為なる時間の持て余しとはなりますまい。
 記事抜粋 第一次世界大戦での敗北から、ヒトラーがベルサイユ条約を破棄して再軍備を宣言するまでに17年、ソ連崩壊からロシアがジョージア(グルジア)へ軍事侵攻するまでが同じく17年である。
 ウクライナ侵攻の際、プーチン氏は「ロシア系住民の保護」を理由にした。「ドイツ系住民保護」を理由にしたヒトラーのチェコスロバキア侵攻とそっくりだ。
 プーチン氏は最近、会見や演説でロシアの近現代史を説き、欧米メディアから、「歴史の教師のようだ」と言われている。歴史を学んだプーチン氏は誰に倣って軍事侵攻したのか、彼の言動をみれば一目瞭然である。
3面 新現実 「中露に身構え」
 NATOは2021年6月の首脳会議で「中国の野心や強硬姿勢はルールに基く国際秩序と同盟の安全保障に対する体制上の挑戦をもたらす」とする共同声明を採択し、既に中国への対抗姿勢を鮮明化している。一方、台湾問題や南シナ海などの領有権争いで米欧との対立を深める中国は、NATOがアジア太平洋地域で影響力を強めることを脅威に感じており、NATOの東方拡大を警戒するロシアと認識を共有している。中国の楽玉政・事務次官は19日、「ウクライナ危機は(NATOの東方拡大が招いた)「厳しい誡告」と述べ、NATOを巡るロシアの主張を支持した。
 中国事務次官、何をか況や。国どうしの軋轢・利害の駆け引きにおける非がいずれに在るにせよ、軍備を用いて攻撃した方が、すなわち非である。論をまたず。(鈴木宗男氏にもご承知あれ)
※ 世界の動向は、先の大戦からこっち新しい局面を迎えたと薄々覚える。今は、情報が過剰に氾濫している。それだから、フェイク情報も紛れ込む隙が生じ、混乱して、真実の在り様が掴めなくなってしまった。情報力の勝る方が(より真実らしく欺く方が)勝ちをおさめるか。有益であるはずの情報は、世界により深い闇をつくり、人の目と耳を殺いでいく。

本日の万能川柳から一句
 「雨待って蒲団干すよな我が人生」   泉佐野 興 好爺

2022.3.24 毎日 朝刊より コラム木語 「中国を縛る条約の存在」抜粋 坂東 賢治
「いずれかの国の平和・主権・統一または領土保全に対する脅威となり得る複雑な国際、地域情勢や危機が起きた際、対応策をめぐり直ちに協議を行う」。中国とウクライナが2013年に結んだ友好協力条約の条文である。
―実はほぼ同じ条文が2001年に結ばれた中露善隣友好協力条約にもある。
―中国は結局、どっちつかずの態度でいるわけだ。
―核不使用の保証は「消極的安全保障」と呼ばれ、中国は非核保有国全てを対象にしている。だが、条約調印と同時に発表された共同声明にはさらに踏み込んだとも読める文言が盛り込まれた。「ウクライナに対する核兵器による侵略や侵略の脅威が生じた場合にはそれに応じた安全保障を提供する」という一文を与える。「積極的安全保障」とも思える。
―中国はウクライナから空母やホバークラフト・航空機エンジンなど先進的軍事技術を導入してきた。重要な「戦略的パートナー」である。プーチン氏が「核の脅し」をためらわない中、中国が声明や条約の約束にどう対応するかに注目が集まる。外務省報道官は明確な説明を避けているが「核の傘」はともかく、条約は今も有効である。
※ 10年近く前に結ばれたこのような二国間の条約があった事を、新聞の片隅の記事として見落としたか、または忘れたか、今初めて知ったかのように、驚く。もっとも欧米・アジアとも国同士の条約や声明の如何に多いことか、よほどの外交に興味を持つ人以外は、いちいち覚えている人も稀だろうと思う。それにしても、中国の現状の態度は、甚だ訝しい。

3月23日日記
1面 「北方領土対話暗礁」 平和条約 交渉打ち切り
「ロシア外務省は21日、北方領土交渉を含む日本との平和条約締結について「現在の状況では続けるつもりはない」と事実上拒否する方針を発表した。岸田首相は22日、ロシアの対応を(自ら招いた事態の責任を)日露関係に転嫁する対応は極めて不当で断じて受け入れることはできない」と非難した。
※ 昨日 同じく毎日朝刊に載っていたオピニオン 日本総合研究所会長 寺島氏の寄稿した方向と、同じ結果になった。ここは、日本(岸田首相)腹を括って対処しなければなりますまい。以外に骨がおありですね。
2面 水説コラム 古賀
   ウクライナへの日本武器供与について
・・・ポイントは「プーチン戦争に立ち向かう国際連帯の価値が戦後日本の独自理念を上回るものと考えるべきかどうかだ。
※独自理念…憲法第九条
6面 露「2回目 利払い完了」ドル建て国債 デファルト回避
 ※どこから、ドルを融通させているのか?欧米も日本も手を貸すはずもない現状で、手を差し述べるとすれば、かの同じ権威主義の国でしかない。いずれ巻き添えを食うのも承知で。
 公示地価 2年ぶり上昇。コロナ緊縮の反動かと推量する。一過性ではないか。日本経済の根は、先行き暗い。
万能川柳から一つ選んでみた。
 「流木に見る人生のようなもの」 越谷 小藤 正明
 この句を詠んだ方、波乱の人生を歩んでこられたのかな。それはそれで、流木も人によっては朽木の花に見えるのか、それともなれの果てか。

   2022.3.22毎日朝刊から
オピニオン 「ウクライナ危機」露の孤立・破綻 焦点に
                               日本総合研究所会長 寺島 実郎氏
―ウクライナ危機の本質をどこに見ますか。
 ロシアによるウクライナ侵攻は、「ウクライナの悲劇」であるのと同時に、「ロシアの悲劇」でもあるという視点が必要だと考えています。世界の構造転換を考える上で、今後ポイントになるのは「ロシアの孤立」と「ロシアの破綻」です。・・・
―「ロシアの破綻」とは、どのような意味ですか。
 ロシア経済を見ると、輸出の85%を資源や食料と言った1次産品が占めています。中でも最大の比重は原油と天然ガスです。つまり実質20年超に及ぶプーチン政権の下で産業力が一向に伸びていないという事です。・・・
 経済的な基盤の脆弱さがあるにもかかわらず、今回の対露制裁により世界経済から締め出されてしまったのです。ロシアはもはや海外からの投資を呼び込めませんから、この先の展望がなくなってしまいました。「自分の足をピストルで撃つ」という例えが、まさに的確な表現です。・・・
―日本は安倍政権時代、ロシアと共同経済活動を進めましたが、北方領土問題は解決できませんでした。
 安倍晋三元首相がプーチン氏を見誤ったとしか言いようがありません。プーチン氏を増長させた責任の一端は、日本にあります。2014年2月、ロシアのソチで開催されたオリンピックの開会式では、欧米の主要国の首脳がロシアの人権侵害への抗議で欠席する中、出席した先進国の首脳は安倍元首相だけでした。北方領土交渉への思惑があったからです。しかし、その直後にロシアはクリミア半島を併合しました。・・・共同経済活動という名の下、プーチン氏に抱いていた期待感が、如何に空しいものであったかが実証されてしまいました。
 今回のウクライナ危機は、こうした北方領土を巡る呪縛から、日本が解放される契機になり得ます。岸田文雄政権は、ロシアによる侵攻を国際法違反、国連憲章違反と批判し、欧米陣営の中でロシアと対峙する選択をしました。日本が覚悟を決めてロシアと向き合うことは、日本外交の大きな転換点となる可能性があります。
―「聞いて一言」新聞
 プーチン政権との関係を重視した安倍政権の下、北方領土返還への機運が高まったように感じた時期もあった。しかし、今回のウクライナ侵攻を見ると、日本側から見た願望に過ぎなかったと気付かされる。なぜ日本はロシアを見誤ったのか。外交の検証が必要だ。

※ 政府筋からは漏れてこない意見です。要するに、外交の秤にかけられ利用されたことになり、あきらかな日本外交の失点といえる。

2022.3.21日記
毎日朝刊社説 メモしておきたい事柄があった。曰く
「国際法廷を機能させる時」とタイトル
 日本を含む40以上の国がロシアの戦争犯罪を裁くよう、国際刑事裁判所(ICC)に求めた。
「・・・プーチン氏が違法な攻撃を命じたと見なされれば、ICCから逮捕状が出されることが想定される。この場合加盟国を訪問した時に逮捕される可能性がある」
・・・実際、そうなれば痛快であるが、恐らくは大国の力に依る押し通しで望みは限りなく薄いだろうと思う。中国の南シナ海での無法な占有行為を、オランダハーグ司法裁判所に違法との裁定を下されたのにも関わらず、どこ吹く風と一蹴したのと同じように。国連等、国際的な機関は、横暴な犯罪国家に対しては非力であると思う。世界の国々の「良心と誠意」を前提として成り立つ紳士同盟であるからなのか。
   今や、プーチン氏は狂気に陥り正常な人間的判断能力を遺失してしまっている。皮肉なことに、それが彼の、今の力の根拠になっている。力づくによる外側からの制裁は、世界が、狂気の渦に呑み込まれるという、最悪の危険に立ち向かわされる。どうしたものかと、世界の主だった国家の政権ブレーンは、思案投げ首ではなかろうか。

2022.3.20日記
毎日朝刊 社説 「バイデン・習会談」気になった点
・・・制裁に関する両者の溝は埋まらなかったが、外交的な解決を目指すことでは一致した・・・  「解決を目指すこと・・・」というのが気になった点。こういう抽象的な表現を以てして、会談を納めるというのでは、この先の話し合い進展も覚束ないのではないかな、と思う。
・・・習氏は「平和のために、建設的な役割」を果たすと約束した。
 「建設的な役割」とは、なんなのか?どの国にとっての建設的なのか?これも抽象的な言辞であります。

みなわ私見:2022.2.24ロシアのイクライナへの軍事侵攻から3.19の今日まで、中国は対外姿勢を微妙に変えつつある。折々の情報を勘案してみれば、筋書きとしての中国のウクライナ情勢に対する動向が、ある程度観えてくる。北京冬季オリンピックでのプーチン・習秘密会談では、今度のウクライナ進行について予め明示されていたと思われる。その際、侵攻後三日までにはゼレンスキー政権を降伏させ新たな傀儡政権を建てることの内容まで、漏らされていたに違いない。当初中国は、侵攻を全的に容認していた。しかし、三日どころか今や3週間を経ようとしている。最も思惑の外れたのは中国である。ロシアのウクライナ進行が成功すれば、次は台湾進攻も前例が整うのだったが、ここに至って変更を余儀なくされる。国際世論に対し、自国を中立ならしめる必要に迫られた。今の日和見の態度は、精いっぱいの表向き取り繕いである。裏では、パートナーロシアの支援を何かと暗中模索する。今後将来、自国のアジア(もしくは世界も)における覇権を達成するための、最も支えとなるロシアをないがしろにはできないのだろう。過渡期の今、自国浮沈の行方を探って、あの手この手と方策を練っていると思われる。
 
  2022.3.19日記
朝日朝刊から記事を採りあげます。
3面 「物価高なのに 動けぬ日銀」
 日銀は、18日、インフレ対策より景気対策を優先。
・・・いまの大規模な金融緩和を続けることを決めた。だが、さらなる物価上昇を招き、逆に景気を落ち込ませる可能性もあり、ジレンマに陥っている。
「日本は金融を引き締める必要もないし適切でもない」
 同日の会見でそう強調した黒田東彦総裁が理由に挙げたのは、物価上昇の質を巡る欧米との違いだった。
゜いまの物価上昇は、原油・食料品など輸入価格の影響による一時的なもの。
゜景気回復のペースが日本を大きく上回り、賃金をセットで物価も上がっている米国とは状況が大きく異なる。と説明し、持続的で安定的な物価上昇をめざして、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが必要だ」と強調した。
 対して、朝日新聞論評・・・だが、9年間も大規模な緩和を続けているのに、賃上げはあまり進んでおらず、いまの物価高を放置すれば、消費が悪化し、景気がさらに落ち込む可能性もある。日本だけが緩和を続ければ、利上げに踏み切った米国との金利差も広がり、金利が高いドルを買って円を売る円安も進む。円安は輸入品の値上がりにつながり、さらに物価が上がる恐れがある。
「実生活の感覚としては、景気が悪くて賃金が上がらないのに物価だけが上がるスタグフレーションと言える状態に陥る可能性が高い」と指摘する。 第一生命経済研所 熊野英生首席エコノミスト
              みなわ私見・・・結局、景気対策として、金融操作はこのまま続けて新たには行わない、ということをする、18日の決定だった。日銀黒田総裁は元財務官僚にして、日銀総裁を9年間勤めてこられた経済のエキスパートですが、そろそろ年齢的にも引き際でないかと思わせる、今回の色褪せた処置ではあります。自尊と身の安泰を図るばかりに、成すこともなく、結果も見いだせず、多年同じ策を弄してきたことに、いささか彼のエリート官僚としての奢りを感じさせます。はっきり言って不要の人士ですと、申し上げたい。
 日本には、経歴・キャリアをかざして上に君臨する御大の、かくも多いことか。この弊害・社会的損失如何ばかりのものか、推して知るべし。

 ウクライナ情勢の記事が紙面に踊っています。がニュース記事を読んでいるうちに、事態の真実を知る上において限界を感じてきたように思います.ニュースは事件の表層を報道していて、本当の真実は、恐らく我々には届いていないようです。現地の限られた人にしか、それは知ることのできない真実だとは承知していても、やはり知りたくなります。誰か我と思わんジャーナリスが、スクープしないか。
 ニュース記事は世論に忖度する、故に記事になる前の事実を見極める必要がある。

  2022.3/18日記
新聞記事のダイジェスト 毎日朝刊から目に留まった記事
その1、 2面 北方領土「不法占拠」首相 表現を復活
 岸田首相は17日の参院予算委員会で、ロシアによる北方領土の実効支配について「法的根拠がなく、不法占拠されているという立場だ」と明らかにした。
・・・実際の考えと、公式に表明する文言とは、微妙な差異があるのは外交上の技であるけれど、その差異の大小使い分けによって相手国への態度表明一手段となるらしい。
その2、まん延防止等処置について、政府は21日の期限で終えることを決めた。一日終えて同じ日の夕刊に、「専門的な知見よりも、参院選と世論対策にらみで、動いてないか」とあった。年金受給者一律5千円バラマキも然り。
その3、6面 高インフレ 焦るFRB 「米、ゼロ金利解除」
 急激な物価上昇を抑えるため、政策金利の引き上げを決めた。
・・・米国の金利が上がると、貧困国における資金繰りが厳しくなるらしい。高金利の米国へと、世界の金融が流れていくとある。アメリカの匙加減一つで、世界が動揺するのは今に始まった事でないが、いまも残響を止まず。
その4、13面 オピニオン 「EUが認定」
 EUは2020年、環境に配慮した持続可能な経済活動を定義した法律「タクソノミー規則」を施行した。「気候変動への適応」「生物多様性と生態系の保全」など六つの目的を定め各目的に当てはまる経済活動のリストを作成。原発と天然ガスを新たにリストに加えて「グリーン認定」とした。
「原発はグリーンな電源?」 対して 京都大教授 諸富 徹氏の反論
 原発は発電時にCO2を排出しない点で「クリーン」ではあるが、環境の負荷が少ない「グリーン」とは呼べない。放射性廃棄物を何万年も保管する必要があるのに、最終処分地はフィンランドとスウェーデンの2例しか決まっていない。また、福島第一原発のような事故がいったん起きると、甚大な被害を地域社会にもたらす。被害対策コストは増え続ける。
 日本の立場に置き換えて・・・太陽光や洋上風力など再生エネの活用で、脱原発と脱炭素は両立できる。今後30年間を移行期間と捉え戦略を練ることが重要だ。とある。
・・・主旨にはおおいに賛同できる、が肝心なのは政府のかじ取りである。その点で、あまり期待できない危うさがある。
最期に、くだけて万能川柳から一句
  「一家四人回転焼き屋食えるのか」 宝塚 しゅわっち 

2022.3.17日記
普段あまり読まない読売新聞朝刊に目を通して、これと思う記事を抜粋します。
7面 視点「ウクライナ危機」
―戦争終結を分析するには「紛争の原因の根本的解決」と「妥協的和平」という視点が有効になる。
―ロシアは民間人が住む地域にまで容赦なく攻撃を仕掛け、原発も制圧した。これらのことからロシアが「妥協的和平」ではなく、「紛争の根本的解決」をめざしていることが読み取れる。
―仮にロシアがウクライナから撤退したとしても、今後のロシアを国際社会の中でどう扱っていくかという問題もある。ウクライナを徹底的に支配し、治安を維持したとしても、現状を力で変更し、主権国家から自由、独立を奪ったという前例になる。いずれにしても、今回の戦争が国際秩序に与えたダメージは非常に大きい。
                 防衛省防衛研究書 主任研究官 千々和泰明氏
 防衛省の軍事におけるプロの評を、稀有にして、今回初めて目にしたので、採りあげました。当たり障りのないご意見ですが、他紙と変わり映えしない解説で、結局何を仰っているのか、当を得ません。もう少し、詳しい予想の分析を行っているはずだと思うのですが、やはり秘匿事項なので、固く洩らさないようです。「ダメージは非常に大きい」からそれとなく窺がうと、「これはあり得ない」という意味に牽強付会したくなります。
 もうひとつ、アメリカの元制服組 米戦略国際問題研究所 上級副所長マイケル・グリーン氏の記事から抜粋
 「今、ロシアに圧力をかけなければ、米国は後で、より多くの力を欧州に注がなければならなくなる。ロシアが成功すれば、米国への信頼が失われ、中国への対抗が困難になる。今国際社会がロシアに効果的な圧力をかけることが、中国に対する抑止力になる」
 ―これを読んで思うのは、米。露、中三国は、覇権主義において共通していることである。マイケル・グリーン氏も、アメリカ人のアメリカ人たる狭小にして熱烈な愛国者であることが分かり、少々不快になった。
 米国も中国もまたロシアも、先入観や偏見を廃し、等距離に観る視点が必要である。日本は位置的に、またとない地の利を得ている国ではないのでしょうか。

毎日朝刊7面の記事に目を留めさせられた。
 小見出し「露 国債デフォルト(債務不履行)よりも」大見出し「懸念は原油・ガス高騰」
                     野村総合研究所 エゼクティブ・エコノミスト 木内登英
 予想外の見出しです。経済プロは、経済指数(露のGDP高)に対するデフォルト被害高を比較して分析されたようです。思考が逆行しているような、違和感を覚えました。債務不履行という信用問題は、処置しなければ永らく続きます。原油等地下資源エネルギーは、いずれは廃されていきます。目先の金銭感覚でなく将来を見つめなければ、安定した未来は築けないのではないか。

2022.3.16日記
朝日朝刊から ウクライナ作家アンドレイ・クルコフ寄稿文抜粋
 「ウクライナでは、人前で話す時はロシア語もあればウクライナ語の場合もある。でも認めなくてはならない。ドンパス地方での紛争が始まってから、街頭でロシア語を話すのが恥ずかしくなった。キエフでは人々はロシア語を話しているにもかかわらず。
 今もやはり恥ずかしい。しかしロシア語を話すことが恥ずかしいのではない。ロシアという国が恥ずかしいのだ。かっては文明的で文化的な国だったのに、いま、ロシアはウクライ語話者のウクライナ市民のみならず、ロシア語話者で民族的にロシア系の人々までも殺害している。この苦痛がいつの日か消えてほしいと思う。」
 アレクセイ・クルコフというウクライナを代表する文芸作家は、来日した事もあり、川端康成や大江健三郎らに心酔したという日本文化を愛する人です。この寄稿文を読んでも、言語にことさら重きを置く彼の生活態度と祖国への想いや民族への拘りが見えます。
 大方のニュースを勘案すると、どうやら情勢はウクライナの方へ少し傾いているようです。楽観は許せませんが。

毎日朝刊から、水説 「脱ロシアの資本主義」 古賀攻 抜粋
 資本主義がモノやサービスの自由な売り買いを通して利益を上げるシステムであるとするなら、そこに大きな制約がかかっている。(ロシアに対する経済制裁等)つまり、「脱ロシア」は資本主義が新たな段階に入ったことを意味する。

 露 「デフォルト懸念拡大」 ロシア国債の利払い日は16日(本日付け)に迫っているが、利払いはドル建てなので、銀行決済の破綻からドルが回らず、利払い額が不足しているという。
 経済通の間では、ロシアは遅くともいずれデフォルトを免れないらしい。今日の岸田総理の記者会見内容からも、どうやらロシアを見限ったとうかがえる言質があった。
 
 毎日 万能川柳
  「戦争をしている場合じゃない地球」  小田原 各駅停車さん

  2022.3.13日記
朝日朝刊 3面日曜に想う 「誰も戦争を信じなかった2月」
 2月とは、今回のウクライナに対するロシア侵攻もあるが、2008年3月20日の米軍を主体とする連合国のイラクへの武力攻撃をも指している。この記事は、ロシア一人を非難するのでなく、歴史的に総括した、大国の無道さを挙げている点において、異色なので目を引いた。当該国の政権や軍とは離れた一般民衆の平和な2月を採りあげている。
以下記事抜粋
 米国は曲がりなりにも民主国家だが、今のロシアは独裁国家に近い。当時のブッシュ政権はイラク攻撃にあたって国際社会のコンセンサスを得ようと奔走したが、ロシアのプーチン政権は今回、批判もお構いなしだ。
 そのような違いがあるものの、両政権には通じる面もうかがえる。今日と同じ明日が訪れると思い描いている一日を生きる人々に、思いが至らない。人々の日常を奪う戦争の甚大さを、気にとめない。その鈍感さ、無神経さである。
 踏みにじられた人々の思いを拾い上げ、伝えていく、私たちはそのような繊細さを忘れないでいたい。いつか戦争が終わり、生活を再建する時に、何より求められると思うからである。
ヨーロッパ総局長 国末憲人 記事
   こういう視点を持った記事を載せる点において、今回のウクライナ情勢を報道する上の充実度は、朝日新聞が他紙をしのいでいると観た。通り一遍のニユースソースを報道するだけでなく、いわゆる、口を聞く姿勢です。是非判断は、耳を持つ我々読者です。そういう主体性も、新聞読者には求められている、今日の社会情勢です。
  朝日俳壇から
   かまくらに「はいっていいよ」と幼(おさな)の字       敦賀市 山田美千代
   寝たきりの妻よ死ぬなよ春が来た               山口県 山花芳秋
   春雪に小さき足跡一直線                   我孫子市 森住昌弘
朝日歌壇から
   あの日どこにいらしたと問えば誰にでもあの日があって十一年過ぐ   東京都 西出和代

   2022.3.11日記
新大統領に選ばれた韓国尹氏について。
朝日朝刊3面「日韓の溝なお大きく」 歴史問題 解決見通せず
(尹新大統領についての、検討事案)
尹氏「未来志向の韓日関係を築いていきたい」
  徴用工問題も慰安婦問題も解決済みだと主張し、韓国国内問題として対処を求める日本に対して、日韓が「共にひざを突きあわせていくことが必要だ」とも強調。韓国に一方的に解決を求めるのでなく、日本も知恵を絞るべきだとの考えを尹氏は示した。
 一方、日本側は歴史問題について「ボールは韓国側にある」と立場を崩していない。外務省幹部は「尹氏の当選がよかったと言い切るのは時期尚早だ」と、韓国側の出方を注視すべきだと指摘する。(鈴木拓也=ソウル、野平悠一、笹山大志)
 みなわ私見・・・韓国側の出方を注視するとあるのが、気に入らない。狭小な小役人の考えそうなことである。この場合、積極的に意思を示すべきであり、1998年の金大中大統領―小渕恵三首相が合意した「日韓共同宣言」に拘泥せず、新しい関係改善策を図り提起しても良いではないか。国際情勢は日々流動する。相手の身に添って考えることも、外交の要諦のひとつだと思うが、諸賢におかれては如何?
 
朝日川柳(3.11)
 「すべてのみ何も無かったように凪」

2022.3.10日記
 ウクライナ情勢について、今日は朝日新聞朝刊から採りあげます。
13面 交論 一橋大学 秋山信将
―NATO加盟国に核が使用され、米国が報復に動くというシナリオに対してー
「可能性は低いと思いますが分かりません。ロシア核戦略は一般的に合理的な積み上げと最後の一片の曖昧性で成り立っていた。しかし今は我々には何を考えているか見えない人物がエスカレーションの主導権を握っている。此れがまずい理由は、事態が“その人次第になる点に加えて周囲が意図を忖度したり誤解したりすること”で新たな不確実性を生み出すことです」
 -衝撃です。誰しも心に危ぶんでいたことですが、こうして活字になってみると、あらためて、その深刻の度合いを痛感します。人間は脆弱です。その脆弱な人が公正な思慮を失うと、地球規模で人類は滅亡します。これが明日の現実であり、またもっとも可能性のある人類の未来だなと、思われます。誰か、預言していた人もあったようです。そもそも、人類が核兵器を手にした時点において、滅亡の萌芽が顕われたのではないか。仕方ありませんな、我々人類は、呪われた生物であったかと、無力な自分を反省します。尽きることのない欲望と果てしなき好戦性、地球上にこのような生物はひと以外、見当たりません。

 すこし、くつろぎましょう。毎日朝刊 万能川柳から一句
 太ってるなのに「軽いな」よく言われ

2022.3.9日記
 ウクライナ情勢について、朝日・毎日両紙を見ると、今朝は毎日の方に「これは」という文章があったので、引きます。
 水説 「紛争当事者はだれか」 古賀攻
 世界政府というものが存在しない以上、物理的な軍事力が国際秩序を支えているのは疑いない。
 この紛争の当事者はだれなのかをずっと考えさせられている。
 ロシアが攻撃しているのは直截的には自国の勢力圏から離れようとするウクライナの国家意思だ。だが、民主的に選ばれたゼレンスキー政権が採用し、国民に支持されている意思だと考えれば、日本を含む民主国家の価値観が砲撃にさらされていることになる。
 ・・・併せて、ウクライナの連帯は単なる精神的支援ではすまないことを覚悟しておく必要がある。・・・(日本の立場)
 「生活基盤が支えられていてこその忍耐」との社説を掲げた新聞もあった。効果的な制裁と、自らの不利益回避を同時に求めるのは無理である。
 古賀攻氏という方は、物事の整理の上手な人であると思う。日本の在り方には少々辛口の分析であるけれど、これがやはり現実なのだと思う。ウクライナ賞揚の連日のマスコミ報道に情動されてばかりでなく、足もとを確かめようとの、たしなめである。

2022.3.7日記
3月6日付朝日朝刊 「日曜に想う」から「参院の良心」というタイトル。
 大正から昭和にかけて活躍した。ある社会主義政治家・論客の言動を紹介している。
 彼は、羽生三七という。幾つかの文章を抜粋します。
・・・そして今もまた世界と日本は分岐点に立つ。コロナ禍を前に協調が国際政治の主流になるかと見えたが、米ロ、米中関係をはじめ力の対決が顔をもたげる。岸田首相は「聞く耳」を唱え、立憲民主党の泉健太代表も「提案型」を提起するが、それなら今日ウクライナ危機はまさに、立案と警告を出し合って与野党が対策を練り上げるべき事態である。
 羽生が残した真の教訓は何か。政界引退の年の77年に羽生が朝日に寄せた回顧録にそのヒントがあると思う。
 自由青年連盟以来「社会主義の道を歩んで来た」としつつ、安全保障問題を例に「社会党の主張なら100%日本は安全、政府の主張は100%誤っているという性質のものでなく、どちらの政策により安全性があるのかという相対的な比較の問題である」とした。「実現できぬ問題はその理由をはっきり説明して納得してもらう勇気もまた、民主的政治家の必要条件ではなかろうか」と記した。
 若い頃から政治には格別関心がなく、羽生三七の御尊名は不明でした。いま改めて知り、今日の与野党宙に浮いたような政治状況を観ると、隔世の感があります。「政治とは民の心也」と、軸足を置いた度量の大きさはどうでしょうか。誰か、心ある政治家有志は居ないか?

2022.3.6日記
毎日朝刊から 時代の風「バイデン氏一般教書演説」中林美恵子 早稲田大教授
 教書演説の解説・批評が載っていましたので、要点だけを抜粋します。
 ・それでも2001年の9.11同時多発テロ後のブッシュ大統領や、08年のリーマン・ショック後のオバマ大統領の演説のように、世界史的相克を映す機会を生かせたとは言いがたい。
 ・プーチン露大統領の蛮行に比べれば、中国がましに見え始めたのだろうか。それともウクライナと密接な関係の中国に、ロシア停戦の仲介を期待せざるを得ないのだろうか。
 ・もしトランプ大統領前政権だったら、このように足並みをそろえることを優先しただろうか。国際協調を取り戻すと言って登場したバイデン政権にとって、欧州や同盟国との協調は優先順位が高かった可能性がある。
 これに対して、今回の演説では、日本にとって関心の高い北朝鮮の核、およびインド太平洋経済枠組みの意義や内容について、全く言及がなかった。
 バイデン政権にとっての北朝鮮の優先順位は、トランプ政権の頃より下がったと言わざるを得ないだろう。
 ・ウクライナ戦時下というタイミングの議会演説が、低支持率(約40%)のバイデン政権の浮揚につながるかと言うと、年1回のチャンスを生かせたようには見えない。
 ・残念ながら、バイデン氏の演説はインフレ抑制の説得力に欠けていた。それどころか、つじつまの合わない表現が目立ったほどである。例えばインフレ退治のために賃金は下げずにコストを下げると主張した。米国内で自動車や半導体を生産すればコストが下がり、インフレを克服できると説いたのである。だが、これは、インフレ要因として賃金上昇を警戒する米連邦準備制度理事会(FRB)の考え方と矛盾する。消費者のコストを補助金で下げるというアイデアも、需要過多という現状を踏まえると、首をかしげざるを得ない。
※世界史的相克・・・民主主義と権威主義との相克
  私個人にしてみれば、どうもバイデンというご仁は、正体がつかめない。教書演説の内容をすなおに文字通りに受け取って良いのかどうか、模糊とするところが残る。以上

社説から「静観」では信頼得られぬ。(中国の対露姿勢)
「主義や領土の尊重」という原則論を唱えながら、ロシア寄りの姿勢をとる事には矛盾がある。
米欧と同じ行動をとらなくとも中国だからこそ果たせる役割がある。・・・

  脳トレ川柳から
 「野良猫に見つめられてる日向ぼこ」
 「レジ機から催促されてガン飛ばす」
 「おつとめ品買って私のSDGs」
注・・・SDGs=Sustainable Development Goals (持続可能な開発目標)2015年に国連で採択されました。此れは、貧困や紛争、気候変動による自然災害、感染症といった人類が直面している課題を整理し、2030年までに世界が達成すべき目標を立てた“道しるべ”です。

朝日朝刊から
朝日俳壇 気に入ったのを選びました。
 「自らの意思あるごとく春の雲」
 「朝寝して忘れられたり忘れたり」
「折々のことば」から
 「人生は一箱のマッチに似ている。重大に扱うのは莫迦馬鹿しい。重大に扱うのでなければ危険である」芥川龍之介

2022.3.5日記
毎日朝刊から、目に留まった文章を抜粋します。
  コラム 土記 青野由利
「戦時下の核の危うさ」
…バイデン大統領が「核戦争の心配はない」と緊張を緩めたのは救いだが、そんな場面で米国の核兵器を日本に配備する「核共有」を持ちだす日本の元首相は、不見識極まりないと思う。
 森加計汚職問題と言い、国会での虚偽答弁、花見会問題等、何一つとして罪を負わずうやむやにするなど、困った人である。もう名前さえ目にしたくない。

今度のウクライナ危機における、インドへの懐疑(国連、ロシアを批判する採決で、中国などと共に棄権し、国際社会の足並みの乱れを招いた)
10面「反露 避けるインド」と題して、インドの立場を説明している。
・・・インド政府関係者は以前、毎日新聞の取材にこう明かしたことがある。「我々は米欧中心の民主主義と、中国やロシアなど強権的体制の陣営側で世界が完全に二極化され、冷戦期のように外交の自主性が奪われることを最も懸念している」
 言われてみると、なるほどと頷かざるを得ない。二極化とあるように、民主主義と権威主義とを、対等に見据えているのだ。現実的であり、古代数学発祥の歴史も、むべなるかな。
 懐疑は薄らいだ。

万能川柳から、私の選
 「常識のナイフで僕を刺さないで」
 「句で探す自他の心の交差点」

  2022.3.3日記
ウクライナ危機 国連安全保障理事会によるロシア非難決議案は常任理事国ロシアの拒否権行使により否決されたとあるのは、2月27日付新聞報道でした。我々政治に素人の人間は、国連はかくも無力なのかと失望もし、何のために国連は在るのかと、疑念をいだいたものでした。
 本日、読売朝刊に、失望や疑念を払拭させてくれる記事が載っていましたので、採りあげてみます。
 7面 「視点」 ウクライナ危機 福岡女学院大学特命教授 川端清隆
 国連安全保障理事会は、常任理事国米英仏露中の5か国(P5)で構成される。
 より大きな責任の見返りとしてP5に与えられた特権が拒否権だ。拒否権の廃止や適用範囲の制限などの意見もあるが、そこに欠けているのは、安保理決議の実効性をいかに担保するかという議論だ。
 拒否権は、大国主導の安全保障を保証するための、「安全弁」と言われる。常任理事国を追い詰めすぎると、脱退する懸念がある。前身の国際連盟は、米国が不参加だったうえ、1933年には日本とドイツが脱退した。39年にはソ連がフィンランドへ侵攻したことで最初の除名国となった。大国の相次ぐ欠落は連盟を弱体化させた。
 連盟の教訓を踏まえて生まれた国連は、P5の拒否権という制約を抱えてはいるものの、それのみを以て「機能不全」となるわけではない。国連の強みは、国際社会の代表としての正統性だ。例えば制裁を各国が発動するより、国連を通した方がはるかに重みがあり、制裁破りもしにくい。
 ・・・・
 緊急特別総会で決議案が可決されれば、今後、国連によるウクライナの人道状況の事実調査や避難民対策の人道保護区の設定などが実施される可能性もある。ロシアを止める即効性はなくとも、採決の場でロシアやその支援国が国際世論に対する「踏み絵」を踏まされるという意味では効果的だ。

 目から鱗が落ちました。

3月1日 毎日朝刊 水説 「1インチすら」の被害妄想 古賀攻 から抜粋します。
ロシアのウクライナ侵略について
 22年前、日本の政治家でプーチン露大統領と最初に会った鈴木宗男参議院議員は(74歳、日本維新の会)は、事ここに至ってもロシアの言い分に一定の理解を示す。
 「主権侵害は当然あってはならない」と前置きしつつ、「ロシア極悪説」には異を立てる。
 さらに鈴木さんは「問題の核心は冷戦が終結した直後の歴史にある」と力説する。東西ドイツの統一(1990年10月)に際して、米国がNATOの東方不拡大を当時のソ連に約束したとされる案件だ。・・・プーチンは、昨年12月23日の記者会見でも「東方へは1インチも広げないと言ったのに、(西側は)臆面もなく我々をだました」と恨みをぶちまけた。(本当にそんな約束があったのか、不明であるらしい)
 とまあ、通り一辺倒の意見ばかりでないところが面白い。しかし、鈴木宗男氏の意見は、聞きようによっては、暴力肯定のように聞こえる。相手国に如何なる非があっても、それを以て戦争に訴えるのは、全く愚の骨頂である。
 本日、最もご紹介したいのは、実は次の言葉です。
 国際政治学者でもある武見敬三参議院議員(70歳 自民党)は「プーチンは悪い意味で我々の目覚まし時計になった」と話す。「21世紀にかくも正々堂々と他国への侵略が行われた。この新しい現実に対応する仕組みができていない」
 自戒とも、或いは言葉の裏に、日本の軍備についての改憲の是非を含んでいるとも窺がえる。

   2022.2.25日記
毎日朝刊1面 「露、ウクライナ侵攻」の大見出し
 事態の急な展開に、遠い日本に居る私にも、他山の石とは見過ごせない深刻さがあります。米。仏、独、英等関わりある大国の情報筋は前もって、この日の侵攻を知っていたのか?
 今度の場合、毎日より朝日の方が、報道の充実度は高いようです。ただ、毎日には、プーチン大統領演説の要旨が掲載されていました。「ロシアと自国民を守るためにはこの手段しか残されていない」という文言が目に留まります。国と自国民を守るためには、他国民に危害を加えることも可、という旧弊なナショナリズムが、今また復活したようです。「世界は一つ」なのですよ、プーチンさん。幾らお歳を召されたとしても、逆行はいけません。
以下、朝日新聞から抜粋。
朝日朝刊3面 「共存の国際秩序 揺るがす侵攻」 ヨーロッパ総局長 国末 憲人
 ロシアによるウクライナへの攻撃は、欧州の一角で起きた紛争にとどまらない。主権の尊重や領土の一体化、国際法順守などの原則に基づく国際秩序を揺るがす暴挙だ。大小の主権国家が共存する知恵として培われたルールがむしばまれ、力まかせの攻撃や侵略がまかり通る世界に移る恐れも否定できない。
・・・これを、「欧米とロシアとの勢力圏の争いと」位置づけると、問題の本質を見誤る。国連憲章でも禁じられたあからさまな侵略戦争にほかならない。国際社会への挑戦だ。・・・
・・・特に、強権政治の中国には、誤ったメッセージが伝わりかねない。中国がロシアをすぐまねるとは考えにくいが、ロシアの振る舞いと国際社会の反応を、中国はじっと見つめている。・・・
 
2022.2.24日記
朝日朝刊 7面記事抜粋
 緊迫のウクライナ情勢に鑑みて
国連分科会 ケニヤ キマニ国連大使の演説から
「…ロシアの行動は正当化できない」と言い切った。
その上で、「この状況は我々の歴史と重なる」と切り出した。アフリカの国境は「植民地時代のロンドンやパリ、リスボンなど遠い大都市で引かれた」と指摘。それでも国連などのルールに従うのは、「国境に満足しているからでなく、平和に作り上げられたより偉大な何かが欲しかったからだ」と述べた。
 背景にはアフリカが欧州の国々に「分割された歴史]がある。6分間に及んだ演説の終盤、キニア氏はこう強調した。「我々は新しい形の支配や抑圧に手を染められることなく、いまは亡き帝国の残り火から立ち直らなければならない」

 胸にじんとくる演説の言葉である。私たちは心の片隅に、アフリカ諸国に対し劣った人々の国だとの印象がありはしないか。世界はなべて、等しく均された此の現在、人の優劣をその国籍・人種・性別によって計るのが如何にナンセンスであるかを我々は知っている。先進諸国からは、絶えて聞かれなくなった「純粋の言葉」がこの演説に光っている。欧米の帝国主義の犠牲になり、虐げられた人々だからこそ、素朴にして純粋な言葉が、脈づいていると言える。
 帝国の残り火から立ち直り新たに点された希望の火を、われわれも一緒に囲まなければならないと思う。

2022.2.22日記
毎日朝刊 コラム 火論「医師と記者と権力」抜粋
「・・・権力に近いところで仕事をする医者や専門家は権力に取りこまれやすい。自分の正義感に基づいて行動するのが難しくなるから」
「それは報道においても同じでしょう。だからこそ、腹をくくる人の存在は必要なのかと思う」
 みなわコメント:腹をくくるとは、並大抵にはできない。自分の肉親や係累のすべてに対し、良かれ悪しかれ影響に晒すのを覚悟しなければならない。自分の身においても、そんな気概に燃えたことは、過去1.2度あったかどうか。己を恥ず。

 ウクライナ情勢について
毎日朝刊から9面
「一つの民族」露が宣伝 作家アレクセイ・クルコフ氏
 プーチン大統領は「ウクライナとロシア人は一つの民族だ」と訴えるが、これは安直なプロパガンダだ。19世紀にも同様の「スラブ民族はみんな同じ兄弟」とする汎スラブ主義が提唱されていた。現実には、ウクライナは歴史的にも精神構造的にもロシア人とは全く異なる。
 今起きているのは、両国間の危機ではなく、地政学的な支配権をめぐる闘いだ。プーチン氏は自分が死ぬまでにロシアを再び超大国にし、かってのソ連のように周辺国を影響下に置きたいと考えている。
 「今夕のニュース:プーチン大統領、ウクライナ東部の親ロシア地域の独立を承認した」、とある。
事態は、一歩深刻な方に動いたようである。誰も、益の無い事態へと。

万流川柳より   「揺るぎない国より揺るぎありが好き」 さいたま 山林 智

2022.2.20日記
2月19日付毎日朝刊から
社説
ウクライナ情勢について、ロシアから米国への回答抜粋
「米国が主導するNATOは旧ソ連圏でも軍事的開発を進めてきた。我々の根本的な利益が無視されてきた・・・」
 に対する意見(社説):ロシアが勢力圏とみなす旧ソ連諸国に影響力を拡大する米欧諸国への恨み節が目立った。NATO不拡大などロシアの主要要求を拒否する米欧に「軍事技術的処置」を採る可能性を示唆している・・・
 (日々緊迫の度を増すウクライナ情勢には、憂いるばかりです。ロシア回答の中にロシアとウクライナは同一民族という表現があったのには、滑稽な感が否めません。なにを今のご時世に民族を持ち出すのか、ロシア首脳陣は時代錯誤に気づかないか?)

 今週の本棚欄
「民主主義が科学を必要とする目的」ハリー・エバンズ、ロバート・エヴァンス共著、鈴木俊洋約。法政大学出版局 ¥3.080
「選択的モダニズム」は、科学が役に立つという功利的な理由ではなく、科学はより善であるという道徳的な理由から、科学を選択するアイディアである」
「専門家の助言は、時に人々に行動制限を求めるなど、我々にとって不都合なこともある。しかし、安心するからという理由で、科学の体を成さない占いレベルの意見が重宝される世の中を受け入れて良いか。科学は即座に欲しい知見を提示してくれるという便利さはない。だが今一度科学が表す価値観を信用しようではないか。」
 万流川柳から目に留まった句
 「お前らは馬鹿かと聞こゆ麻生節」

2022.2.19日記
毎日朝刊二面の記事から
「敵基地攻撃能力」の名称変更検討へ(自民党)
というのがあった。こういう物騒な言葉を見るにつけ、憂えることがある。もし例えば、この能力の行使されるに値する喫緊の事態が発生したと内閣府が判断して、実際に敵基地をミサイルなどで攻撃した場合、相手国は日本からの敵対攻撃と受けとめるのは明らかであり、恐れるのはたとえ相手方基地に損害を与えたとしても反撃能力はなお残余するはずであり、時を移さず報復の軍事行動をこちらに向けるはずだからだ。敵基地とは、どの程度を想定しているのかと問いたくなるが、いかなる小規模の暫定的地域限定の攻撃であろうと、平手で頬を張られた屈辱は、実際の被害高以上の憤怒の焔を燃え上がらせるに至る。由々しき事態へと、過は大きくなっていくのだ。
 何を今さら問題外だとほくそ笑むご仁も居られるに違いない。抑止力のためだよ、訳しらずの君と言うだろう。だけどねえ、麟太郎氏の軍備の不使用最大効果論をもちだすなどは、時代錯誤も甚だしい。世はおしなべてICの時代なのだから、相手国の目論見など、オシント効果でおのずと知れてしまうのだ。今のウクライナ緊張にしたところが、当事者国或いは関与する大国には、情報戦を通じての落とし処を探っているように見える。
 名称変更というなら、いっそ「基地撤廃能力、国の力」とでも改名されては如何かと。

2022.2.16日記
毎日朝刊記事から。
「精子提供 法整備進まず」と大見出しがあって、「出自開示 議論先送り」と小見出しが続く。その中で、さる方の体験談が載っていた。
 ―会社員の女性が、23歳の時、母親から、第3者の提供精子による人口受精(AID)で生まれたことを告げられた。母に言われたことは三つだけだった。「父親とは血がつながっていないから、父親の遺伝性疾患は遺伝しない」「慶応大病院で精子の提供を受けた」「提供者は分からない」
 彼女には、母と「精子というモノ」から生まれたという感覚が今もある。提供者と会って、自分の出生に確かに人が存在したことを実感したいと願う。親と子、提供者の3者が幸せになれる方法を考えるべきだ。
 ・・・「どんな人から生まれたのか知ることは、アイデンティティー構築の重要な鍵になる。AIDで生まれた子は、人としての根源的な権利が奪われている」と訴える。ー

 彼女にとっては、深刻な問題だと思う。自分の拠って立つ生の基盤が虚ろなのだ。人工的に造られた生という感覚が、生涯ついてまわるだろう。
 ちなみに、各国の事情はというと、
日本:提供者は匿名、情報は医療機関が保存。
ドイツ:子が16歳になれば提供者の氏名や住所などの情報開示を請求できる。
スイス:子が18歳になれば公的機関に提供者の氏名や住所・職業などの情報開示を請求できる。
台湾:提供者の情報開示は法では認められていない。提供で生まれた子どもが結婚する際、結婚の相手方と近親婚にならないかは確認できる。
韓国:提供者の同意または法律上特別な事情がない限り、提供者に関わる情報は開示されない。
オーストリア:子が14歳になれば、提供者の氏名や住所などの情報開示を請求できる。

 このような記事が、何故目に留まったかと言えば、源氏物語(宇治十帖)の主人公 薫と或いは自分とも、根においては異なるが、父親の不明瞭という点では、似ているからである。

2022.2.15日記
 源氏物語を読むうちに、これはという記述や歌など(ほとんどの歌)を覚書にと毛筆を使って記録していたけれど、「宇治十帖」まで読み進めると気に留める不可解な物語があり、そこで記録と共に節目ごとの感想をタイプしていくと、頁数も頓に増えていき、今や400字原稿用紙換算120枚を超え、こうなるとこのまま我が身辺に埋もれさせておくのもはかなく惜しい気がして、先ずは活字にして発表できないかとあれこれ文学賞などを当たってみたが、案外と評論部門の公募はほとんど見当たらず、稀に1.2社出版社があったとしても制限枚数70枚以内・100枚以内とかで条件に合わず、ならば100枚以内にまとまるよう推敲してはと考えるにつけ、なおこの先枚数の増えるようにも覚えて、活字化の望みはとても叶うようにも思えなくなった。今一度、出版社を調べてみて望みなしとなれば、最後はWebネットにしか発表できないだろうと、意を固めざるを得ない。
 今や、作者紫式部の息の匂いさえ嗅いでしまえるほど、物語内に移入してしまい、登場人物たちと掛け合いをしている毎日である。
毎日朝刊 万流川柳から
  「アルコール消毒してとのどが言う」 島田 寺田光夫

2022.2.13日記
朝日朝刊 「日曜に思う」園末憲人 ヨーロッパ總局長から
 選挙の方法について、従来になかった新しい取り組みについて述べている。主に、EU、 フランスのことである。既に幾度か実践されていると聞く。
「従来の{一人一票}と異なる投票制度―候補者全員を有権者が6段階でランク付けし、その結果を累計して中央値を比較する。多数派診断法」
欠点;有権者から決定の意思を奪っているとの指摘がある。
「公正な選挙の審判を受けない権威主義を{効率的だ}と評価する言説がまかり通る時代だけに、問いかけは貴重である」筆者評
 私は、文句なしに賛成する。ある候補者の選挙地盤において、有権者の多数がただ決められた名を記入して事成れりとする悪習を、是正する効果は確かにある。
 アニマルウェルフェア(動物福祉)の記事があった。一般から三つ四つ体験と意見掲載の欄があって、終わりの、本題に対するアンケート回答欄に
「動物園や水族館で飼育されている動物を不幸だと決めつける風潮には賛同しかねる。個体それぞれが幸せに過ごせるように現場の飼育スタッフは個性を見極めて精いっぱいの努力をしている・・・」 (愛知県 30代の女性)
 一方の主張には、また別の一方の主張があるというものだ。主張する時、人は、他が見えなくなる。自分の身体の外にも、他の人の身体が在るとということを、なかなか実感できないのがわれわれ凡俗の凡俗たる由縁かな。
 俳句の欄 目に留まったのを拾います。
 風花や絵本のやうな村となる (岩倉市 村瀬みさお)
   何をしに来たか分からぬ寒さかな (多摩市 岩見陸二)
毎日朝刊 万流川柳 
 好きなのは健康的でない色気

2022.2.12日記
毎日朝刊 本紹介欄から、目を引いた文章があったので、抜粋を残します。
本のタイトル「菌類が世界を救う」マーリン・シェルドレイク著 鍛原多恵子訳 河出書房新社 ¥3,190
「もし私たちが動植物ではなく菌類を{典型的な}生命体と考えるなら、私たちの社会と組織はどのように変わるだろうか」という一文。
 文に触発されて、考えをめぐらせた。仮に菌類が視覚に相応した感覚器官を備えているとして、もし逆に我々動植物の固形化した形を持つ生命体を観たとしたら、とても理解不能な奇態な生命体と覚えるだろうし、とくに人間社会の有り様を俯瞰したとしたら、その救いようのない愚かしさを憐れむだろうことが、想像できる。
 我々が日頃生命と認識している動植物は、地球全体の生命体底部においてネットワークを構築している眼に見えない生命体組織の、表面に浮き出たただの灰汁(あく)に過ぎないのかもしれない。

2022.2.10日記 毎日朝刊2月10付 木語「中露声明は対米挑戦状」
 中露会談
 声明は「ある国が民主的かどうかはその国の人々によってのみ判断される」と強調し、「他国に自分たちの{民主主義の基準を受け容れさせ}、「民主主義の定義を独占」することは「民主主義の価値の裏切りだ」と決めつけた。
 と、過激な文面を載せている。まるで、野に農を営む人が、海の漁夫から農たるを説かれているような言いぐさである。誰か、的確に反論できないか?残念ながら、当木語には、それらしい文節は見当たらない。わずかに、「中露の新型の国家関係は冷戦時代の軍事、政治同盟を超えている」という杞憂を真剣に受け止める必要がある。
 ウクライナや台湾を威嚇する両国に「今日の国際システムは平和・発展・協力が主流」と言われると鼻白むが、声明からは、コロナ後をにらんだ中露の接近ぶりが読み取れることは確かである。
 手をこまねいて、「あれあれどうすれば良いのか」、と本題を棚にあげたような記事である。
 さて、反証は如何に?
 先ず、第一に、「ある国が民主的…」云々。そも、民主的というのは国の範疇を超えた人類普遍の共通テーゼであること。だから、民主的かどうかの判断は当該国だけでなく、人類すべてに判定を委ねなければならない。
 第二に、「民主主義の基準…」「民主主義の定義…」云々。そも、民主主義の基準・定義とは、何ぞや?人が、基準や定義を定められるものであるのか、人の決めるものでもありますまい。人の生活における長い歴史の中で、自然発生的に生まれた最小限の「人権の守り」を保持しようとする拠り所であり、願いである。
 第三に、「民主主義の価値の裏切りだ」そも、民主主義に、あれこれ値踏みするような価値のいろいろが端からあったのやら?また裏切るなどとは穏やかでない。値札を付けるような、いろいろな民主主義が在るとすれば、それは方法のことであって「人権」を無効にすることとは異なる。裏切られる民主主義というのは、おそらく人の体臭の沁み込んだ価値の一派なのかと思う。
 決して、民主主義が最上ではないと認めざるを得ない。かくまで世界が退廃し、人心荒む中、上に誰がとても立つ人に信を置けない社会では、最低限に採らざるを得ない最後の選択肢であるから。
 イデオロギーを掲げて政治を行われるなら、初のドグマに立ち返り、徒に詭弁を弄して他人の畑をかき乱されるな、と切に願う。
本日の万流川柳の目に留まった句
   「ハガキ代と宇宙旅行の費用の差」

2022.2.6(日)日記
昨日に引き続いて、北京オリンピックについて、新聞記事から引きます。
毎日朝刊(2.6付)時代の風「北京五輪と黒い影」中西寛 京都大学教授
 「・・・印象深かったのは、開会式において国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が習首席と同席し、演説では、深い謝意を表したことである。またドーピング問題を巡って国家単位で選手派遣を認められていないロシアからプーチン大統領が開会式に出席することも全く問題にしていない。IOCにとって人権問題よりも大会の開催こそが最優先でもあることを改めて示したと言えよう。・・・」
   憂いることです。続いて
「五輪休戦協定は有名無実だっただけでなく、国際緊張が高まるにつれて五輪自体が紛争の導火線のようになってきた・・・」
「五輪は象徴的な形ではあるが、冷戦後の楽観主義が挫折しただけでなく、国際政治における裂け目となってしまったことを示している。・・・」新聞記事以上
 崇高な平和理念を掲げるオリンピック精神は何処へやら、商業主義そのもののオリンピック開催事業は、莫大な金(税金)を食い莫大な利潤を一部の企業(人間)にもたらす。国民にとってそれは、戦争と同様の負担を暗黙裡に押し付ける。競技を観戦して我々は一喜一憂するが、その興奮は、つまり我々の目を眩ませる為の麻薬であるかしれない。
 暗い話題をこれまでとします。本日の毎日朝刊仲畑流万流川柳から目に留まった句を紹介します。  「雀らは何処で野宿か吹雪の夜」 鴻巣 雷 作

2022.2.5日記
毎日朝刊から、目に留めた記事を抜粋します。 「だがIOCのばっか会長は今も中国の人権問題を取り上げることなく、ホスト国との関係維持を優先させている。だからこそ私たちは五輪観戦を楽しむだけでなく、この国に押しつぶされた声が存在することを心に留め続ける必要があると思う」
 毎日新聞 中国総局長 米村耕一 記
 おなじ毎日朝刊に、ばっか会長は、IOCの政治的中立を保持すると言いながら、権威主義の中国に寄り添うのは、中国の資金力を当てにしているからだ、との記事がある。
 己のスタイルばかり気にする仁が上に立つと、人の心に消化不良の仇を残すことになる。誰か、裸にしてやれ!
 えっ?ばっかでなくてバッハですか、それはどうも失礼しました。

2022.1.31日記
 昨日30日(日)毎日朝刊から
 時代の風コラム「コロナ禍で顕在化した課題」河合香織 ノンフィクション作家
 目を留めた文章がありましたので、採りあげます。
「それにしても、コロナによる問題だとされている課題は、実はコロナ前から存在していた社会のひずみが顕在化したものが少なくない」
 文章の要旨については、なるほどそんな事なのかと頷けるのであるが、断定的に述べられたことに対し、なにやら引っかかるものがあった。「社会のひずみ」とは穏やかでない。およそ予想はつくけれど、意地悪くどんなひずみなのかと、問いたくなる。こう断定的に結論を下されると、信じ切ってしまうのが世間一般の常で、もしやそれが否定的な断定であると、負のイメージとして、世に広く蔓延してしまう弊が生じる。
 マスメディアの言葉書きの中に、根拠をはっきり示さないで断定を下す箇所がある場合、概ねはその通りかもしれないけれど、たとえわずかな何分何厘かの割合としても否となる可能性は残っているわけで、それによって是非が覆るとなると、大問題である。いわゆる「常識のうそ」と言われているものだ。
 我々は、マスメディアの情報に対して断定的に決めつけられる内容については疑ってかかる必要がある。欲を言えば拠ってきたる因子を精査し対応策を模索できれば猶更佳とすべき。巷間、喧伝される「メディアリテラシー」の実践の場として、新聞は格好の対象となります。

2022、睦月14日日記
 民主主義への逆風吹く昨今の世界の現実を鑑み、今一度民主主義の何たるかを一から再考してみるのも、是非必要ではないかと思う。日本の政治のように、民主主義の言葉の中にどっぷり浸かってあれこれかきまわすだけでは、あまりに能がなさすぎる。民主主義とは所詮、人類歴史の切磋琢磨を経てようやくたどり着いた、人の生を護ることを、一義として、そのためには利便性や効率をあえて犠牲にする政治制度だから。
 毎日新聞今日1月14日の朝刊に目を留めるべき記事があったので引用します。
 「なぜ批判的思考が重要なのか。それは、私たちが民主主義国家であるためです」フィンランド教育庁の一般教育部門顧問 クリスティナ・カイハリ
 或いは
 フィンランドのニーニスト大統領は2015年10月「国を護るのは、情報の受け手一人一人の国民だ」と述べ、メディア・リテラシー強化への必要性を強調。
メディア・リテラシー=民主主義社会におけるメディアの機能を理解するともに、あらゆる形態のメディア・メッセージへアクセスし、批判的に分析評価し、創造的に自己表現し、それによって市民社会に参加し、異文化を超えて対話し、行動する能力である。
本日、「源氏物語」全五十四帖読了。

2022.睦月12日 源氏物語へのおぞましさ
 源氏物語 宇治「浮船」まで読み進めてきて、いぶせき事を覚えて、此処に記す。
 ひそかに情を交わす男女が、むつまじく特に男にとっては昔日に亡くなった恋する女の面影を映すとしてようやく得た姫を愛でるところ、他の色欲旺盛な男(友人)の、かの女在りとの消息を聞き、品代わる女を求めんとして、秘かにかの姫君をたぶらかし、元の恋人の目を盗み、情を通じたのである。姫は初においては異なる相手として拒否を表すものの、強引な卑劣男に抗すべきもなく快楽に身を委ねたが、それからも卑劣男は友人の公務の間を盗んでは、執拗に関係を続けた。
 女の性として、自分と情熱に身体を重ねる男に、その男の人格など外にやり、一時の享楽に没我し、全的に男に靡いてしまうものか。下世話に言えば、男の助平なるの旺盛なほど、女は一途に惹かれてしまうのか?
   元の男とは、光源氏の名目の息子の薫であり、卑劣男とは今上天皇の皇子匂の宮である、又姫君とは薫の思慕した大君の腹違いの妹、浮船である。
 かくいうスキャンダルめいた艶事は、今の世においても時に巷に聞こえることであるが、平安の宮廷を舞台として、ことさら事めかしく物語るものかと、作者の込み入った欲求不満といびつな露悪趣味にいささか当惑したのである。
 いずれにしろ、薫、匂宮、浮船の三方は、物語の中にだけ存するものであり、褒められたものでなく、いわば品卑しい人形劇のマリオネットである。現実に副うものではさらにない。
 或いは、源氏物語の宇治十帖というのは、当初の語り口からはいささか筋展開と表現を異にしており、紫式部とは他人の後に作られた物語ではないかと、少し彼女を弁護したくなる。とはいえ、ここまで読んできたので(五十四帖のうち残り三帖)、いぶせきながら最後まで読了しようとは思う。

2022.睦月9日
  久しい以前から常々不思議に思うことがあり、かたちとして文字に残すべきと気にかけていたのを、今ようやく顕わす暇をつくった。
 それは、何故、今の時代に、世界のいずこかにおいても、武器に拠る紛争の顕われ、或いは戦争勃発の兆しがくすぶっている現在の有様のことである。紀元前12世紀頃のトロイア戦争を大規模な武装集団同士の争いの始まりとすれば、今日紀元21世紀に至るまでの3300年余り、人類は絶えることなく戦争を続けてきたことになる。その間に、人類は自然・人文科学において少なからずの進歩を成し、人類歴史の様々なる愁嘆を経、遠い紀元前人類とはかけ離れて賢良には成りおおせているはずのところ、且つ又現況世界を地球規模で見まわすとグローバリージェーションの勢い頓にひろがり経済物流・情報において世界なべて等しくならんとする情勢を鑑みるにつけ、この地上において未だ戦火の絶えるなきのありさまを、如何なることかと不思議に思い或いは嘆く。年端もいかぬ向こう見ずなる若者の、おのがじし強がりを誇らんとして他に挑み競いあうような幼稚ざまと、いささかも違えない児戯に見えて仕様がない。
 地球上の大小あまた在る国々の、忌まわしき垣根をこぼち取り、世界が一つにまとまり、共通の目標へむかって営みを行うのに、なにがして障碍となっているのか?
 この世界には、いずこ方奈辺において、戦争という悲劇を絶えることなく存続させようとの、ある種あやしい力学の深層深く潜在している影が、そこはかとなく観える。或いは、戦争の力学が、歴史の流れを牽引してきたとも言える。
 「死の商人」を執念深くはびこらせるその力学とは何ぞや?

2022年睦月6日 日記
今朝の毎日新聞から目に留まった記事 「木語」坂東賢治氏 記 
米政治学者のイアン・ブレマー氏率いる「ユーラシア・グループ」が今年の「10大リスク」のトップに、中国が新型コロナウイルス対策に採用してきた「ゼロコロナ」政策の失敗を挙げた。
 感染力が高い「オミクロン株」の流行で米国の新規感染者数は100万人を超えた。効果が低い自国製ワクチンに頼る中国の政策はいずれ破綻し、世界経済に悪影響を与えるという懸念である。
 昨年末、陜西省西安市で感染者が急増し、ロックダウンが実施された。2月の北京オリンピックを控え、中国当局はゼロコロナ政策の維持に懸命だ。しかし、消費や生産を圧迫するロックダウンが全国に広がれば、サプライチェーンにも打撃を与え、世界経済が混乱すると警告する。
 リスクは中国の政策決定メカニズムにある。習近平国家主席が「ゼロコロナ」政策の成功を自らの業績としてきたため、もし破綻が見えても欧米諸国のような「ウィズコロナ」を前提とした政策への転換が困難になるというのだ。
 4番目のリスクに挙げられた「中国内政」の行方とも重なる。プレマー氏は「共同富裕」を目指す習氏の政策が市場のゆがみをもたらすと警告する一方、その政策をチェックするシステムがなく、間違いを生みやすいと指摘する。
 どんな政府も誤りを認めない「無謬性の神話」を信奉しがちだが、その傾向は中国など権威主義的な体制でより強い。個人崇拝で権威を高めた毛沢東が大躍進政策や文化大革命の誤りを正すことができなかった歴史が思い浮かぶ。
 ・・・中国が昨年12月に発表した白書「中国の民主」は「権力運用は有効に制約、監督されている」と主張するが、最高指導者にまで及んでいるかは疑わしい。
 ・・・やはり習氏への権力集中が最大のリスクか。
 以上、新聞記事をそのまま列記しました。この坂東氏の分析・予想如何については、時の経過を看ないことには定め難いのですが、参考意見としては最もな有効性をもっていると思われます。暗黙裡に個人崇拝を強要する権力者の国は、おそかれはやかれ衰亡するの世の常か、歴史が教える。
 しかし、日常の生活においても歴史の一日においても、[一寸先は闇]という例えもある。    

2022、睦月5日 日記
All In Oneという英語教則本の中に採り入れられた一文
It was during this time in the Heian period that aristocrats lived in luxury and enjoyed wealth and privilege to their hearts’ content.
「貴族が贅沢に暮らし、富と権力を心ゆくまで享受していたのは、平安時代のこの時期でした。」

 平安時代のこの時期と名指しされているのは、今現在私の読んでいる「源氏物語」にまさしく当てはまるようです。平安時代中期、摂関政治の藤原道長全盛の頃かと。九州から東北まで全国の受領や荘園を支配した貴族階級は搾取側として、まさしく上記のように栄耀栄華を極めた生活をしていたのです。物語の中では、貴族たちの歌のやりとりによる恋愛劇・恋のさや当てや、登場人物の生き別れに一喜一憂していた私ですが、背景の社会構造を含み合わせてみると、なんら生産的な働きもしない登場人物たちが、現実から宙に浮いて見え、水を差されたように、私は覚めてしまうのです。
 今は「橋姫」宇治十帖まで読み進めています。覚めたとはいえそれなりにアヘンに浸るように埋没できるので、なおこのまま読み進めとじめをしようとは思っています。

2022.1.2覚書 「オシント」とは Open -source intelligenceの略
ある目的のために、公開情報を突き合わせて分析・調査する手法。「重要情報の9割以上は公開情報から導き出せる」とも言われ、内外の情報機関にとっては欠かせない基本的な活動のひとつ。
2022.元旦毎日新聞社説からの覚書
 民主主義への逆風が強まる中、2022年を迎えた。
 冷戦終結直後に広がった「世界はいずれ民主化する」との楽観論は影を潜めた。30年後の今、浮上しているのは、専制的な権威主義が拡大する現状への懸念である。
 スウェーデンの「民主主義・選挙支援国際研究所」によれば、過去5年間で権威主義的な傾向を強めた国の数は民主化した国の3倍に上った。
・・・昨夏に米軍が撤退したアフガニスタンは混乱の長期化で人道危機に直面し、ミャアンマーでは国軍による市民弾圧が続く。
「炭鉱のカナリア沖縄」
「基地あるが故に沖縄は民主主義、人権、環境の問題に立ち向かってきた」半世紀前の復帰時、手製の「日の丸」を振った玉城デ二―知事が語る。・・・「沖縄は日本の民主主義のカナリアだ」沖縄国際大の前泊博盛教授はそう形容する。
 フランスでは、くじ引きで選ばれた国民が気候政策を討議し、149本の提言をまとめた。スペイン発祥のオンラインによる参加型民主主義「デシディズム」は世界各地で摂り入れられている。
 日本でも市民がITで社会課題を解決する「シビックテック」が注目を集め、沖縄ではコロナや地元議会の関連情報の発信が進む。予算編成に市民が関与する仕組みも三重県などで導入されている。
 市民参加の活動に詳しい吉田徹・同志社大教授は「代議制民主主義の足りないところを補完し合う関係が望ましい」と指摘する。
 
2022年元旦 新春のことほぎをお慶び申し上げます。
今朝6時に家を出て、細雪散り舞う中、近くの奥という地名の山懐に在る粟生一宮神社に初詣をしてまいりました。社ではすでに地元の氏子の方々4人が、ドラム缶焚火を囲んで歓談しておられます。お神酒の微量も遠慮なくいただきます。朝一番の冷えた酒の、またとない美味さかな。元旦の口切でした。日の出は7:05とのことでしたが、山瑞の雲に遮られ、かけはしに映る照りを観るのみでした。
 家に戻り、連れ合いとささやかな祝膳を済ませた後、一眠りして、午後書初めをします。昨年来の源氏物語になびき、須磨の巻から材をとりました。光源氏が艶事で咎をうけて須磨へ流され、不遇をかこった日々のつれづれに詠んだ歌です。わたしにとって、妙に共鳴する印象深いくだりです。
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2021.12.27日記
2021.12.26(日)毎日新聞朝刊記事から抜粋 「時代の風」藻谷 浩介
昨今の無差別殺人事件 とりわけ大阪市北区に起きたクリニック放火殺人事件に鑑みて。
「おのれの欲せざるところを人に施すこと勿れ」他者への共感性の欠如が背景に見える。
「この世界の幸福の総量は一定だ」=新自由主義 従って、己の生活水準を保つためには、己より下る貧困層には自分達の有する富を回してはならないという風潮が社会に伏在しており、対して貧困者においては社会に対する絶望とそれから起因される自棄が根ざしてくる。
根底に、学校教育の問題性が指摘される。「そもそも、生徒を相対結果で輪切りして、受験という個人戦に向かわせる日本の学校教育に、共感性の涵養を期待するのは無理筋だ。・・・優秀者を育てることより、公教育は普通の人たちをこそ、幸せにすべきなのである。その人の能力と個性なりの身の置き所を社会の中に見つけられるよう、各人を動機付けて、あと押しすることによって・・・」
同感です。彼我に対する不信・妬み・憎しみが弱者の内に芽生え、強者はそれを観て蔑み、結局は社会全体が病んでくるのではないか。
今朝のラジオNHK FM放送から耳にしたこと。抜け目なく立ち回って金儲けをする人を、昨今は立身者として羨望し尊敬するようではあるが、昔(明治頃?)は、金儲けに執着することを卑しいとして疎んじられた云々。
岩波書店 古典文学大系 源氏物語一、二、三「若菜下の巻」まで読了。光源氏は47歳となる。朱雀院から懇請されて婚姻した皇女の女三宮が、柏木と不義密通をした事件があり、光源氏は朱雀院の皇女故重大に受けとめ残念に思ったが、柏木の立場・将来を想い、事を荒立てずに済ませた。
桐壺の巻からこの若奈下の巻まで読み通して感じたことは、一つには、光源氏という人物が、女性から観て「こうであれかし」という理想の男性像に描かれていること、二つには、光源氏の女性的なる面、決して他に対し憤りを表面に顕わしたことが無いといういわば女性的な姿の観えることが挙げられる。まるで、紫式部の分身として、行いは女性的な優しさでありながら、下半身に男性器を備えているというモノセックスな印象が窺える。紫式部にとって理想の男性とは、形は男性にして心は女性であるという、良い処取りの姿であるのか?

ロースマリー花咲く
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ベランダの鉢植えのローズマリーです。もう一週間前から花弁咲かせていますが未だに萎えず花びらを保ち続けています。けなげです。
古今和歌集から 「散りぬとも香をだにのこせ梅の花恋しき時の思ひ出にせむ」  今年8月に40数年来働き続けてきたそれなりの職を終えリタイアしたけれど、健康保険から国民保険への切り替えと市民税などの税手続きの変更に伴いこの11〜12月にかけて少なからずの公的機関現金納物入り(ひと月分の年金高)となり、ただでさえ年金に頼る生活となった今、なんとして備えに蓄えし高にも触れるわけにいかず、年の瀬のやりくりにもの憂いてるありさま。年明けてもなお緊縮のからき日々を耐え、遠出はせず、贅沢嗜好食品を慎み粗食に堪え、夜更かしせず等々克己が必要。とはいえ、初春の祝いには、仕出しのおせち一人前を二人して箸交じりをし数の子をしつらえ酒を一餐におよび(普段から日々わたしは常飲しているのであるが)、人並みの宴を設けようと思う。こうでもしなければ、内なるひとにおいてはとうてい正気の沙汰でなく、果てに終末の大破れに変事するの、杞憂があるからにや。
 
2021.12.18(土)源氏物語U覚書
葵の巻 「紫上新枕の朝」
 今日は源氏物語の中でもとりわけ有名な場面を採りあげます。いささか艶めいた、うるわしき朝のお話しです。
 いかがありけむ(どういうことがあったのでしょうか?)、人の、けじめ見立てまつり分くべき御仲にもあらぬに(光源氏と紫上とは常に一緒に起臥していたので、新枕があったか否かなどの区別は、平素は、他人が外からは分からないので)をとこ君は、とく(早くに)起き給ひて、女君は、更に起き給はぬ朝あり、人々、「いかなれば、かくおはしますらん。御心地の、例ならず思さるゝにや」と、みたてまつり嘆くに、君は(光源氏は)、(自室に)わたり給ふとて、御硯の箱を、御帳の内にさし入れて、(室へと)おはしにけり。(紫の上は)人まに(人の居ない間に)、かろうじて頭もたげ給へけるに、ひき結びたる文、御枕のもとにあり。何心なく、(紫の上が)引きあけて見給へば、
   あやなくも隔てけるかな夜を重ねさすがになれし中の衣を
(なんという訳もなくまあ二人は打ち解けずに隔てていたものであったよ。これまで夜ごと夜ごと、相当に馴れ親しんで一緒に寝て居りながら、ふたりの間に、衣を隔てて今までは過ごしてきたものである。{昨夜より、もう隔てはなくなった})
 と書きすさびたるやうなり(戯れ書きのようである)。「かかる御心おはすらん」とは、(紫上は)かけても、思しよらざりしかば(かっては少しも気がつかなかったから)「などて、かう、心うかりける御心を(どうしてこう恨めしかった光源氏の御心であるのに)、うらなくと(隔てなくと」頼もしき物に、思ひ聞えけむ」と、あさましう思さる(あきれて、自然にお思いなさる)。昼つかた、(光源氏が紫上の方へ)わたり給ひて、
「悩ましげにし給ふらんは、いかなる御心地ぞ。今日は、碁もうたで、(私は)さうざうしや(心配である)
とて、のぞき給へば、いよいよ御衣(みぞ)ひきかづきて、伏し給へり。人々は、退き(しりぞき)つつ侍(さぶら)へば、より給ふにて、
「など、(私に)、かく、いぶせき(気まずい)御もてなしぞ。(御身は)思ひのほかに、(私には)心憂くこそおはしけれな。ひと(女房=かしづく役目の女)も、いかに、「あやし(不審)」と思ふらむ」
とて、御衾(ふすま)をひきやり給へれば、(紫上は)汗に、(身を)おしひたして、額髪(ひたいがみ)も、いたう(とても)、ぬれ給へり。
光源氏「あな、うたて(ああいやなこと)。これは(涙は)、いと、ゆゝしきわざぞよ(縁起の悪いことですぞ)」
とて、よろづに、こしらへ聞こへ給へど(紫上をなだめすかし申されるけれど)、(紫上は)、まことに、(光源氏を)「いと、つらし」と(たいへんうらめしいと)、思ひ給ひて、露のおいらへも(お返事も)し給はず。
光源氏「よしよし、(私は)さらに、(御身に)見えたてまつらじ(お逢い申しますまい)。と、恥づかし」
など、怨じ給ひて、御硯あけて見給へど、物(返歌)もなければ、「わかの御有様や(若々しく初心なご様子よ)」と、ろうたく(かわいいと)見たてまつり給ひて、日一日、(御記帳に)いりいて、なぐさみ聞へ給へど、(紫上の)とけがたき御気色、いとどらうたげなり(かわいらしい)。
 この時紫上は、御年13〜14歳(光源氏21歳)でありました。この紫上が物語に登場する由来はといえば、「若紫の巻」に始まります。光源氏がわらわ病(フィラリア症?)を患い、北山の聖僧のもとに行って加持をした折、暇ゝに散歩した時、別の僧房に子供らしい若紫(幼い紫上、10歳ばかり)を見出した。若紫は兵部卿宮(自分の恋する年上の藤壺女御の兄)と故姫君(消息不明)との間に生まれた子であった。今は、尼上(祖母=故姫君の母親=僧都の妹)が後見として世話をしている。光源氏は「若紫を引き受けて世話したい」と尼上に申し込んだが、まだ幼少だからと辞退される。病も癒え、帰郷した光源氏は正妻の葵上の態度に全くあきたらない。心は葵上を離れて、ひたすら若紫にむかう。北山の尼上に熱心に音信する。
 程を経て、北山から帰京した尼上を見舞った光源氏は、とうとう若紫を託され、二条院に若紫邸を設け迎えた。やがて、尼上は他界した。  以上が紫上の出自です。爾来、御年13歳になるまでの3年間、光源氏の庇護の基に成長され、此の度の新枕うるわしき朝を迎え、程を経て葵上が他界したこともあり自然のなりゆきとして、光源氏の事実上の正妻としての地位に納まりおぼされました。

2021.12.16(木)
今夜は、今朝の毎日新聞のコラム欄「木語」=坂東賢治筆から牽きます。
以下抜粋
バイデン米政権が主催した民主主義サミットに反論する白書「中国の民主」にも「楓橋経験」が中国式大衆自治の例として登場する。社会主義に不満を持つ地主出身者が人民の敵とされた時代。上部機関に任せずに村の中で「思想改造」し、混乱を防いだとされる。
楓橋とは、中国は浙江省の農村、楓橋鎮に由来する。
 唐時代の詩人張継の「楓橋夜泊」が夙に知られています。
月落ち烏啼いて霜天に満つ
江楓漁火愁眠に対す
姑蘇城外の寒山寺
夜半の鐘声客船に至る
余談はさておき 抜粋を進めます。土地収用などをめぐる農村での抗議活動が多発した90年代以降、再び、習近平国家主席ものその継承、発展を唱えている。・・・「中国の民主」白書には「専政を実行するのは民主を実現するためである」という表現がある。理解不能かもしれないが、「人民民主独裁」の定義そのものである。
・・・習氏は「投票の時だけもてはやされ、選挙後は無視されるのは真の民主主義ではない」と議会制民主主義を批判し、中国はより機能的な「全過程民主」と主張する。
以上、かいつまんで抜粋してみました。
「人民民主独裁」の言葉に荒唐無稽さを覚えるのは、私一人だけではありますまい。あえて解釈するなら、「人民大衆が主体となって、民主的に政治を独裁する」となりましょうか。しかしこの表現は甚だ奇怪な言い回しであり、入れ子構造かあるいは言葉を循環させて弄ぶだけの言い回しであり、およそ意味を成していません。要するに習近平を頂点とする共産党政治局も民衆の一員であり、総体として民主的な手続きを踏み政治を行うのだと、対外的に力説しているように聞こえます。それにしてもなんのこっちゃやら。
 習氏は、茶番劇のような形骸的議会制民主主義の選挙制度に批判の矛を向けています。冷静に受け止めれば、われわれは、この批判に正しく反論できる「言葉」を持ちあわせているでしょうか?法家の権威筋や学識者のこねくりまわしたへ理屈は、この場合米を炊ぐに稲作を講じるようなもので、まるで役に立ちません。たとえば、選挙行為の過程に生じるごく一部のバグであり、制度そのものの非でない、と澄ましてみたところで、それで相手は納得するものですか。
 中国の政治制度ばかりを非と決めつけるのは大同の意に副うので安全ではありますが、こなたの、民主主義なる生き物に目を光らせてみるのも、存外益無きなことでないと思えます。

葛城登山へ行った折のお話しです。
今年2012.12.3(金曜日)晴れ時々曇りの天気予報をあてにして、近鉄二上駅に降り立ったのは、同じく近鉄二上山駅の脇をかすめて二上山にとりつき、雄岳・雌岳と頂上を越えそこから竹内峠へと下りて再び平石峠へ上がり、稜線を南下し、最終の目的地として葛城山へ達するつもりだったからです。来春に予定している生駒〜和歌山岬公園へと通じる近畿自然歩道を縦走するための調査でした。初めてたどる縦走路なのでコースタイムや山道の様子などまったく不案内なので、一日にして葛城山頂上へたどり着くのも覚束なく、日が暮れれば山中に野営すべく用意は整えたのでした。
近鉄二上駅を9時前に発ち、少し山道の案内にてこずり紆余曲折などを経て平石峠に着いたのが12:45、行動食を口にしたりして13時過ぎにそこを発ち、単なる通過ピークと見なしていた岩橋山へと登りに掛かったのですが、山は意外に手ごわく程々脚力を費やして頂上に着いたのが、14:15、竹内峠からは全く人影の途絶えた我独りの山と思っていたのに、豈、上に話し声の聞こえ、頂上の休みベンチには老夫婦が居られたのでした。
男性は70歳代半ばころ女性は60歳代後半。紳士然とした男性は上背もあり立派な体格、女性は小柄ながら背筋の通った芯のある体つきをしておられます。挨拶の後、話を結ぶ折々に聞こえるのは、この男性、このあたりの山やコースの案内に甚だ精通しておられることです。
「それほどお詳しいのなら、これから葛城山まで行かれるのですか?」とわたしが問うと
「ええ、そのつもりです」と二人が声をあわせて応えられます。
「ここからですと、4時間あれば葛城の頂上へたどり着けるでしょうか?」と当方。
「まあ、4時間もあれば充分着けるでしょう」とご主人。
「なら、3時間でもだいじょうぶですか?」
「3時間程度なら、わたしたちもそのつもりなのですよ」
「それでは、僕はあなたがとご一緒させていただいて登らせていただきます」と当方。
彼等が先に発ったのを後目に、わたしはなお行動食の柿の種を齧りながら休み(なにしろ、岩橋山の登りでそうとう体力を費やしたので)、間を空けて彼らの後脚をついていきました。
実を言えば、かの男性と私とは、それほど年齢は違わず、外見はやや私の方が年若とはいえ、あるいは同年齢に近いかもしれません。彼らの足どりはとても快調とは言い難く、10mほどの間を隔ててついて行く私は、しばしば停まり間合いを保ったものです。見るとはなし男性の足はこびに目を留めたのですが、左右にぶれてやや心許ないのです。女性の方はゆっくりした足どりながら着実に登っておられます。休憩した折は、男性が主人然として女性を従え、わたしとの会話にもこの山登りのリーダー格としての貫禄を見せておられたのですが、ふたり一緒に登られる様子を見、ささやきめいた会話の端々を耳に留めますと、どうやら女性がたえず注意を促し足の運びいちいちに語気するどく指示をなさっているのが、それとなく後ろ10mほどを歩く自分に見て取れたのでした。
おそらくはこのご夫婦、公の場やちょっとした人前においては御主人がやはり主人然として関白ぶりを顕わし、蓋し生活の内実においては奥さんが主導して仕切っておられるのだろうと、推し量られるのです。わたしは、羨ましいと思った。老後の夫婦のありうべき理想の姿に見えたからです。琴瑟相和と謂うのでしょうか。。このような伴侶を娶られた男性が羨ましいと思うのです。否、このように夫婦関係を築かれた夫の、長年月に亘る努力と才覚とかつまた人間性を、もはや後戻りも出来なくなった自分には今さらと思いつつも妬ましく思えるのでした。
799mピークに上りついて、休憩ベンチでご夫婦と一緒に休憩。17時までに葛城山に着いてロープウェイで下山するのだと、夫婦は言った。頂上で野宿するつもりだと私は言う。それはすごい!テントをお持ちなのですね?とふたり。いえ、テントは持参せず。地べたに寝ますと、わたし。うわーたいへんねえ!と奥さんの声。時刻は15:30、青色勝ちだった空も色あせ、暮れなずむ勢いに合わせて雲が多くなると、山影の暗がりが地から湧くように濃くなっていきます。ロープウェイ駅は頂上より1qほど手前なので、ヘッドランプが無くても暮れ方の残光が残るうちにたどり着きますよ、とご主人のおおらかな答え。
葛城山を指呼の間に捉えられたので、わたしは彼等より先に休憩場所を発ちました。そこからは、長く急な段上りがこれでもかと次々待ちかまえています。二度ほど、段登りの下に奥さんの旦那さんを叱咤する声が聞こえたこともありますが、葛城山に近づくにつれ彼らの気配はいつしかかき消えました。頂上下のキャンプ場に着いたのは、17.10、あたりはすっかり闇にのまれました。

2021.12.14(火曜日)
ひと月以前に小林秀雄全集の「本居宣長」を読了した折、内容の頻りに「源氏物語」を材として採りあげられ、且つ又賞揚される気配に惹かれ、箕面市の図書館から借りだし、熟読にこれ勤しんだのでした。現在、2冊目(全部で5冊)まで読了したところです。源氏物語 底本=三条西実隆筆青表紙証本 岩波書店 山岸徳平校注
蛍の巻を読み進めるうちに、気に留めてみた箇所があるので覚書としてここにご披露します。光源氏の、子供教育についての親の心得なるものの一端を開陳した下りです。もとよりこれは、作者紫式部の思い入れでもあるようです。光源氏と紫上(妻)が、当時すでに流布されている物語についてのおのおの心組みを論じ合っているうちに、親・子・育て方などへと話が深まっていきます。以下、光源氏の言い下し。
よしなからぬ親の(相当に立派な親が)、心とどめて生ほしたてたる人の(気をつけて育てあげた娘で)、子めかしきを(無邪気で大ようなのを)、いいつけるしるしにて(親が大切に愛護して育てた証拠として)、後れたる事おほかるは(長じて、人として見劣りすることが多ければ)、「なにわざして、かしづきしぞ」と(どんな育て方をしてかっては愛育したのであるかと?)、おやのしわざさえ思ひやらるゝこそ、いとほしけれ(親の育て方までも思いやられるのは、いかにも娘には気の毒である)。げに、さいへど、「その人のけはひよ」と見へたるは、かひあり、おもだたしかし(成程、そうは言うけど、さすがに、その身分に恥ずかしくないと、「あの人の態度風采であるよ」と、他人に良く見られているのは、面目な事であるよ)。こと葉のかぎり、、まばゆくほめおきたるに、し出たるわざ、言ひでたる事のなかに、「げに」と、見え聞こゆることなき、いと、見おとりするわざなり(言葉を尽くして、乳母とか女房{役女}などが、傍から聞いて居ても恥ずかしいと思う様に褒めておいたのに、長じたその娘の、日常の行いや言葉の端ゝに、なるほどと褒めたとおりとは裏腹な行い・言葉が見えるなら、この娘は見劣りする育ち方である)すべて、よからぬ人に、いかで、人ほめさせじ」(一切万事、思慮の無いつまらない者に、どうにかして、娘を褒めさせたくないと思うのである)。
父親にとって、特に娘である場合ひときわかわいい愛すべき実子であるが故、子供に快をもたらすよう何かと世話をほどこし喜びの具を与え柔らかに言葉を尽くします。且つ又、その子に己が在り様を良く映るようことさらその度合いは昂じます。このように「花よ蝶よ」の境遇のままに生い立っていきますと、世の辛さ憂き目なる反面教師と出会うことなく、外世間いたるところに伏在する特に人的な禍に対しては甚だたよりない裸同然のままに臨むことになり、あげくは、世間知らずの甘えっこと誹りの的になります。これはその娘にとっては取り返しのつかない不幸です。その難を避けるとするなら、深窓の麗人として生涯を送らざるを得ないでしょう。 男子においても大筋は似たようなものですが、ただ男子の場合はその高貴な出自故世に出る限りひとかどの人として名を立てねばなりませんから、好悪くすぶる紅塵にあって、困難とは無縁のままに育った甘えん坊の身にあっては、芽を出すこととても難しそうです。
以上は平安朝の時代にあって、子育ての心構えとして紫式部の伝えた存念でありますが、さて現代の世にあっては如何なるものでありましょう。世間を観るといささか様を異にすると言えるようです。つまり、富貴或いは各界上に立つ人の孫子は、順当に長ずれば同じく富貴になり各界の場において名を挙げる事例は巷間あまた観られるとおりです。不思議に思えます。ひょっとして、彼等親は紫式部の存念を正しく真似たのでしょうか?この先は難しくて、一朝一夕には観えません。またの機会に。

2021.10月26日 小林秀雄全集第十三巻「本居宣長」読了。
読み始めてから読了まで一週間を費やしました。一日3時間多い時でも4時間を読書に没頭するとたいそう疲れて続けられません。とても難解にして緊張を強いられるのです。それにしてもやっかいなのは、理解にはいまなお遠いおのれの自信のないありさまです。
 当今のTVやネットにあふれる面白おかしく興味をそそるニュースや話題に熟れた耳目には、この評論は読みはじめ退屈極まりないものでしたので、引こう引こうと思いつつ惰性のままに詠み続けていくうち、いつのまにか小林秀雄に搦めとられてしまったのです。憑依されてしまうのです。
 いったい本居宣長なのか小林秀雄なのか訳の分からなくなる迷路の境に陥りました。しかし結局は、本居宣長という偉大な古学の著述に渾身を入れ挙げた小林秀雄老そのひとが、主役として演じる最後の華(はな)舞台であったと、おおかたを読み終えて知れました。
「観念論とか、唯物論とかいふ現代語が、全く宣長には無縁であったことを、現代の風潮のうちにあって、しっかり理解することは、決してやさしい事ではないからだ・・・」
 終段の此処に至って、彼のこの評論におけるひねくれたといえば秀雄大兄から睨みつけられそうですが、作者の世に対する問題提起と疑念がこだわりの叙述として表れているのが覚えず見えました。
 評論最後のくだり
「もう、終わりにしたい。結論に達したからではない。私は、宣長論を、彼の遺言書から始めたが、このように書いてくると、又、其處へ戻る他ないといふ思ひが頻りだからだ。・・・」
 久しぶりに500頁ちかい評論を読み終えて、何も分かっていないというのが正直なところながら、なにかしら自分の身の周り一円の奥行がひろくふかくなったような気になるのが不思議です。紫式部「源氏物語」を熟読したくなりました。

ちなみに、この評論に採りあげられた傍証の幾つかを拾ってみます。  当然のことながらこんにち本居宣長の代表著作といえば「古事記伝」になるわけですが、小林秀雄は歴史における古事記が起こるまでの考証をいくつか傍証を挙げて著していきます。注意したいのは、小林秀雄氏の眞に意図して配された故なのか、あるいは単に気まぐれ発想のなせる業なのか、各傍証の配されようが飛び地のように各所に散じていることです。従いまして、各傍証の順序も後になり先になり乱れがましくなる禍を、ご容赦願います。
「是に天皇詔(みことの)りしたまわく、朕れ聞く、諸家のもたる所の、帝紀及び本辞、既に誠実に違ひ、多く虚偽を加ふと。今の時に当たりて、この失を改めずば、未だ幾ばくの年をも経ずして、この旨滅びなむとす。これすなはち、邦家の経緯、王化の鴻基なり。それこれ帝紀を選録し、訓辞を討かくして、偽りを削り、実を定めて、後葉(のちのよ)に伝えむとすとのたまふ・・・」時に天武天皇の御代、文字は大陸から伝わった漢語によるしかなかった時代。漢字は一字をもって意味をなすので、微妙な人対人の関係によって成り立つ史実の移ろいをうまく表記できないという恨みと危惧が、天皇において興った、というわけです。そこでいろいろ切磋琢磨して我が邦固有の人の情を表現できる文字表現の追求となり、仮名文字の萌芽が芽生えたのでした。漢文については以下
論語(孔子)を「最上至極宇宙第一の書」と尊重した伊藤仁斎(江戸時代前期に活躍した儒学者・思想家)が挙がってきます。
 次に、時代は下って、江戸時代初期の陽明学開祖 中江藤樹、その弟子筋として荻生徂徠。小林秀雄はかなりのぺーズ数を割いて、何度も徂徠の考えや思想を傍証しています。荻生徂徠=江戸時代中期の儒学者・思想家・文献学者。
「世ハ言ヲ載セテ以テ遷リ、言ハ道ヲ載セテ以テ遷ル」・・・徂徠の言葉
土佐日記=紀貫之
冒頭 「をとこもすなる日記といふものを、をむなもしてみむとてするなり。・・・」という有名な紀貫之が女に成りすまして書く日記。「もののあはれ」という概念が初めてあらわれます。また当時女性の使う亜流としての仮名文字が初めておおやけに著されたという点において、仮名文字文学の嚆矢としての位置づけがされています。

源氏物語=紫式部 小林秀雄或いは本居宣長と言っても差し支えないと思われるのは、両者ともに量的質的に多くの精力がこの「源氏物語」に注がれているように見えるからです。
本居宣長が著した「紫文要領」という注釈書があります。 「もののあはれ」をはじめて体系的な形で提唱したとされています。
 以下、小林秀雄本稿の抜粋
 彼は「源氏」を「めでたき器物」と見た。それ自身で完結している制作物と見た。これは物語としては、比類のないことで、普通、物語と言へば「ただあやしくめづらしき事をかける書をのみ好」む、「物の心もしらぬ、愚なる人」が目あてのものだが、此の物語は、そのやうな読者の娯楽や好奇心の助けをかりて生きてはいない。・・・
 ・・・誠に「物のあはれ」を知っていた式部は、決してその「本意」を押し通そうとはしなかった。通そうとする賢しらな「我執」が、無心無垢にも通ずる「本意」を台なしにしてしまうからである。それに気づかないのが、世の劣者(わろもの)の常だ。宣長は言う、式部は、いっているではないか、「すべて男も女も、わろものは、わづかにしれるかたの事を、のこりなく見せつくさむと思えるこそ、いとおしけれ」
 ・・・物語が、語る人と聞く人との間の真面目な信頼の情の上に成り立つものでなければ、物語は生まれもしなかったし、伝承もされなかったろう。・・・
 …彼の、「源氏」論の課題は、「あはれ」とは何かではなく、「あはれを知る」とは何かであった、とは既に述べたところだ・・・
 ・・・歌道の極意は、「物のあはれを知る」ところにあるのだが、それは、情に溺れる「あだなる事」にも、溺れまいとして分別を立てる「まめなる事」にも、全く関係がないという難解な考えが、彼の「源氏」論にあった事も、既に書いたが・・・
 誰も、各自の心身を吹き荒れる真情の嵐の静まるのを待つ。叫びが歌声になり、震えが舞踏になるのを待つのである。例えば悲しみを堪え難いと思うのも、裏を返せば、これに堪えたい、その「カタチ」を見定めたいと願っている事だとも言えよう。捕らえどころのない悲しみの嵐が、おのづから文(あや)ある声の「カタチ」となって捕らえられる。宣長に言わせれば、この「カタチ」は、悲しみが己を導くその「カタチ」を語る。更に言えば、「シカタ」しか語らぬ純粋な表現性なのである。この模倣も利き、繰り返しも出来る、悲しみのモデルとでも言っていいものに出会うという事が、各自の内部に起こる。私達は、誰もその意味合いを問う前に、先ずこの悲しみの型を信じ、これを演ずる俳優だったと言ってもよかろう。もし、そうでなければ、喪という共通の悲しみを予感し、己の悲しみを発し、これを相手と分かつ道が、どうして開かれるであろう。禮は聖人の智慧の発明ではない。そう見抜いていたのが聖人の智慧だ、と宣長は言うのである。
 ・・・そして極普通の意味で、見たり、感じたりしている、私達の直接経験の世界に現れてくる物は、皆私達の喜怒哀楽の情に染められていて、此処には、無色の物が這入って来る余地などないであろう。それは、哀しいとか楽しいとか、まるで人間の表情をしているような物にしか出会えぬ世界だ、と言っても過言でもあるまい。それが生きた経験、凡そ経験というものの一番基本的で、尋常な姿だと言ってよかろう。合法則的な客観的事実の世界が、この曖昧な、主観的生活経験の世界に、鋭く対立するようになった事を、私達は、教養の上でよく承知しているが、この基本的経験の「ありよう」が、変えられるようになったわけではない。
 
以上「源氏物語」をひとまず終えたものとして次は万葉集・古今和歌集などを通じての傍証に移ります。
賀茂真淵=江戸時代中期の国学者。「万葉考」という注釈書を著した。宣長三十余りの歳に真淵を師として子弟の縁を結んだとあります。万葉集に関しては、真淵の方こそ費した歳月にしても年嵩においても先達でありました。
万葉集等の古学について、儒家の主張に対する宣長の反論
「姿ハ似セガタク、意ハ似セ易シ」
 小林秀雄の説明:意は似せ易い。意には姿はないからだ。意を知るのに、似る似ぬのわきまえも無用なら、意こそ口真似しやすいものであり、古の大儀を口真似で得た者に、古歌の姿が目に入らぬのも無理はない。宣長:「すべて学問すじならぬ、よのつねの世俗の事にても、弁舌よく、かしこく物をいいまわす人の言には、人のなびきやすき物」
在原業平の歌(古今集)「やまひして、よわくなりける時によめる、なりひらの朝臣、つひに行く、道とはかねて、聞しかど、きのふけふとは、思わざりしを」「月やあらぬ、春や昔の、春ならぬ、わが見ひとつは、もとの身にして」契沖にしろ宣長にせよ、ずいぶんと評価している歌です。歌におぼれてかざらず、生のままの真心を吐露したところに、歌の価値を見出したようです。
契沖:江戸時代中期の真言宗の僧、国学者。万葉集・日本書紀・古事記・源氏物語等ふかく研究し、「和字正濫抄」「契沖仮名遣」を著した。宣長に学の上でひろく影響を与えた。
漢語と日本語についての小林秀雄の論
 ・・・和訓の発明とは、はっきりと一字で一語を表わす漢字が、形として視覚に訴えてくる著しい性質を、素早く捕らえて、これに同じ意味合を表す日本語を連結する事だった・・・
また
・・・読書に習熟するとは、耳を使わずに話を聞くことであり、文字を書くとは、聲を出さずに語る事である・・・
さらにまた
 漢字漢文の模倣は、自信を持って、徹底的に行われた。言ってみれば、模倣は発明の母というまともな道が、実に、辛抱強く歩かれた。知識人達は、一般生活人達に親しい、自国の口頭言語の曖昧な力から、思い切りよく離脱して、視力と頭脳による漢字漢文の模倣という、自己に課した知的訓練とも言うべき途を、遅疑なく、真っ直ぐに行った。そして遂に、模倣の上で自在を得て、漢文の文体(かきざま)にも熟達し、正式な文章と言えば、漢文の事と、誰もが思うような事になる。此処までやってみて、知識人の反省的意識に、初めて自国語の姿が、はっきり映じてくるという事が起こったのであった。
 知識人は、自国の口頭言語の伝統から、意識して一応離れてはみたのだが、伝統の方で、彼を放さなかったというわけである。日本語を書くのに、漢字を使ってみるという一種の実験が行われた、と簡単にも言えない。なぜなら、文字と言えば、漢字の他に考えられなかった日本人にとっては、恐らくこれは、漢字によって我が身が実験されるという事でもあったからだ。従って、実験を重ね、漢字の扱いに熟練するというその事が、漢字は日本語を書く為につくられた文字ではない、という意識を磨くことでもあった。口誦の内に生きていた古語が、漢字で捕らえられて、漢文の格(さま)に書かれると、変質して死んでしまうという、苦しい意識が目覚める。どうしたらよいか。
 この日本語に関する、日本人の最初の反省が、「古事記」を書かせた。日本の歴史は、外国文明の模倣によって始まったのではない、模倣の意味を問い、その答えを見つけたところから始まった。「古事記」はそれを証している、言ってみれば、宣長は、そう見ていた。従って、序で語られている天武天皇の「古事記」の選録の理由、「是に天皇詔(みことの)りしたまわく、朕れ聞く、諸家のもたる所の、帝紀及び本辞、既に誠実に違ひ、多く虚偽を加ふと。今の時に当たりて、この失を改めずば、未だ幾ばくの年をも経ずして、この旨滅びなむとす。これすなはち、邦家の経緯、王化の鴻基なり。それこれ帝紀を選録し、訓辞を討かくして、偽りを削り、実を定めて、後葉(のちのよ)に伝えむとすとのたまふ・・・」にしても、天皇の意は、「古語」の;問題に在った。「古語」が失われれば、それと一緒に「古の眞(まこと)のありさま」も失われるという問題にあった。宣長は、そう直ちに見て取った。彼の見解は正しいのである。ただ、正しいと言い切るのを、現代人はためらうだけであろう。
 とまた序の傍証始めの項に戻ったわけです。
論語について荻生徂徠の見解から引いて、宣長意見を代弁する姿で小林秀雄が述べる。
 言語は物の意味を伝える単なる道具ではない。新しい意味を生み出して行く働きである。物の名も、物に附した単なる記号ではない、物の姿を、心に映し出す力である。・・・
「道ノ道トス可キハ、常ノ道ニ非ズ。名ノ名トス可キハ、常ノ名ニ非ズ」有名な老子の言葉。意訳すれば:人が道だと名付けた道は、天の道ではない。もとより永遠不滅の道などはない。もともとすべての存在は無であったから。
「古事記」から、小林秀雄の解説
 ・・・天も海も山も、言葉の力で、少しも動ずる事はないが、これを眺める人の心は、僅かの言葉が作用しても動揺する。心動くものに、天も海も山も動くと見えるくらい当たり前な事はない。
小林秀雄の結文として
 …私達は、互に目を交わすとか、名を呼びあうとかいう、些細だが、しっかりした行為を、複雑な言語表現にまで育てあげるという、自分達の努力によって、互に結び合ったのである。
 およそ人の考えは他の人の考えと完全無欠に一致することなどはあり得ないのだし、一人の思想家が意見を表出すると、池の面に小石が投ぜられたように反駁する人のにわかに波立ち輪のひろがっていくのも日常常態のことだ。本居宣長とてその禍は免れず、生前幾多の学者連と論戦を闘わし、あるいはひとその論を難じなどした。熊沢蕃山然り真淵然り荷田在満然り、とりわけ上田秋成との執拗な論争は半ば感情の表出するにおよんだ。本居宣長も小林秀雄も賢しこぶりそつなく生活をする学者という人種を嫌った。最終ひとつ手前の四十九段において、宣長の世の学者連に対する日ごろの不満を、同床の物とした小林秀雄は、最後になってとうとうその反駁を怒声によって表すに至る。
 十枚の色紙のうち、一枚は真物であるのを知りながら、何故、それを選び、取り上げないか。いうまでもなく、選ぶには、その証拠が不充分だからだろう。それだけの話なら、特に文句を附ける筋ではない。彼が難ずるのは、この当たり前な事も、当世の学者等の手にかかると妙な具合になる。その気質に染められ、歪められずにはいないという事だ。これは、譬え話にでもして語る他はないような、微妙な事柄になるのであった。見易い学者の方法などが問題ではなく、方法を扱う学者等の態度のうちに這入ってみればー「真を見分けることをばえせずして、ただ贋に欺かれざる事を、かしこげにいひなせる」、―そういふ学者の姿勢は、明らかだと言う。そして、「そは何のかしこきことかあらん」、ただ「なまさかしらという物」ではないか、と難渋の語調になるのも、そういう事を、彼等はまるで自覚していないからだ。真偽は物の表裏であろうが、真を得んとする心と、偽を避けんとする心とでは、その働きは全く逆になるだろう。それが彼等には見えていない、と宣長は言うのである。彼等が固執する態度からすると、大事なのは、真ではなく、むしろその証拠だと言ってよい。真が在るかないかは、証拠次第である。証拠が不充分な偽を真とするくらいなら、何も信じないでいる方が、学者として、「かしこき事」と思いこんでいる。
 そんな馬鹿なことがあるか。生活の上で、眞を求めて前進する人々は、眞を得んとして誤る危険を、決してそのように恐れるものではない。それが、誰もが熟知している努力というものの姿である。この事を熟慮するなら、彼等が「かしこき事」としている態度には、何が欠けているかは明らかであろう。欠けているのは、生きた知慧には、おのづから備わっている、尋常で健全な、内から発する努力なのである。彼等は、この己の態度に空いた空洞を、恐らく漠然と感じて、これを被ろうとして、そのやり方を、「かしこげにいひな」す、―それで、学者の役目は勤まるかも知れないが、「かしこげにいひな」して、人生を乗り切るわけにはいくまい、古人の生き方を明らめようとする宣長の「古学の眼」には、当然、そのように見えていた筈である。眞と予感する処を信じて、これを絶えず生活の上で試している人々が、証拠が揃うまで、眞について手を拱いているわけもなし、又証拠が出揃う時には、これを、もう生きた眞とも感じもしまい、というわけである。
 最後にみなわ秀雄は思う、言葉を、あだやおろそかにはできないと、そしてまごころの在り処に向かっての、不断の対話を絶やすなと。
 以上を以て、小林秀雄「本居宣長」評論の、読後感想といたします。

2021.10.21
今日は連れ合いの術後の経過診察ということで、阪大病院へ車で同行する。12:00過ぎに家を出、病院内で私はしょうことなしに新聞を読んだり数独解きに没頭したりして時をもてあそび、帰宅したのは午後4時過ぎであった。ようやく、秋も正体を顕わし、陽気が一気にわびしくなった。
 随分と個性の比類なき執念の複雑さを披見する老先生の著作に引きずり込まれ、身体の半ば以上を沈められたような恰好になっている。老先生小林秀雄の息の匂いがわたしの顔面に吹きかかり、くさい臭いと思いながらも逃れえずにいるのだった。最初は寝椅子に寝ころんで読んでいたが、「おいおい、しゃきっとして真面目に読んでくれなきゃ僕は気分を損なうんだぜ」と穏やかながら底意の眼が真に光るので、それからはきちんとデスクに向かって読むことにした。しかし、くだくだしく契沖や荻生徂徠やら源氏物語などをくり返し述べたててくるのには閉口して、これは先ほど来からの説明と同一ではないかと、思わず冥界のおじさんに注意をうながしたくなったことも度々ある。ともあれ、最後まで、巨魁先生の口臭に付き合おうとは思っている。「本居宣長」といふ分厚いぺーズ数の評論。

2021.10月15日 よく瞠れば、薄いオブラートのような雲の張り付いているのですが、ちょっと見には、連れ合いの言うよう、全き青空の晴れた日です。
今日は家内と豊中市立病院へ同行し半日付き添う(家内は現在三つばかりの病名をもらっている)。待合の合間に病院内のコンビニで毎日新聞を買い、本日の真新しいニュースをチェック。衆院解散 総選挙という大見出しの1面記事。その同じ1面の左脇に政治部長中田卓二氏の論評欄があった。
   その中から目に留まった記述を抜粋する。
「・・・安倍政権時代の臨時国会先送りに関する4月の岡山地裁判決は、招集時期などによっては、“違憲と評価される余地はある”と指摘した。」
 コロナ等山積する事案を図る臨時国会召集の野党の求めを一蹴し、党というわたくし事の都合を優先しての今回の衆院解散是非について、法的疑念の説明。
「・・・しかし、異例の短期決戦になったのは、選挙目当てで直前に総裁を代えた自民党の事情にほかならない。
 安倍政権以降、数がすべてと言わんばかりの国会運営が長く続いてきた。19日に公示される衆院選では、こうした国会軽視の姿勢が次期政権で変わるかどうかも問われることになる。」
 最近、夢うつつの中に、現在の日本を取り巻く国政の現状は、絵空事の夢まぼろしか風刺劇ではないかと、まともな真実に覚めることを願っている夢の中の自分を、夢から覚めつつある現実の自分が眺めていることが稀にある。
 あいかわらず、遁走するしか能のないおのれか。
閑話休題 最近頓に「数独」なる数字をいじくるナンプレ問題にはまっている。上級問題が解けた時はそれなりの達成感がある。「ABC予想}を解決した望月真一の解説書籍「宇宙と宇宙をつなぐ数学―IUT理論」を読了した影響かな、しかし本はさして理解できなかった。いわゆる、素数の気まぐれな性格をあらためて示したような。人間の造った素数をさんざんいじくりまわして、いよいよ訳が分からなくなった、というような。
2021.10.3
2021.10月3日(日曜)毎日新聞朝刊「時代の風」=藻谷浩介コラムから抜粋
今回の自民党総裁戦評及びこれまでの安倍・菅政権への批判から始まります。
 党員・党友票で大差をつけた河野太郎候補に、党所属国会議員票は流れなかった。野党支持層にまで人気のある彼を掲げての衆院戦突入を、改選される彼らの方で拒否したのは、何とも因果な話である。
  新総裁は「生まれ変わった自民党を国民にしっかり示し、支持を訴えなければならない」と語った。「生まれ変わった」とは何か。
 野田聖子候補の得票は「善戦」のレベルにも達しなかったが、だからこそ本音が言えたのだろう。彼女が述べた多くの正論は、「自民党にもこういう声があるのか」と強い印象を与えた。その一瞬は、この党の中にも”公論“があったのだ・・・・
 これまでの安倍・菅政権の施策については
 ・・・・そうして保持した権力を、安倍氏は愚かにも縁故者の優遇に使ってしまう。警察官僚を動員し、検事の人事にも介入して、優遇行為の隠蔽も図った。これは政治のみならず、司法への国民の信頼までを棄損、さらには、「そんなことは些末なことだ」と公言する応援団の、言論界での跋扈により、世の公私混同抑止の基準までおかしくさせてしまった。「悪いのは忖度した周囲」という声まで聞く。「忖度する周囲を止める責任はトップにない」とでもいうのなら、それは組織のコンプライアンスの根本を無視した妄論である。・・・・政治家に不可欠な言語能力を欠き、人事権による抑え込みに頼った彼が去るのは、それはそれで当然としても、その後に安倍氏とその取り巻きが復活したのでは、日本はこの9年間のよどみから何も学んでいないことになる。・・・・河野氏並みに敵を作る覚悟がなければ、デジタル後進国を脱することもできない。岸田氏自身は変われるのか?・・・・
 締め括りに
  かくなる上は、国会に緊張感を取り戻すことが急務だ。惰性の朝寝をやめて投票することが、日本が衰減を逃れるうえで必須の、国民自身の自助努力である。
 熱のこもったコラムです。わたしのもやもやした疑問・不満を、理路整然たる記述で発表してくださった藻谷浩介氏に感謝します。
 
2021.9.30
 9月23日にTV BS3プレニアムで放送された「欲望の資本主義2021秋特別編」
 眠っていた貧脳を久しぶりに喚起された番組でした。今度のコロナパンデミックにより富裕層と貧困層の差がより顕著になったと巷間喧伝されていますが、コロナ云々と切り離しても富裕層(資本収入者)はより富を増やし、貧困者(労働収入者)はより貧しくなりより裾野を広げてその人口を増していきます。そして地球的規模の方向として、富裕層はその富裕環境を子孫に伝えより富を増やしていき、貧困者はその環境ゆえに子孫も貧困に慣れ安住せざるを得なくなります。極々少数の富裕者と残りのほとんどを占める多数の貧困者が住み分ける、明日の地球です。
 どうして、世界は、こんなことになってしまったのでしょう?
 番組内容から刺激を受けたセンテンスのいくつかを挙げますと
「悪は悪を産み、善は善を産む。逆も在りうる」=「善と悪の経済学」を著したトーマス・セドラチェリ(経済学者)。今日の社会経済にあらわれつつある端的な現象です。ビジネスが悪への入り口になる可能性。資本主義はどう向かう?悪→善、善→悪。
「人間の倫理から機械の倫理へ移行していく、時の流れ」AI・情報に代表されるデジタル機械が社会のスタンダート規範になっていくこと。そうなると、責任を問われない支配が可能になります。責任をとるのは機械の管理者ですが、いずれそれも機械にとって代わられいずれまた上位の機械にとって代わられていく、入れ子構造。
社会は 競争・監視(得られた情報は利益の基になる)・監督から成る。監督官は銀行です。つまりは、権限を企業に負託させる交換経済においての監督官。
「銀行預金はいわば預金者への負債」預金者は何の疑いもせず現金と同じように扱うが、それは絶対の信用があるから、つまりは信用経済。(早川英雄氏)
「資本主義のこの展変はいまさら止めようがない。Animal split の資本主義を飼いならすしかない」(元日銀理事 早川英男氏)
採るべき途は?
゜民衆資本主義 資本収入者と労働収入者の中間層の発展=労働者が自社株を持って経営の側に参加する案。現在実行している企業もありますが、もっと普及させるという意味。
゜企業のPurpose(目的)意識を明確に持つ。利益・社会への働き・責任。スティーブ・ジョブス、フェイスブック(マーク・ザッカバーク)等の成功例。
゜監視資本主義=資本主義の自由度・暴走を監視する。この場合監視する側も自由を監視されることになる、つまりは「自由とは制限である」
゜(ひと昔前) 欲を抑える「禁欲」=マックス・ウェーバー。無理である。だから最後に彼は
「我々の社会は いきつくところ機械的化石となってしまうのか」と嘆く。
以上ほんのひとつまみのメモを挙げました。また再放送される日があると思われますので是非視聴をお勧めします。
 この番組から一つの危惧を抱いた。高度なAI/情報化社会になると、膨大な情報や演算のチェックは人間の手に負えなくなる日が、早番来るのではないか。そうなるとAIが暴走した場合、誰が見つけられよう?誰が停められよう?もしまた、AIが自身の自律するアルゴリズムを獲得した場合は・・・ぞっとします。機械的化石どころか、疑似生命体として地球上に君臨する・・・荒唐無稽?
 
2021.9.8
毎日朝刊「水説』=古賀 攻氏から抜粋。
「莫大なエネルギーは原因ではなく、不信を招いて自ら膨らませた結果だ」「何より不出馬を口にした瞬間から始まる”権力の空洞化”について、最高責任者ならではの洞察があれば、自民党役員会の場で総裁選日程の前倒しを要請できたはずだ。明日巨大地震に襲われたらどうするか。空白期間を短くすることが去る者の仕事になる」
 言われてみれば、そういう厳しい見方があったかと眼を瞠らされた。当のご本人はおそらくそこのところまでは思い至らなかったのではないか?
 2021.9.5日曜日
一国の民を統治する者はその政治形態(民主制・非民主制いわんや君主制・独裁制においてをや)如何を問わず古今東西を通じて本質的に差異はない。民の上に立ち、民に命令して治水地山・国防などの事を成らしめるよう従わせ、違背する者には罰を与える。それら権力行使の要として民それぞれから労働対価のなにがしの割合を国の運営費用と称して徴する。莫大な額が当事者の目の前に積まれる。たとえ民の監視の下に置かれる制度の場合であったにしても、寸暇においては当事者の前にまっさらな貌を見せてほくそ笑むのである。その膨大な限りなき可能性という妖しいまなじりをもって秋波を送るのである。
社会の安寧秩序を維持するという大義のために、たとえ民主的制度の手続きを踏もうとも統治者はいきつくところ民の生殺与奪の権利を自ずからにする。この位階は上りつめた人物にして夢遊病者の如く甘美に酔わせる。
たとえ聖人君子に比するぐらいの清廉潔白にして篤実なる人物であろうとひとたびこの場に臨めば、水が高きより低位へ流れ下り落ち着くよう日を経るにしたがい悪心に染まっていくのをどうにも止められない。民主制においてはこの禍を防ぐため、ひとつには、経る日を有限数に限定する制度をつくった。しかしその2年乃至4年は、果たして有効な時間であるのかどうか心許ない。一歩ゆずって、政治における内政・外交には経験値・知名度を基にした習熟時間が必要であり国益上徒やおろそかにできないので、任用期間は永いほど良い結果を生むとの拘泥は一面最もとはいえ、永く居座った政権が悪を濫用した場合、後戻りができなくなってしまう禍を招く。 権力の持続は悪を生み、正義を堕させる。
2021.9.5(日)毎日新聞朝刊社説から: 「これまでの独善的な政治姿勢も問われなければならない。  権力は本来、抑制的に行使されるべきものだ・・・」
今日、車の点検云々の用でGSへ出向いた折、応対の女史との四方山話の口端に上がった言葉。 「須賀さんは、記者会見で辞任の意思を表明された時が、今までで一等まともな物言いだった。まるで憑き物がおりたみたい」
舞台を去る姿は哀しい。それまでの顛末を霧の彼方へ追いやるような、一瞬の鈍い輝きを放つ。この女史は、惻隠の情で眺めておられた。

2021.9.3
こんばんは。ニュース番組は須賀総理の退任報道で賑わっておりますね。朝一番のNetNewsからその予兆があったような気がします。政治向きの話には距離を置くようにしていますが・・・どうやら昨夜遅くに単数或いは複数の人物らから是非判断についての分かりやすい丁寧な説明を受けたものと愚考します。事ここに極まれりであったでしょうね。名陪臣必ずしも名宰相にはなれず。

2021.8.28
異変と呼ぶにすこしばかりは大げさだとは思うけれどしかし今夏の2週間余り続いた梅雨のようなじめじめした長雨にはまいった。第一に山歩きができず、髀肉の嘆をかこつのがつらかった。きのうようやく青空がひろがり夏の太陽が顔をみせたので、生駒駅へ行き、宝山寺から頂上、おにぎり二つの昼食、一時間ぼっとして暗峠〜鳴川峠〜瓢箪山へとひととうりの山歩きをして下山したのでした。そこで二句ばかり記す。
「下界より 這い上るかや 山の夏」
「山は汗 青空に照る さるすべり」

2021.8.27
日記を最後に記してから1年猶予を経て、今ようやくホームページに向き合ったのでした。己の怠慢というほかなく、この1年の煩瑣であった日常生活を言い訳にしたところで何の免罪符にもならず、たとえば誰にしたところでのっぴきならない繁忙な1年であったのですから。1年が経ち新型コロナはより蔓延の勢を威盛っております。今年になって我が身辺にもその類火が及び、4月には連れ合いが感染して入院、わたしは自宅謹慎2週間となりました。また一月後こんどは派遣先職場において感染者があらわれこの場合は間を入れず探し当てた病院でPCR検査をうけ、自宅待機一週間となりました。7月末には夫婦とも箕面市によりワクチン接種を2回打ってもらいやれ一安堵ついたのでした。いずれにせよ新型コロナとは決して無縁ではなくなり日常生活の一部になったのだと誡告されたのです。
季節と天気の荒い移り変わりの狭間にまぎれていつの間にやら東京オリンピックが始まりまたあっけなくてといえるほどに大した感動もなく余韻も残らず台風一過のごとく過ぎ去っていきました。オリンピックと新型コロナ蔓延との関係については当初「開催反対、賛成」の声も巷間に百出した嫌いもあり結局のところは以下8月22日毎日新聞コラム時代の風「コロナと東京五輪」=藻谷浩介氏の「大過なく終わるどころか第5波の感染爆発をまねいたではないか」」と言われそうだ。だが感染から陽性判明までには、タイムラグがある。開催期間中の急増の多くは、五輪以前に起きた日本人同士の感染の顕在化だ。接種進展で気が緩んでの感染急増は、多くのワクチン接種先行国でも起きていた」との言葉に表されているよう、オリンピック開催と感染爆発との因果関係有無については関係否定の形に収まったようです。しかしコラム最後の段になって、このままではどうにも釈然としない、政府筋の安穏とした顔ぶれを思い浮かべるにつけ一言の警句をと、言葉が漏出します。曰く「原稿の棒読みを批判された首相は、正確を期するためだとしたが、必要なのは聞き手の腹に落とすことだ。愛の告白に、正確さを期して原稿を棒読みする者はいない。政府発表にも愛の告白並の、ごまかしのない表現、相手の心を動かす話し方が必要だ。日本の各界要人の認識レベルは、いつそこに到達するのだろう。・・・心に届いて信用される言葉を持つことは、”政権担当能力”の核心である。そこを理解し実践できる政府をもつには、それがどうしてもわからない人々に退場していただくしかない。もちろん平和に、選挙で」とまあ、いささか昂ぶった調子になっていますが、おそらく相手方には毫も寸も届かないでしょう、政治と恋愛を同一の場に並べないでほしいな、と煙に巻かれてしまいます。国民の輩に政治の厳しさなど分かりやしないと苦虫を噛みながらほくそ笑む図が想像できます。現実は厳しい、愛の言葉は空しい。愛に支えられた行動の言葉を紡がなければなりません、地道に。
愛読書「菜根譚」の一節を紹介させていただきます。「善を成すも、自ら高くしてひとに勝らんと欲し、恩を施すも、名を要(もと)め好(よしみ)を結ばんと欲す。業を修むるも、世を驚かし俗をおどろかさんと欲し、節を植うるも、異を標し奇を見(あらわ)さんと欲す。此れは皆是れ、善念中の戈茅、理路上の荊棘にして、最も夾帯し易く、最も抜徐し難きものなり。須らく是れ、渣滓を(そそ)ぎ尽くし、斬りて萌芽を絶たば、わずかに本来の真体を見(あらわ)すべし」 意訳「何か良いことをする場合も、高慢になり人より優れていたいと思い、人に恩恵を与える場合も、名声を求めて他人と関係を持とうとする。習い事を修得するにも、世間の人々を驚かせびっくりさせようとし、節操を確立するにも、特別なことを誇示しすばらしいことを現そうとする。これらはすべて、善なる心の中にあって人を傷つけようとする刃物のように危ないものであり、正しいことを行ったとしても陥るいばらのように危険なものであって、いとも簡単に身につきやすく、なかなか抜き難い性質のものである。そのような心の滓をすっかり洗い落とし、そのような心が芽生えてくるのを断ち切ったならば、そこでようやくその人間の本来の真実の姿を表わすことができる」中国歴史「前漢」王朝を纂奪し「新」という短命王朝を建てた王奔その人がモデルではないかと、浅学愚昧の徒が洩らしたとか?